「波瀾のOL」   
                                 赤星直也:作
第5話 知られたモデル

 2人は、家を出ると喫茶店に向かった。
「美紀さん、もうセックスはしたくありません…」歩きながら言うと「返すあてある
の。ずいぶんあるんでしょう?」聞き入れようとはせずに、反対に「タダじゃないの
よ。オ○ンコすればお金になるのよ。それくらい我慢しなさい」突き返した。
(それじゃ、売春と同じよ)言いたいが、黙っている。

 そして、店に着くと「晴美さん、交代よ!」真美と一緒に、着替え室に入った。
晴美がスカートを脱ぐと、スケスケのパンティだから「凄いわね、ヘアまで見える!」
真美が食い入るように見ている。
「着たくはないけど、美紀さんから貰ったし…」
「それじゃ仕方ないわね。断ったら大変だし」真美も下着姿になると、最小の布地だ
が隠すべき所は隠してある。

 晴美がシャツも脱いで、着替えようとすると「オッパイまで出してるんだ!」また
声が上がった。
「これも、美紀さんから貰ったの」恥ずかしそうに、店のシャツを着るが「しばらく
大変ね。どんな事があっても、逆らったらダメよ」意味ありげに真美が言い、着替え
を済ますと帰って、晴美も店に出て接客を始めた。

 晴美は、夕方の6時近くまで店で働き、アパートに帰ると見知らぬ男から「天野晴
美さんですね?」声が掛けられ、手帳を見せられた。
「警察ですか…。私が、何をしたというの?」
「来て貰えればわかります!」男の車に乗って、警察署に向かった。

 警察署では「糸川真一とは、どういう関係でしたか?」と聞かれ「同僚です…」と
しか答えない。
警察は、晴美が共犯者と疑っているようで、執拗に質問されたが、真一と肉体関係は
微塵も話さなかった。
警察も証拠がないから、それ以上は追求出来ず、9時にアパートに戻り、いつものよ
うに風呂には入り、食事を摂るが「そうだ、薬を飲まないと」処方された避妊薬を飲
み込み「これで、心配ないわ」眠りにつく。

 翌日、出勤すると会社の前に、数台の車が停まっている。
「何か、あったのかしら?」不安を感じながら事務所に入ると「家宅捜査だって!」
同僚が話しかけてきた。
「糸川さんの事で、捜査なの?」
「そうなんだって。これじゃ、仕事にならないわね」同僚はあっさり言うが、晴美は
糸川との関係を知られるのを恐れている。

 晴美は、不安を抱きながらも、時間になると美紀の喫茶店で働いていたが、高橋が
「ちょっと、頼みがあって…」声を掛けてきた。
「私に頼みって、何ですか?」
「大きな声では言えないが、東京交易の顧客リストが欲しくね」

 「そんなの無理です。持ち出したら、警察行きになります!」
「そこを、何とか頼みたいんだ」
「無理です。できません!」キッパリ断ると「仕方ない、これを見てくれ」A4サイ
ズのファイルを渡した。
それを見た晴美は「酷い、こんなとこまで撮って!」泣き出した。

ファイルには、晴美のヌード写真が貼られ、淫裂に肉竿が入ったり、射精された淫裂
も貼られてある。
「これが、表沙汰になったら大変だろうな」それには、泣き声も大きくなった。
「もし、リストを手に入れたらこれはなかった事にするよ。それに、借金も100万
値引いてやるよ」

 (どうしよう。もし、ばれたら間違いなく首だし、やらなかったら写真と真一さん
の関係が表沙汰になるし…)悩んだが「何時までに、やればいいんですか?」持ち出
すのを決意した。
「1週間以内がいい。あまり、時間を掛けたくないし…」
「わかりました、やってみます。その変わり、約束は守ってください」
「わかってる、必ず守るよ」高橋は笑顔で答え、晴美は「どうしたら、持ち出せるん
だろう?」思案している。

 色々、思案したが、以外にもチャンスが訪れた。
警察の家宅捜査に対応するため、役職者は会議室に集められて、晴美も簡単に閲覧出
来た。
(今が、チャンスだ!)隠し持ったメモリーに、リストをコピーしてから、何気ない
顔をしていく。
時間が長く感じられたが、仕事を終えると高橋の会社に行って、顧客リストの入った
メモリーを渡す。
高橋は、それを受け取ると確認してから「約束は守るぞ。また頼むからな」ファイル
と領収書を渡した。

 晴美は、それを受け取るとアパートに帰った。
戻ると「こんなの、要らないわ!」ファイルから写真を取りだし、片っ端からハサミ
で切り裂き、全てが終えると、レジ袋が一杯になっている。
「これで安心ね。約束は守れそうだし」ぬか喜びしていた。

 それから数日後に高橋から「東京カルチャー」へ行くよう電話があった。
「ヌードモデルですか?」
「そうだ、話は付いている」用件を言うと電話は切れ「ヌードはイヤなんだけど…」
借金返済のためには、やるしかない。

 そして、日曜日になると電車に乗って「東京カルチャー」と書かれた建物の中に入
ると受付に「絵画教室のモデルを頼まれまして…」と話す。
「それでしたら、これにサインを貰って、帰りによって下さい」用紙が渡された。

 それを受け取り、絵画教室へ向かうと20人程の受講生が待っていて「天野さん、
お待ちしてました」指導者が声を掛けてきた。
「これにサインを…」受付から渡された用紙にサインして貰うと、背中を向けて脱ぎ
だした。

 シャツ、スカート脱ぎ、下着も脱いで全裸になると、手で乳房と股間を押さえて、
受講生の前に立つ。
「今回は…」指導者が受講生に解説すると「足をこうして」「手は伸ばして」とポー
ズを作らせる。
(見えちゃうわよ。まともに、見えちゃう…)足を広げているから、絨毛の中からピ
ンクの淫裂が覗いている。
受講生も、目を輝かせているから(そんなに見ないでよ。恥ずかしくなっちゃうわ)
自然と、顔が赤らみ乳首が膨らんでいる。

 晴美は、恥ずかしさを堪えて全裸を晒していくと、徐々にではあるが、余裕が産ま
れ受講生の様子もわかるようになってきた。
(イヤだ。性器ばっかり見てるから、オチンチンが膨らんでる…)股間を膨らませた
受講生に気付いた。
なおも見渡すと「!」声を出す寸前だ。

 (営業課の橋本さんだわ。どうしてここに…)同僚が居るのに気付いて(会社に知
られたらどうしよう…)不安になっていく。
(他人の空似って、事もあるし、きっと他人よ)自分に言い聞かせながら全裸を晒し
ていくと「ここまでです!」時間になり、受講生は片づけだし、晴美も服を着ていく。
そして、服を着終えると「お世話になりました」指導者に礼を言って、部屋から受付
に行き、モデル代を受け取った。

 「これで、100万はたまったかな?」笑顔で建物の外に出ると「天野さん!」晴
美を呼ぶ声がした。
振り返ると(橋本さんだ。間違いなく、橋本さんだったんだ!)一瞬に顔が強ばり、
体が震えている。
「やっぱり、天野晴美さんだったんだ。綺麗なヌードでしたよ」
「お願い、この事は会社に言わないで!」
「それは、晴美さん次第ですよ。とにかく行きましょう」橋本は晴美の腕を掴んで歩
き出し駅に来た。

 電車の乗ると橋本は「僕は色々な趣味がありましてね…」話し出すが、晴美は項垂
れて黙ったままいる。
やがて、電車はスピードが落ち「次で降ります」橋本が立ち晴美の手を握る。
(馴れ馴れしいわよ!)普段なら振り払うが、弱みを握られたから握り返すしかない。

 そっと握ると、満足そうな橋本は「行きましょう」笑顔で話しかける。
(ただじゃ済まないわ、きっと何かある。もしかして、体を求めるかも…)不安な顔
をしながら、電車から降りた。