『ありさ 土蔵の濡れ人形  第二章』
 
                    Shyrock:作

第二話「鴨居片足吊り」

 ありさは怯えた目で肩を振るわせ後ずさりをした。
「そんな怖がらんでもええ。これは剃刀や。髭を剃る道具や。なんぼ腹立ってもおな
ごを刃物で傷つけるようなアホなことはせえへん」
「……」

 九左衛門が手に持っていた物は髭そり用の剃刀と小箱であった。
剃刀を土蔵にまで持ってきて、いったい何に使おうと言うのだろうか。
危害は加えないと告げる九左衛門だが、ありさの心から不安と恐怖心を拭い去ること
はできなかった。

 「ああ、それからな、『ありさはわしの使いで出かけた』と言うことにしたるさか
いな」
「はい……」
「ほな土蔵に入るで」

 九左衛門は土蔵の扉を開け中に入って行った。ありさもやむなく後に続いた。
どんよりと澱んだほこりっぽい空気がありさを包み込む。
小さな灯り取りから差し込む乏しい光が箪笥や長持ちの仄暗い陰を落とす。
狭い通路を進み、前回と同じ茶碗の入った長持ちがある場所に到達した。

 「この辺でええやろ。さあ、着物を全部脱ごか」
「全部…脱ぐんですか……」
「そや、全部や。腰巻一枚でも残したらあかんで」
「……」
「背中向けたらあかん。こっち向いて脱ぐんや」

 ありさは仄暗い土蔵の中で、舐めるような九左衛門の視線を浴びながら、一糸まと
わぬ姿となった。
「ありさ、今から尋ねるで。正直に答えたら着物着せたる。せやけどもし嘘ついたら
お仕置きやで。そのつもりで真剣に答えるんや。ええか?」

 「は、はい……」
「山波商店の若旦那山波淳三郎といつ頃からおうてるんや?」
「会ってません!山波と言う人は知りません!」
「ふん。もう一つ尋ねるで。若旦那とはどんな仲や?」
「仲だなんて……本当にその人のことを知りません!」
「嘘つけ!やらしいことしてるんやろ!」

 「嘘ではないです!」
「わしに嘘は通用せえへんで!ほんまのこと言わんかい!」
「本当に知らないんです!信じてください!」
「嘘も休み休みにしいや~!」

 「嘘じゃないんです!本当に、本当に知らないんです!」
「そうか~。どないしても惚けるんやったら、折檻して身体に聞くしかあらへんな」
「折檻は嫌です!どうか許してください!」
「ありさ、この縄何に使うか分かるか?」

 九左衛門は垂れ下がった二本の縄尻をありさに見せた。
二本の縄尻を上に辿っていくと二本とも、天井の鴨居に到達した。
縄はあらかじめ鴨居に括られ準備されていたようだ。

 「縛るのは許してください!」
「今日はこの前よりもっと恥ずかしい恰好にしたるからな。ぐふふふふっ……」
ありさは立位で両腕を高手後手に縛られ、上半身が動けなくなった状態で右足太腿と
足首の二か所に縄で縛られた後、大きく持ち上げられ片足吊りの態勢にされてしまった。

 右足を天井から吊られ膝が脇腹についてしまうほどあからさまに広げられた股間は、
ありさの密やかな器官の何もかもをさらけ出してしまっていた。
かなり薄めの陰毛に飾られた淡い肉唇、その裂け目から露になっている桃色の肉壁。

 その下で秘めやかに息づく紅の窄まり。
九左衛門のみならず男なら誰でも目を奪われる魅惑的な光景だった。
九左衛門は息がかかりそうなほど至近距離から覗き込み、猥褻な言葉を浴びせる。

 「がはははは~、ええ眺めやなあ」
「み、見ないでください……」
「中の具まで覗いとるやないか。菊門も丸見えやしなあ。酒持ってきて見物するのも
ええかも知れへんわ。花見よりおもろいで~」
九左衛門に卑猥な台詞を並べ立てられ、ありさは羞恥に耐えきれず顔を真っ赤に染め
ている。

 なおも九左衛門の聞くに堪えない台詞はつづく。

 「パックリ開いたおそそが若旦那恋しいと叫んどるみたいやで。稀に見る絶景やけ
ど毛がちょっと邪魔やなあ。無い方がすっきりするで。よっしゃ、わしがきれいに剃
ったるわ~」
「そ、そんな!剃るのは堪忍してください!」

 「毛を剃られたら、恥ずかしゅうてよその男に見せられへんやろ?きれいなおそそ
になるし、浮気もせえへん。これは一石二鳥やで!さあ、はよ剃ろか~」
「あ、ああっ……そんな……」

 戯言とは言え九左衛門のひとりよがりな言葉にありさは絶望の色を滲ませる。
九左衛門は剃刀とともに、持参した木箱から髭用の刷毛(ブラシ)、石鹸、水筒を取
り出し、ありさの足元に並べた。
 
 水筒の中には湯が入っている。今は風呂の湯くらいまで冷めている。
手拭いを湯で濡らし一度絞ってから、ありさの股間に押し当てた。
「大事な場所を温めたるわ。どうや?気持ちええやろ?」
「……」

 蒸し手拭いと言うほど熱くはないが、適度な温かさがじわりと鋭敏な部分に伝わっ
てくる。
「もう一回だけ機会やるわ。本当のことをしゃべったら毛剃りは堪忍したる。ほんな
聞くで。ほんとは山波の若旦那とおめこしたんやろ?」
「してません。山波と言う人は知りません」
「そうか、知らんか……ほな、しゃあないな……」

 九左衛門はありさの股間に宛がっていた蒸し手拭いを取り除くと、刷毛に石鹸をた
っぷり付け、それをありさに見せつけた。
「ちゃんと石鹸をつけて剃ったるから心配せんでええ」
「……」

 そうつぶやくと九左衛門は、刷毛で石鹸を塗り始めた。
刷毛が動くたびにありさの股間は白く泡立っていく。
九左衛門は塗る時に、刷毛の先端を敏感な肉芽や秘所に触れた。
そのたびにありさの身体に奇妙な快感が襲う。

 「あっ……ああっ……」

 九左衛門に悟られたくはなかったが、身体は自然に反応する。
そんなありさの変化を九左衛門は見逃さない。
「なんや?気持ちええんか?わしと床を共にするまでは生娘やったのに、もう感じる
ようになったんか?」
「そんなことないです……」

 九左衛門が刷毛の先端を肉芽に当てて、細かく振動させた。
「ひぃっ!」

 
                

   この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました