『恭子さん』

                          二次元世界の調教師:作
 
第29話 恭子さんに夫婦生活についてのアドバイスを送る

 恭子さんが気絶している間に、俺は貞操帯だけを嵌めて鍵を掛けた。
旦那が帰って来るまでまだ時間があったが、久美と麻里も帰して2人切りになると、強
引に起こす。

 「奥さん、よう頑張ったな。撮影は後一回で終わりや」
「本当ですか!」
「ああ、ホンマや。あの男もそない言うてたからな。今日のビデオの出来なら文句ない
やろ」
「ありがとうございます!」
「それより、早う服を着なはれ。わての方が落ち着かんわ」
「はいっ!」

 失神している恭子さんから縛めの縄だの首輪だの手錠だのを外し貞操帯を嵌めたもの
の、全裸に毛布を掛けてやっただけだったのだ。
あんなエロエロのビデオを撮影しておいて何だが、目隠しを外した毛布一枚の恭子さん
にパッチリした目で見つめられると、こちらの方が妙に気恥ずかしい。

 この淫らなAV撮影もようやく終わると聞いた恭子さんの口調は弾み、意気揚々と来
た時の白衣を身に着け始めると、俺の良心は激しく疼いた。
こんな善良で美しい人妻を、卑劣な権力者守男に愛人奴隷として引き渡すなんて。

 ーーまだ時間はある。その間に何とか彼女を救う方法を考えるんや

 これまで散々考えても妙案が浮かばず、弱みを握られた俺は結局守男の言いなりにな
って、恭子さんにAV撮影を騙った淫靡な性調教を存分に施してしまったのだから、既
にどうしようもない事はわかっていても、そう思わずにはいられない。

 騙されているとも知らず明るい笑顔で着替えている彼女と居たたまれない気持ちで、
俺は席を外し台所に立った。
麻里の乱入で邪魔されたお茶を入れるためだ。

 そして彼女が持って来てくれた饅頭を食べながら話をしたい。
男の一人暮らしで慣れない茶を入れながら、もう最後かも知れない恭子さんとの会話に
胸がときめいている自分に気付き、俺は苦笑する。

 何と言う事だ。
俺はこの容姿も気立ても理想と言って良い人妻に、本気で惚れてしまったらしい。
ヤクザな調教師稼業を生業として来た俺は、数え切れない程の女を抱いて来たが、特定
の女と親密になる事は一切なかったし、人並みに所帯を構える事など初めから諦めてい
た。

 仕事と割り切って次々に女の調教を手掛けて来たからだが、還暦目前のこの齢になっ
て、遠い昔に忘れてしまった恋する少年のような気持ちになってしまうなんて。
恭子さんに守男が熱を上げるのも道理だ。

 「奥さん、茶入れて来たで。旦那が帰るまでまだ時間はあるやろ。一緒に饅頭喰うて
まおうで」
「あ……どうも、申し訳ありません、ご、ご主人様」
「ハハハ、撮影やないんやからやめてくれ。そないな事言われたら、ケツがこそばゆい
わ」

 「でも……こんな物頂いてよろしいのでしょうか?」
「せやから、そないにかしこまらんといてえな。男一人暮らしやさかい、甘いもんを仰
山貰うても困るがな」

 こうして俺は密かにドキドキしながら、恭子さんとのティータイムを実現する。
改めて見る恭子さんは白衣の天使と言うには大柄過ぎる感じだが、モデルのような長身
美脚で整った美人顔は、俺が少年時代に好きだったアクションスターの美人女優みたい
だと思った。

 こんな二十歳近く年下の女性に心を動かされているのが恥ずかしく、俺はいつも以上
に饒舌にしゃべるが目を合わせる事も出来ない。

 それにしても恭子さんはすっかり落ち着いた麗しい大人の女性の姿で、とても二穴フ
ァックに狂乱してイキまくった挙げ句気絶してしまった淫女と同一人物とは思えない。
調教師の経験を通じて、女のしぶとさ、逞しさは十分理解しているつもりだったが、改
めて認識させられる気分であった。

 「奥さん、今日の貞操帯は勝手が違うやろ」
「い、いえ、そんな事は……」
「チンポがのうて、寂しいかも知れんがの」
「もう! 嫌ですわ、恥ずかしい……」

 「ご主人とのエッチは、もうちょっと我慢してえな。オナニーもしてはアカン。最後
の撮影では、チンポが欲しゅうて欲しゅうて、夫を裏切って自分からおねだりしてしま
う、はしたない人妻を演じて貰うんや。出来るか? 奥さん」

 「ああ……頑張ります」
「そのためにも、マンコとオシリノアナを目一杯ウズウズさせとってえな。三日後が最
後の撮影やで、ええな? 奥さん」
「……はい、わかりました」

 この所一日中装着されていた二穴のペニス型バイブレータが外されて、自分でも三日
間の禁欲が相当辛いものになる事がわかるのだろう。
恭子さんは自信なさそうだったが、了解してくれた。

 申し訳ないが、俺の精魂込めた性調教の結果、もともと性感に恵まれていた恭子さん
は完璧に旺盛な淫欲を植え付けられ、一日も男なしでは過ごせない程性の歓びに貪欲な
体に仕上げられてしまった筈だ。

 何しろ生理中で女性器が使えない時でさえ、乳房やアナルの調教をメインにAV撮影
は強行されたのだ。それは一刻も早くAV撮影を完了させたい彼女の意志を尊重したも
のだったが。

 「ところでな、奥さん。最後の撮影には例の男が見に来る。ヤツから最終オッケーが
貰えるように頑張ろうな、奥さん」
「はいっ! こちらこそ、最後までどうかよろしくお願い致します」

 ーーくそっ! 俺はどんだけ悪い男やねん。死に損ないのお前の人生など、終わって
も構へんやろ。何とか知恵を絞って、恭子さんを助けたらんかい、このボケッ!

 強い意志を感じさせる理知的な瞳を大きく見開き、キッパリと決意を口にして頭を下
げる恭子さんに対し、もう何も掛けてやり言葉が見つからなくなった俺は、押し黙って
饅頭を口に運ぶ。

 恭子さんには、麻里のバックにいる暴力団関係者だと匂わせているが、「あの男」、
すなわち守男は、実際に次の最終撮影にやって来る。
そして恭子さんを生身の男性自身で貫いて、本気で燃え上がり腰を振って歓迎してしま
うであろう痴態をビデオに収めて、彼女を強奪するつもりなのだ。

 ヤツの強権をもってすればもっと強引に恭子さんを奪う事も可能だろうが、「寝とっ
てしまった」証拠を突きつけて、若夫婦に離婚を迫るのだと言う。
その時点で何も知らない恭子さんが、守男に抱かれて女の歓びの極みをさらけ出してし
まうのは避けられない。

 いや、もし罠だったと悟っても調教された体は抵抗出来ず守男になびいてしまうに違
いないのだ。
その、誰が見ても明白に自分を裏切り、守男に抱かれる歓びにトチ狂っている妻の痴態
を見せられて、気弱そうなあの夫がどんな反応を示すだろう。

 仮に夫の態度が煮え切らないでも、恭子さんの方が夫婦生活を続ける事に耐えられな
いであろう事は目に見えている。
これはAVの撮影で演技なのだと言う言い訳は、夫は欺けても自分自身を納得させる事
は出来ない。

 守男が企んだ、荒唐無稽なまでに希有壮大な計画の、最も重要なパーツを心ならずも
背負い込まされてしまった俺は、クライマックスを目前にして無駄かも知れない抵抗を
試みようとしている。
いや今さら無駄な事はわかっている。

 万一俺が身の危険も顧みず、恭子さんに全てを打ち明けて守男の毒芽から逃れるよう
忠告したらどうなるか。
俺と夫の人生は終わり、恭子さんも逃げ切れず捕まって、「文字通り」愛人奴隷として
監禁され一生を終える、より一層過酷な悪夢が待っている事だろう。

 この地では誰も逆らえない専制君主に等しい力を持つ守男なら、それが可能なのだ。
感情に任せて犬死にしても仕方がない。
俺に出来る事があるとすれば、ヤツを説得して考えを改めさせる事だろう。
だが、守男がこの寝取り計画に投じて来たであろう気の遠くなるような金を思えば、そ
れが不可能に近い事も又わかり切っているのである。

 「あ、あの、ご主人様……いえ、会長さん」
「会長でも羽黒でも、好きなように呼んでくれたらええわ」
頭の中が堂々巡りに陥って黙ってしまった俺に、恭子さんの方が話し掛けてくれた。

 「この、腰の物は」
「ああ、もちろん撮影が終わったら外したる。ご主人とエッチ出来るようになるで」
「いえ、そういう意味では」

 恥ずかしそうに貞操帯の話をする恭子さんに、嘘をつき通すよりない俺は申し訳ない
気持ちでいっぱいだ。
そして無力な自分に俺は自暴自棄になってついゲスな事を言ってしまう。

 「あんな奥さん、これは冗談やで。もしここで一発ヤらせてくれ、てお願いしたら、
アンタわてに抱かれてくれるか?」
「え!? それは……」
「わてな、恥ずかしいがアンタを好きになってもうたらしい。アカン、と思うても、わ
てのチンチン、今カチカチやねん」

 ーー何を言うとるんや。アホか! お前は。ボンと同レベルになってどうする

 頭の中では、ついそんな本音を打ち明けてしまった自分を叱りながら、俺の口は止ま
らない。
もうどうにも出来ないと言う閉塞感が、俺を突き動かしたのだろう。だが、恭子さんの
予想外の反応が、おかしくなりかけた俺を正気に戻してくれた。

 「わかりました。だけど、絶対主人には内緒にして頂けますか?」
「わあ、待った待った! 冗談言うたやろ、冗談やて」
「すみません! 私、てっきり本気かと」
「心臓止まってまうかと思うたわ」

 本番行為を承諾して、白衣を脱ぎ始めてしまった恭子さんにビックリした俺は慌てて
止めた。
彼女とヤリたい、と言うのは正直な気持ちの吐露だったが、ここで約束を反故にしたら
守男と同じだ、と言う意地だけで理性を保ったようなものだ。

 そして恭子さんの次の言葉に、俺はもう参ってしまう。
「勘違いして申し訳ありませんでした。会長さんが、私を抱きたい、だなんて思うわけ
ないですよね」
「何やて!?」

 「私、撮影なんかで凄く恥ずかしい気持ちになってしまう、汚れた女ですから。親身
になって助けて下さる、会長さんに抱かれるような価値なんかありませんわ」
「恭子さん……アンタ、汚れた女なんかやないで」

 信じられないような自分を卑下する言葉と共にグスンと涙ぐんだ恭子さんを見て、不
覚にも俺まで涙をこぼしていた。

 「それどころか、ご主人のために、辛い目におうても頑張られとる、立派な奥さんや
ないか。なんぼ嫌らしいAVなんぞに出ても、アンタの心はキレイやで、奥さん。人の
表面だけ見て判断するんは、アホのする事や。冗談や言うたけど、アンタを好きになっ
て、抱きたい、思うたんはホンマや、わての本心やで」

 「……ありがとうございます、会長さん」
「ご主人を愛しとるんやろ? 冗談にも、抱かれていいだなんて言うてはアカン。浮気
はイカンで、浮気は」

 正気に戻って恭子さんに説教までしてしまう俺の頭の中はしかし、ドス黒い想念で破
裂しそうだ。
自分の言葉とやろうとしている事とのギャップが大き過ぎて、人格を保つ事すら難しい
気がした。
そしてそんな俺を又しても恭子さんが救ってくれる。

 話題を変えてくれたのだ。
「あ、あのう、会長さん。大変図々しいんですが、主人との事を相談させて頂いてもよ
ろしいですか?」
「ああ、撮影が終わってからの事やね」
「はい」

 撮影を重ねるに連れて、恭子さんと俺はどんどん打ち解けて、かなりプライベートな
話まで交わす仲になっていた。
本番はしない、と言う奇妙な条件だが、それ以外はドギツイ無修正SMビデオで性調教
するご主人様と奴隷女と言う関係を演じた仲なので、恭子さんは他の誰にも相談出来な
いような夫との夜の生活の悩みまで打ち明けてくれていたのである。

 俺なりに整理した問題点は次の通りだ。
夫の達也は年下でもあってとても気が弱く、夜の生活も恭子さんが完全に主導権を握っ
ている。
それはいいが、まだ子供が出来ないのが一番の悩み。

 おまけに昨年辺りから、夫が性交直前に萎えてしまう精神的インポに陥る事が多く、
何とか挿入にこぎ着けても、今度は中々膣内射精が果たせない、と言う問題点が浮上し
て来た。
子供を切望している夫婦にとって、これは笑えない深刻な事態である。

 ーーもうそんな心配もいらんようになってまうんやがな。イヤイヤ、まだ何か打開策
がある筈や、諦めるな!

 守男の思惑どおりになってしまえば、こんな夜の悩み事相談も無意味だなと思いつつ、
俺は恭子さんにアドバイスを送る。
諦めるな、と言う言葉は、実の所自分に向けたものでもあった。

 「まだ2人とも全然若いんやさかい、諦めてはアカンで、奥さん。ご主人の方から誘
って来る事は、一切あらへんのやったな?」
「はい、お恥ずかしいのですが」

 夫から誘う事は全くないと言う事を聞き出していたから、俺も堂々と貞操帯を恭子さ
んに嵌めて短期間で調教を完了させてしまったのである。
だが、最後の最後にそれがとんでもない事態を引き起こそうとは、この時はまだ予想も
出来なかった。

 「インポとか射精出来ん、言うんは精神的なもんやからな。やっぱいろいろ趣向を凝
らして、ご主人にその気になってもらうよりないやろ。コスプレとか、外でヤるとか、
SMとか」
「やはりまだ私の努力が足らないのでしょうか」
「いやいや、奥さんもよう努力しとられるようやがの」

 今俺が口にしたような行為は既に試してみたと、恭子さんに聞いている。
それなりに効果はあったようであるし、路線としては間違ってないだろう。
だが、俺は恐らく彼女には思いつかないであろうプレイを教えてやろうとし、同時に稲
妻のようにある奇想天外な考えが頭をよぎったのである。

 ーーもしかすると、守男も丸め込めるか知れない

「あんな、SMっつうても、女の方が縛られたりイジめられたりするだけやないで。反
対もある。ご主人の方を縛ったりして、奥さんの方が責めるんや。どや? やった事な
いやろ?」

 「そんな事は……主人が承知するかどうか」
「奥さん、アンタは背が高いし別嬪さんや。SMの女王様はよう似合うと思うで」
「そんな! 変な事言わないで下さい」

 ついでに言えば気の弱い夫はいかにもM男っぽい。俺は考えれば考える程、恭子さん
がSで亭主がMと言う組み合わせがピッタリのような気がして来た。

 「それからな、こういうプレイもあるで。お二人がエッチしとる所を、わざと他人に
覗かせる。これはかなり刺激的やから、相当な効果があるで」
「そんな……」

 俺が覗いてやってもいい、と言うゲスな提案は控えたが、もしも夫がM気質なら覗か
れて興奮する事も大いにあり得る。恭子さんは当然ながら、とんでもない、と言う表情
で困惑気味だったが、構わずとどめの提案をしてやった。

 「もっと上級になると、ご主人を縛り付けて、奥さんが他の男にヤられる所を見せ付
ける、言うプレイもある。世の中いろんな性癖の男がおってな、そういうので興奮して
一気にインポが治る場合もあるんやで」
「信じられません」

 「今のは極端過ぎるがな、要するに男女の事でタブーを作ってはイカン、どんな変態
な行為や思うても試してみるべきや、っつう事や」
「わかりました。大変有益なアドバイス、どうもありがとうございます」

 最後はボヤかして誤魔化したが、礼儀正しく玄関先でも再度深々と頭を下げて帰って
行く恭子さんを見送りながら、俺は頭に浮かんだアイディアで守男を説得するよりない
気になっていた。
が、うまくいくような自信はまるでない。

 そして、恭子さんの残り香の感じられる家の中で一人になると、俺自身とても楽しく
夢のようだった彼女の調教も終わってしまったのかと寂しさが込み上げ、様々に相反す
る複雑な思いが頭を去来した。

 俺はもう使われなくなる二本の男性器型バイブレータを畳の上に置いて、しげしげと
眺める。
自力では取り外しの出来ない精巧な貞操帯の中に仕込まれ、一本は恭子さんの女性器、
もう一本は排泄器官に入り込んで、貞淑な人妻を夫以外の男性器の形に強制的になじま
せるよう、今日まで奮闘して来た調教具であった。

 ーー男と言うのは全くアホでスケベな事に情熱を傾けるもんやなあ……

 改めて卑猥としか言いようのない二本のペニス型を見ていると、そんなしょうもない
感慨を覚えた。
俺と守男の男性器をそっくりそのまま象った複製であるが、昨日までさんざん使って来
たリモコンコントローラで動かしてみると、ジジジと小刻みに慄えながらクネクネと首
振りダンスを踊り始めた。

 守男の形をした方を手に取ってみると、痺れるような激しい振動が伝わって来る。
全体のサイズは二本に余り差はないが、カリがやたらデカいのがヤツの特徴で、少し嫉
妬を覚えてしまう。

 ーー姉ちゃんしか女を知らんかったインテリのくせに、毒キノコみたいな立派な形を
してやがるな。それにしてもこんなブルブルでまんこをかき回されちゃ辛抱たまらんか
ったやろな。根元はクリから外れんよう仕込んどったし、こないにクネクネ動かれちゃ、
どうやっても気持ちええとこに当たってまうわ

 隣の家くらいまで十分到達する強力なリモコンを操り、恭子さんが夫の前で快楽に悶
絶してそれを隠そうと懊悩してしまう姿を想像しながら、俺自身楽しんで来たのである。
撮影時にドッサリ出したにも関わらず、想像だけでシコシコと励んでしまった事さえあ
る。
それは憎い守男のペニス型で恭子さんを楽しませていたのに。何たるアホか。

 ーーせやが、おケツのバージンを奪ってやったのは亭主でも守男でもない。この俺や。
それに誰も知らんやろ。恭子さんのアナルはおまんこより強烈に感じてまうんやで

 そうだ。二穴バイブ付き貞操帯調教でも、前の穴は守男に譲っているが、実は一番感
じる恭子さんの尻穴を一日中抉って楽しませていたのは俺のペニス型なのである。
性奴隷調教が終わってしまっては何の意味もないのだが、俺は優越感を覚えていた。

 だが三日後になれば、恭子さんは守男の女となってしまう。
あのエロスの化身のような素晴らしい肉体を賞味するチャンスは永久に失われてしまう
のだ。

 結局果たせなかったオマンコと合体する事はもちろん、生ゴムのように強烈に締まる
アナルを犯したり、プロはだしのオクチのテクを楽しむ事も二度と出来ない。

 ーー俺はアホや。せっかく恭子さんがヤらせてくれる、言うたのに

 ヤケクソ半分冗談半分のセックスのお願いを承諾してくれた彼女を犯してやらなかっ
た事を後悔してしまう。
だがそこまで考えた俺はハッと気付いて愕然とした。

 いつの間に俺は、まるで恭子さんが自分の女であるかのように思い上がっていたのか。
彼女は夫のものであり、俺にはもともと何の権利もないのである。
これでは恭子さんの寝取りに血道を上げる守男と同じ穴の狢ではないか。

 ーーもしもあの考えが受け入れられたら、俺だって恭子さんと……

 そうだ。
あんないい女を独り占めしようだなんて、ヒモ状態だったボンクラの亭主には過ぎた事
なのだ。

 そんな夫でも熱愛している恭子さんのため、夫婦関係を継続させ、かつ守男も納得さ
せる奇想天外な提案を、是が非とも実現させねばならない。
一番の問題は恭子さん自信の気持ちだ。

 いくら愛する夫と別れなくてすむ唯一の方法だと言っても、不道徳極まりない関係に
彼女は耐える事が出来るだろうか。
それに夫や守男だって、説得出来る自信が俺にあるわjけではない。

 だが後三日あると思っていた、俺が思い悩むだけの時間は与えられなかった。
その不測の事態は翌日の夜起こったのである。
たった一日の禁欲でも恭子さんの貪欲に改造された股間は、前も後ろも男を求めてウズ
ウズと猛烈に疼いていたのではないか。

 そして還暦目前で恥ずかしいがそんな恭子さんに惚れてしまい、彼女がどんなに辛い
思いをしているだろうかと隣家が気になって仕方なかった俺には、異常事態が発生した
事もすぐにわかってしまう。

 まず、これまで一度も聞いた事のない、恭子さんの大きな悲鳴。
超ラブラブな若夫婦にとって、初めての修羅場のような喧嘩だと推測された。
そして今は一台しかない恭子さん専用の車が急発進する音。
俺はもうほぼ正確に事態を把握していた。


               
    この作品は「新・SM小説書庫2」管理人様から投稿していただきました。