『悪夢の標的』
 
                    Shyrock:作
 第11話

 イヴは腹部を押えて苦悶の表情を浮かべている。
「お、お願いです・・・トイレに行かせてください・・・」
上野はにやにや薄笑いを浮かべるばかりで便所の場所を指示しようともしない。

 「ひぃ~!もうダメです!も、もう漏れそうです!お願いっ!」
イヴは額に脂汗を浮かべて上野に懇願した。
上野はようやく重い口を開いた。

 「便所は廊下をずっと真っ直ぐに行って一番右奥にあるよ。そんな所まで歩ける
かな?途中で漏らしてしまうんじゃないのかね?」
「ううっ、うううっ・・・」

 「廊下で漏らしたくなければこの便器で用を済ますことだね。ははは、ただし会
長や私に排泄の現場をしっかりと見られてしまうがね」
「それは嫌です!」
「じゃあ、廊下へ出るんだね」

 上野はイヴを突き放つようにそう告げて、便器を取り除こうとした。
「ま、待って!」
イヴの便意はすでに限界に達していた。

 本来ならば男たちの目前で排泄するような醜態を晒すことなど到底考えられない。
しかし今はそんなことを言っている余裕はなかった。
「ああダメです・・・出ます、出ます・・・ああ、お願いですっ・・・ここでさせ
て・・・ああ、せめて、せめてあっちを向いててください!」

 イヴは今にも泣き出しそうな声で哀願した。
「よし、分かった。よそを向いててあげるから直ぐにしなさい」
今にも漏れそうでイヴの身体がぶるぶると震えている。


 しばらくすると恥辱の音とともにプラスチック製の便器に黄金水が噴出した。
次の瞬間、上野がシャッターを切り始めた。
(カシャッ!カシャッ!)
「や、やめてください!撮らないで!」
イヴはすがるように訴えかけたが、上野はそれを黙殺しデジカメを構え撮影を続け
た。

 まもなく排泄が終了した。
「すっきりしたかね?ははは、それじゃ私がお尻を拭いてあげよう」
「け、結構です・・・自分で、自分で拭かせてください」
「そんなに遠慮しなくてもいいじゃないか」

 上野はイヴの臀部にガーゼを宛がいきれいに拭きとった。
イヴは恥ずかしさのあまり消え入りたい心境であった。
「お尻を洗いたいんですけど・・・」
イヴはぽつりとつぶやいた。

 「でもここにはウォシュレットはないしねえ。あ、そうそう、奥にシャワー室が
あるからそこでシャワーを使いなさい」
「は、はい・・・」
イヴは腕の拘束を解かれ、跡形のついた手首をさすりながらシャワー室に向かった。

 その後姿を眺めていた阿久夢が上野にささやいた。
「ふふふ、部長、私もいっしょに入るよ。君は来なくていいからね」
「あ、はい、分かりました・・・」
「私もすでに68才。あんなに若くて美しい娘といっしょにシャワーを浴びれるこ
となどそうそうないだろうからね。ふふふ・・・悪いが君は次の準備をしておいて
くれ」

 上野としてもできるだけ会長である阿久夢の機嫌を取っておく方が、今後の自分
の立場がより磐石になるということを十分に理解していたが、その彼としても日頃
から目をつけていたイヴを会長に独占されることはまるで“鳶に油揚げをさらわれ
る”ようなものあり、決して快くは思っていなかった。

 阿久夢は先にイヴの入っているシャワー室の扉を開ける。
病院のシャワー室だから内側から鍵は掛からない。
「きゃぁ~~~~~!!」
ちょうどシャワーを浴び始めたばかりのイヴは、突然阿久夢が入ってきたので思わ
ず驚きの声をあげた。

 「出て行ってください!」
「まあ、そうつれないことを言わなくてもいいじゃないか。ぐふふ・・・」
阿久夢は一糸まとわぬ姿でシャワーを浴びるイヴを舐めまわすように見つめた。

 「か、会長、お願いです!シャワーだけはひとりで浴びさせてください。お願い
します!」
「そう邪険にしなくても。すでに身体の隅々まで覗かれた後なんだし。今さら何を
言ってるんだね」

 「ほ、本当に嫌なんです・・・シャワーの時だけは・・・」
「まあ、そう言わずに、どれ、シャワーを貸してごらん」
阿久夢は有無を言わさずイヴの持っていたシャワーを強引に奪い取った。