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『加奈子 悪夢の証書』
Shyrock:作
第2話
阿久原は腰を下ろすと在りし日の信一を賞賛する言葉を並べ立てた後、
急に厳しい表情に変わった。
「ほな、本題に入らせてもらいますわ」
「はい…」
阿久原は加奈子にそう告げると、鞄を開け茶封筒を取り出した。
さらに茶封筒の口を広げその中から書類を取り出した。
「奥さん、この書類、ちょっと見てくれはりますか」
テーブルに置かれた書類には『金銭消費貸借契約書』と太い文字で書か
れていた。
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金銭消費貸借契約書
貸主 アクハラ商事株式会社 (以下、「甲」という。)と借主 六
車信一 (以下、「乙」という。)は、次の通り金銭消費貸借契約を締
結した。
第一条 甲は乙に対し、本日、金20,000,000円を貸付け、乙はこれ
を受領した。
第二条 乙は、甲に対し、前条の借入金20,000,000円を平成19年
2月から平成20年9月まで毎月末日限り金1,000,000円宛分割して、甲方
に持参して支払う。
第三条 利息は年15パーセントとし、毎月末日限り当月分を甲方に
持参して支払う。
第四条 期限後又は期限の利益を失ったときは、以後完済に至るま
で、乙は甲に対し、残元金に対する年18パーセントの割合による遅延損
害金を支払う。
第五条 乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲から
の通知催告がなくても乙は当然に期限の利益を失い、直ちに元利金を支
払う。
(1) 第2条の分割金又は第3条の利息を1回でも期限に支払わない
とき。
(2) 乙が甲に通知なくして住所を変更したとき。
第六条 乙が本契約に違反したときは、甲の要求のあった日から
30日間、乙は乙の配偶者を甲に委任するものとする。
第七条 本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件
の各条項の解釈につき疑義が生じたときは、甲乙誠意をもって協議の上
解決するものとする。
以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、甲乙は署名押印の
うえ、それぞれ1通を保管する。
平成19年1月31日
貸主(甲) 住所 大阪府大阪市○○区○○ ○ー○ー○
氏名 アクハラ商事株式会社 代表取締役 阿久原健之助
借主(乙) 住所 東京都○○区○○町○ー○ー○
氏名 六車信一
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「まさか……」
加奈子の顔が見る見る間に青ざめていった。
(うそ……信一さんが生前二千万円もの大金を借金していたなんて信
じられないわ。もしも借金するなら彼は事前に私に相談する人だわ…。
それに博打もしないし、女性関係もなかったと思うし……事業以外で借
金なんて考えられないわ……)
さらに加奈子は契約書の中に信じがたいような条項を発見した。
「どういうこと……!?」
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