「濡れた下着」

                           沼 隆:作

第2回

(6)

夜更け、義弘は会社の帰りに立ち寄って買ってきたものをベッドの脇のテーブルに並べた。

志帆には、かつて見知ったものではあった。

しかし、義弘は、志帆の忌まわしい過去を知らない。

義弘が一つ一つ確かめるように包装をとく。テーブルに並べたものは、アダルトショップで買い

求めた性具であった。

歓楽街の一角にその店はある。

会社の同僚たちと、飲み会の途中で、冷やかし半分に立ち寄ったことがあった。

「おまえのような新婚さんには、要らないだろうが…おれのとしになると、エッチもマンネリで

ね…」黒田係長に言われて、義弘はそんなものかな…と思ったくらいであった。

「お、そっか、榊原、新婚だもんな…あんなかわいい奥さんとエッチするのに、こんなもん、い

らんよな…あはは」

「榊原、毎晩、かわいがっているんだろ…え?」

「え? 毎晩ですかあ?」

「馬鹿か、猪熊、新婚なら、ベッドに入っただけで、びんびんになるに決まってるでしょうが…」

「あ…! ははは、そうですね…そうですよね…おれ、馬鹿でした…いひひ」

「そういやあ、榊原さん、近頃、お疲れ気味のようですからね…会社退けるの、待ち遠しいでし

ょうね」

SMプレイにつかう拘束具を目にしたとき、心のずっと奥深いところで、何かがうごめくのを義

弘は感じていた。

AVで見たSMプレイを、いつか、かわいい愛妻とやってみよう…ビデオの中の女が見せた痴態

が、愛くるしい志帆の裸体と重なって、店の中で義弘は勃起していた。

あわてて、同僚たちに気づかれないように気持ちを別の方向に向けたのである。

会社が退けるのが待ち遠しい…?確かにそうだった。

最近までは…そのはずだった。

出張が多く、ベッドをともにする夜が少ないだけに、なおさらそのはずであった。

しかし、義弘の期待は外れた。志帆は、義弘の愛撫を喜んでいるようには思えなかった。

義弘は、志帆と見合い結婚をした。互いに気に入って結婚したつもりだった。

結婚して4ヶ月にもなろうというのに、志帆は夫婦の営みを楽しまない。

義弘の中に、志帆に対する不信が芽生えていた。

義弘が買い求めてきたのは、手首や足首を縛り上げるベルトと、ボールをくわえさせて猿轡の役

目をさせるものと、そしてごつごつと節くれだった、バイブレーターであった。

志帆は、怖がったわけではなかった。

どの道具も、梶原沙智の命令で、不良グループが自分のからだに使った道具だったから。

涙が浮かんだ。

義弘が、こんな道具を買ってくる気持ちになるなんて…「お願い…許して…いやぁ…こんなこと

…ね…やめて…お願い」タツヒロに気づかれないように、声を抑えて懇願した。

義弘は、耳を貸そうとしなかった。

一言も発せずに志帆を裸にした。

目は、血走って、頬も紅潮していた。

寝室に移る前に、リビングであおったウイスキーのせいもあるだろう。

義弘には、おぞましい行為をするには、酒の助けが必要だったのだ。

「んっ…痛いっ…」

「ああ、じきに、じきによくなるさ…」AVに出てくる女たちは、はじめは嫌がり、痛がっても、

そのうち喜びに身もだえするじゃないか…そうだ…志帆を、調教してやる…こいつを、おれの奴

隷にしてやるんだ…毎晩、こいつを、犯してやる…狂気が義弘を支配していた。

鬼の形相をしていた。

鏡に映った自分のかおを見たら、義弘自身仰天したに違いない。

陰茎が勃起して、先端にしずくが滲み出していた。

「ああ、おねがい…やめてぇ…ね…義弘さん…おねがい…」志帆は後ろ手に手首を縛られると、

そのまま四つんばいにされた。それから立て膝にして尻を持ち上げられ、恥ずかしい、おぞまし

い格好をさせられた。

性器とそして肛門が義弘の眼前に剥き出しにされている。

「ああ…いやぁ…」義弘は、両手の指で、陰唇を左右に開いた。

ピンク色をした肉の裂け目がぱっくりと口を開いた。

中心部分にある肉壷の入り口に両の親指を挿しいれ、広げる。

そこは、ぽっかりと口を開き、からだの奥へと通じる肉襞の通路を、義弘の目に曝したのである。

義弘は、舌なめずりをした。穴は、義弘の指先でぐいぐい広がり、不恰好な肉棒のおもちゃを受

け入れそうであった。

義弘は、アダルトシュップの陳列品の中から、一番太いものを買い求めていた。

「お客さん、極太でよろしいんですね」

「あ、ああ…」義弘が握っても、指先が届かないほど太いものだった。

(ぶち込んでやる…!)見れば見るほどまがまがしい形をした、シリコン製のそれを、義弘は、

志帆の肉壷の入り口にあてがった。

手首をひねって、亀頭にあたる部分を志帆の中に挿し込む。

「あはあっ!」志帆が、押し殺した悲鳴をあげる。

ちゅぷ「んっ…んぐっ…」極太のバイブレーターが、通路をぐいぐいと押し広げながら、志帆の

肉の奥へと沈んでいく。

ちゅぷ、ちゅぷ「んぐぅ…いやあぁ…いやぁああ…」義弘は、志帆に猿轡をかませた。

声を出せなくなった志帆の喉から、ただ、うぐ、うぐという、音が聞こえるばかりである。

義弘は、バイブレーターの根元を持って、ぐいっ、とねじった。

 

*****

杉沢琢磨は、クロゼットを改造した暗室で、写真を現像していた。

やがて、その中から選んで数十枚の裸の女の写真が出来上がった。

どの写真の被写体も鮮明で、まるで女のあえぎ声が聞こえてきそうなほどの出来栄えであった。

クライマックスに達して、女が腰を浮かせながら性器をいじっている写真など、迫真のものであ

った。

明日の朝、ジョギングのとちゅう寄り道をして、この人の名前を確かめてこよう…琢磨は、写真

の女に見とれている。

かわいらしい人だ…肉体とアンバランスなほどあどけない顔つきをしている。

寝る前にもう一度オナニーをすることになるな…もっと近くで撮りたい…至近距離から撮りたい

…性器をどアップにして撮りたい…撮影旅行をサボろうか…

(7)

「その傷、どうしたの?」タツヒロに尋ねられて、志帆は戸惑った。

朝食の後片付けをしているときだった。

「あいつ、何かしたんだね…」

「ヒロくん…」志帆の両手首に、腕輪のように、うっすらと赤いあざができていた。

「あいつ、サドなんだね・・」

「…」

「くそっ…」

「ヒロくん…」

「こんなひどいやつだなんて、思わなかったよ…兄貴のやつ…」

「ヒロくん、だめ…変なこと、考えないで…」

「何で、あんなやつと、結婚したんだよ!」

「ヒロくん…義弘さんが悪いんじゃないんだ」

「なに言ってるんだよ」

「義弘さん、ヒロくんみたいに優しいんだよ」

「そんなはず、ないだろ! 志帆にこんなひどいことしてるんだよ!」

「あのね、ヒロくん…」

「なんで、あいつのこと、かばうんだよ!」タツヒロは、手にした布巾をテーブルにたたきつけ

ると、自室に引っ込んだ。

フローリングの床に仰向けに寝ると、天井を見つめながら、苦悶した。

SMビデオを見たことがある。

クラスメートのムネオの家で、そいつの親父が書棚の後ろに隠してあるのを見せてくれたのだっ

た。

ムネオは、これは本格的なやつで、SMプレイみたいな子供だましのやつじゃないんだ、といっ

た。

ビデオの中で、顔面を黒い頭巾で隠した半裸の男が、全裸の女を赤い紐で縛り上げた。

天井からつるすと、鞭で打ちはじめた。

シュッ、という、鞭が空を切る音に続いて、ぴしっ、という鋭い音がして、女が悲鳴をあげる。

白い肌に、みるみる赤いみみずばれが浮き上がる。

やめて! という女の懇願を無視して、男は鞭を振るいつづけた。

女の肌には無数の赤い筋が刻まれていく。

皮膚が裂けて、血がにじんでいる個所がいくつもあった。

男は、股間を隆起させていた。

女がぐったりすると、男は鞭を置いて、ろうそくに火をつけた。

男は、女のからだに刻まれた傷口に、熱く溶けた蝋をたらす。

傷の痛みに、熱の痛みが加わって、女は泣き叫んだ。

顔面をほとんど隠した男の口元が、ほくそえむ。

女の悲鳴が、うれしくてたまらないという表情だった。

男が黒い下着を脱ぐと、グロテスクな凹凸のある陰茎が現れた。

陰茎のあちこちにいびつなふくらみがあった。

ムネオは、真珠をいくつも埋め込んであるんだ、と説明した。

女は、泣き叫び、性器の挿入を激しく拒み、からだをゆすって逃れようとした。

ぶちゅぶちゅという音を立てながら、まがまがしい陰茎が女の裂け目に沈んでいった。

男は、情け容赦なく女を陵辱した。

女は、絶叫した。義弘にはこれが演技だとは、思えなかった。

兄貴、あいつみたいに、志帆を…ビデオの女と志帆が重なった。

タツヒロは、怒りが込み上げてきた。

ビデオの女の泣き叫ぶ声がタツヒロの耳によみがえる。

志帆、おれに聞こえないように、必死でこらえてたんだ…くそっ…! 義弘のやつ…!タツヒロ

は、ガバと起き上がると、志帆のいる部屋にはいっていった。

そこは、夫婦の寝室である。

遠慮して足を踏み入れたことがなかった部屋である。

志帆は、ベッドメイキングの最中だった。

「ヒロくん…」

「おれ、志帆のこと、守るよ…」

「え…?」

「兄貴から…こんなひどいことするやつから…志帆を守る!」

「ヒロくん…」タツヒロは、志帆を抱きしめていた。

タツヒロは志帆に口づけをし、そのままベッドに倒れこんだ。

「志帆…おれ…志帆のこと…」

「だめ…ヒロくん…言っちゃ、だめ…」タツヒロは志帆に覆い被さり、抱きしめ、唇を吸った。

志帆の乳房が、タツヒロの胸に触れた。

ふたりの火照ったからだの熱が、互いに伝わった。

志帆は、タツヒロの自分に対する愛情をひしひしと感じていた。

全裸になり、二つの肉体が絡まるのは、自然の成り行きであった。

「志帆、おれ…志帆のこと…」

「黙って…」タツヒロは、さっき口にしかけたことを言ってしまいたかった。

自分の胸のうちを志帆にはっきり伝えたかった。

志帆は、タツヒロの頭を両手ではさむようにして、自分の顔に近づけた。

そして、タツヒロの言葉をさえぎるように激しいキスをした。

膝を立てて、足をMの字に開いた志帆に分け入ると、タツヒロは先端にしずくを浮かべて屹立し

ている若々しい肉棒を、志帆の中に挿しいれた。

*****

杉沢琢磨は、シャッターを切りつづけていた。

写真部の研修旅行に出発する準備をしているところだった。

出かける前に、もう一度のぞいてみようか…ファインダの中では、自分と同じ年頃の女が、自分

と同じ年頃の男と性行為をはじめたところだった。

ふたりがもどかしそうに着衣を脱ぎ、全裸になって絡み合うところから、ずっと撮りつづけてい

た。

けさ早く、ジョギングのコースを変えて、寄り道をして、あの女の苗字が、榊原ということを確

かめていた。

マンションの居室の番号も。

相手の男は、誰だろう…あいつがダンナなんてことは、無いだろうけど……不倫かな…?ダンナ

が出かけた後、あいつを呼び寄せて…ひでえ女…琢磨は、写真部の部長に電話をして、風邪をひ

いて熱が下がらないから、撮影旅行は休むと伝えた。

一日遅れでもいいから、来いよ、という部長の誘いに生返事をして、電話を切った。

風景写真撮ってる場合じゃねえよ… 

*****

タツヒロがやがて射精を迎えようとしたとき、枕もとの電話が鳴り出した。

ふたりはギョッとして動きを止める。

つながったまま、志帆は受話器をとった。

「榊原ですが…あ、義弘さん…」義弘からだとわかると、タツヒロは腰を動かし始めていた。

義弘に対する悪意が、タツヒロの心の底にあったのかもしれない。

志帆は、やめて、という表情をして見せた。

タツヒロは、腰をぐぐぐっ、とつきだして、子宮を突き上げた。

志帆のからだがのけぞり、あえぎ声を必死でこらえる。

おねがい、やめて…志帆が、声に出さずに、くちびるの動きでタツヒロに伝えようとするが、タ

ツヒロはやめなかった。

「ん…んっ…はい、…んっ…わかりました…ん…」志帆は、頬を紅潮させてからだをわななかせ

ながら、義弘の電話に応対した。

受話器を置くと、志帆の口から堰を切ったように喜悦の喘ぎ声が上がった。

志帆も、激しく興奮していた。

*****

杉沢琢磨は、ふたりが寝室から出て行くまでシャッターをきりつづけた。

別のアングルから撮ってみたい…どの写真も構図が同じで、つまらない……あのふたり、どんな

関係なんだろう?電話の後のふたりの激しい交接を思い出しながら、琢磨は陰茎をしごきつづけ

た。

男も女も、腰を激しく動かした。

まるで、自分の性器を互いに打ち付けるようにして交わっていた。

格闘技をみているような気さえした。こたえは、その日の午後、わかった。

琢磨は、フィルムを買いにショッピングプラザに出かけた。

思いもよらぬ被写体に、買い置きしてあったフィルムを使い果たしたのだ。

そこで、スーパーの食料品売り場に入っていく志帆とタツヒロを見かけたのである。

ふたりの後をつける。

ふたりは夫婦のように仲むつまじく買い物をしていた。

食料品の上に、生理用品のパックを置いたとき、それがカートから落ちないように男が手を添え

た。

女の名が「しほ」で、男が「ひろくん」というのがわかった。

琢磨は、スーパーを出たふたりの後を追った。

男は、女の腰に手を回していた。

時折、指先に力が入り、女のからだの感触を確かめているようだった。

尻をなでたりもした。女は、恥ずかしがっているのか、からだを少しよじるのだった。

けれども、やめさせようというそぶりは無かった。

楽しんでいるように見えた。

水着を売っているショップの前で立ち止まると、時間をかけて相手に水着を選んでやるのだった。

ショッピングプラザの出口のところで、ふたりは子連れの中年女にであった。

顔見知りなのだろう、挨拶を交わしているようだった。

琢磨はそ知らぬ顔で近づいていって、耳を傾けた。同じマンションの住人のようだった。

「主人の弟です」琢磨は、愕然とした。

「こ、こいつら…」

(8)

タノシーネアサカラ エッチウラヤマシーヨタノシマセテ モラッテマスアンタタチノ イケナ

イ エッチ封筒は、表に、「サカキバラ シホ サマ」とだけ書いてあった。

いつ郵便受けに投げ込まれたのか、わからなかった。

タツヒロと出かけた買い物から帰って、夕刊を取りに郵便受けをあけるまでのわずかな時間だっ

た。

寝室から外を見た。

遠くに高層マンションが見える。

覗くとしたら、あそこからだ。

でも、何十戸も入ったあの建物のどこから見られているのか、見当もつかない。

破って捨てようとした手を止めて、志帆はその手紙を下着がしまいこんである引出しに隠した。

タツヒロには、話さないでおこう、と思った。

手紙の送り主が何を考えているのか、まだわからない。

午前中、義弘からかかってきた電話は、明日から1週間出張する、というものだった。

志帆は、タツヒロを連れて**海水浴場に出かけることにした。

ショッピングプラザで水着を買い求めたのは、そのためである。

翌朝、義弘を送り出したあと、志帆とタツヒロは、**海岸に出かける。

JRと私鉄を乗り継いで、片道2時間ほどの小旅行である。

JRから私鉄に乗り換えると、海水浴に行く家族づれで混んでいて、たったまま行くことになっ

た。

志帆のからだを支えることを口実に、タツヒロは、志帆を抱きしめて、からだを密着させる。

タツヒロは志帆の乳房を、志帆はタツヒロの男根を、薄い服地越しに感じている。

電車が揺れるたびに擦れあって、タツヒロは勃起が始まっている。

志帆も、刺激を受けた乳首が、少しずつ頭を出し始めている。

タツヒロの指先は、志帆の尻をまさぐっている。

(ヒロくん・・痴漢みたい…ふふ)志帆の体がタツヒロに寄りかかる。

気持ちがいいのか、頬をタツヒロの胸に押し付けて、熱い吐息がタツヒロの胸にかかる。

「きもち、いい?」志帆の耳元でささやくと、志帆はこくりと小さくうなずいた。

タツヒロは、片方の腕を密着したふたりのからだの隙間に割り込ませた。

ミニのワンピースのすそをわずかに持ち上げるだけで、パンティの上から志帆の恥丘に触れるこ

とができた。

小さな三角ビキニの上の縁から指を滑り込ませる。

志帆の体がぴくりとする。指先は、ヘアを撫で摩りながら淫裂に分け入る。

クリトリスを探り当て、その下に続く肉の裂け目がたっぷりと潤っていることがわかる。

志帆は感じやすい体質なのだろうか…くちゅくちゅという、かすかな音が、聞こえてくるような

気がする…電車の走行音にかき消されて、聞こえるはずもないのだが。

志帆は、タツヒロにしっかりとしがみついて、タツヒロの指先が奏でる肉の喜びに浸っている。

周囲の誰も、気がついていないようだ。

混雑している海水浴場行きの車内で、恋人同士が寄り添っていたとして、目を剥く人はいないだ

ろう。

しかしひとりだけ、ふたりのあとをずっと追っている人物がいた。

杉沢琢磨である。

朝、望遠レンズを装備したカメラでふたりの動きを監察しつづけていた琢磨は、水着やタオルを

バッグに詰め込む志帆を見て、海水浴にいくのだ、と直感し、撮影用機材をすばやく整えると、

ふたりのマンションの入り口付近で待ち、それからずっとあとをつけてきたのである。

(なんて、いやらしいやつらだ…この、変態姉弟…!)むらむらとした感情を怒りにすり替え、

琢磨はこいつらをどんな目に合わせてやろうかと、ずっと考えている。

きのう、ワープロうちの手紙を郵便受けに放り込んだあとで、しまった、と後悔した。

取り戻そうと、郵便受けに戻ったとき、志帆が封筒の表書きを見つめているところだった。

一足遅かった…見られていることをこちらから教えてしまった…

2度と見られなくなるだろう…

窓を閉めてエッチするだろう…くそっ! 

早まったこと、したなあ…写真をばら撒いてやろうか…

そうなると、自分だけのひそかな楽しみが終わってしまう…

ふたりが、いままでどおり、窓を開け放ってエッチするようにしむけるにはどうしたらいいか…

電車が**海岸に到着し、大部分の乗客が下車する。琢磨も、べったりと寄り添うふたりからわ

ずかに遅れて下車した。

「すごいよ、志帆…」

「泳ぎ、得意なんだ…」時間貸しの大きな浮き輪につかまって、少し深いところまで出た。

タツヒロは、志帆のスピードに及ばなかった。

泳いだり、からだを絡ませてじゃれあったりしてすごした。

「ヒロくん、また、大きくなってるよ…」

「ふふふ」志帆の指が、タツヒロの勃起をパンツの上からしごいた。

胸から下を海中に隠して、周囲の視線も気にせず、口づけを交わし、互いの性器をまさぐる。

タツヒロの指が、水着の股布を片方に寄せて、淫裂に滑り込む。

ぬるりとした感触は、すぐに海水に洗い流されて、あのぬめりが消えてしまう。

志帆の指が、タツヒロの亀頭をパンツの上からこする。

タツヒロの指が入り口から肉の通路に侵入すると、壺にたまっていたぬめりが流れ出してくるの

だが、海水が流れ込んで、中のぬめりも洗い流される。

「ぬるぬる、なくなったよ」

「ん…」タツヒロは、ビキニのボトムを脱がせ、乳房の谷間に挟み込んだ。

「入れたいな」

「うん…いいよ…」杉沢琢磨は、砂浜からふたりの様子をカメラに収めつづけた。

(あいつら…)志帆が、くっ、と頭をのけぞらせる。

(やってやがる…)

そうだ…写真を、だんなに送りつけてやる、と脅そう…言うことを聞かないと、送りつけてやる

って…

寝室で行為中の写真と、海中でぴったりと寄り添い、志帆が快感に頭をのけぞらせている写真を

添えて、琢磨は郵便受けに手紙を入れた。

コノシャシン ダンナ ニ ミセタク ナカッタラオレ ノ イウトオリニ シロアシタ アサ

 エッチ シロアシ ヲ ベランダ ニ ムケロオレ ニ ヨク ミエル ヨウニ スルンダイ

ウトオリ ニ シナイト コノ シャシンシホ ノ ダンナ ニ オクル

(9)

午前10時を過ぎたころ、志帆はベッドに横たわる。

寝室の窓は、開け放たれている。

脅迫状の求めに応じて、道路と空き地を隔てて建つマンションのどこかの部屋に向けて、脚を開

いた。

タツヒロは、予備校の講習が始まり、9時に家を出た。

こちらを向いたカメラに向かって、オナニーをして見せるしかなかった。

脅しに屈したくなかったけれど、どうしたらいいのか、考えがまとまらない。

けさはこうして、恥ずかしい場所を曝して見せることで、切り抜けようと思ったのである。

パンティは脱いでおいた。

ワンピースのすそをまくるだけで、性器が剥き出しになる。

覗き魔は、満足するかな…ヒロくんとエッチしているところを見たがってる…左手で淫裂を広げ、

右の人差し指を使って、クリトリスを刺激し始める。

そこは、潤っていた。

明るい部屋の中で、目を閉じて、志帆はゆっくりと指を動かす。

見られている…ここを、だれかに…タツヒロと性交している写真は、鮮明なものだった。

いま、シャッターを押しながら、ここの写真をとっているんだ…シャッターを切る音が聞こえる

ような気がして、志帆は思わず脚を閉じてしまう。

どうしよう…どうしたらいい…? 

ヒロくん…ヒロくんに話すんだった…下着が入った引出しが眼に入る。

脅迫状が、下着の下に隠してある。

覗き魔の要求に応じなかったら、どうなるんだろう…

志帆は、再び脚を開き、誰ともわからない人物の視線に向けて、オナニーをはじめた。

なんにも、考えたくない…志帆は、目を閉じて、オナニーに没頭した。

両膝を立ててM字に脚を開き、右手の人差し指と中指を揃えて、肉の鞘に挿入した。

ん…んっ…鼻孔から、吐息が漏れる。

自分の秘穴のどこが感じるか、志帆はよく知っている。

入り口から少し入ったところ、コリコリした場所。

その場所を指先で押す。

鞘の奥から、蜜が流れ出してくる。

潤いが増して、志帆の快感が高まってゆく。

2本の指を、まるで男根がそうするように、鞘の中をゆっくりと前後に動かす。

くちゅ、くちゅ…指とぬめった粘膜の擦れる音がする。

左手の指先で、クリトリスに触れると、包皮が剥けていて、肉芽が膨れ上がっている。

濡らした指先で、そこをこすると、強い快感が志帆の全身を駆け抜ける。

志帆の内部に沈み込んだ右手の指はぐっしょりと濡れて、それが掻きだす蜜が、溢れ出して肛門

のほうへ流れていく。

志帆は、快感に、腰を捩り、突きあげた。

見られている…そのことが、大きな官能をもたらしていることに、志帆は気がついていた。

見て…見なさいよお!杉沢琢磨は、志帆がタツヒロとセックスしているところを撮れないのが腹

立たしかった。

しかし、志帆がみだらに腰を振りたてながらオナニーする姿に、激しく勃起し、シャッターを押

しながら、2度も射精した。

琢磨の部屋は、熱気と精液の青臭い匂いで蒸れかえっていた。

「っせえなあ!」琢磨は、手にした食器を投げ出したい衝動に駆られる。

母親と向かい合って昼食を取っているときに、母親が琢磨をしかる。

写真部の研修に行かないなら、予備校の夏期講習に行きなさい、というのだ。

「お金も払い込んであるのに…あんたが、研修にいくから、夏講、休んでもいいっていったのよ」

食べたらすぐに出かけなさい、という母親の言葉に琢磨はしぶしぶ従った。

琢磨が、最後の授業を受けて通路に出たとき、3年生の教室から出てきたタツヒロを目撃した。

「あ、あいつ、ここに来てたのか…」教室の入り口を振り返ったタツヒロの視線の先に、かわい

らしい女生徒がいた。

女の子が、タツヒロに微笑んでいる。

「あの野郎…!」琢磨は、ふたりのあとを付けた。女は、ナナという名前で、タツヒロと高校が

同じだということがわかってきた。

「榊原くん、どっか、行かない?」

「いいよ、でも、俺、この辺のこと、っていうか、東京、初めてだもんなあ…」

「じゃあ、奈々が案内してあげる」麻丘奈々は、タツヒロの同級生で、夏期講習を受けに上京し

ているのだ。

奈々は、叔母の家に泊まっている。

同級生として言葉を交わすことはあったが、特に親しいというわけではなかった。

けれど、夏期講習を受けている大勢の生徒たちの中で、たった一人の知り合いだった。

互いの気持ちが急速に接近したのは自然の成り行きである。

「なんか、知ったひとがいなくて、心細かったんだあ」

「おれも」

「榊原くんがいるなんて…びっくりした! なんか、ほっとしたよ」

「おばさんのうちって、どこ?」奈々の説明を聞いて、タツヒロの志望校がある私鉄沿線だとわ

かった。

「ふうん、あそこ、受けるんだ… ね、今度の日曜日、一緒に行ってみない?」

杉沢琢磨は、ふたりのあとを少し離れて追っている。

信号が赤に変わってふたりが立ち止まると、そばのコンビニに駆け込んで、使い捨てカメラを買

った。

ふたりは明智大学のキャンパスに入っていく。

「奈々、ここに来たいんだあ」

「ふうん」

「街の真中にあるのに、なんか静かで…」

「そうだね」

「教室に入ってみようよ」

「いいのかな」

「まだ授業やってる部屋もあるよ」

「ほんとだ…」高校の教室と違って、だだっ広い教室が並んでいる。

誰もいないがらんとした部屋に入ると、ひんやりとして、静まり返っている。

ふたりは、一番後ろの席に並んで座る。

一人一人に机と椅子が与えられる高校と違って、ここは、すぐ隣にからだを接して座れる場所だ

った。

ふたりは見つめあい、そして、唇を重ねた。

奈々の胸のふくらみが、タツヒロのからだに触れる。

静まり返った教室で、相手の鼓動が聞こえる気がする。

タツヒロの舌を、奈々は受け入れた。

右腕で奈々を抱き寄せて、タツヒロは舌を絡ませる。

左手が、奈々の太ももに触れると、腕の中の柔らかいからだがぴくりと震えた。

ふたりの熱い抱擁を、教室の入り口から覗き込みながら、杉沢琢磨はカメラに収める。

シャッターを押す音が、静けさの中で耳に障るのだが、教室の後ろにいるふたりには届いていな

いようだった。

ふたりは、愛撫に熱中していた。タツヒロの左手は、太ももをゆっくりと這い上がり、スカート

の中に進入していた。

奈々は一度だけ抗うそぶりを見せたが、タツヒロと唇を重ねたまま、腕をタツヒロに背中に回す。

タツヒロの指が、内ももに分け入り、パンティに触れたとき、奈々はかすかに「だめぇ…」とつぶ

やいたが、さらに進入してくるタツヒロの指を払いのけようとしなかった。

パンティは、湿っていた。

汗ではなさそうだった。

パンティの脇から進入したタツヒロの指は、濡れた淫裂を探り当て、掻き分けて、ぬるぬるした

肉の穴の中に、深深と挿し込まれた。

「うううっ…」奈々はタツヒロにしがみつき、熱い息をタツヒロの胸に吹きかける。

タツヒロは、奈々のパンティを脱がせた。

(10)

大学の教室で絡み合うタツヒロと奈々の写真が出来上がった。

街角のコンビニで買った、使い捨てカメラだ。

教室の後ろの席でからだを密着しているふたりの姿は、鮮明でなかった。

何よりも、下半身が机に隠れて写っていないのである。

密着して、からだをまさぐっているのが想像できる程度の写真であった。

犀星高校写真部の杉沢琢磨の腕でも、どうしようもない。

タツヒロが奈々のパンティを脱がせたとき、授業の終了を知らせるチャイムがなり、建物内に学生

たちのざわめきが広がっていって、ふたりは愛撫をやめたのだった。

…けっ…ざまを見ろ…琢磨はつぶやいていた。

パンティをつける暇がなく、タツヒロの手で乱された衣服を大急ぎで整える奈々の姿を撮影しな

がら、琢磨は、父親のデジタルビデオカメラを持ち出すことに決めたのだった。

*****

志帆は、シャワーを浴びていた。

からだが火照っていた。

暑い日ざしが残る夕方の買い物から帰って、汗をかいていた。

しかし、それだけではなかった。

覗き魔に向かってオナニーをして見せた後、引出しの下着の下に隠してある盗撮写真を見たのであ

る。

それは、自分とタツヒロが全裸になって絡まりあう猥褻な写真であった。

誰にも決して見られてはならない、あられもない写真。

覗き魔に見られているとも知らないふたりが、無我夢中で絡まりあっている。

志帆はごくりとつばを飲み込んでいた。

オナニーを終えたばかりのからだが、性の悦びを求めて疼き始めていた。

…生理が近い…そのことに気がついたのは、去年の秋の、教室での出来事だった。

秋分の日を過ぎたころ暑さがぶり返して、志帆はじっとりと汗ばんでいた。

白い夏の制服が、肌にべったりと張り付いている。

数学の教師が解説をする声がねっとりとからだにまとわりついてくる。

そう…志帆を犯した郷田軍治の粘着質の声だった。

微積分を解説する郷田の声が遠のいて、その同じ声が、志帆を辱める。

「沢木…もっと脚を開いて、そこ、そこを、よっく見せるんだ…おまえ、おれに見てほしいんだろ…

えっ?」

「沢木…ほら、触ってみろ…おまえの、ここ、ほんとうにいやらしいぞ…ふふふ…ぬちょぬちょして

やがる…」

「沢木…おまえ、これがほしいんだろ、ん? ちんぽがほしいんだろ…え? おれの、でかいちん

ぽが…」

郷田が志帆を辱めるさまざまな言葉が洪水のように志帆に襲い掛かる。

志帆は頬を朱に染めている。

「沢木…ちゃんと、言ってみろ…・ん? 何がほしいか、言ってみろ!」

「…」郷田の平手打ちが飛んでくる。

「言わんかあ! 沢木いい! 何がほしいか、言うんだああ!」郷田の右手が志帆の頬を打つ。

「ください…」

「なんだとお! くださいだとお! なにをだあ!」郷田は、志帆の頬をひねり上げた。

痛みから逃れようと顔をそむけると、みたび平手が飛んでくる。

「この口で、何がほしいか、ちゃんと言うんだああ!」

「…ください…せんせいの…」

「このばかがあ! きこえんぞお! ちゃんと、聞こえるように、言わんかあ!」

「せんせいの…ちんぽ…ください…」パンティがぐっしょりと濡れている。

郷田が方程式を解いて見せる声が、聞こえてくる。いやらしい男のいやらしい声……せんせい…志

帆に…して…授業を受けながら、志帆は劣情をもよおして、悶えていた。

からだは、郷田を求めて、疼いていた。

その夜、生理が始まった。

生理が近づくと、からだが熱く疼くことを志帆は知ったのである。

タツヒロが、初めて夏期講習に出かけてまだ帰ってきていない。

火照りを抑えようと、志帆はシャワーを浴びているのだった。

冷たい水が、からだを冷やしてくれる。乳房と、子宮が内側から蠢くように感じるのを、冷たい水

が、静めてくれそうであった。

乳首が飛び出していた。

クリトリスが膨らんでいた。

淫裂は、ぬめっていた。

水をかけながら、志帆は洗っていく。

しかし、冷まそうとする志帆の気持ちに逆らうように、指先によって志帆の肉の悦びは高まってく

るのだった。

指先が、秘穴に進入する。

くちゅ…タツヒロが帰宅したとき、志帆は浴室にいた。

僕も、シャワー、浴びよう…そうだ、いっしょに…麻丘奈々の性器に指を挿し込むところまで進んで

いた愛撫を途中で止めることになり、欲望を充たすことができないままであった。

奈々の匂いのする指先を、タツヒロは帰りの電車の中で何度か鼻先に持っていった。

大学の教室の、狭い椅子の上で、奈々は身悶えし、タツヒロにしがみついてきた。

くぅ、くぅ、くぅ…と子犬の泣き声のような喘ぎ声を小さく出しながら、性器をタツヒロの指のな

すがままにさせて…

あのときの、奈々のからだの弾力、匂い、熱い吐息が思い出されて、車内で激しく勃起したのだっ

た。

服を脱ぎながら、浴室に向かう。脱いだパンツを脱衣カゴにのせようとして、志帆のエロチックな

パンティが目に入る。

触ると、あの部分がぐっしょりと湿っていた。

シャワーを浴びる直前に、志帆がどれだけ濡らしていたか知った。

志帆の性器の匂いがする。

志帆が、したがってる……志帆…タツヒロは、浴室の扉を開いた。

志帆は、自慰にふけっていた。

闖入者にからだをこわばらせた。

さしだされたタツヒロの欲棒を口に受け入れ、すわぶった。

それから、屹立したそれを陰部に受け入れて、おうおうと、浴室に響く大きな声をあげて腰を振りた

て、タツヒロの精液を搾り取ってしまうかと思われるほど激しく気をやって、果てた。

 

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