『水面に咲く花火』

                           とっきーさっきー:作

第3話 アナタのために準備したランジェリーなのに


 車内という限られた空間に流れる、肌を滑る布の音。金属金具の音。
シュル……スススゥーッ……
カチャカチャ……シュル……ズズズゥーッ……

 「くぅっ、は、恥ずかしい。イヤッ、見せないで……」
わたしが頭からTシャツを引き抜いたときには、ノブくんは上半身裸になっていた。
震える指がスカートのホックに掛るときには、ノブくんもズボンのベルトを緩めてい
た。

 勇気を出して履いたミニスカートも、ゆっくりとゆっくりとずらしていく。
それに合わせるように、ノブくんもジーンズを下していく。
ほとんど水平に倒された座席シート。
そこに寝かされたわたしは、下着の上から胸と下腹部を2本の腕で隠していた。

 「ふ~ん。ピンクなんだぁ。それも上下お揃いの花の刺繍が付いてる。女の子って、
初体験のときは下着もこだわるって聞いたことがあるけど、佳菜もそうなんだねぇ。
ふふふ、俺のために可愛いブラジャーとパンティーをありがとうね。信雄には見せて
あげないけど……クククク……」

 「ああぁっ……う、ううっ……」
フロントガラスに背中をひっつけた中腰の男が低く笑った。

 この日のために準備してたのに……
パソコンの画面と睨めっこして、一生懸命選んだランジェリーなのに……
ノブくんのために。ノブくんがエッチそうな目で佳菜を見てくれることを想像して……
カチッ……ススーッ……

 だからわたしは、座席シートの下に腕を入れた。
指先にホックを引っかけてパチーンと外していた。
緩むカップを力任せに引っ張った。
肩紐をずらせて座席の下に落とした。

 いやらしく眼尻を下げた男が、ちょっと意外そうな顔をする。
わたしはその表情を勇気に変換して、腰骨に引っ掛かっている最後の一枚に指を添え
た。
シュルシュルシュル……ススー

 「くぅぅっ、んんっ」
お尻をほんの少し持ち上げて、ちっちゃな面積の布を引き下ろしていく。
紐のように丸まったピンク色のモノが、太腿を過ぎてひざ頭を通過して足首に絡まっ
た。
その間、わたしは首を左に向けて黒い水面を見つめていた。

 そして、口の中で呟いていた。
絶対に見せてあげないから。
佳菜の上下お揃いのランジェリーは、ノブくん専用なの。他の誰の目にも晒したくな
いの。
特に川上先輩。あなたにはね。

 「驚いたぁ。佳菜って可愛い顔して以外と度胸あるんだねぇ。それじゃあ、僕も」
「ひぃっ、いやぁっ!」
男はトランクスの前の突っ張った膨らみを見せつける。

 そうしておいて、腰を揺らせながら下着を下していく。
ふざけてる! 絶対この人、頭おかしいよ。
でも……
わたしは目の端でノブくんのアレを見つめていた。

 ピンと斜め上を向いて、ピクピクしているお肉の棒から目を逸らせなくなっていた。
「なーんか、面白くないよねぇ。信雄の奴、俺のより立派なモノを持っていてさぁ。
いっそのこと、このおち○○ん。そこのダッシュボードに入ってるカッターナイフで
切断しちゃおうかなぁ。シュパッって……」 

 男の輪っかになった指が、ノブくんのあそこを締め上げた。
長い肉棒の真ん中に指がめり込んで、顔に憎悪の表情が見え隠れする。
「ダメよっ! そんな……そんなことしたら、ノブ……ううん、死んじゃうぅっ!」

 「ふふっ、冗談だよぉ。佳菜。いくら俺だって、そんな痛いことはごめんだからね
ぇ。それよりも、ほらぁ。佳菜の
アソコをよく見せてよ。足を開いて自分の指でおま○この中まで拡げて……さあ、や
るんだ」
「わかった……春彦……」

 もう従うしかないよね。
だって、さっきの顔。あれって本気っぽく見えたもん。
もう何がなんだか、わからなくなっちゃったけど、ノブくんの身体だけは守ってあげ
ないとね。
足元にしゃがみ込んだノブくんの身体。

 そのエッチな視線を浴びながら、両足を開いていく。
「ああぁっ、見ないで。お願いだから……みないで」
呪文を唱えるように声を上げた。
どうせ見られちゃう。佳菜のアソコ、覗かれちゃう。
でも、わたしの女の子が叫んじゃうの。
叫んだって、男の人を悦ばせるだけなんだけど、やっぱり我慢できないの。

 「ほぉ~ぅ。佳菜ってあどけない顔をしているのに、下の方は大人だったんだねぇ。
お尻の方まで恥ずかしい毛に覆われちゃって……ふふっ、いやらしいよねぇ。それに、
あれぇ。君って、クリトリスが大きいねぇ。いや、見られたたげで感じて勃起してる
のかな? 案外、スケベなんだね」

 「違う。変なこと言わないで。わたし、毛深くもないし、感じてもいない! そん
なのデタラメよっ」
「ふふふっ、だったら証明してみせてよぉ。指で中まで開いて『佳菜のおま○こは全
然感じていません。濡れてもいません』ってね」
「ああ……」

 まるで征服者のように男が見下ろしている。
これじゃ完全にこの男のペース。
わたしは口にした言葉をひどく後悔しながら、指を盛り上がったお肉のサイドにひっ
つけた。 

 「さあ、思いっきり開くんだ!」
「ううぅっ、くぅぅぅっっ……」
ごめんなさい、ノブくん。こんな男に言いなりになる佳菜を許してね。
指先に力を入れた。

 すると、男の喉仏がゴクリと動いた。
恥ずかしいお肉の中まで、いやらしい空気に撫でられちゃった。