『球 ~鏡~』 Shyrock:作 第5話 鏡 「どうして壁にカーテンがあるのかしら? カーテンの裏は何かな?」 「窓じゃないみたいだし、何だろう。ちょっと覗いてみようか」 ワタルはベッドにのぼって、カーテンを開いてみた。 すると奇妙なことに、壁には大きな鏡があった。 サイズは縦が2メートル、横が1メートル程度あるだろうか。 「え……鏡?」 「あら、鏡じゃないの」 「何だあ、鏡か。別世界に通じるドアでもあるのかと期待してしまったよ」 「あははは、まさか。ドラえもんじゃあるまいしそんなのある訳ないじゃない」 「そりゃそうだよな~」 「でもどうしてベッドの横に鏡があるのかしら? しかもこの鏡って姿見用だし……」 「う~ん、何に使ってたんだろう?」 「しかもこの鏡って壁に埋め込まれてるわ。ふつう姿見鏡ってスタンドミラーが多いんだけど、珍しいわ」 「奇妙だね」 ベッドの横に鏡が取り付けられている。 元々鏡は以前からこの位置にあり、何かの都合でベッドをこの場所に配備したのかも知れないが、わざわざモデルハウスにそのようにレイアウトすることが不思議でならなかった。 球たちは不可解さに首を傾げた。 球は何かを思いついたのか、はたと膝を打った。 「あっ、分かった~!」 「何が分かったの?」 「家の前住者がおそらく鏡を見ながらエッチするのが好きな人たちだったんだ~」 球が突然語り始めた突拍子もない言葉に、ワタルは唖然とした。 「まさか。それだけのために、こんな豪華な鏡をこのような場所にわざわざ取り付けたりするか?」 「十分可能性はあると思うの。だって夫婦生活って大事なことだし、そうすることによってすごく萌える人だっているかも知れないじゃないの」 「そういうものか? オレには理解できないけど」 「女性は、自分がハメられたり喘いだりしている姿を見る機会があまりないので、客観的に自分たちのプレイを見ることができて興奮するものなのよ」 「ふむふむ、何となく分かる気がするよ。それにしても、ベッドの横に鏡があるってだけで、すごい想像力が働くんだな~。もしかしたら球って作家向きかも」 「ただし、これはあくまで私の独断と偏見に満ちた妄想だよ。実際にはこのベッドを使ってた人が単にここに腰を掛けて化粧をしてただけかも知れないし」 「そうだな。まあ、どちらでもいいことだけどな」 「そうだね。前に住んでた人のことなんてあまり関係ないものね。だって、これからは私たちの家になるんだから~」 「球はもう買った気でいるな~?」 「うん、この家、気に入ったわ! 最高!」 「よし、じゃあ、買うとするか。じゃあ、前祝いに……」 「え? 前祝い?」 ベッドの上に座ったまま、突然ワタルは球を抱き寄せくちづけを交わした。 「モデルハウスでこんなことしたらダメじゃない~」 「いいんだよ。もうすぐ俺たちの家になるんだし、それに例の案内人もまだ帰ってこないさ」 「そうね。じゃあ……」 二人は絡み合い、唇を重ねた。 ワタルの手はいつもにも増して俊敏である。 やはり、案内人の吉野がいつ帰って来るかもしれない、といった不安がワタルを迅速にしているのかもしれない。 その日の球はトップスが黒のカットソーで、スカートはゴアードのデザインという今年流行のスタイルであった。 ワタルはカットソーの上から乳房をせわしく揉み上げる。 「や~ん、今日のワタル、すごく激しいよ~」 ワタルはカットソーを腹部から上へ捲くり上げ、ブラジャーを上にずらそうと試みた。 「あ、だめ……もし案内人さんが帰ってきたら見られちゃう。だから脱がさないで……」 球の言葉にワタルは少し不満そうな表情を浮かべたが、まもなくブラジャー脱がしをを断念し、再び衣服の上から愛撫を始めた。 衣服の上からであっても、気分の高揚してきた球には充分な効果があった。 「あ~、は~……あ~ん……」 「球?」 「ん?」 「あの鏡の前で堂々とエッチなことをしようよ」 「え? 鏡の前で? やん~、そんなぁ……恥ずかしいよぅ……」 「いいじゃないか」 「うん……」 最初は鏡に写らないようにベッドの端でいちゃついていた二人であったが、大胆にもベッドの中央に移動しようというのだ。 球は誘われるがままに中央に移動し、鏡に向かい合った。 ワタルは球の背後に寄り添うようにして座った。 「こうして二人で大きな鏡に向かうのって、初めてじゃない?」 「うん、そうだね。家にも姿見はあるけど、こんなことした経験はないものね」 「確かにないね。ベッド以外でも、案外色々なシチュエーションがあるものなんだね」 「新発見~!ってことね」 「うん、そうだね。球の身体もまだまだ発見されてない性感帯があるかも」 「あ~ん……」 ワタルは球と言葉を交わしながら、入念に乳房を揉み解した。 「あぁ……」 球の唇から漏れる吐息。 ワタルの手がスカートに触れた。 「あ……だめ……脱がさないで」 「だいじょうぶ。脱がさない」 スカートを少し捲るだけで、球のつややかな太腿が覗く。 膝頭を撫で、ゆっくりと太腿へと移動していく指。 敏感な太腿への愛撫も怠りがない。 「あぁ……」 太腿を旋回していた指は次第に上昇を始める。 同時にスカートが捲れ上がっていく。 「あ……だめ……」 奥地へと伸びた指は、繊細な個所へと届く。 下着は触り心地の良いツルリとした薄い素材のようだ。 この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました |