『放課後の憂鬱』

                               ジャック:作
第9章「初めてのキス」(3)

 藍は押し拡げたままの割れ目に、もう一方の手に持った定規を当てた。
定規が当たった瞬間、ひんやりとした冷たさをク○○○スに感じた。
「さあ、いくぞっ! せーのっ」
「あぁぁっ! やめてぇ・・・・・い、いたっ!」

 定規がピチッとク○○○スを弾いた。一瞬、全身が硬直するほどの衝撃が走った。そ
のあまりの痛さに、藍は我に返った。

 次の瞬間、高科も、吉田も消えていた。
(あぁ・・・あたし、なにしてんだろ・・・おかしくなっちゃいそう・・・)
藍はびっしょりと汗をかいていた。そして疲れたのか、そのままベッドに倒れ込むと、
いつのまにか眠っていた。


 次の朝、藍はいつもより早く起きると、シャワーを浴びた。シャワーを浴びてから学
校へ行った。
学校の門をくぐろうと歩いていると、後ろから呼ぶ声が聞こえ、振り返った。

 「・・・藍ちゃん!」
藍が振り返ると、そこには高科がいた。
「・・せ、先輩!」
藍は昨日の夜のことを思いだし、顔を赤くした。

 「おはよう! やっぱ、風邪か? 顔赤いし。まだ熱があるの?」
「い、いや、そんなんじゃないんです。・・元気ですよっ!」
「だって部活来ないから藍ちゃんのクラスの奴に聞いたら、二日も学校休んだって。どしたん?」

 「えっ? あっ、し、仕事で・・」
「あっ、そうか! 仕事だったの・・なんか心配して損したかな?」

 「あ、ごめんなさい・・何にも言わないで部活休んで・・」
「こないだの撮影、ハードだったからさ。水かけたりしちゃったし・・それで風邪引い
たのかと思ったよ。でもよかったよかった。」

 この前の撮影・・高科の言葉に、その時の事が頭を過ぎった。
(・・・恥ずかしい格好、みんなに見られたんだった)

 しかし高科の何事もなかったかのような笑顔を見ると、藍はすぐにそのことを忘れた。
それどころか、高科が自分を心配してくれていたことが嬉しかった。

 「あ、今日は部活、来れるよね?」
「大丈夫・・です。ちゃんと行きます。」
「じゃ、待ってるから。放課後に、ネ。あ、藍ちゃん、今日はそのままの格好で来てね」
「あ、はい・・またあとで。」

 高科は笑顔で手を振ると、藍を追い越していった。
藍は高科と別れると教室に向かった。まだ頬が、赤いままだった。

 藍は授業など上の空で考え事をしていた。高科にはあんなに恥ずかしいことをされた
のに、どうしても嫌いになれない。
とても複雑な気分だった。

 それに、昨日の夜の妄想・・あんな風にされている姿を想像しながらオナニーしてし
まうなんて・・
藍は高科への恋愛感情を確信していた。
信じられないけれど、信じている。これが、恋なのかな、と思った。
それから藍は、放課後が待ち遠しくて仕方なくなった。


 まだ一日の最後の授業も終わらぬ頃、高科と吉田は屋上でサボっていた。
「吉田、例のモノ、買ってきたか?」
「先輩~、ひどいっすよぉ。あんなもの、オレ買えっこないじゃないっすか。さちとゆ
うこに頼んどきました。」

 「はは、まぁいっか。で、買ったのか。」
「二人とも喜んで行きましたよ。そんで、すんごいの選んじゃって・・スケスケのギチ
ギチッ。ばっちりっすよ。」
「そりゃおもしれぇや。・・で、小道具のほうはどーした?」
「それもついでに買ってきてもらいましたが・・・ほんとにいいんっすかねぇ。ありゃ、
きついっすよ。」

 「だいじょうぶだって。例の切り札、ばっちりだからな。・・・それよか吉田、今日
はおまえとゆうこは早めに部室行ってろ。で、中で抱き合っててな。」
「いいっすけど・・またどうして?」

 「ば~か、あいつぁ部屋入ろうとしたとき、中でおまえらがいちゃついててみろよ。
ビックリして、ポーッとなっちゃうだろ。それでワケわかんないうちに、かまそうっつ
ーのさ。」
「なるほどっすねぇ。しっかし先輩も、結構知的に責めてきますねぇ。がぁっとやっち
まえばいいのに。」

 「まだ青いなぁ、おまえ。プロセスが大事なんだよ、プロセスが。そんなしたらそれこそ大変だろ。ここ使うんだよ。ここ。」
高科は得意げに指で頭を指しながら言った。

 「了解っす。けどゆうこに、ちゃんと言っといてくださいよぉ~。やらせだって。」
「ははは。わかったよっ。ゆうこも嫌がったりしねぇよ。あいつをハメるためだったら
な。・・それにおまえら、どうせできてんだろ?」

 「てへっ、知ってました?・・でもアイドルものにできるなんて、めちゃすごいっす
ネ。これからも先輩に付いて行きますよ~。」
「ば~か。いつまでもやってられっかよ。バカやんのもこれが最後よ。最後だからな、
上物狙ってるってわけ。」
「な~るほどぉ。」
高科と吉田はそう言って笑った。


 放課後になった。
藍は教室を出ると、一目散に部室に向かった。
高科に逢える、そう思うと嬉しくて仕方なかった。

 部室の前にきて、藍は扉を開けようとした。が、すぐに躊躇った。
少しだけ扉が開いていたからだ。
そして、部室の中からなにやら声が聞こえる。

 「・・・あっ、あぁ。いいっ・・」
藍は扉の隙間から、恐る恐る中を覗いた。
そこには吉田とゆうこが抱き合っていた。

 (・・えっ?、何してる・・の?・・)
 吉田は机に座り、体操服姿のゆうこを膝の上にのせていた。そして吉田の手はゆうこ
のTシャツの中でもぞもぞと動いている。

              

    この作品は「ひとみの内緒話」管理人様から投稿していただきました。