『悪夢の標的』
 
                    Shyrock:作
第20話

 「ははははは、気が逸りますか。まだまだお若いようですなあ。もう少しだけ待
ってください。のちほど素晴らしいイベントを用意しておりますのでお楽しみに」
「ほほう。どんなイベントですか」
「皆さんにくじを引いてもらいます。その中に1つだけ当たりがあります。詳しい
説明はのちほどということで」

 「会長、気を持たせないで今言ってくださいよ。当たればどんな権利が発生する
のですか」
「まあまあ、そんなに性急にならないでくださいな。もう直ぐ分かりますから。ふ
うむ、あまりお待たせしても何だから・・・じゃあ、上野部長、皆さんにクジを引
いてもらいなさい」

 くじは紙片で作られていて人数分束ねてある。それを1人1枚だけ引き当落が決
定する。
来場者は上野が差し出すくじを順番に引いた。

 まもなく1人の男が歓喜の声を上げた。
男は小太りで血色がよく、頭上はかなり生え上がっている。
見るからに好色そうな男である。
引き当てたくじを嬉しそうに掲げて上野の方へ歩み寄ってきた。

 「当たったよ!当選すると何がもらえるんだね?」
「当選おめでとうございます」
阿久夢はにこやかな表情で紙袋を取り出し男に渡した。

 男は興味深げに紙袋の中を覗き込んだが、まもなくがっかりと肩を落として会長
に不満を述べた。
「会長、これは無いですよ。これって芋じゃないですか。こんなものを貰っても嬉
しくありませんよ」

 男は憮然として会長に抗議した。
「ふふふ、野々垣さん、それはただの芋じゃありません。もっとよくご覧ください」

 当選した男は名前を野々垣というらしい。
野々垣は再び袋の中を覗き込んだ。
にわかに表情が喜色に満ちあふれた。

 「こ、これは・・・!会長、分かりましたよ!これは幸運だっ!」
「ははははは~、何か分かりましたか。もしよければ皆さんに見せてあげてくださ
い」
野々垣は阿久夢の言葉どおり、紙袋の中から芋を取り出した。

 よく見ると芋は男根の形に削ってあり先端がキノコのように傘が開いている。
野々垣は芋を手に取り嬉しそうに言葉を続けた。
「もしかしてこれは山芋ではありませんか」

 「そのとおりです。それは私の故郷で採れた山芋なんですよ。ナスやキウリでも
女性を喜ばせることはできるのですが、遊び慣れた皆さんであれば、おそらくすで
にどこかの女性に使っておられるのではと思いましてね。ははははは~、それでこ
の山芋を選んだわけですよ。山芋は肌に触れると痒みが起ります。ましてや、粘膜
ならどうなるか・・・ふっふっふ・・・さあ、どうなるかはお楽しみということで。
では早速、試してもらいましょうか」

 上野部長が続いて補足説明を行なった。
「その前にもう少しだけ補足説明を行ないますと、山芋はしゅう酸カルシウムを含
むため、皮膚を刺激して痒みを起こす事が多いのです。粘膜であれば尚更ですが、
酢をつけると避けることができます。そして・・・」

 その時見物人の1人が突然長い説明に痺れを切らしたのか、声を荒げた。
「講釈はいいから、早く始めろ!」

 また会話の内容を聞いていたイヴが恐れをなし急に暴れ出した。
四肢を拘束されていることも忘れて必死にもがいてみせた。
「お願いです!そんな変なもの使うのやめてください!許してください!!」