『加奈子 悪夢の証書』
 
                 Shyrock:作
第9話


 水は放物線を描き飛散し、まもなくその勢いは衰えていった。
「へえ~、なんとまあ、えらいようけ潮吹きましたなあ、奥さん。畳が
びしょびしょに濡れてしもたがなあ。おい、園木、雑巾や、雑巾!」

 突然雑巾といわれても、他人の家の勝手など分かるはずがない。
園木はキョロキョロと辺りを探したが見当たらない。
布巾や雑巾は台所に行けばだいたいあるはずだ。

 即座にそれが思いつかなかった園木は、どこからか新聞紙を見つけて
きて、飛散した場所に敷いた。

 「奥さん、えらい派手に潮吹きはったなあ。がははははは~~~!以
前から旦那はんに擦ってもろてしょっちゅう吹いてはったんか?」
「そんなことありません!」
「そんなむきにならんでもええのに。がはははははは~~~」

 加奈子は自分が潮を吹く体質であることは以前から知っていた。
ただし、結婚してからと言うもの、夫の指によって潮を吹かされたこと
は一度もなく、かつて女子大生だった頃、当時付き合っていた彼氏に自
分が潮吹きであることを身をもって教えられた経験がある。

 それから10年が経ち、あろうことか突然押し掛けてきた見知らぬ男
性に、肉体の秘密を発見されてしまうことになるとは・・・。

 加奈子はとても口惜しかった。亡き夫にも見せたことのない痴態を、
薄汚れた男たちの前で晒してしまったことが。

 「さあて、ほな余興もこの辺で終わりにしまひょか?」
阿久原はそういって、持参したボストンバッグの中をごそごそと探し始
めた。
そして何やら奇妙なものをバッグから取り出した。

 「奥さん、どれが一番好みでっか?」
阿久原は両手に乗せた数本のバイブレーターを加奈子に見せ、ニヤニヤ
と笑った。

 まるで男根そっくりの黒光りした大型バイブレーター。
幹には部分には沢山の突起がついている。
先端が円盤のようになったマッサージ器のようなバイブレーター。
加奈子にとって未知の物体である。

 シャープペンシルのような形をしたピンク色のバイブレーター。
これも加奈子はどのように使うかを知らない。
さらに最も小さなピンク色のたまご型のもの。

 ピンクローターと言われている代物であり、一度だけ使った経験があ
った。
いずれも女性を責めるための卑猥な性具ばかりである。
加奈子は思わず絶句してしまった。

 阿久原が加奈子の表情を覗き込むようにしてうかがっている。
まるで獲物を追い詰めた野獣のように目をギラギラと光らせて。

 「どれもこれも好みのモノばかりで困るてか?」
「そんなことありません・・・全部嫌です・・・」
「嘘ついたらあきまへんで。全部好みやちゅうて顔に書いた~るがな。
がははははは~。」

 横から園木が口を挟む。
「社長。奥さんは潮を吹いた後だし、入れて欲しくて、入れて欲しくて
たまらないんじゃないですかね?ここは一気に大型バイブで責めません
か?」

 「いやいや、大型バイブは後や。それより、天井から吊るされて、疲
れたはるやろからマッサージしたげるのが一番の心遣いや。ぐふふふ。」
「あ、そうですね!さすが社長!美人には優しいや!」

 阿久原はマッサージ型のバイブレーターを手に取った。
スイッチが入り先端の円盤部分がブルブルと振動し始めた。
バイブレーターが加奈子の股間に近づいた。

 「いやっ・・・や、やめてっ・・・!」
(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)