『放課後の憂鬱』

                               ジャック:作
第11章「翻弄」(1)

 高科は、みんなから藍を隠すように抱いたまま、そっと机から降ろした。
柴田と伊藤が、素早く机を片付けていった。

 高科が、まだ藍を抱いたまま囁いた。
「藍、早くレオタード着ろよ。・・そんな格好のままで出演したくないだろ?」
あまりの衝撃に、まだ藍はぼんやりとしていた。もはや「恥ずかしい」という意識は、
通り越していた。まるで夢の中のような、おぼつかない気分だった。

 高科が藍から離れる。藍は、ゆうこが差し出したレオタードを朦朧としたまま受け取
ると、足に通そうとした。
藍はそれまで気付かなかったが、そのレオタードは子供用のように小さかった。太もも
を通すにもきつ過ぎるほどだった。

 (・・・な、なに、これ?・・小さすぎるよ・・・)
足の付け根の部分には、ゴムが通っているようだった。藍がいくら力を入れても、太も
もがなかなか通らなかった。太ももの真ん中あたりがゴムに締められ、深い窪みを作っ
ていた。

 その締め付けられる痛みで、藍の意識がはっきりしてきた。
 なかなか着ることが出来ずにまごまごしている藍に、高科がせかした。
「さ、藍ちゃん、早く着てよ。」
「・・・だ、だってこのレオタード、小さすぎる・・」

 藍の言葉にさちが言った。
「あれ、サイズ間違った?ごめんねぇ~。でも今更変えらんないから、それ無理しても
着てよ。」
(・・・ワザと小さいのを?・・)

 藍の頭を、そんな疑問がかすめた。しかし今は、レオタードを着るのが先決だった。
裸のままでいられなかった。
裸のまま・・・意識がはっきりしてくると、耐えられないほどの恥ずかしさに襲われた。

 藍は急いで両脇からゴムを掴むと、思い切り引っ張ってムリに足を通した。
そして腰、胸とレオタードを上げようとして、驚いてしまった。
そのレオタードは肩の部分が藍の乳房の下側に、やっと届くくらいの大きさでしかなか
った。ノースリーブの、まるで水着のような形だった。

 藍は、半分まで着かけたレオタードを、もう一度よく見た。随分と変わった形のレオ
タードだった。
首の回りと両腕の付け根に当たる部分は、太く柔らかい、平たい紐でできていた。
レオタードが小さい割には、首の回りも腕の付け根も、ゆったりとした大きさだった。

 身体の両脇に当たる部分は、他の部分と同じオレンジ色のストライプが、たてに入っ
ていた。
そのストライプは他の部分と材質が違うようで、少しも伸縮性がなかった。

 それは、どう見ても子供用の・・小学校の低学年くらいの・・レオタードだった。
藍はなんとか手を通そうと、必死に肩の部分を引き上げた。すると両足の付け根を、ゴ
ムが締め付けてきた。

 藍がレオタードを引っ張るにつれ、太ももの両脇がストライプに引かれて、少しずつ
露わになってきた。
「藍ったらぁ、なぁにグズグズしてんのよぉ・・このままじゃ、遅くなっちゃうよ。手
伝ってあげるね。」

 ゆうこが見かねたように言った。そして藍を助けるように手を出すと、レオタードの、
片方の肩の部分をしっかりと掴んだ。
「さち、さちも手伝ってくれる? あっ、藍はそのまま膝をついて。」

 藍が膝をついてしゃがみ込むと、さちとゆうこが両側からレオタードを引っ張り上げ
た。
「いいぃっっ・・・いたいよぉ・・」

 藍が悲鳴を上げるのに構わず、二人は藍の手を取ってレオタードに通してしまった。
そして二人で藍を助け起こした。
「あぁ・・いたい・・・なに、これ?・・こんなの・・いやっ!」

 藍の予想通り、そのレオタードは何も着ていないのと同じ、いやそれ以上だった。
オレンジ色の生地は限界以上に引き伸ばされて、ほとんど透明と言えるくらいに色が薄
くなっていた。

 両脇のストライプに足の付け根のゴムが引かれ、前はいわゆる「ハイレッグ」を形作
っていた。鋭い「V」の字になっていた。両脇の部分は腰骨をはるかに超えて、臍より
も上まで露出していた。

 股間の部分も伸びきって平たい紐のようになり、恥丘の半分ほどがはみ出していた。
その紐は藍の股間に深々とくい込んでいた。
そして股間を走る割れ目は、まるでガラスに押し付けられたようにへしゃげられ、僅か
に開かされていて、陰毛を失ったク○○○スの頭が見えていた。

 胸もレオタードに押さえ付けられ、平たくなった真ん中で乳首の部分が微かに盛り上
がっている。
小さすぎるレオタードは伸びきって、藍の身体に貼り付き、くい込み、締め上げていた。
それは藍以外の誰にとっても、妙にいやらしく、そして官能的だった。

 「よし。それじゃ藍ちゃん、台本の確認と行こう。」
高科は藍に台本のページを開き、手渡した。
「ごめんな、藍ちゃん。リアリティ出すのに台本見せなくて。ここまではこれで終わっ
た。今度はここからだ。」

 高科の指差す部分を藍は読み始めた。そしてその内容に驚いた。
「こ、これって・・」
 主人公は手錠をかけられ監禁されている。そこに看守が現れ、抵抗できない主人公を
好きなように辱める。主人公ははじめ抵抗するが、次第に快感に身を委ねて行く。そし
て何人もの看守に弄ばれてしまう・・

 「こ、こんなの、できません!」
そこまで読んだ藍が、思わず叫んだ。すると高科が呆れた様子で言った。
「藍ちゃん、また‘できません’か。それは通用しないんだって。わかってるだろ?」
「・・・だって・・」
藍は涙目になって訴えたが、高科は気にせず続けた。

              

    この作品は「ひとみの内緒話」管理人様から投稿していただきました。