『ツレがスケベ小説に染まりまして…』
    
                           とっきーさっきー:作

第11話 リョウカより涼花の方がスケベ少女なの


 「あのね、吾朗ちゃん……わたし、もっとエッチな女の子になれるかな?」
「どうしてだよ? 涼花は別に今のままでいいじゃん」
「ううん、それだとダメな気がするの。吾朗ちゃんが求めるような女の子に、わたし
は……」

 吹き抜ける夜風は意外に冷たかった。
二人して飲んだアルコールと、ふたりして感じ合った恥ずかしい手慰みも、時が経ち
素面に戻った身体には、居心地の悪い気だるさしか残してくれない。

 「小説の中のリョウカって女の子、今のわたしよりも魅力的だよね? 男の人が大
好きで……男の人とオォ、オチ○チンが大好きで、いつもその……オマ○コって平気
で口に出来る。吾朗ちゃんがそう描くんだから、リョウカの方がきっと……」

 意地悪なほど吹き付けてくる風に向かって、涼花は声を飛ばした。
じれったいくらいに鈍く開閉する唇をせっつかせて、赤面しそうな単語も拡散させた。
そして涼花は立ち止った。
言葉を返せない吾朗も足を止めた。

 それはマンションへの帰り道だった。
居酒屋を後にして30分余り経った後のことだった。
人の気配のない公園の真ん中で、彼女は小さく肩を震わせていた。

 青白い街灯の光が照らし出す淡いスポットライトの下で、微かに嗚咽も紛れさせて
いた。
「な、なにバカなこと言ってんだよ。リョウカはリョウカ。涼花は涼花だろ? そん
なの一緒にしてどうすんだよ」

 「でも吾朗ちゃん、言ったよね? 『エッチな小説が、永遠の愛を保証する』って。
この小説がなければ、わたしと吾朗ちゃんの関係って……」
身長180センチの吾朗の下で、身長160センチの涼花が俯かせていた顔を持ち上
げていた。

 やっぱり泣いていたのだ。
しかし彼女は……
黒目がちな瞳を腫れぼったく涙で濡らして。

 それなのに頬の肉だけは不器用に緩ませて。
なぜかツマ先立ちで背伸びまでして、ショートな後ろ髪が肩に掛かるくらいに頭を反
らし上げて。

 「キスして……吾朗ちゃん……」
涼花が細い声を漏らした。
時折、ゴォーっと唸りを上げる風を待っていたかのように、それを告げると目を閉じ
る。

 尖ったあごを突き出させて、柔らかな唇の肉をなだらかな菱形に変える。
「ちゅぷ、チュ、チュ……」
涼花か?
吾朗か?

 区別しようもない、愛し合う唇の調べが静かに響き渡る。
「はむぅ、ふんむぅ……ちゅる、レロ、レロ……」
そして静かな愛の囁きは、積極的な愛の鼓動へと進化していく。

 唇どうしを結び合わせたまま、涼花の舌が突き伸ばされていた。
上から覆いかぶさる吾朗の口内に、湧き出させた唾液の蜜をたっぷりと送り込ませて
いた。
滑らかに舌先をくねらせて、男の口中を甘くて切ない女の味で満たさせた。

 「ぶはぁ、はぁ……涼花……」
女性の側にリードされる濃密なキスが終わりを告げる。
溢れ返りそうな唾液の洪水に目を大きくした吾朗に、不意にまぶたを開けた涼花が瞳
をぴたりと合わせていた。

 そのままである。
薄く半円を描かせた唇を、彼女の方から引き離していくのだ。
街灯が照らし落とす光の輪の中で、交わされた唾液の糸がキラリと輝き、ブツンと千
切られた。

 「いいの……吾朗ちゃんはそのまま……」
涼花は膝を突いていた。
踏み固められた地面の上で、上目遣いの眼差しを吾朗に送りながら、右腕を差し伸ば
していた。

 向き合う吾朗の下半身に指を愛おしそうに触れさせると、撫でるような手付きでズ
ボンのファスナーを引いた。
しなだれかかるような指使いで、男のペニスを取り出していく。

 「うふふ、ちょっとお疲れモードみたい」
目を細めた涼花が、薄く笑みを浮かべた。
新入りのホステスのように、背伸びした艶っぽい声音も零すと、俯き加減なペニスの
先端を指で突いた。

 人見知りなのだろうか。
気恥ずかしそうにする吾朗の肉棒をその指を絡めていき、根元の付近を柔らかく握っ
た。

 「涼花……お前、まさか……?」
彼女の仕草を目にすれば気付いていたはず。
それなのに吾朗は、周回遅れで声を上ずらせた。

 「涼花ねぇ、吾朗ちゃんのオチ○チンがぁ、大好きなのぉ」
飴玉を口に含んだ。
そんな舌足らずな艶声が、真下から聞こえた。

 そして涼花は口を寄せた。
居酒屋のテーブルの下で、その涼花に手コキで気持ちよくさせられ、今は半勃ちの姿
を晒す肉茎に唇と舌が這わされる。

 「むちゅ、ちゅにゅ……ふんむぅっ……」
アルファベットの『O』の字に開かれた唇が、吾朗のペニスを呑み込んでいた。
ついさっきまで吾朗の舌と戯れていた涼花の舌が、赤銅色をした肉肌をなぞるように
舐め上げる。

 いやらしくて淫らな舌音が、夜の公園にコダマしている。
「はあぁ……涼花、どうして?」
「じゅぶ、むちゅぅ……どうしてってぇ、涼花はぁ、チュル、チュル……エッチな女
の子だから……」

 吾朗が、訊くのも野暮な問いかけをした。
その吾朗の股間から返ってきたのは、相変わらずの舌足らずな素直すぎる回答である。
「わぁ、オチンチンが元気になってきたぁ」
続けて、幼さを演出したような悦びの歓声が後を追った。


                
       
 この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。