『見果てぬ夢』

                            とっきーさっきー:作

第6話 夫以外のモノ……騎乗位

 3月30日 日曜日 午後9時15分  岡本典子

 私は、男の太腿の上にお尻をペタリと落としたまま俯いていた。
膣のなかに感じる太い肉の棒の存在。
それをしっかりと確認しながらも、次の行動へ移せずにいた。

 ごめんなさい……博幸。
こんなふしだらな妻を許して下さい。
時間が経つほどに罪悪感が増していく。
男のモノを感じれば感じるほど、それが誰のモノなのか?
紛れさせた意識が鮮明になっていく。

 河添拓也……元恋人……
そして、今の私が絶対に逆らってはいけない人……

 「さあ、典子。俺をお前の旦那だと思って、腰を上げ下げするんだ。息子が気持ち
良く射精するまでな。ほら、さっさとしないと、お前さんの夢のカケラがどこかへ飛
んでいくぞ」

 「……はあ……はい……うっ、うううんんッ!」
私はベッドについた両ひざを持ち上げると、代わりに足の裏をひっつけた。
そう、膣に河添のモノを挿れたまま、私は男を跨いだ状態でしゃがんでいた。
これからは、ひざの屈伸だけで男を絶頂に導かないと。

 博幸との夜の営みで、たまーに上に跨ったこともあったけれど、私は『気持ちいい
っ』て叫んでるだけで、あのときは彼が下から突き上げてくれた。
でも、今は違う。
こんな恥ずかしい姿勢のまま、自分から動かないといけないなんて。

 私は再度、河添の胸に両手を乗せ直すと、それを支柱のようにして腰を持ち上げて
いく。
「はあぁっ、んんんっ……ぬ、抜けちゃうぅぅっ!」

 ズ二ュ、ズニュと卑猥な肉どうしがこすれる音がして。
久々のエッチなゾクゾク感に心が戸惑って。
膣が一気に解放されて、太腿の筋肉がプルプル震えて。

 でも、こんなの……きつい……!
エラの張った先端が抜けきらないまま、腰がもう一度落ちていく。
ペシャリと乾いた音がして、お尻がまた太腿にひっつていてる。

 ずっと前に博幸から教わった。
女の人が男の人の上に跨って、乗馬に似ているから騎乗位だって。
女性が恥じらいを浮かべながらセックスするから、男性は興奮するんだって。

 でも、この体位は男女の協力がないと、ひとりだけではしんどいだけだよって。
……そうだよね。
だからこの男は、私に騎乗位をやらせてるんだ。
私を辱めようとして……
私の苦痛と羞恥に震える顔を堪能しようとして……

 ズ二ュッ、ズニュ、ズニュ……ズズズ……
「ううぅぅんんっ、んくぅぅっ……!」

 ペシャンッ……ズ二ュッ、ズニュ、ズニュ……ズズズ……
「ううんん、膣がこすれて……ああぁぁっ……!」

 ペシャンッ……
私は男に跨ったまま、ひざの屈伸を繰り返していた。
ジャンプを繰り返すカエルのように、両手を揃えたまま両足を恥ずかしいくらいに開
いて。

 大切な処に男のモノを咥え込んだまま、お尻を何度も上げ下げして。
男を気持ち良く導いて……
こんな体位って、辛くて恥ずかしいだけなのに。
こんなセックスで感じたくないのに。

 典子の心にセックスの火が灯り始めてる。
膣の壁からジワジワって、エッチなお汁が滲み出してる。

 「やっとこなれてきたようだな。どうだ、典子? 久しぶりのセックスは? 男の
モノの味は?」
「い、いやぁ……そぉ、そんな言い方……しないでぇ……はぁ、はあ、んふぅぅ」

 私は河添の的を得た指摘に、無意識に頭を振っていた。
淫らな典子を演じる方が得なのに、楽なのに……
なぜって感じで、素直じゃない私が否定する。

 ぬちゃっ、じゅちゃっ、ぬちゃっ、じゅちゃっ……
「あんぅぅっ……くぅぅぅっ」
淫らな肉をこする音まで変化している。
お尻が落ちるたびに、エッチなお汁がシリンダーから押し出されるように溢れてる。

 太腿の筋肉はパンパンに張って泣いているのに、それなのに、どうしてよ!
典子の性欲が風船のようにふくらんできちゃう。
「はあぁ、はああんっ……だぁ、だめぇ、腰の動きがとまらないぃっ、とまらないの
ぉっ!」

 鼻に抜けるようなソプラノボイスで、さらにエッチな声を出そうとくちびるを大き
く開いて……
もう、感じる演技なんかじゃない。
本当に、気持ちいい声で叫んでた。

 典子の大切な人の面影が霞んでいく。
心の中をどうしようもない快感が渦巻き始めている。
「ほら、もっと感じろ! 俺の息子を典子の膣で締め付けてみろ! 忘れるんだ。忘
れろ! なにもかも忘れてしまえ!」

 ぬちゃぁ、じゅちゃっ、ぬちゃぁ、じゅちゃぁ……
「いぃぃ、いやぁ……そ、それだけは……いやぁぁ……」
寝転んでいるだけの河添が叫んでる。

 典子のどこかへ飛んで行っちゃいそうな目を、黒い瞳が追い掛けている。
そこに、さっきまで覆っていたフィルターは消えていた。
見えなかった瞳の奥底まで晒け出してる。

 これが……彼の心?
これが……河添の本心……なのよね?
私の見えないベールが、ビリビリと音を立てて裂け始めてる。
だから、私も叫び返していた。

 ぼやける記憶を守りたくて……
河添に純な典子を見せたくなって……
そうしたら……なぜなのかな? 涙が溢れてきて……