「濡れた下着」 沼 隆:作 第1回 (1) 「タツヒロくん」東京駅新幹線ホームに降り立ったとき、兄嫁の志帆がタツヒロの名を呼んだ。 志帆は、ライトブルーのワンピースに身を包んで、タツヒロにほほえんでいた。 素足に、白いサンダルを履いている。 タツヒロは、約束どおり志帆が出迎えにきてくれたことに、うれしくなっていた。 この日が、待ち遠しかった。 列車が東京駅に近づくにつれて、胸がときめいていたのである。 タツヒロは、夏休みに入るとすぐに、郷里から出てきた。予備校の大学受験夏期講習を受けるた めだ。 受講は、兄の義弘が勧めてくれたし、両親も賛成してくれた。 8月末までの40日あまり、兄のマンションに住むことをすすめたのは、義弘の新妻、志帆であ った。 兄の義弘は、全日本製薬で営業の仕事をしている。 半年前、取引先の担当者の勧めでその人の娘と見合いをした。 見合いの相手は、まだ高校3年生であったが、ひと目で好きになった。 それが、沢木志帆である。 志帆は、小麦色の肌をしており、のびのびとして健康的に見えた。 くりくりした瞳が、清純な光を放っており、長いまつげが大きな目をくっきりと縁取っている。 愛らしい鼻のしたには、ふっくらとした唇に、奇麗は歯並び、そして、前に垂らすと胸まで届く 漆黒の髪がまっすぐに肩から背中に垂れている。 義弘は両親の快諾を得て、婚約し、志帆が高校を卒業すると同時に結婚した。 新婚ほやほやなのである。 兄夫婦のマンションは、JRを乗り継いで小1時間ほどの場所にあった。 義弘が書斎にするつもりの部屋が、タツヒロのために片付けられていた。 出張が多い義弘には、その部屋を使う機会はない。 「汗びっしょりでしよう。シャワー浴びたらどう?」志帆に勧められて、タツヒロはシャワーで 汗を流した。 志帆は夕食の支度をしていた。 台所に立って、食事を作っている志帆の後ろ姿が、初々しく、そして、なまめかしくもあった。 「義弘さん、帰りが遅くなるって。食事、先に済ませていいよって」志帆と向き合ってふたりだ けで食事をするうちに、タツヒロの口数が少なくなっていった。 話題がなくなったからではない。 目の前にいる1歳しか年の違わない兄嫁のからだからにじみ出すなまめかしさに、タツヒロはど うしようもなくなっていたのである。 結婚式の時、花嫁衣装を着た志帆は確かに美しかった。 しかし、タツヒロには、普段着の志帆の方にずっと美しさ、なまめかしさを感じていたのである。 その志帆が、目の前で、手を伸ばせば届く距離で、夕食を食べている。 食べ物を口に運ぶ仕草、咀嚼する口の動き、飲み下すときののどの動き、その一つ一つに、タツ ヒロは見入ってしまった。 つい、志帆に見とれてしまったことに気づいたとき、志帆もタツヒロの視線に気づき、ぎこちな く、気まずくなってしまった。 逃れるように立ち上がった志帆は、タツヒロにおかわりをすすめた。 胸がいっぱいになっていたにもかかわらず、タツヒロはご飯のお代わりをよそおってもらう。 それからふたりは、口をきかずに食事を済ませた。 洗い物を手伝うというと、志帆が今夜はいいから、くつろいでね、と答えた。 両親から、家事の手伝いをするようにいわれてきたし、自分でもするつもりでいたのである。 しかし、夕食のときにふたりに生じたぎこちなさ、不自然さから逃れたいとも思って、タツヒロ は自室に戻った。 「いや…やめて…」かすかな声が、夜の静寂のむこうから聞こえてきた。 タツヒロは、フローリングの床に敷いた寝床に入っていたのだが、兄夫婦の部屋の気配が、かす かにではあるがはっきりと伝わってくる。 兄嫁さんが、嫌がってる…夫婦の性のいとなみにちがいない。 兄嫁さん、兄貴と…くそっ!タツヒロは、嫉妬心が沸き起こるのに、驚いた。 からだが熱くなった。 営業で東北地方を回って1週間ぶりに自宅に戻った義弘は、志帆のからだを求めていた。 新婚夫婦であるが、セックスの回数は少ない。 出張が多い義弘には、毎晩志帆を抱くことなど不可能なのである。 3日に1度、あるいは、今回のように1週間ぶりというのも珍しくない。 新婚4ヶ月目に入ったというのに、数えるほどしか交わっていないのである。 そのせいか、義弘の行為に対して志帆の反応は鈍かった。 義弘を受け入れ、義弘が高まっていくにつれ、志帆の頬は赤みを増す。 かすかに息を荒くしているのだが、義弘が果てると、ほっとしたような表情を浮かべるのである。 (こいつ、セックスが嫌いなんだろうか…) (まだ18歳の志帆に、求めすぎるのも…)義弘の気持ちは揺れ動く。 求めればぎこちないフェラチオもする。 後始末に、ペニスにからみついている精液を舐めとりもする。 (未熟なだけかもしれない…)義弘は、近頃は、交わるたびに、自分にそう言い聞かせて、不満 をおさえていた。 よりによってこの夜、弟のタツヒロが夏休みをすごしにやってきた最初の夜、義弘は、志帆に確 かめたい欲求を抑えきれなくなった。 風呂上りに飲んだビールの酔いも手伝って、義弘は抑えが効かなくなり、1度目の射精の後、勃 起がよみがえり始めた頃、志帆の目を厳しいまなざしで見つめながら、尋ねた。 「志帆、セックス、嫌いなのか」志帆は思いも寄らぬ義弘の言葉に驚き、とまどい、頭を左右に 振って否定した。 「俺のセックス、気に入らないのか」ううん…、と小声でいいながら先ほどより激しく頭を左右 に振った。 「嘘つけ!」怒りの表情を浮かべながら、押し殺した声で、言った。 義弘の怒りは、自分の怒りの声にいっそうあおられた。 「嘘つけ!」義弘は、志帆にのしかかると、指先に力を入れて、志帆の両の乳房を絞り上げた。 節くれ立った義弘の指の中で、柔らかな乳房がぐにゃりとゆがむ。 志帆の乳房に激痛が走る。 「いや…やめて…」志帆は、両腕で義弘の体を押しのけようとするが、それほどちからがはいら ない。 志帆の体に、あの感覚が、よみがえってきた。 義弘は、志帆の性器が、いつにもなく潤っており、溢れ出した淫水が陰裂を伝って、肛門の方へ 流れ出しているのに気がついていない。 (2) 朝食の後かたづけを、タツヒロは手伝った。 志帆の隣に立って、志帆が洗い終えた食器を布巾で拭った。 志帆の横顔が目にはいる。 ぶしつけな視線を向けないように気をつけている。 けれど、タツヒロは志帆をちらちらと見てしまう。 昨夜のあえぎ声がタツヒロの耳によみがえる。 (ああ、いやあ…やめて…)ベッドのきしむ音タツヒロの肉棒が、ジーンズの下で硬さを増して いく。 義弘が、ねえさんを責める声…はっきりとは聞き取れなかったが、志帆の答えに満足せずに、責 め続ける義弘の声であった。 志帆の胸の膨らみが、タツヒロの視野に入ってくる。脇から眺めると、たっぷりとしたふくらみ がはっきりと見て取れる。 からだの曲線が露骨に見えないようなシャツブラウスをつけているのだが、それでも乳房がつき だしていて、タツヒロを一層刺激してしまうのである。 突然、義弘が志帆の乳房をすわぶる情景が浮かぶ。 タツヒロは強い嫉妬を覚え、怒りさえ感じ、手にした食器を落としそうになった。 (おれ…ねえさんが…好きだ…)午前中は、予備校に受講手続きにいくことにしてあった。 昨夜、義弘が帰宅して、リビングで雑談をしたときに、義弘は、志帆に連れて行ってもらえ、と 言った。 タツヒロにとって初めての上京であったから、あちこち行ってみたいところもあるのだが、志帆 と一緒に都心にでることの方が、ずっと魅力的であった。 都心に向かう電車は、通勤ラッシュのピークを過ぎてはいたが、タツヒロは混んでいるように思 われた。 電車に制動がかかるたびに、志帆はよろけ、タツヒロに寄りかかった。 志帆の乳房が、タツヒロの腕に押しつけられる。 弾力が、タツヒロに伝わる。 タツヒロは、志帆の体を支えようと、手を志帆の腰に回した。 ニットのミニのワンピースに包まれている志帆のからだが、指先にはっきりと伝わってくる。 タツヒロは、思わず指をはわせそうになって、危ういところで止めたのである。 そんなことをしたら、ねえさん、なんて思うだろう…痴漢みたいなやつだって…電車がポイント で大きく揺れ、志帆のからだがタツヒロの両腕の中にすっぽりと入り込み、ふたりのからだが真 っ正面から密着した。 小柄な志帆の髪が、タツヒロの鼻先にあり…豊かな乳房が、タツヒロの腹に触れ、タツヒロの膨 れあがった陰茎が、志帆の下腹部に触れていた。 ふたりは、体を堅くしていた。しかし、電車の揺れは続き、タツヒロは志帆を抱き支え、志帆は タツヒロに寄りかかっていた。 都心のターミナル駅に一駅近づくにつれ車内の混雑は増していき、ふたりの体は、さらに密着す る。 タツヒロは志帆を恋人のようにしっかりと抱きかかえている。 志帆は、うつむき加減になって、タツヒロの胸に顔を埋めて、じっとしていた。志帆は、ゆうべ の出来事を思い出す。 タツヒロに聴かれてしまい、タツヒロに気を使わせてしまった、行為。ゆうべ遅くなってから、 義弘は志帆のからだを求めてきた。 1週間の出張から帰ってきた夜のことで、求められるのは当然であった。 タツヒロに営みを聞かれることは気になったが、義弘に、もう眠っているよ、といわれると、拒 めなかった。 義弘は、志帆のからだを一渡り愛撫した後挿入し、やがて果てたのだが、志帆のからだの奥を燃 え立たせるものは、とうとう訪れなかった。 初夜から4ヶ月あまりたっているのだが、義弘は、志帆に性の悦びを与えてはいなかった。 そのことに、義弘は気がついた。 「おまえは、俺のやり方が気に入らないのか…俺がヘタだとでも言うのか…」 ちがう… 義弘のせいじゃない…でも…義弘は、お見合いをした日からずっと、志帆には優しい 男であった。 その義弘の顔に、怒りが現れている。 あなたが悪いんじゃない… 悪いのは、私のほう…志帆は、義弘に決していえない過去を持って いた。 2年前の夏、父の仕事で、3年間の外国生活を送って、戻ってきた郷里の高校で、かつての同級 生や、教師たちから受けた歓迎は、志帆がふつうの性交では満たされないからだに変えていたの である。 義弘が志帆に怒りをぶつけ、指先に力を込めて思い切り乳房を絞り上げたとき、志帆のからだは その苦痛を苦痛と感じながら、からだの芯が熱くなり、淫水を溢れさせていたのである。 「いやあ…いたい…やめてぇ…」志帆の口をついてでた言葉は、からだとは正反対のものであっ た。 義弘は、苦痛にゆがむ志帆の顔に動揺し、すっかり気落ちして、悪かったよ…と何度も言いなが ら顔を背けるようにして、横になったのだった。 志帆の性器が、いつになく潤っており、言葉とは裏腹に義弘を求めていることに、ついに義弘は 気がつかなかった。 志帆は、涙を浮かべながら、濡れた性器を紙で拭った。 志帆は苦しんでいた。 父が見合いを勧めたとき、義弘の優しそうな人柄が好きになり、結婚することになったのだが、 忌まわしい町から出て行けるという期待もあった。 去年のクリスマスパーティ以後、梶原沙智やその仲間たちからの連絡は途絶えていた。 しかし、沙智たちが志帆のからだに教え込んだものは、消え去ることはなかったのである。 義弘には説明のしようがなかった。 自分の性癖をあかすわけにはいかなかった。 義弘が、性の悦びを与えてくれないことも事実であった。 相談する相手がいなかった。 志帆は孤独であった。 タツヒロにからだを支えてもらいながら、志帆は物思いに沈んでいた。 義弘に似て、優しい弟のようであった。 8月の終わりまで、タツヒロ君の世話をすることで、幾分かは気が紛れるかもしれない…しかし、 その義弟が自分に時折見入っており、こうしてペニスを堅くしている…かちかちになったそれが、 志帆のおなかに押しつけられている。 後ろから、左右から、混雑した電車の中で押されてそうなったのであるが、こんなこと、いけな い…という気持ちと、もう少しこうしていたい…という気持ちとがあった。 タツヒロの指先に力が入り、志帆の肉をつかんだとき、からだの芯が熱くなり、淫水がにじみ出 るのを感じていた。 こすられて、頂点に達しようとしていた。 まずい…でそう…タツヒロは、何とかこらえようとしていた。 密着した志帆のからだから強い、強すぎる刺激を受けて、タツヒロは今にも射精しそうであった。 胸には、志帆の熱い吐息がかかる。 乳房が押しつけられて…タツヒロが、押しつけているのか…いきそうだ… (3) 兄義弘の机の上は片づけられて、タツヒロの夏期講習のテキストが並んでいる。 予備校で手続きを済ませて受け取った教材の量に、暑さも重なって、うんざりした。 講習が始まるのは1週間さきだ。 重い教材を駅のコインロッカーに預けて、二人で町を歩き、買い物をし、昼食をとった。 傍目には、若いカップルがデートをしているように見えたことだろう。 タツヒロは、志帆をねえさんと呼びたくなかった。 志帆と呼ぶわけにもいかない。 「ねえさんなんて呼び方は、いや。志帆って呼んでよ」 「じゃあ、ぼくのこと、ヒロって呼んで」 「ヒロくん、って呼ぶよ」 「うん」タツヒロは、大きな黒い瞳が自分を見つめていて、笑みをたたえてそういうのを、うれ しく思った。 その瞳は、潤んでいるように見えて、そしてちょっぴり、悲しげな様子も感じられるのだった。 夕方義弘から電話があって、帰りは深夜になる、ということだった。 タツヒロは志帆とふたりで夕食をとった。 都心へ往復して暑さで疲れた身体をシャワーでいやした後、志帆は、タンクトップとホットパン ツに着替えていた。 後かたづけを一緒にしながら、タツヒロは今朝の電車の中の出来事がよみがえってきて、志帆に 抱きつきたい衝動に駆られていた。 タツヒロのペニスは、堅くなっていた。 (もう一度、こいつを、志帆のからだにこすりつけたい…) (志帆の中に入れたい…)タツヒロのショートパンツの前の部分がテント状に膨れあがっている。 ペニスの先端からしみ出した液体が、下着を湿らせてもいた。 (ヒ、ヒロくん…あんなに…どうしよう…どうしたらいいの…)志帆の普段着は、扇情的なもの ばかりであった。 それは義弘の嗜好であった。 幼妻に扇情的な格好をさせることを、義弘は楽しんでいた。 …おまえは、ナイスバディなんだからさ、隠すこと、ないんだ……自慢して、見せびらかしたっ て、いいくらいだよ……テレビタレントと比べたって、おまえの方がずっとうえだよ……身体の 線が、はっきりわかる服、着るんだぞ…結婚生活が始まって、十日もたたないうちに、義弘はそ う告げて、セクシーな服を買い与え、志帆が持っていた普段着の大半を捨ててしまったのである。 近所の主婦たちから皮肉を言われることもあったが、義弘はかえってそれを喜んだ。 「ババアたちには、勝手なこと、言わせとけばいいんだ…ひがんでるだけだよ」浴室から、志帆 が入浴している音が聞こえる。 タツヒロは、そっと部屋を出ると、足音を立てないよう摺り足で、脱衣場に入った。 志帆が脱いだものが、脱衣カゴに入っている。 一番うえに、つい今しがたまで志帆の性器をおおっていた小さなパンティがのっている。 タツヒロは、思わず手にしていた。 志帆の肌のぬくもりが、まだ残っていて、なまめかしい。 タツヒロは、それを頬に当て、感触を確かめた。 志帆の温もりが伝わってくるようで、心地よかった。 鼻先に持ってくると、股の部分から、ほのかな匂いがする。 それは、志帆が分泌したものの臭いで、タツヒロを刺激した。 ペニスが勃起する。 浴室のほうに目をやると、すりガラス越しに、志帆の裸体が見える。 からだの線が鮮明に見えるというわけにはいかないが、タツヒロは、志帆のしぐさを想像する。 椅子に腰掛けて、上半身を洗い終え、かかり湯をした後、下半身を洗い始めた。 手を動かすたびに乳房が揺れている。 石鹸を泡立てたタオルで下腹部をこする手が次第に下がっていき、黒く蔭になった部分を洗い始 めた。志帆の指先が、そこから少し奥まった部分に進んでいき、そっと指先で洗っている様子が 見て取れるのだが、クッ、と上体をそらせて、かすかな、あっ、というため息が聞こえた。 ん…志帆、オナニーをしている…志帆の指は、裂け目に沿って、肉の襞をそっといたわるように いじっていた。 始まりの部分にある肉のつぼみは、包皮がめくれ、赤く膨れあがっていた。 左手の指で陰部を手前に引き上げるようにして、右の指で堅くなったつぼみを爪弾くようにこす ると、そこから志帆の全身に快感が走り抜ける。 のどの奥から、堪えようとして堪えられなくなった喘ぎが漏れた。 ああっ…一度達すると、右の人差し指と中指をそろえて、陰裂の奥に開いている口にさしこんだ。 ちゅぷ、ちゅぷ…指は、卑猥な音を立てながらそこに吸い込まれるようにして収まった。 指は、狭い通路を埋め尽くしていた。志帆は、指をV字に開いた。 通路が押し広げられ、志帆の身体に快感が走った。 くっ、という喘ぎ声を漏らしながらのけぞったとき、脱衣場と隔てるガラス戸に目がいき、そこ に人影があるのに気がついた。 (タツヒロくん…)タツヒロは、志帆のオナニーをガラス越しにのぞき見しながら、ペニスをし ごいていた。 志帆が達してのけぞった瞬間、タツヒロも達して、精液を手にした志帆のパンティの中にぶちま けていた。 溢れ出したねばねばが、タツヒロの手のひらを汚してもいた。 タツヒロは、志帆が気づいた気配にあわて、精液で汚したパンティを手にしたまま、自室に戻っ た。 志帆、気づいたかな…たぶん、気づいてる…どうしよう…タツヒロは、パンティをくずかごに捨 て、手をティッシュでぬぐった。 寝床に仰向けに寝て、天井を見つめる。義弘に知られたら、帰されるかもしれないな…くそっ… 「ヒロくん…」ドアの外から、志帆が呼びかけた。 「ヒロくん、入っていい…?」 「う、うん…いいよ」ピンクの寝間着姿の志帆が入ってきた。 寝間着といっても、腰のあたりまでしかない、短いものだった。 床に寝ているタツヒロからは、パンティが丸見えだった。 志帆は、タツヒロの顔をのぞきこむようにしながら、床に座った。 「ごめんね、ヒロくん…」 「え?」「ヒロくん…いくら義弘さんの弟でも、一緒にいるのって、まずいね」 「う…」「ヒロくん、苦しめてしまいそう…」 「そ、そんなこと…ないよ」志帆は、風呂上がりのせいか、オナニーのせいか、頬が上気してい た。 潤んだ目が、じっとタツヒロを見下ろしている。 「ヒロくん、苦しむの、見てられないよ」 「あ、ああ…」タツヒロは、どう答えたらいいのか、わからなくなって、しどろもどろになって いた。 夏期講習、やめにして、両親の元に帰れっていわれるんだ… 「ヒロくん、わたしと年が違わないんだもん…わたし、ヒロくん、いじめてるみたい…」 「そ、そんなこと、ないよ…」ふふ、と照れているように小さく笑うと、志帆は、タツヒロの下 半身に顔を埋めた。 「あ…」志帆は、タツヒロのペニスを引き出すと、先端に口づけをし、それから、舐め始めた。 「ん…」快感にタツヒロの腰が震える。 志帆は、ペニスの先端を口に含むと、ゆっくりとくわえ込む。 唇と、舌を使って、先端から根元へ、根元から先端へ、すわぶった。 じゅるじゅると、音を立てながら…志帆の舌は、巧みにタツヒロのペニスを這いまわった。 ペニスはいきり立ち、血管が膨れあがって、そして、白濁した液体を志帆の口の中にこれでもか、 と噴き出した。 (4) 義弘は、深夜に帰宅した。 泥酔していた。不機嫌な様子だった。 志帆は18歳である。結婚して、まだ4ヶ月ほどなのだ。 こんな姿の義弘を見るのは、初めてである。 志帆は不安になった。 義弘は、寝室に入ると、着ていたものを脱ぎ捨てる。 酒くさい息をハアハアと吐きかけながら志帆のからだを求めてきた。 「あ…痛い…」義弘は、乱暴だった。 寝間着の上から、志帆の乳房をわしづかみにした。 「あはぁ、志帆ちゃん、おっぱい、おっきいねえ」 「タツヒロくんに聞かれる…」 「もう、眠ってるさ…」 「大きな声だしちゃ、だめ…」 「うるさいなあ、文句ばかり言って」 「だって…」 「くそお…!」義弘は、志帆の着ているものを剥ぎ取って、全裸にしてしまう。 酔いもあって顔面は紅潮し、目は血走っている。 志帆をベッドに押し倒す。 義弘の顔が覆い被さってきたとき、志帆は野獣にのしかかられるような気持ちがした。 酒くさい息を吐き散らす義弘の口が志帆の口に重なろうと迫ってきた。 志帆は吐き気を覚えて、思わず顔を背けた。 義弘は怒りをあらわにして、指先に力をいれて思いっきり乳房を絞り上げた。 「あああっ!」志帆は、激痛に悲鳴を上げていた。 「この、ばかが…タツヒロが目を覚ますだろ!」乳房に、義弘の指の跡が赤くついている。 志帆の目には、涙が浮かんでいる。 それが義弘の獣性に火をつけた 。義弘は、仰向けに横たわった。 志帆の艶やかな長い黒髪を鷲づかみにすると、志帆の口元をぐいとペニスに引き寄せた。 「くわえろ!」それは、グニャリとしていた。志帆は、それを口に含んだ。 分泌物の臭いが口中に広がった。 「しゃぶるんだ」志帆は、舌を使って、やわらかい肉棒を舐めはじめる。 「おまんこ、みせろ!」 「いやあ…」ペニスを口から離すと、志帆はそう答えた。 義弘は許さなかった。 志帆の右足を強引に引き寄せ、自分のからだの反対側に引っ張った。 志帆の性器が眼前にぱっくりと口を開いている。 両手の指を沿えて、そこを左右に開いた。 「あ・・いやっ…」肉の襞は、きれいなピンク色をしている。 義弘はそこを丹念に舐めはじめた。 音をたてて開口部をすする。 チュポ、という音が志帆の耳に届く。志帆は、恥ずかしい格好をさせられて、羞恥にほほを赤ら め、からだを硬くしている。 「しゃぶらないか!」義弘に促されて、慌ててペニスを口に含む。 それは次第に充血し、志帆の口の中で膨らみ、硬くなっていった。 3人で朝食を済ませたあと、義弘が出勤していった。 後片付けを手伝いながら、タツヒロは夕べ深夜に聞こえてきた志帆の悲鳴を思い出していた。 助けを求める悲鳴ではなかった。 夫婦の営みであることは、タツヒロにもわかった。 義弘が、嫌がる志帆と交わっている情景が浮かぶ。 義弘と志帆は夫婦だけど、いくら夫婦でも嫌がっているのを無理やりするなんて… 「夏期講習の予習、進んでるのか?」 「…ああ」食事中、義弘に尋ねられて、タツヒロはぶっきらぼうに答えた。 タツヒロは怒りがよみがえり、余計なお世話だ!と思ったのだ。 「愛想のないやつだなあ」義弘は苦笑した。 「あ、兄貴のこと、ごめん…」 「ん?」 「ゆ、ゆうべのこと…」 「…聞こえたの…?」 「う…うん…」 「やだ…恥ずかしいよ…そんなこと、言わないでよ…」 「ご、ごめん…でも、義弘のこと、あいつ、ひどいことして…」 「ヒロくん、やさしいんだね…」浴室から掃除をする音が聞こえてきた。 ガラス戸を空けながら、志帆に声をかける。 「おれ、手伝うよ」 「いいよ、ヒロくん」 「やらせてくれよ…気分転換になるし」タツヒロは勉強していたわけではなかった。 机にむかって、昨夜のことを思い出していた。 志帆は、フェラチオをしてくれたのだった。 肉棒が硬くなり、ショートパンツの前を膨らませている。 志帆のそばに行きたい、と思った。 そして、浴室を掃除する口実を見つけたのだった。 脱衣カゴに、今朝はいていたミニスカートが脱いであった。 志帆は、水しぶきがかかってもいいように、スカートを脱いでいたのだ。 タツヒロの目に飛び込んできたのは、Tシャツ1枚で前かがみになって浴槽を洗っている志帆の 姿だった。 Tシャツのすそからパンティがのぞいている。 シャワーヘッドから噴出す水をかけながら、志帆は浴槽を洗っていた。 「おれ、やるよ」タツヒロが、志帆の手からシャワーヘッドをとろうとした。 「いいよ、ヒロくん」 「やらせてよ」奪い合うような形になって、シャワーヘッドが思わぬ方向を向き、勢いよく噴出 す水が志帆の前身を直撃した。 タツヒロが慌ててヘッドの向きを変えようとして、さらに志帆に水を浴びせ掛けることになった。 志帆はずぶぬれになった。 Tシャツのしたには、何もつけていなかった。 Tシャツが乳房に張り付いて、ピンク色をした乳首がくっきり浮かび上がる。 タツヒロは、ずぶ濡れになって、髪からしずくを滴らせている志帆の顔を見つめた。 志帆を抱き寄せた。 そして唇を重ねた。床のシャワーヘッドが水を上向きに噴出している。 二人の下半身に激しくかかる。 それでも、互いの唇を求め、舌を絡ませつづけていた。 「だめ…だめよ、ヒロくん…」志帆が、かすれる声でささやいた。 タツヒロは、後ろ手にシャワーを止めた。 水に濡れた床に、志帆を横たえた。 「ヒロくん…だめ…」タツヒロは、Tシャツを脱がせる。 パンティも、ずぶ濡れになっている。 薄い布地が透けて、志帆の茂みが、くっきりと浮かびあがっている。 「これも…」 「だめ…ヒロくん…」言葉と裏腹に、志帆は、抵抗しなかった。 タツヒロも、濡れた衣服を脱いだ。 二人は全裸になって、ひんやりとした床の上で、抱き合っていた。 浴室の窓から、風が吹き込んできて、心地よかった。 (5) 「ああ…」昼下がりの寝室。 タツヒロが、外出したあと、志帆は眠気を催し、ベッドに横たわった。 開け放った窓から、さわやかな風が吹き込んできて、心地よかった。 手が自然に乳房に伸びる。 ブラジャーのホックをはずし、じかに乳房に触れる。 両手で乳房を押してみる。 押し返すような弾力がある。 それから、乳房の下のあたりに指先を当て、ぐいっと引き上げてみる。 乳房のボリュームを確かめるようにして、やわらかさと、弾力とを味わう。 「ん…」志帆の口から、ため息が漏れる。 わずかに開いた口からこぼれる、甘く切ないため息…乳房から、快感が全身に広がっていく。 シャツを脱ぎ、邪魔なブラジャーを脱いでしまう。 タツヒロは夕方まで帰ってこない。 ミニスカートも脱いで、パンティ1枚になった。 再びベッドに横たわる。 指先を乳首に持っていく。 硬くなって、少し飛び出している。 ピンク色の乳首。 親指と人差し指でそっとつまむようにして、それから、指の間で転がす。 「ん…ん…」指先に力を入れて強く刺激すると、悦びがさらに大きくなる。 思い切り力をいれて、つねる。 「ああ…いい…」志帆のからだを駆け抜けるのは、痛みではなくて、快感である。 パンティが隠しているあの場所から、体液が滲み出してくるのがわかる。 「見ろよ、こいつ…」 「え…?」 「ここだよ…おまんこ…」 「おっ!」 「ぐしょぐしょじゃん…」 「こ、こいつ…痛めつけると、濡れるんだ…」 「まじかよぉ」2年前の夏、梶原沙智や、その取り巻きの不良グループによって目覚めることに なった志帆の性。 辱めを受けることでいっそう喜悦が高まる姿に、不良たちは戸惑った。 あの日、志帆は、思わず叫んだのだった。 「やって…もっと…」志帆は、乳房をもみしだきながら、あの夏の日の出来事を思い出す。 いっそう、あの部分が濡れてくる。気持ちが高ぶり、片方の指先が、パンティの中に入り込む。 柔らかなくさむらを掻き分けて、淫裂に入り込む。 指先で、そっといたわるように濡れた粘膜をこする。 秘穴から、淫水がこんこんと湧き出している。 指を泉に浸して湿らせると、淫裂の始まりに近い場所にある、肉のつぼみをこする。 もどかしいようにパンティを脱ぎ捨てて、両の手で、性器をいじりつづけた。 何度か達し、快感がゆっくりと引いていくうちに、志帆はまどろみ、いつしか眠りに落ちていた。 ***** オナニーにふける志帆の姿態をじっと見つめている視線があった。 志帆の寝室の窓からは、はるか向こう、道路と空き地をはさんで、数百メートル先に建つマンシ ョンの一室から、男が、望遠レンズつきのカメラで、志帆の痴態を撮っていた。 犀星高校2年生の杉沢琢磨は、写真部の撮影旅行を前に、機材の点検をはじめたところだった。 望遠レンズを装着してふと見た向かいのマンションの一室で、自分とそれほど年が違わない女性 が、ベッドに横たわり、オナニーをはじめたのである。 顔つきのかわいらしさとは不釣合いなほど成熟したからだつきをしていた。 フィルムを装てんし、カメラを三脚に固定してシャッターを切り始めた。 女は、ファインダの中であえぎ、もだえ、のけぞった。 声が聞こえないのが残念だった。 AVの中の女たちのように、なまめかしい喘ぎ声を上げているのだろうか…きっとそうだ…時々、 はあっ、というように、唇が開く…女は、何度か腰を中空に突き上げるようにして気をやったあ と、スーツと吸い込まれるように眠り込んだ。 フィルムを5本使っていた。 琢磨は、のけぞる女の姿態を思い出しながら、精液をほとばしらせた。 ***** 身震いをして、目がさめた。全裸でベッドに寝ていた。 昼寝をしようと横になって、つい、オナニーにふけってしまった。 それから、眠り込んだ。 今朝、浴室でタツヒロとした性交を思い出していた。 掃除の最中に浴室に入ってきたタツヒロと、濡れた床の上で交わってしまった。 タツヒロのやさしさに、いつの間にか惹かれていた。 夫の義弘は、タツヒロと同じようなやさしい性格の持ち主であるに違いなかった。 けれど、結婚してわずか4ヶ月しかたっていないのに、夫婦の間には、みぞができ始めているよ うに思われた。 義弘を好きになり、自分から進んで結婚したのだが、志帆は、誰にも言えない秘密を隠さなけれ ば…という気持ちが強く、義弘に心をなかなか開こうとしていないのであった。 夫婦の性の営みを求められて、心から受け入れようとして、どこか後ろ暗いものがあって、それ が、志帆に悦びを与えてはくれないのだった。 あの時、沙智の仲間の不良たちに犯されるとき味わった、あのからだの芯から噴出してくるよう な喜悦が、なかった。いろんなことが積み重なって、義弘は志帆にたいしてつらくあたるように なってきた。 性の営みも乱暴で、いたわりが感じられず、志帆を苦しみから解放してくれそうにはなかった。 義弘には、とても悪いことをしている、という気持ちが起こったが、しかし、それとは裏腹の気 持ちも心の奥にあることに、志帆は気がついていた。 昨夜は、タツヒロのペニスを口に含み、今朝はそれをからだの中に受け入れていた。 義弘とは味わったことがない快感を、志帆はタツヒロから得ていたのである。 浴室の中で、喜悦の喘ぎ声がごく自然にこぼれ、はしたない気持ちが少しはしたものの、得られ た快感は大きかったのである。 タツヒロの性技はぎこちなかったが、硬く反り返ったペニスは志帆の性器を押し広げ、刺しつら ぬき、突き上げて、精液はほとばしる瞬間には、志帆も同時に達していたのである。 ベッドの足元に落ちていた、小さく丸まったパンティに足を通す。 ふと振り返ると、窓の向こうにあるマンションの建物が目に入ったが、昼下がりの自慰を見られ るはずはなかった。 ずっと遠くの建物に過ぎなかった。志帆の痴態を盗撮した男がいることに、気がつきようがなか ったのである。 【Back】 【T o p】 【Menu】 【Home】 【Next】 |