「ありさ ミラホスタの夢(改)」 Shyrock:作 第7話 クリスタルスカルの魔宮 なぜだかシャイの顔色が冴えない。 「だいじょうぶ?体調悪いの?★☆★」 「実は、ジェットコースターが苦手なんだ……」 「え~~~!?マジで?☆★☆『クリスタルスカルの魔宮』すっごく楽しみにしてたのに~★☆★」 「ごめん」 「だいじょうぶだって、シャイさん、乗ろうよ☆★☆」 「うん……でもなぁ……」 「ミステリアスアイランドの『センター・オブ・ジ・アース』と比べたら、まだマシだよ☆★☆」 「ううん……」 どうも歯切れが悪い。 そこでありさは大胆にもシャイの耳元で、 「いっしょに乗ってくれないと、今夜いいことしてあげないもん~☆★☆」 「ええ~!?それは困る」 「あんなことやこんなこと、いっぱいしようと思ってたのになぁ……☆★☆」 「あんなことやこんなことって?ムムムッ……仕方ない!よし乗るぞ!」 「やった~~~!☆★☆」 ありさの色仕掛けがまんまと功を奏し、結局予定どおり『クリスタルスカルの魔宮』に乗ることとなった。 観念したのか、それとも開き直ったのか、シャイはありさの手を握り自ら進んで列に並んだ。 これにはありさも満足そうに微笑んでいる。 「ジェットコースター苦手な男性って意外と多いね☆★☆」 「男って自分でコントロールできないスピードの類は苦手だって聞いたことあるけどね」 「そうなんだ☆★☆それと、女の子は恐かったら思い切り大声で叫ぶけど、男の人って恥ずかしくて叫ぶのを我慢するから、余計に恐怖感が増すんじゃないかな☆★☆」 「うんうん、それは言えるかもね」 「女の子も恐いんだけど、その恐さを楽しんでるところがあるみたい☆★☆」 「男はそれができないんだよね」 ジェットコースター談義に花を咲かしているうちに、いつのまにか『クリスタルスカルの魔宮』の乗り場が近づいてきた。 いよいよ『インディ・ジョーンズ』の冒険アトラクションの幕開けだ。 インディ・ジョーンズ博士の助手パコが企画した「若さの泉」を探す魔宮ツアーに参加すると言う設定で、守護神のクリスタルスカルの怒りに触れ、訪問者に恐ろしい超常現象が襲いかかると言う。 アトラクションが始まると、まもなく骸骨の頭「クリスタルスカル」が迫ってきた。 その後、ライドは大きく左に曲がって行くと、右側にゆらゆらと青い光が奥の壁に映っているのが見える。 直接は見えないが、その青い光がおそらく“若さの泉”に反射した光なのだろう。 どこからか勇敢なインディ・ジョーンズの声が聴こえてきた。 彼の助けを借りて危険だらけの魔宮から脱出しなくてはならない。 ライドの動きがかなり複雑で、急発進や急カーブを繰り返しながら真っ暗な洞窟を駆け抜ける。 ライドそのもののスピードは意外と遅いのだが、上下の揺さぶりや、急停止、急発進だらけで、まるで悪路を走行するラリーレイドのようだ。 「きゃあ~~~変な虫~~~!気持ち悪いよ~~~!☆★☆」 「本当だ!虫だらけだ~!」 ありさはシャイにしがみつこうとするのだが、安全ベルトを装着しているため態勢は変えられず、手だけ伸ばし五本の指を交差して絡め握りしてきた。いわゆる恋人つなぎである。 「ありさ、虫嫌いなんだもん~☆★☆」 「大丈夫だよ~!作り物だし。ありさちゃん、僕にしっかりつかまってて!」 「きゃぁ~~~今度はミイラが出てきた~~~!」 「お~~~っ!本物みたい!迫力あるね~!」 ライドは猛スピードで脱出を図るが、無数の虫や毒矢など神秘的な力による魔宮の恐ろしい罠が次々にありさ達を襲ってくる。 直前までアトラクションに顔をしかめていたシャイ、のりのり気分だったありさだったが、意外なことに冒険が始まってからは様相が全く一変してしまった。 アトラクションの終盤、突然目の前から巨大な岩石が転がってきた。 「きゃぁ~~~!☆★☆」 天井からインディ・ジョーンズがぶら下がっていて、いったん下がったライドが急降下した。 その時、左上の方からピカッとフラッシュが光った。 「あっ、もしかして写真撮られた!?」 「撮影された写真は出口で見せてくれて、気に入れば買えるらしいよ☆★☆」 「じゃあ、一枚買おうよ」 「でも変な顔してたら嫌だなあ☆★☆」 「ありさちゃんは、変顔でも可愛いよ」 「ま~た~お上手言って~☆★☆」 「でも思ったより恐くなかったね」 「よく言うよ、乗る前はあお~い顔をしてたくせに~☆★☆」 「でも、アトラクションに入ってからは、ありさちゃんの方があお~い顔してたんじゃないかな?」 「暗くて見えなかったはずなのに。プンプン!☆★☆」 アトラクションの出口にエクスペディション・フォトアーカイヴなるものがあった。 分かりやすく言うならディズニーシー側が撮影した写真の販売所だ。 スタッフの女性が購入を薦めてくる。 『あなたが勇敢な探検家である証しを想い出として持って帰りませんか』 「僕たちは勇敢な探検家と言うより、臆病な探検家だったかもね」 「言えてるかも☆★☆」 撮れた写真を覗き込む。 「よく撮れているよ」 「やだよ~、わたし口を大きく開けてるもん★☆★」 「でも乗ってる人みんなすごい顔してるよ、記念に買おうよ」 「シャイさんは平然とした顔してるのに、ありさびっくり顔してるし★☆★」 「びっくり顔がまた可愛いんだよね~」 「ほんと?じゃあ買おうかな☆★☆」 シャイはスタッフの女性に写真を求めた。 「二枚で2,100円になります。写真は向こうのお渡しコーナーでお渡ししますので、しばらくお待ちください」 「は~い☆★☆」 まもなく写真ができあがってきた。 きれいなオリジナルフレームの中央に、ありさたちと共にライドに乗った十人の人たちが写っている。 その中でも最前列に座っているありさの驚いた表情がひときわ目立っていた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました |