『闇色のセレナーデ』
    
                           とっきーさっきー:作
第8話 リードしているのは、誰?


 (いっぱい恥ずかしいことをしてやるつもりだったのに、気付けば相手の少女にリ
ードされているなんて)
どちらかといえば背の高い卓造に、背伸びしてまで唇を寄せる千佳。
その少女に背中を抱かれながら、卓造もまた千佳の背中を撫で回していた。

 「ちゅぷ、ちゅぷ……もっと舌を入れて構わないから。その、唾も垂らしてよ。ほ
ら、ディープキスしよ」
斜め45度で重なり合った唇が、千佳に導かれて濃厚なキスを開始した。

 卓造は言われるままに唾液に塗れた舌を伸ばすと、半開きになって待つ千佳の唇の
間をすり抜けていく。
そのまま滑らかな舌肉を捉えると、絡ませながら男の唾液を沁み込ませていく。

 「はんむぅ……千佳ちゃんの唇って柔らかい」
爽やかなミントの香り。それに仄かに甘いイチゴの香りも。
それを卓造は舌全体で感じて、千佳の唾液と共に自分の口内に持ち込んでは、再度そ
の香りを味わっていた。

 たった一度だけ経験したことのある、遥か20数年前の切ない記憶を呼び起こして
いた。
「ちゅぶ、ちゅばっ……ぷはぁ、キスはもういいから、今度は身体をお願い。好きに
弄ってくれていいから」

 そんな青春の思い出は、20才以上年の離れた少女の催促に掻き消されていた。
愛し合う恋人どうしでも赤面しそうなセリフが、夢見心地の卓造を現実へと引き戻し
ていく。

 「いいの、ホントに? こんな所で身体を触っても?」
「していいから。こんな恥ずかしい言葉。女の子に何度も言わせる気?」
「あ、いや……その……」

 千佳は首筋まで肌を赤く染めると、覚悟を示すように自分からエンジ色のスカーフ
を抜き取っていた。
続けて白線がVの字に切れ込む胸元に手を突っ込むと、固定するスナップをプチプチ
と外して、襟首を大きく拡げる。

 「ごくっ、ごくっ……手を入れるよ」
卓造は溢れそうになる唾液を飲み干した。
青春の残り火だったキスの香りも消化させながら、左手をそっと差し入れる。
だらしなく開いた胸元から腕を突っ込んで、その内に潜む下着に触れようとした。

 双乳をガードするごわごわした感触を、まさぐるようにして探した。
「どうして? まさか、千佳ちゃん?!」
制服に圧迫される狭い空間で、卓造の手のひらが固まる。
汗の滲んだ指先が、プリンのように弾む肉の塊に触れたのだ。

 「ふふっ、驚いたって顔をしてるわね。そうよ、ブラはしていないの。ついでに言
っておくけど、下もそうよ。アタシはパンツも穿いていないから。アイツの命令で、
学校へ通う時も家にいる時も、下着なしで生活させられているのよ。レイプされてか
らずっと」

 千佳は早口でそう言うと、卓造の右手を掴み彼女の下半身へと連れていく。
折り目正しいスカートヒダに指先を触れさせると、それに添わせるように千佳の膝小
僧のあたりまで誘った。

 「さ、中に手を入れて。遠慮しないでいいから」

確かに、ここなら多少大胆に振舞っても人目には付きにくいだろう。
歩道から少し奥まった所にいるため、真っ直ぐに前を向いて歩く限りは目に入らない
かもしれない。

 けれども、麗しい女子学生と、中年の営業マン。少しでも目線が横にずれれば、い
ちゃついているのは明白である。
それもかなり大胆なモノを晒す羽目になる。特に千佳にとってはだ。

 「佐伯さん、何を怖気づいているのよ。このくらいやって見せないと、アナタは今
日1日で見切りをつけられるわよ。早くスカートを捲り上げて、アソコを触りな
さいよ。ア、アタシは……平気だからさ」

 黒目を泳がせながらも、急かせる千佳がいじらしかった。
卓造には、昨夜の和也の言葉を否定する気にはなれない。
しかし、どう見ても羞恥に耐えているとしか思えないのに、男を災いから逃れさせよ
うと懸命に振舞う少女に分がある。
今は、そう思えてならなかった。

 「もういいよ、後は俺がするから。千佳ちゃんはそのままじっとして」
卓造は指先にスカートの裾を引っ掛けると、太股の横を滑らせるようにして持ち上げ
ていく。
本音を言えば、自分のコートの前ボタンでも外して、千佳の痴態を包み隠したいとこ
ろだが、遠目に監視がいるとあっては、それもままならない。

 彼女の心意気に報いるためにも、行為は大げさに、それでいて繊細な指使いを。
「んん……風が……冷たい……」
右側だけ大きく捲り上げられたスカートから、真っ白な太股が付け根まで覗いた。
パンティーを身に着けていないむき出しの股間に、真冬の北風が吹きつけてくる。

 「早く触って、温めてよ」
土壇場で怖気づく卓造の右手首を、また千佳が掴んだ。
自分から少し股を開くと、立ったまま自慰をするように亀裂に指を押し当てていく。

 「あ、あぁ……千佳ちゃんのアソコ、あったかい」
「ホント、いい年して情けないんだから。『後は俺がするから』って言ったのは誰
よ。
ほら、左手も止まっているわよ。千佳のおっぱいを揉みなさいよ」

 卓造は年下の少女の言いなりだった。
でもそれが、とても居心地良かった。
(俺はこの少女を? まさか、そんな……?!)

                
       
 この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。