「欲に満ちた白い天使」

                     赤星直也:作

第13話(最終話)茉莉の復職

 それから数日間は平穏だったが「おかしいわ、有里に動きがないなんて。薬が効か
なかったのかしら?」奈美は疑問を感じて診察時間が過ぎると後藤の所に行った。
「後藤さん、薬が効いてないようですが?」困った顔で言うと「そんな事ないでしょ
う、効いているから妊娠の症状が出てないんです。なんなら検査しましょうか?」

 後藤の言葉に(そうだった、有里に飲ませたとは言えないし…)「そうですよね、
症状は出てないしね」苦笑いしながら暫く話すと事務室に戻って「確かめた方がいい
わ…」奈美は里奈を呼んで確かめようとした。
だが、奈美が(どうやって確かめたら良いのかしら?)思案していると茉莉から病室
へ来るように言われる。

 (もしかして、バレたのでは?)不安を感じながら茉莉の病室に趣くと太一と後藤
がいた。
太一は奈美を見るなり「とんでもない事をやってくれたね!」殴りかかろうとしたが
「院長、堪えて!」後藤が抑える。
「とんでもない事って何の事かしら。さっぱりわからない…」強がりを言うが(バレ
たみたいだ…)体が震えている。

 「そこまで言うなら仕方がない。これはどういうことだ!」薬袋を見せると「それ
がどうかしたの、ただの薬じゃないのよ」「これは中絶薬だ。後藤が処方したのをど
うして有里が持っているんだ?」太一は怒りを抑えて言う。
「知らないわ、誰かが勝手にやったのよ」
「そこまで言うなら仕方ない」太一はスイッチを押し「今すぐ来てくれ!」マイクに
話かけると里奈が現れた。

 「里奈さん、これを説明して欲しいの」茉莉が薬袋を見せると「奈美さんから有里
さんに渡すように頼まれました…」項垂れて言う。
「嘘よ、そんな事した覚えはないわよ。勝手にやったのよ!」奈美は大声で言うが
「本当です。有里さんに渡したら褒美として私を…」恥ずかしいのか言葉が切れた。

 「恥ずかしがらなくていいから、本当の事を教えて欲しいの」茉莉が優しく言うと
俯いて「裸になって抱き合いました…」里奈の顔が真っ赤になっている。

 里奈が言い終わると皆が黙り込んだ。
沈黙を破って「奈美、言いたい事があるか?」太一が詰め寄ると「何もないわ。クビに
したいならしてもいいわ。でも、事務処理は誰がするの?」開き直って言うと「それ
なら心配ないわ。完全に治っていないけど半日だけやるの」奈美を見つめて言う。

 「それなら、今日でさよならね」病室から出ようとしたが「さよならの前に謝って
もらわないとね」奈美を抑えた。
「イヤよ。どんな事があっても頭はを下げないからね」
「そこまで覚悟してるなら、素っ裸にして晒してやるからね!」茉莉が言うと「やれ
るもんならやりなさいよ。ここは病院よ、できる訳ないじゃないのよ!」言い返す。

 「太一さん、聞いたでしょう。やるしかないから手伝って!」茉莉の言葉で後藤や
太一、里奈も加わり奈美の服を剥ぎ取りだした。
それは想定外なので「やめて~。謝るからやめて~!」叫びながらも脱がされまいと
抵抗してている。

 奈美は下着姿にされると態度を変えて「許して、何でもするから許して~!」泣き
出し詫びを入れた。
「本当に何でもするの?」
「します、ですからヌードを晒すのは許して下さい…」涙を流しなら言うと「許して
欲しいなら、ヘアを剃って。それに写真も」茉莉が条件を付けた。

 「ヘア剃るなんて、できない…」
「イヤなら、素っ裸になって病院を回って貰わないとね」
「それはイヤ、ヘアを剃ります…」承知するしかなかった。
「聞いたでしょう、里奈さん、準備して!」里奈は一旦病室を出るとワゴンを押して
戻り「奈美さん、剃るから準備して!」催促されパンティを脱いで淫裂を露わにてい
く。

 里奈は慣れた手つきで奈美の絨毛を短くしカミソリで剃っていくが(恥ずかしい、
こんなのを撮られるなんて…)身から出た錆とは言え涙が落ちていく。
それでもカミソリは動きを停めず、絨毛の全てを消し去ってから退けられ剃られ地肌
に消毒薬が塗られていく。

 「終わりました!」里奈が声を出すと「可愛いわね。ヒラヒラもまだピンクじゃな
のよ」茉莉は露わになった淫裂を撮りだすが奈美は泣く事しかできない。
茉莉はそれでも撮り続け「二度と顔を見せないで!」「そうします…」泣きながら言
い「着てもいいわよ」服を着るように言う。

 服を着終えた奈美が病室から出て行くと「明日からは私がやるからね」太一に告げ
たが「わかった。無理はしないで程々だぞ」承知するしかない。
その事は一夜のうちに病院内に知れ渡り、翌朝病室からでて事務室に入ると「事務長、
おはようございます」皆が挨拶してくる。

 こうして、茉莉は午前中だけ事務室で仕事をして午後は病室で過ごしていたが、何
時しかガンが消えていた。
それは有里にも知らされ「元気があるなら大人しくしてないと」大きなお腹を抱えて
言い聞かせている。
茉莉が本格的に事務をするようになると有里が男の子を出産して太一は終始笑顔が絶
えない。

 だが茉莉は(男の子だったら院長止まりね。理事長は私の娘が最適かも…)時分の
卵子で産ませた娘を抱き締めながら有里の実子を見つめている。
同じように有里も(この子が理事長で、あの子は事務長が最適よ)互いに見つめ合っ
ていた。
そんな事とは知らず太一は2人の子をあやしながら笑顔になっている。

それから数年後、2人の子供は学校に通い出し「いい、弟には負けちゃダメだからね
」茉莉が娘に言い聞かせ、有里も「姉さんに負けちゃダメだからね」同じ事を言って
いる。
だが、2人の子供は親の言う事を聞かずに仲良くしているから(いずれはわかってく
れるわ)茉莉と有里は子供を見ながら想いに耽っていた。

~完~