『NOA 鍵』
 
                    Shyrock:作

第2話

 ところがまたもや妻がうごめき、手がオレの肩に絡まってきた。
(おいおい、オレは今夜飲み過ぎたのでその気はないぞぉ……)と、心の中で呟きはしたものの、妻の手をはねのけるのも可哀想なので、妻のするがままに任せることにした。

 すると妻の手に力がこもり、オレをギュッと抱きしめたと思うと、オレの胸にしがみついて来た。
妻の頭がちょうどオレのあごの下辺りに来ている。

 (ん……?)
その時オレは妻に、いつもと違う何かを感じた。

 (何だろう……)
それは香りであった。

 シャンプーを変えたのかも知れない。
あるいは化粧水を変えたのかも知れない。
と、オレはさほど気にはしなかった。

 就寝時その気が無くても、ベッドの中で甘えられると、男と言う生き物はだんだんとその気になって来るものだ。
愛して欲しいのと無言でオレの胸に頬擦りをし、唇を這わせてくる妻を、オレは抱き返し、ふくよかな乳房をまさぐった。

 たわわに実った果実のような乳房が実に心地よい。
ただ奇妙なことに、いつもより乳房が一回り大きく感じられたが、「酔ってるからだろう」とオレは意に介さなかった。

 乳房を愛撫すると、妻の気持ち良さそうな吐息が漏れた。
(あぁ……)

(ん……?……えっ!?)

(あぁ~……)

(えっ!?まさか……)

 かすかな違和感が次第に大きく膨らんでいった。
いつもとは違う妻の感触……いや、この感触は妻ではない。

 オレは目の玉が飛び出そうなぐらいに驚愕した。
(この女は一体誰なんだぁ……)

 妻ではないと悟っても、オレは素知らぬ態度でそのまま乳房への愛撫を続けた。
女はオレの指に愛されて、淫らな喘ぎ声を惜しみなく漏らした。

 (どうしてオレと妻のベッドにこの女がいるのだ……もしかしたら、オレは夢を見ているのかも?)
オレは頬をつねってみた。
(痛い)

 どうも夢ではなさそうだ。
オレは今、妻ではない見知らぬ女を抱こうとしている。
もしかしてオレは異世界にでも迷い込んだのだろうか。
いや、そんなことは考えられない。

 据え膳食わぬは男の恥ではないが、オレは目前の美味なものにむしゃぶりついた。
酒を飲んでいなければこの場から飛んで逃げていたかもしれない。相手が妻以外の見知らぬ女性なのだから。

 しかし、時に酒は人を大胆にしてしまう。本来ならブレーキを掛けるところであっても、逆にアクセルを踏んでしまう。
すっかりオレは目前の女のたわわに実った乳房に欲情させてしまっていた。

 女の身体から漂ってくる艶めかしい香りも、やはり妻のそれとはかなり違う。
オレは躊躇することは無かった。
欲望は好奇心に煽られ、さらに拍車が掛かっていく。

 オレは乳首を舐め回しながら、もう片方の手でネグリジェの中をまさぐった。
すべすべとした肌がオレの指に反応する。

 オレは無性に女のくちびるが欲しくなった。
女の背中に手を回し、強く抱き寄せくちびるを奪った。
(チュッ……)


                

   この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました