『エスパーは君だ!』

                           とっきーさっきー:作

第2話 先輩、私のパンティー見てください


 「どうした? 宏」
僕たち3人の行動に違和感を感じて朝原が振り返る。

 「あっ!」「うぅっ!」
彼女たちの口から洩れる短い悲鳴。
ヒンヤリとした朝の空気の中で、うなじを首筋を数条の汗が流れ落ちていく。

 その状況下で先に動いたのはあやめだった。
さっと前屈みだった姿勢を正すと、風に揺られるスカートから両手を引き離した。
そのまま、ウエストあたりにひっつける。
それを見て、慌てて奈菜も同じ姿勢を取る。

 顔は真っ赤なのに、剥き出しの太ももをプルプルさせて、目の下に涙をいっぱい溜
めたふたりの美少女。
でも、ふたりとも会長である朝原のことが大好きなんだよね。
あいつは、女の恋心に鈍感だから気が付いていないみたいだけど、僕は何か月も前か
ら知っていたよ。
ふふっ、だからその淡い恋心を利用してやったのさ。 

 ビリビリビリビリ……! 

僕は精神を集中させた。
新たな指令を念波に乗せて送り込んでいく。

 「あ、あやめ。私たちも、もっと積極的にしないと」
「そ、そうね。奈菜、一緒に前に出てあいさつしましょ」
ふたりは頷き合うと、僕たちというか朝原の前に並んで進み出る。
そして……

 「おはようございま~す♪」
登校している生徒もいないのに、ペコリと腰を30度に折り曲げた。
明るくて透き通るふたりのハーモニーが、ほんの少し震えて……

 その震えが伝わったのか、お辞儀をしたお尻も微かに震えて……
あやめちゃんは、白。
奈菜ちゃんは、水色。

 僕はズボンの前が膨らむのを感じながら、その光景を目に焼き付けていく。
隣で朝原が、パンティーをもろだしにしながら挨拶する美少女たちに視線を密着させ
る。

 「お、おはようございま~す♪」
両手を前に揃えたふたりが、またお辞儀する。
スラリとしたふくらはぎから太ももが綺麗に伸びたまま、上体だけがくの字に曲がる。
教科書どおりのお辞儀。
完璧な姿勢。

 でも僕と朝原の視線は、そんなもの見ていない。
腰のあたりまでずり上がったスカートの下に覗く、無防備なお尻を眺めていた。
バレーボールのように発達したお尻に貼り付く、逆三角形の薄い布を特等席で無言の
まま見つめていた。
それじゃふたりとも、最後の仕上げをさせてもらうね。

 ビリビリビリビリ……!

 精神を集中させた僕はまた念波を送る。
超ミニスカートから、パンティを露出させているふたりの背中に向かって話しかけて
あげた。

 (あやめちゃん、奈菜ちゃん。結局スカートの短さ対決ってどっちが勝ったの? 朝
原君がミニスカートの女の子が大好きってことは、ふたりとも知っているから、こん
な恥ずかしい服装で登校して来たんでしょ。だったら、決着をつけないとね。なにが
いいかな?……そうだ。もっと身体を折り曲げてみなよ。下に穿いているパンティを、
全部丸見えにした方が勝利ってことでどうかな? それだけスカートが短いってことだ
しね)

 挨拶をしていたふたりの背中が固まった。
そのまま首だけ動かして互いの目を鋭く睨んだ。

 「おはようございま~す……ううぅっ」
「お、おはようございま~す……くぅぅぅっ」
奈菜が一歩早く腰を折り曲げた。
ほんの一瞬出遅れたあやめが後を追う。

 さわやかな声に続いて漏れる恥辱の悲鳴。
そんな彼女たちを僕たちだけじゃない。
さっきまで途切れていたのに、集団で登校してきた生徒たちの視線にも晒される。

 「おっと、磯山さんも高山さんも大胆! 超ミニスカートじゃんか」
「おい、それよりも見てみろ。パンティが丸見えじゃん」
「やだぁ~、恥ずかしい。ふたりとも副会長のくせして、何よあのハレンチな服装。
こっちまで顔が赤くなっちゃうじゃない」

 すれ違う生徒たちから飛び交う、好奇な視線と棘のある会話。
それでもふたりの美少女は、更に腰を折り曲げていく。
最敬礼……45度のお辞儀。

 「はあぁっ、んんっ……朝原先輩、奈菜のパンツ……見えますか?」
「んくぅぅっ、は、恥ずかしいぃ。で、でも、朝原先輩、あやめのパンツも見えてい
ますか?」
腰の上まで捲れ上がったスカートの下に並ぶ、ふたつの丸いお尻。
白色と水色の布が、心細そうに右に揺れて左に揺れる。

 もう恥ずかしいなんて感覚は通り越している。
でも、この子にだけは負けられないの。絶対に朝原先輩の心は私が射止めるの。
僕の心にも、ふたりの必死の思いがビシビシと伝わってくる。
その思いに胸を躍らせながら、僕はあり得ないくらいエッチなパンチラショーを眺め
ている。 

 1分が経過した。
ふたりはお尻を突き出したまま動こうとはしない。
3分が経過して、パンティーを晒したまま人形のように固まったふたりの横を、遅刻
ギリギリの生徒が駆けていく。

 僕は唖然としたまま声を失った朝原に代わって、念波を送る。

 (ふたりともよくがんばったね。でもね、これは勝負だから決着をつけないとね。
う~ん。あやめちゃんも奈菜ちゃんも、可愛いパンティを丸出しにして朝原君の心を
掴みかけていたけど……お尻の割れ目にパンティを喰い込ませていた奈菜ちゃんの勝
利かな。やっぱり、僅差のときには男の下半身に訴えないとね。これで朝原君の心は
奈菜ちゃんに大きく傾いたってわけだ。おめでとう)

 念波を送り終わった瞬間、奈菜が笑った。
隣ではあやめが、がっくりと肩を落としている。
僕はそんなあやめにだけ届くように念波を送った。
放課後の生徒会を愉しみにしながら……