『悪夢の標的』
 
                    Shyrock:作
第18話

 まもなく廊下右側のドレッシングルームに案内され、上野の指示に従って白衣に
着替えた。
イヴとしてはせめて着替えをする間だけでも上野には退室してもらいたかったが、
上野は図々しくも監視目的と称してイヴが着替えをするのをずっと眺めていた。

 脱衣というものは女性にとってたとえ好きな男の前であっても、正視されるのは
好まないものだ。
それを顔を見ただけでも虫唾が走る上野に見つめられ、まるで針のむしろに座る心
地であった。

 イヴが白衣に着替え終わった頃、上野は彼女を不安に陥れる言葉をささやいた。
「早乙女君、悪いがしばらくの間、目隠しをさせてもらうよ。それと両手を縛らせ
てもらうからね」
「え・・・!?」

 瞬間驚きの声を発したイヴであったが、上野に逆らおうとはしなかった。
(今日1日我慢すればようやく彼らから解放される・・・だから変に逆らって上野
の逆鱗に触れるようなことは避けなければ)

 イヴはそう考えた。
仮にここで逆らったとしても、この場から逃げることは不可能だろう。
まもなくイヴは両手を後手に縛られ、目には黒い布を巻きつけられた。
上野に手を引かれながらイヴは重い足取りで歩いた。

 それから長い廊下を歩き何歩ぐらい進んだろうか。
上野が立ち止まるのに合わせイヴは足を止めた。

(ギギギィ・・・)
ドア開閉時の軋んだ音が聞こえてきた。
まもなくイヴの耳に男の声が飛び込んできた。
それは阿久夢の声であった。

 「ようこそ!早乙女君。よく来てくれた。さあ、皆さんがお待ちかねだよ。直ぐ
にベッドに上がりなさい」
「み、皆さんって・・・!?ええっ!!会長以外の人もいるんですか!?嫌です!
それは絶対に嫌です!!」

 「いまさら何を駄々をこねているんだね。上野部長、早く早乙女君をベッドに寝
かせなさい」「あ、はい」
上野は強引に嫌がるイヴを引き摺った。
「いやぁ~~~!!沢山の人がいる前でなんて!!それは堪忍してください~~~
!!」

 「上野部長、何をしてるんだね。皆さんがお待ちだよ。早くしなさい」
阿久夢に催促された上野はイヴに厳しい口調で迫った。
「つべこべ言ってると破廉恥な罰を与えるよ。いいのかね?さあ、早く横になりな
さい」

 大勢の男性の前でベッドに寝かされおそらく陵辱される・・・それ以上恥ずかし
いことなど考えられないのに、それでも上野の言葉には得もいわれる威圧感が漂い
結局従ってしまう。

 上野はイヴの細い腰に手をやりむりやりベッドに誘い込んだ。
イヴは言われるままにベッドに横になった。
目隠しをされていて何も見えないから不安は募るばかりだ。
周囲にはどんな人たちがいるのだろう。何人ぐらいいるのだろう。

 「部長、教えてください。周囲にいる人たちは誰なんですか?」
「それは私が教えてやるよ」
突然阿久夢が言葉を発した。

 「やはり気になるかね?気になって当然だな。この人たちは我が財団の出資者の
皆さんなんだよ。まあ株式会社で言うところの株主ってみたいなものだね・・・ふ
っふっふ、中にはおそらく君も知ってるであろう有名な議員さんもいるんだよ。ま
あ名前は伏せておくけどね。今日は“美人看護師のまな板ショー”と言う触れ込み
で特別招待したわけじゃよ。ぜひとも美人看護師の悶え狂う姿を見たいとおっしゃ
ってねえ。はっはっはっはっは~!」

 周囲の男たちは今や遅しと首を長くさせてイヴのご開帳を待ち焦がれている。
中には露骨に舌なめずりまでさせている初老の男もいた。