『エスカレーターの狭間で…』
    
                           とっきーさっきー:作
第7話 オナニーの代わりに


 「じゃあさぁ、俺にも見せてよ。怜菜ちゃんのオナニー」
「えっ! あ、あの、ここでですか?」

 俺は女を意識してまた耳元で囁いた。
残り5段まできて、怜菜ちゃんの身体がピンと伸びる。
思わず手にしたモップを取り落としそうになり、なんとか胸の中へと抱え込んでいる。

 「おや、怜菜ちゃん。否定から入らないってことは、場合によってはおじさんにオ
ナニーを見せてくれるってことかな?」
「い、いやです。そんなの絶対に見せられません」

 俺の意地悪な挑発に、弾かれるように彼女は反発する。
「あははは、冗談だよ。さすがにここで指を使われたりしたら、お巡りさんが飛んで
くるからね」

 「だったらどうして?」
ほっぺたを膨らませた彼女は、前にも増して可愛らしかった。
俺はそんな姿を微笑ましく思い、同時に沸き立つ己の性欲に苦笑した。

 「ズボンを引っ張り上げてみせてよ。怜菜ちゃんの恥ずかしい処に喰い込むくらい
にね」
だから、彼女の問いには答えず口走っていた。
無意識? 本能? それとも、あの女に?

 そして、俺たちの間に1分間の静寂が訪れて……
「わかりました。します……」

 後ろ向きの彼女から、小さくても稟とした決意が俺の耳に届いていた。
もう少し手間取ると思ったのに、それはあまりにもあっさりしていた。

 やっぱりこれも、頼まれたら断れない彼女の性格かな?
それとも他になにか? 彼女の身に? ……まさかね。

 カラン……! 乾いた音がして、モップが寂しく転がった。
「うっ、ああぁっ……つ、辛い……」

しなやかな指がズボンのサイド。 太ももの上のあたりをしっかりと摘んでいる。
少し余裕のある布地を指に絡ませて、腰骨を目指して引き上げていく。

 俺は彼女の両肩が泣くのを見つめて、恥ずかしげにくねる背中に視線を落として、
最後に複雑なしわの中に浮かぶ、丸い尻の輪郭を眺めていた。
同時に、足音を忍ばせて近付く人影に笑みを浮かべてやった。

 お前さんの恨みを晴らしてやっているんだからな。少しは感謝しろよ。
「うぅっ、くっ、これで……いぃ、いいですか?」
下を俯いているのか、怜菜ちゃんの声はくぐもっていた。

 「ああ、よ~く見えてるよ。ふたつに割れた尻肉がはっきりとね」
「いやぁ、そんな言い方……恥ずかしい」
ズボンを引き上げたまま、怜菜ちゃんは太ももをよじらせた。
そのせいで、ますます少女特有の張りのある肉が露にされる。

 「どんな感じ? 股布がオマ○コに喰い込んでいるのは」
「うぅぅっ、は、恥ずかしい。それだけです」
公衆の面前で行われる恥辱のショータイム。
俺はその行為全てに酔い、我を忘れかけていた。

 「それじゃあ、そのまま歩いて見せてよ。階段の端までね」
「あ、あぁ、そんなことをしたら……はい、歩きます」
怜菜ちゃんは悲愴な表情をしながらも、あっさりと承諾した。
よろよろと歩みを覚えた赤ん坊のように足を進める。

 さすがに清掃員の姿勢を不自然に思ったのだろう。
上りのエスカレーターから何人かの利用者が、身を乗り出すようにして俺たちに視線
を送っている。
いや、下りのエスカレーターからもだ。

 「はあ、くぅぅっ。辛い……ズボンの生地が……うっく、擦れちゃう」
どこまでもバカ正直な娘さんだ。
なにも本気でやらなくても……

 「よぉし、今度はこっちへ戻ってくるんだ。絶対に手を緩めたらいけないよ」
「くぅぅっ、は、はい」
怜菜ちゃんは回れ右をすると、俺に向かって歩き始めた。

 相変わらず両サイドから作業ズボンを引き上げて、ノーパンの股間に生地を喰い込
ませたまま一歩一歩近づいてくる。
歯を食い縛り、可愛い顔を汚すように眉間にしわを寄せ、襟元からはだける首筋まで
肌を朱に染めている。

 この光景見たことがある。
……そうだ。羞恥系のエロビデオなんかで、たまにしてみせる綱渡りに似ている。
両腕を拘束された女が、腰上に張られたロープを跨いだまま歩かされるっていう恥辱
の行為だ。

 怜菜ちゃんはそれを、大衆の面前で行っている。疑似綱渡りを……
「はあぁ、うぐぅっ、だめぇっ」
でもさすがに限界なのか、彼女の身体が大きく傾げた。
額から噴き出した大粒の汗が、清掃を終えた階段に水滴を降らせる。

 遊びもここまでのようだな。
俺は彼女を抱きとめようと一歩踏み出した。
だがその瞬間、こっちへと近づく警備員の制服に身体が反応しなくなる。
まずい! たとえ5段ほどでも頭から倒れたら……?!


                
       
 この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。