「OL哀歌~加奈子編」

                               赤星直也:作

第22話 カタログ


 三友商事の第二課では、次の販売計画を練っていた。
「課長、どうしても個別の販売では限度があります。大量に売るには別な方法でない
と無理です!」加奈子が言う。
社長表彰を受けたから、加奈子と雪江、彩子の3人は発言権が強まっており、臆する
ことなく言った。
「いい方法は、ないしな…」
「あるわよ、女性だったらこうするはずよ」彩子は雪江に耳打ちし、雪江はそれを加
奈子に伝え「私もそう思っていたの」加奈子も乗り気だ。

 「何だ、その方法って?」
「通販ですよ。通信販売!」
「それじゃ、今までの対面販売を否定してしまうぞ!」課長の大泉は反対した。
「でも、この方法が大量に販売できます」
「女性だったら、手軽で受け入れてくれるはずよ」その通りだが、課長の大泉はそれ
を受け入れたくなかった。

 「そこまで言うなら仕方ない。通販でいくしかないか…」大泉はぽつりと言った。
「課長、早速作りましょう、カタログを!」
「そう、カタログを作らないとね」
「そんな金、どこからでるのかな」大泉は頭を抱えた。

 「課長、カタログは私達に任せて貰えませんか?」「そうだな。君達3人に任せる
よ」承知させると「ありがとうございます」雪江は礼を言ってから彩子、加奈子と話
し合う。
「まずは、社長に相談してから決めようよ」
「そうね、それがいいわ」3人は社長室に向かった。

 「あら、裸で表彰を受けた3人ね。何用かしら?」加奈子達を見下したように秘書
が言う。
「話があるのよ、社長に!」
「それだったら秘書の私が伺います」
(何て奴よ、許さないわ)加奈子は怒りを露にした。
それは加奈子だけではなく、彩子と雪江も怒っている。

 「直接話しますから、合わせて下さい!」
「だから、私が伝える!」秘書と3人は社長室の前で言い合っていると「うるさいぞ、
何事だ!」社長がドアを開けて現れた。
「すみません。お話があって伺いました」加奈子は頭を下げて、いきさつを話し、雪
江と彩子も頭を下げていた。
「とにかく、聞くだけだぞ!」「ありがとうございます」3人は社長室に入った。

「実は今度の計画ですが…」雪江が詳しく説明をしていくと、社長は黙って聞いてい
た。
「ですから、対面販売では限度があります。カタログを作って通販の道も作らないと
…」彩子と加奈子も説明する。
「その通りだ。しかし、あまりにも金が掛かる。試算もしてある」社長はファイルを
調べて、3人に見せた。

 「これだったら、うまくいきます。半分、いえ、1/3ですみます!」
「馬鹿な。そんなはずはない。企画が計算したんだから間違いない!」
「計算は間違いありません。でも、必要ないのが大半です」
「そうよね、これと、これはいらないわ」「私もそう思うわ」3人の言葉に、社長は
驚きの顔に代わった。

 「どこと、どこが不要なんだ。教えてくれ!」
「この、モデル代です。社員を使えば、ただです!」
「それに、撮影も社員のカメラマニアだったら、こんなの簡単に作れます!」
「印刷だって、パソコンで編集してから印刷に頼むと、半分ですむわ」

 3人のアイデアに、社長の顔が笑顔に代わっている。
「企画課の課長を呼べ、今すぐにだ!」秘書に言いつけた。
「凄いアイデアだ、思いも付かなかった。企画課の前で説明してくれ!」
「はい、喜んで説明させて貰います」そこに「社長、お呼びですか」企画課の課長が
現れた。

 「聞いてくれ、この3人の話を!」
「は、はい」企画課長は加奈子達3人の話を聞いていく。
すると、話を聞く度に顔色が青ざめて(どこからこんな発想が!)自分たちの思いも
付かない発想に体が震えている。

 「どうかなさいましたか?」
「い、いや、なんでもない」額からは大粒の汗が流れている。
「どうだ、いい考えだろう。企画課でも考えつかないアイデアだ!」
「そ、そのようです」うなだれた企画課だった。
「さっそく、始めよう。3人は企画課と一緒にカタログを作ってくれ」
「わかりました。でも、お願いがあります。モデルは社長命令にして下さい…」

 「いい子がいるのか?」
「女性全員にモデルになって貰います」
「勿論、私もなります。『顔は絶対に撮さないから、乳房とヘアは覚悟してくれ』と
社長から言って下さい」
「そうか、社長命令か…」
「そうです。モデル代として、日当の倍はお願いします」
「それなら俺でもできるな」笑顔になる社長だった。
「早速、明日からカタログの撮影を始めますから訓辞をお願いします」
「わかった。早速女性を集めてくれ」

 社長の一言で、直ぐに女性社員が会議室に集められ、勿論、あの秘書もいる。
「このたび、女性の下着の販売を手がけることになった。そこでカタログを作る」社
長は演説をぶっている。
「そこで、モデルを君たちに頼みたい。イヤならら会社をやめてくれ。これに社運を
賭ける!」そこ言葉にどよめきが起こった。
「オッパイを晒した顔が撮られるのは、いやよ!」「私も、ヘア丸だしの顔はいや!」
泣き出す社員もいた。