「OL哀歌~美由紀編」

                     赤星直也:作
第5話 取り立て

 美由紀が処女を失ってから数週間が過ぎた。
野村はあれ以来、美由紀の体を求めず、それは仕方がない事と思っている。
なにせ、会社に時折婚約者の相原由佳が、野村に会いに来るからなおさらだ。

 「大原さん、内の野村どこかしら?」
「野村さんは、お得意さまの所に出かけてますが…」
「いないんだ。仕方ない、また来るか。所で大原さん、好きな人いる?」美由紀はド
キッとした。

 (まさか、バレてはいないはずよね)「いません!」ときっぱり言う。
「早くお嫁に行かないと、ここにカビが生えるわよ!」由佳は美由紀の股間を撫でた。
「やめて下さい。私にだって、きっと見つかります!」言い返すと「ふ、ふ、ふ。」
由佳は意味ありげに笑って、会社から出て行く。

 そして、美由紀だけ留守番をしていると「大原美由紀様をお願いしたいのですが?」
「私が大原ですが。失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「申し訳ありませんでした。私は浅田商事の遠藤研一と申します」

 「何か、御用でも?」
「大原様が購入された金貨が値下がりして、保証金が必要になってしまいました。こ
のままだと、原価割れを起こします」美由紀はいくらかは、先物取引の構造を知って
いた。

 「どれくらいの保証金ですか?」
「300万は必要です!」
「そんなお金ありません。解約します」
「解約すると、合計500万払い込まなければいけませんよ?」

 「その方がいいです。追加の保証金をこれからも取られるよりましですから」美由
紀は貯金をはたいても、これ以上の傷は広げたくない。
「分かりました。全て売却して解約します。あなたは賢明な女性ですね。普通なら追
加金を払って、傷を広げていくんですがね」

 「いつまで、お支払いすればよろしいでしょうか?」
「今度の土曜日までです」
「わかりました。口座に払い込みます」

 美由紀は、野村にそそのかされて契約したことを後悔した。
しかし、野村を憎む気にはならず「運がなかっただけだわ」そう言い聞かせて、金策
を考えた。

 「どう考えても、300万は足りないわ」美由紀は暫く考え、電話帳を覗くと「こ
こだ!」それは女性が経営をするサラ金だ。
いつか、雑誌にも取り上げられた会社で、美由紀は電話を掛けた。

 「はい、本間金融ですが?」
「あのー、お金を借りたいのですが…」
「身分を証明できるものが、おありでしょうか?」

 「証明できる物って?」
「たとえば、運転免許書とか、パスポートとか…」
「保険証ではだめでしょうか?」
「結構ですよ。それで、いくらほど?」暫く考えて「300万ですが…」

 「それは大金ですね。お会いしてからでないと、お答えできませんね」
「それなら伺います。今日の6時でよろしいでしょうか?」
「結構です。お待ちしてます」

 美由紀は野村に先物取引の解約をしたことを言わず、5時で仕事を終えると本間金
融の方に向かった。 
本間金融は駅から5分歩いたビルの中にある。

 本間金融と書かれたドアを開けると、カウンターがあって銀行と同じく作られてい
る。
「いらっしゃいませ!」店員がニコリと笑って迎え「先ほど電話をした大原ですが?」
「大原様ですか。こちらにお入り下さい」店員は小さな部屋に案内していく。

 「暫く、お待ち下さい!」店員はお辞儀をして部屋から出て行き、2分ほどして女
性が現れた。
「初めまして、本間絵里です。300万ですってね?」
「はい。どうしても、必要なんです!」

 「どうしてですか?」美由紀は野村に進められて先物で失敗したこと、それから手
を引くことを説明した。
絵里は暫く考えてから「あなたは、賢明ね。普通だったら泥沼に入り込むの。500
万で済むんだから、高い勉強代と思って諦めたほうがいいわね」と言う。

 「ところで、お借りできるのでしょうか?」不安そうに尋ねた。
「普通だったらダメだけど、私あなたに掛ける。300万貸しましょう」
「それで、お支払いは?」
「返済は毎月10万よ。ボーナスで40万、2年で返済ならどう?」

 「いいです。それでいいです」
「じゃ、ここにサインして、印鑑もよ!」
しかし、よくよく考えると美由紀の給料から10万引かれるのは、かなり厳しい生活
をしなければならない。
ボーナスだって、ほとんど残らないはずだが、美由紀は自分の給料の事を忘れていた。

 美由紀は生活を切りつめ、ローンの返済していくが、6ヶ月目で払えなくなってし
まった。
そんな時に、大原から電話で「大原さん、私本間絵里よ」電話があった。
「本間さん、何か御用でしょうか?」

 「話があるのよ。今夜付き合ってくれない。いい話よ」
「わかりました。場所はどちらで?」
「ここよ、本間金融に来てよ。6時までに来てね」
「分かりました」電話を置いた美由紀は元気がなく(借金の催促だわ。どうしよう…)
考え込んでしまった。

 しかし、野村を責める気にはなれず、5時に会社を出て美由紀は本間金融に向かっ
た。
美由紀は言われた6時よりも20分も早く着くと受付が「大原様ですね。社長がお待
ちです」受付はこの前と違う方向に案内していく。

 「トン、トン!」ドアをノックしてから入ると「待ってたわよ!」絵里は笑顔で美
由紀を迎える。
「座って!」絵里はソファに座った。

 「ところで、返済は順調かしら?」
「今月は、9万にしてもらえないでしょうか…」
「払えないの?」
「今月だけ、特別に出費がかさんでしまいまして!」

 (知ってるわよ。あなたの身内に不幸があったことなど…)「でも、約束は約束よ。
払わないといけないわよ」
「そうですよね…」ガクと肩を落とす美由紀だ。
(あら、可愛そうに。じゃ、切り出すか!)

 「実はあなたにアルバイトを紹介したいの。とってもいいアルバイトよ。これで借
金は消えてお金が残るの」
「どんなアルバイトですか、まさか、体を売るんだったりして!」

 それには絵里は笑って「法律に触れることはしないわよ」と言う。
「どんなアルバイトですか?」美由紀は真剣になっている。
「実は、今度パーティを開くの。そこでストリップショーを計画してたんだけど、ス
トリッパーが病気で入院したの。その代役をお願いしたいの」

 「全裸になるんですか?」
「勿論よ。それに、人前でヘアを剃ってもらうのよ」
「は、恥ずかしいわ!」美由紀は下を向いたままだ。

 すると、絵里は机から札束を取り出し重ねた。
「200万あるわ。承知してくれるなら、このお金はあなたにあげる。勿論、返済し
たことにして!」

 それを聞いて、美由紀の目が光った。
(借金が消えて、さらにお金がもらえるなんて、何か訳があるかも…)
「本当に、ストリップとヘアを剃るだけですか。セックスされる心配はないんですね」

 「あら、それが心配だったの?」(本当にうぶな子ね。気にいったわ…)
「はい!」美由紀が答えると「ただし、オナニーをするかもよ」
「人前で、ですか?」
「もちろんよ。ショーですから」美由紀はヘアを剃るのに抵抗はないが、オナニーを
他人に見せるのはいやだ。

 「オナニー無しではいけませんか?」
「それはだめよ。バイブも入れるのよ。観客が喜んだら、もう100万ボーナスだす
わ」机にさらに100万が積まれた。
「やります。やらせて下さい!」美由紀はストリップを承知した。