濡れた下着」

                           沼 隆:作

第5回

(21)

来客を知らせるチャイムが鳴る。

一平が出る。

「ノブ、郷田って言ってるよ」

「ごうだ?…ああ、入れてやれよ」

「オヤジだぞ」

「沙智の高校んときの担任だよ」

「ひえぇ」蔭樹学園の数学教師、郷田軍治は、梶原沙智の担任であった。

教え子の家に出入りするうちに、沙智の性癖を知った。

愛人の英語教師、内野久美子を連れて、沙智のパーティに参加するようになり、教え子の一人、

沢木志帆を犯したのも、沙智の豪邸の一室でのことである。

沙智が慶鳳大学に入学して、マンションで一人暮らしを始めると、時折訪ねてくるようになった。

セックスパーティの味が忘れられず、沙智の遊びに加えてもらいたくて、田舎町から出てくるの

だった。

ノブこと御厨孝信は、一度郷田と顔をあわせていた。

今日は、沙智の19歳の誕生パーティ。

郷田は、若い女を連れて、やってきたのだった。

「へへっ、いい子だろ、ん?」玄関で靴を脱ぎながら、後ろに立っている女の子を出迎えた一平

に紹介する。

「松宮杏奈だ…おい、挨拶せんか」ちょっと不良っぽい感じの女の子だ。

からだの線がはっきりわかるきわどい服を着ている。

むっちりと張り出した乳房に、一平はつばを飲んだ。

ドアをロックしながら、振り返って目にした杏奈の後姿は挑発的だった。

張り付いたミニスカートの下に、Tバックのラインがくっきり浮かび上がっている。

肉感的な尻が、ぷりぷりとうごめいている。

「うおおおおっ!」リビングに入るなり、郷田が驚きの声を上げた。

「うほほほ…これは、これは…」部屋の中央に、このマンションの主、梶原沙智が、あの気位が

高く、郷田に何度も屈辱を味わわせた沙智が、全裸にされ、手首足首を縛られて、転がっていた。

逃れようもないのに、郷田の視線を避けようと、沙智は顔を背ける。

「はは…ははは…こりゃあ、楽しそうだ…」

「見ないでよっ!」

「おいおい、俺も仲間に入れてくれよ、あん?」

「いいですよ、郷田先生、いっしょに楽しみましょう」ノブがキャビネットからグラスを取り出

しながら言った。

「今日は、こいつの誕生日ですから…」テーブルの上には、ドンペリニョンが空けられていた。

「お祝いですから…先生、どうぞ、キミも」ノブは、郷田と杏奈にシャンペンをついでやる。

「杏奈、驚いただろ、あん? ここが沙智の住まいだ。おまえのワンルームと、大違いだな」あ

んな、と聞いて、沙智は郷田のほうを見る。

「あ…」

「沙智、松宮杏奈だよ。おまえの贅沢な暮らしぶり、見たいって言うから、連れて来てやった…

あはははは」沙智の頬が、屈辱で真っ赤になった。

「アンナさん、仕事、何してんの?」

「芳蘭女子短大に通ってるんだ…こいつ、沙智の同級生なんだよ」

この部屋の雰囲気に気おされて黙ったままの杏奈に代わって、郷田が答えた。

「へっ?」

「こいつも、オレの教え子ってわけさ」うまいなあ、おかわり、いいかい、と言いながら、郷田

はシャンパンのボトルに手を伸ばす。

「どうぞ…先生、そろそろ、脱ぎませんか」

「ん? そうだな、じゃあ…」郷田は、着ているものをソファに脱ぎ捨てた。

黒々とした肉棒が、だらりと垂れ下がっている。

「おい、杏奈、おまえも脱ぐんだ」

「俺、手伝っても、いいですか?」一平が、尋ねる。

「ああ、いいよ」そのとき、ソファの後ろから、う、う、う…といううめき声が聞こえた。

「おいおい、ほかにも、だれかいるのかあ?」郷田が覗き込む。

「おほ、おほ、これはこれは…きれいなねえちゃんが、もうひとり…あは…あはは」沙智と同じ

ように、手足を縛られ、猿ぐつわを噛まされた娘が転がっていた。

性器に、バイブレーターを挿し込まれた姿で。

*****

渋谷駅ハチ公広場は、待ち合わせをするひとでいっぱいだ。

麻丘奈々は、すぐに見つかった。

袖の短いブルーのシャツブラウスに、生成りのショーツ。

タツヒロに向かって、右手をちょっと上げる。

東横線の電車は渋谷が始発。並んで座る。

タツヒロの志望する学校が、東横線の沿線にあるのだ。

奈々に案内してもらう、そういう約束だった。

明智大学の教室でキスをしたことを、タツヒロは後悔している。

奈々に、ちゃんとわかってもらおう、という気持ちもあって、出てきた。

ボクには、好きなひとがいるんだ。

どう伝えたらいいだろう。

代官山…中目黒…祐天寺…学芸大学…都立大学…次は、自由が丘。

「ねえ、降りてみようよ」

「え?」

「おなか、すいたよ。美味しいピザ屋さん、知ってるんだ」

《イル・コルソ》は、にぎわっていた。

席が空くのを10分ほど待たされた。

「榊原くん、好きなひとがいるんでしょ?」

「……」

「どんなひと?」

「どんなって…」

「きれいなひと?」

「……」

「かわいい?」

「そうだなあ…」

「エッチ、上手いんでしょ?」

「え?」奈々は、刺すような視線で、タツヒロを見つめている。

ピザが運ばれてきた。

「食べようよ」

「あ、ああ…」

「おなか、ペコペコだもん」魚介のピザに手を伸ばす。

イカや、エビや、アサリや…

「明智の教室で、榊原くんがキスしてきたとき、とっても嬉しかった」

「奈々…」

「榊原くん、優しくて素敵なひとだって思うけど…好きなひとがいるのに、何であたしにキスし

たの!」キスだけじゃない。

奈々のたいせつな場所を触るところまでいったのだ。

「悪かったよ」

「いいよ。もう、いい。榊原くん、あんな素敵なひとがいるんだもん」

「知ってるの?」

「知らないよ……ね、ここのピザ、美味しいでしょ?」

「あ、ああ…」奈々は、タツヒロの不実に憤り、自分を脅した杉沢琢磨に怯えている。

いまも、きっと、こっそりカメラのレンズをこちらに向けている。

杉沢琢磨が突きつけた何枚もの写真。奈々とタツヒロが抱き合っている写真。

タツヒロが女の人とセックスをしている写真。

奈々もタツヒロも、黙々とピザを食べ続けた。

この話を続けなければ…きちんと、片をつけなくちゃ…電車に乗り、目的の駅で下車。

大学の構内に入った。なだらかな丘陵地に広がる広大なキャンパスの、木陰に沿って並んで歩く。

奈々は、ずっと考え続けていた。

杉沢琢磨の脅迫から逃れるためには、どうしたらいいか、考え続けていた。

怯えて、犯されて、写真を撮られてしまったけれど2度とゴメンだし、写真を取り返さなくては

いけないし誰にも相談できないまま、一晩過ごしたのだ。

タツヒロも、杉沢に脅されているのかもしれない。

思い切って、打ち明けてしまおう。

家を出るときには、もう決心が出来上がっていた。

「ボクも脅されてる」

「そうなんだ」

「脅しているやつがわからなくて、困ってた」

「うん…」

「でも、これで、相手がわかったわけだ」

「どうするの?」

「やっつけるさ」

「大丈夫かな?」

「ああ…ボクたち、悪いことしたわけじゃない」タツヒロの心が、揺れ動く。

悪いことしたのかもしれない…でも、もう、志帆と別れるつもりはない…

「その、杉沢ってヤツは、犯罪者だから」

「うん…」

「反対に、脅すさ」ふたりは、直ちに反撃に出ることにした。

大学の見学はまたにして、渋谷に引き返す。

奈々は、予備校の事務局で、杉沢琢磨の住所を手に入れた。

(22)

12個入りのコンドームを2日2晩で使い果たした。

義弘とりん子の肉の相性は、ぴったりだ。

してもしても、し足りない。いくらでも出来そうだ。

こんなに、相性のいい相手と出会えるなんて。

もっとしたい。もっと、もっと、したい。

ファミレスで焼肉定食を食べて、コンビニでコンドームを買い、りん子の部屋に戻る。

手早く服を脱ぎ、互いの下着を剥ぎ取って、ベッドに倒れこむ。

二人の汗を吸って、じっとり湿ったベッドに。

すえた匂い。それすらもが、ふたりの肉欲を掻き立てる。

義弘の肉棒はいきり立ち、りん子は淫裂をびしょびしょに濡らしている。

さかりのついた2匹の獣は、果てることのない肉の悦びに浸っている。

さすがに、コンドームの先端に溜まる精液は少量になっている。

出るものがなくなっても、激しくこすり合わせ続ける。

りん子の肉穴からは、とめどなく蜜が滴り続けるのだ。

「もっと!もっと!」締め切ったりん子の部屋は、ふたりの汗と、分泌液の匂いが充満している。

トイレから戻ってきたりん子は、手にしたビールの缶を寝そべっている義弘のだらりとした陰茎

に押し当てる。

「ひえっ!」

「あはは…気持ち、いい?」

「ああ…いい気持ちだ」

「おつかれ、ちんちん」

「ああ、こんなにしたの、初めてだ」

「あたしもよ」りん子は、ビールの缶を開ける。

ぱしゅっりん子は、口に含んだビールを、義弘の口に注ぎ込む。

「もうひとくち、くれよ」

「うん」りん子は、義弘の口にビールを注ぎ込むと、冷たさの残った口でしぼんだペニスをくわ

える。

「おおっ」りん子の口は、すぐに冷たさを失う。

「まって」りん子は、製氷皿の氷を器に入れて台所から戻ってくる。

ひとかけら、口に含んで、ペニスをくわえた。

「ああ…いい気持ちだ」溶けた氷をすすりながら、りん子はペニスをすわぶる。

「りん子にもしてやるよ」仰向けのまま義弘は、りん子の腰を引き寄せる。

「もっと広げて」義弘のからだに覆いかぶさるりん子の両足を大きく広げさせる。

目の前に、赤く充血したりん子の淫裂。義弘は、氷のかけらをつまむと、りん子の淫裂にこすり

付ける。

「ああっ!」りん子は、ペニスを口から離し、悲鳴を上げる。

義弘の指の中の氷はたちまち溶けていく。

滴る水滴を、義弘は舐めとる。秘肉のひんやりとした舌触り。2つめのかけらを、肉つぼの入り

口に挟み込む。

りん子がそこをひくりとさせたせいで、氷が押し出される。

義弘は、舌先で押し返し、氷塊は、肉つぼの入り口にぴったりはまり込む。

熱い粘膜はすぐに氷を溶かしてしまう。

溢れ出る水を、りん子の淫らな分泌液が溶け込んだ冷たい水を、義弘はすする。

りん子は、氷を含んで冷たくなった口で、義弘のタマ袋をくわえる。

しぼんでいたペニスが、少し起き上がる。

「タマタマ、気持ちいい?」

「ああ…フェラも、続けてくれ」

「うん」りん子は、膨れはじめたペニスをくわえると、唇でしごき始める。

つまんだ氷で、タマ袋をこすりながら。

ほてった陰唇に、冷たい氷が心地いい。

じゅるっときおり、義弘が蜜をすする。

タマ袋がびしょ濡れになっている。

りん子は、口にほおばった。

2個のタマを、舌の先でいとおしむように転がす。

右手に掴んだペニスがビクンビクンと脈打つ。

亀頭が、ギンギンに膨れ上がっている。

さすがに、射精にいたらなかった。

一滴残さず出してしまったのだ。

なに、じきに回復する。裸で抱き合ったまま、ぐっすり眠り込む。

*****

梶原沙智のマンションの広いリビングルーム。エアコンが、かすかな音を立てている。

昼間だというのに、厚いカーテンは閉ざされて、真夏の太陽がさえぎられ、薄暗い。

その薄明かりの中に、全裸の男が3人。沙智の男友だち、ノブこと御厨孝信ノブの友人、堀之内

一平それに、闖入してきた郷田軍治。女連れで。

ノブは、沙智に味わわされた屈辱を晴らすつもりで、この部屋にいる。

半年近い親密なつながりを、今日で終わらせる。

このクソ生意気な女に、思いっきり恥ずかしい思いをさせて。

しかし、その前に、一平の助けを求めて泣き叫ぶ小野由香を強姦したのだった。

その由香は、手首足首を縛られ、猿轡を噛まされて、ソファの後ろに横たわっている。

一平は、松宮杏奈の服を脱がせる。

不良っぽいまなざしと、鋭角的な顔立ちが、ボディラインにしか取り柄がない、無芸な三流タレ

ントに似ている。

からだに張り付いたブラウスを剥ぎ取ると、ショッキングピンクのブラジャーに包まれた、むっ

ちりとした乳房が現れる。

一平は下から持ち上げるようにしてその重さを確かめた。

ぴちぴちのミニスカートの下は、ブラとそろいのTバック。

尻の割れ目に、細い股ヒモが食い込んでいる。

一平は、ギンギンに膨れ上がったペニスを、そこにぶち込みたくてたまらなかった。

郷田は、ソファに座り込み、一平が杏奈を裸にしていくのをニヤニヤしながら見詰めている。

ドンペリニョンを瓶から口に直接流し込みながら。

「いいからだ、してるだろ、あん?」

「ああ」

「あんたのちんぽ、ハメたがってるぜ」

「うん」一平の指が、Tバックの股ヒモにもぐりこむ。

ヌル「あん」杏奈が、からだをひくりとさせる。

「やりたけりゃ、やってもかまわん」郷田は、立ち上がってソファの後ろに回り、由香の乳房を

力いっぱい絞り上げる。

由香ののどから苦痛のうめきがもれる。

「このネエちゃん、なかなか可愛い顔してるじゃねえか、あん?」

「好きにしていいですよ」一平は、杏奈の唇を吸いながらいった。

杏奈の指が、ペニスを握る。

さっき、ノブが由香を犯すさまを見物させられた一平は、いよいよやれる番がきた、しかも、郷

田センセイのお連れの女ときている。

床に押し倒し、Tバックをむしりとると、ぶっすりと挿入した。

「猿轡、はずすよ」

「うるさいですよ」

「へへ…そんなに泣かせたのかい?」

「気持ちよくしてやるって言うのに、ぎゃーぎゃー泣き喚きやがって」

「へへ…そりゃ、大変だったな」郷田は、由香の手首足首のいましめを解き、猿轡もはずす。

「ネエちゃん、おとなしいじゃねえか」

由香は、恐怖にからだを震わせながら、ヒクヒクとしゃくりあげている。

郷田は、由香をうつぶせにすると、背後から挿入した。

「いやっ!」

「おお! いいぞ、いいぞ! ネエちゃん、叫べ、もっと、叫べ!」

「うっ…うっ…うっ…」

「叫べっちゅうんだよっ!」郷田は、由香の髪を鷲づかみにすると、手前にぐいっと引き上げる。

挿入されたままの姿勢で後頭部を引っ張られて、由香はエビぞりになる。

「うほっ! しまるっ!」

「いや…許して…」

「許してほしけりゃ、もっと、わめけ!」郷田は、由香の尻を激しく平手打ちする。

一平は、郷田の大きな声と、由香の泣き声に刺激されていた。

杏奈に悲鳴を上げさせたかった。

両手に力をこめて、思いっきり乳房を絞り上げた。

「ばかっ! 痛いじゃんかよぉ! どきなっ!」両手を突き出して、一平のからだを押しのけよ

うとする杏奈に、一平は激怒した。

「なんだとぉ!」叫びながら、杏奈の横っ面を力いっぱい平手打ちした。

「生意気なくち、きくんじゃねえ!」ノブが由香を犯す場面を見ているときに目覚めた獣欲がい

っそう激しく燃え上がりる。

「がたがたわめくんじゃねえ!」3度激しくびんたを食らわすと、杏奈はおとなしくなった。

ノブは由香を郷田も由香をそして一平は杏奈を強姦した。

沙智は、横たわったままである。

その一部始終を、ノブが仕掛けた3台のビデオカメラが、撮り続けている。

(23)

「あんたたち、なんですか!」玄関で、母親が大きな声で叫んでいる。

「琢磨のお友だちなんでしょ! あんたたち、失礼よ!」母親の、苛立った声に、琢磨は昼寝を

邪魔された。

「なんだよ、うるせえなあ…!」ぶつぶつつぶやいて、眠りに戻ろうとする。

「友だち?」だれだ、日曜日にやってくるなんて。

そんなやつ、いるわけねーじゃん!リビングのところで人の足音がする。

何人かいるみたいだ。

母親ともめている。

「琢磨! 琢ちゃん! ちょっと来て!」

「なんだよ! うるせえなあ!」のろのろと起き上がって廊下に出る。

「おまえら、なんなんだよ!」杉沢琢磨は、ずかずかと近づいて来る3人に、怒りの声を爆発さ

せた。

よく知った顔だった。

眠気は吹き飛んだ。

弱みを握って、脅している相手だった。

自分が優位に立っているつもりだった。

自分の思い通りに、裸にし、犯せる相手のつもりだった。

その3人が、づかづか入り込んできたのだ。

「あんたたち、なんなの! 警察、呼ぶわよ!」

「そうしてください」

「なんですって!」琢磨は、青ざめる。

榊原タツヒロ、志帆、麻丘奈々が、にらみつけている。

「おばさん、警察呼んでもらって、いいですよ」

「琢ちゃん、あんた…」

「部屋、見せてよ、あんたの部屋」

「なに言ってるんだよ!」タツヒロが一歩踏み出す。

琢磨は、自分の部屋への通路をふさごうと、後ずさりする。

「やめろ!」

「あんたたち、やめなさいよ! 勝手にひとのうちに入ってきて!」

「おばさん、琢磨君、何してるか、知ってるんでしょ!」志帆も、奈々も、一歩も退くつもりは

なかった。

琢磨を叩き潰すしか、道はない。

弱気になったら、琢磨につけ入らせるだけだ。

タツヒロには、志帆を、奈々を琢磨から救い出す決心を固めていた。

今日で終わらせる!志帆も奈々も、タツヒロの強い意志に励まされて、ここに来ている。

タツヒロは、琢磨を突き飛ばすようにして、琢磨の部屋に入り込んだ。

「警察、呼ぶわよ!」

「呼びなさいよ!」奈々は、怒りにからだを震わせながら、叫んでいた。

殴りかかる琢磨を、タツヒロは突き飛ばす。

屈辱に琢磨は顔をゆがめる。

憎しみが燃え盛る視線にも、タツヒロは落ち着いていた。

「やめなさいよ!」母親が止める声を背に、志帆はクロゼットを開け放つ。

タツヒロの腕を振り払って、志帆に飛びかかろうとする琢磨を、タツヒロは引き倒す。

「ママっ! こいつら、やめさせてよっ!」母親に向かって、悲鳴を上げる。

「あった!」志帆が、クロゼットの奥から、分厚い写真の束を取り出す。

「バカヤローっ!」琢磨の悲鳴。琢磨の秘蔵の写真が、床に散らばる。

タツヒロと志帆のセックス写真、奈々の全裸の写真。

琢磨の母親は、床の写真を睨みつける。

遠くにパトカーのサイレンが聞こえる。

次第に近づいてくる。

「あんたたち、学生のくせして、こんなことしてるの!」琢磨の母親は、息子をかばう。

「とんでもないひとたちねっ!」

「おれたちが何をしていようと、おばさんは関係ない」

「そうよ! 自分の子供が何したか、よく見なさいよ」パトカーが、マンションの入り口で止ま

った様子だ。

警察が来るんだろうか。タツヒロも、志帆も、奈々も、それは避けたい。

急がなくては。

「警察、来たね」

「琢磨くんがしていること、犯罪ですよ」

「写真、撮っただけでしょ!」

「それだって、いやらしいことでしょ!」

「おばさん! こいつ、あたしを脅したんだよ!」

「なに言ってるの!」

「琢磨くん、写真をネタに、僕たちを脅してきたんです」チャイムが鳴る。

「警察、来たよ」琢磨の母親は、顔面が蒼白になっていた。

「警察沙汰に、しないで、ね、お願い」玄関先までやってきた警官には、騒ぎは誤解だと詫びて、

引き取ってもらった。

「琢磨くんが、写真を使ったら、僕たち、警察に行きますから」母親は、うなだれて、はいと小

さく言った。

タツヒロと志帆は、奈々をJRの駅まで送る。

写真も、ネガも、タツヒロが抱える紙袋の中にある。

あきれるほどの枚数だった。

ネガも、膨大な数だった。

ずっしりと重い。処分するの、大変だ。

これから先のことを考えると、とっておいたほうがいいのかもしれない。

今日、琢磨はおとなしくしていたが、明日はわからない。

タツヒロたちが写真とネガを集めているときに、母親は一枚の写真を手に、呆然としていた。

その写真は、琢磨の母親が若い男とラブホテルに入っていくところを撮ったものだった。

その男は、琢磨のクラス担任なのだが、タツヒロにはわからない。

その写真に続く数枚は、母親にはずいぶん応えたようだった。

母親の情事を盗撮した一連の写真。

琢磨の部屋に、写真もネガも残っていないことを確かめて、3人は杉沢の家をあとにしたのだっ

た。

怖かったけれど、乗り越えた。

3人、力をあわせて。

とてもいやな感じが残っているけれど、今は仕方がない。

「じゃ、あした、学校で」

「うん、疲れちゃったけど、がんばる」

ホームに向かう奈々の後姿を、タツヒロと志帆は見送った。

*****

「いいの? 帰んなくて」義弘は、むっとした。

「帰したいのかよ」

「違うよ、ばかねえ」夕食の後片付けが済んで、Jリーグの試合を見終わったところだ。

「義弘とずっと一緒にいたいよ、でも…」義弘は、りん子を見詰める。

「奥さん、いいの?」りん子は、義弘の心を知りたくて、真剣なまなざしをしている。

「りん子があいつの心配すること、ないよ」わかってない…

「あいつと、別れようと思ってるんだ」

「本気? 無理しなくていいよ」このひと、どこまで本気なんだろう…

「新婚、ほやほやじゃない…」

「そうだけどさ…うまくいかないんだ」最近、りん子のアパートに泊まっていくことが増えた。

奥さんに、どんな言い訳しているのか、わかんないけど。

「別れるよ」

「パンティ、びしょびしょだよ」

「だって、義弘ったら」義弘の指が、パンティにもぐりこむ。

「ちょっと…痛い…ひりひりする」

「しすぎたかな」

「うふ」

「じゃあ、ひりひりしないほうに」

「え?」

「いいだろ? アナル」

「う、うん…」義弘は右の人差し指の先にローションを塗って、きゅっとすぼまった場所をほぐ

し始める。

「あっ…いやっ」「ふふ…」「あうっ」指の第一関節まで差し込む。

ぎゅっと締め付けてくる。

肛門にローションを垂らす。

引き出した指先で、ひんやりとした液体を、肛門の奥に送り込む。

ねっとりとした液体が、そこを潤わせ、滑りをよくして、義弘の指を奥まで誘い込む。

りん子は、義弘の指の侵入を確かめるように、きゅつきゅつと力をくわえる。

指の付け根近くまで差し込む。

きゅつきゅつ肛門括約筋のすぐ奥、柔らかい直腸の粘膜を指先でさする。

ぬめぬめした感触。もうひとつの穴とは違った、デリケートな柔らかさとぬめり具合。

しかし、指の付け根の辺りは、ローションが乾いて、かさつき始めている。

義弘は、指を抜き、ペニスにたっぷりローションを塗りつけると、うつ伏せにしたりん子の両足

を大きく開かせ、十分揉み解したアヌスに、ペニスをゆっくりと沈めていく。

ペニスが締め上げられる。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ…」小さく細かく息を吐きながら、りん子は義弘を受け入れる。

タマ袋が、前の穴からあふれ出したおびただしい淫水を浴びる。

「いい…いいっ…」りん子の指は、力いっぱいシーツを掴んでいる。

(24)

一平の女、小野由香は、郷田の精液を浴びたあと、再び手首足首を縛られて、床に転がっている。

郷田は後始末をしてやる気持ちなど、さらさらない。

由香の胸から腹にかけて、飛び散った郷田の精液が匂いを放つ。

まだ余韻を残している自分のサオをティッシュで拭う。

拭いながら、一平とノブに話しかける。

「アンナは気性は激しいが、いい女だろ」

「ああ、いい体してる。モデルになれそうじゃないですか」

「ははは、なかなか厳しいよ」

「こんなにいい体してるのに?」

「ちょっとつっぱった感じも、いいじゃないですか」

「通販カタログの下着モデルの仕事は、やったんだよな、アンナ」

松宮杏奈は、一平の精液をトイレで始末して、ソファにふんぞり返っている郷田の脇に戻ってき

たところだ。

高校生のとき、原宿をふらついているときに、スカウトされ、下着モデルになったのだ。

撮影のたびに何度か上京していた。

郷田と一緒に。

郷田は、マネージャーのような顔をして、付いて来た。

郷田に仕込まれた性技は、男友だちを悦ばせた。

その技を、一平は味わい損ねた。

杏奈を怒らせて、さめた杏奈を犯すしかなかったのだ。

ノブが、杏奈にシャンペングラスを差し出す。

「気分、なおせよ」とがった視線をノブに向けながら、杏奈はグラスを受け取る。

「怖い顔、しないでさあ。きみの魅力が台無しだよ」

「だって…」

「一平のヤツ、女の扱い、知らないからさ」

「おい、ノブ、そんな言い方ないだろ!」

「ははは、気にするな、一平。さあ、沙智をやっちまえよ」

「なんだ、これから始めるところだったのか?」

「ええ、先生、ちょうどいいところに来たわけですよ」

「見物させてもらうか、な、杏奈」杏奈は、梶原沙智の豪奢な生活ぶりが覗きたくて、郷田につ

いてきたのだ。

「杏奈、あんたなんかには、死ぬまで出来ない暮らしだよ」沙智が、冷ややかな顔の下でほくそ

えんでいるのが想像できる。

そのことが、杏奈の心に、沙智への憎しみを燃えさせていた。

沙智が、あの気位の高い沙智が、男たちにマワサレルところを見たい、杏奈は、小気味よさに、

嬉しくなっていた。

嬉しくて、セックスの快感と同じくらい強い快感が、からだの芯から噴出してくる。

「だめですよ、先生。先生もやらなくちゃ」

「おいおい」

「隠してもだめですよ、先生。先生も、沙智にはいやな思いさせられてるんでしょ」図星だった。

沙智に、郷田と呼び捨てにされ、使い走りまでさせられた。

ちょっと、思い知らせてやってもいいじゃないか。

こいつが慶鳳大学に入れたのは、俺のおかげじゃないか。

それなのに、沙智の野郎、ひとことも礼を言わなかった。

まあ、ひとに礼を言うようなタマじゃないが…いずれは梶原の一人娘として、どこかの金持ちに

嫁ぐ。

沙智の弱みを握っておけば…ヒヒヒ郷田は、杏奈を抱き寄せて、乳房を揉み始める。

「杏奈、沙智を犯すってさ。見たいか」

「あうっ」郷田の問いに答えたのか、乳首をつままれて、よがったのか、はっきりしない答えだ。

「そうか、見たいか。俺も見たいぞ。沙智が犯されるところを」郷田は、興奮してきた。

陰茎が回復していく。

杏奈は指を伸ばし、郷田の黒々とした陰茎を握る。

右手でそっと包み込むようにして、ゆっくり動かし始める。

絶妙な力の入れ具合は、郷田が仕込んだ。

  握ってやっただけで射精してしまう男もいる。

  通勤電車の中で、からだに触ってきた男。

  逃げようと腰をひねっても、執拗についてくる男の指。

  杏奈を辱めることが目的の指。

  からだをひねってそいつの顔を見る。

  おとなしそうなサラリーマン。

  杏奈は、男の手を払いのけようと伸ばした手で、陰茎を掴む。

  男は、たじろぐ。

  男の指が止まる。

  杏奈の指は、ズボンのうえから陰茎をこすり上げ、あっという間に射精に導く。

  精液が噴出す瞬間の男の顔は、見ものだった。

  今にも泣き出しそうだった。

  通勤電車の中で、下着にべっとり精液を溢れさせた気色悪さは、相当なものだろう。

  杏奈は、男に冷たい視線を浴びせて、電車を降りた。

  発車する電車の中から、情けない顔をした男が、杏奈を見ている。

  バーカ  杏奈は、つぶやいた。

さすがに、郷田の陰茎は、強い。

杏奈の指で、膨れ上がることはあっても、射精させることは出来ない。

郷田は、肉つぼが大好きなのだ。

女の肉のなかにほとばしらせる快感に勝るものはない。

テーブルの向こう側で、一平は沙智の乳房をすわぶっている。

気位の高い沙智は、屈辱に顔をゆがめる。

一平を押しのけようとするが、一平はしっかりと押さえ込む。

ノブの付属物のように思ってきた男に、いじられる。沙智の意思に反して。

なんでも自分の思い通りにやってきた沙智の、父親の権力を笠に着て、誰も彼も服従させてきた

沙智の肉体を、心の底では馬鹿にしていた男の指が、唇が這い回る。

「沙智、おまえ、なめた生き方するんじゃねえよ」ノブが、言う。

「おまえをお姫様扱いするつもりなんか、ねえんだよ」一平の指が、ねじ込まれて、下腹部に痛

みが走る。

わざと、乱暴にやっているのだ。

(やめて…)声が、出ない。

(こいつらに、屈服するなんて…そんなこと、我慢できない!)沙智は、歯を食いしばる。

一平は、差し込んだ指を3本にし、そして…4本に増やした。

硬い肉が侵入を激しく拒む。激しい痛み。

沙智は、引き裂かれる恐怖に、からだをよしって逃げようとする。

一平は、沙智を押さえ込みながら、強引に指をねじ込んだ。

沙智が苦痛にうめく。

「やるねえ…」郷田がつぶやく。杏奈の手の動きが止まる。

怖いのか、杏奈は郷田のからだに隠れるように、身を寄せた。

「何でも入るんだねえ」沙智が、転がるようにして一平の指から逃げようとするのを、一平はど

こまでも追い続ける。

「やめ…て…」沙智はあえぎあえぎ、やっとのことでうめいた。

そのとき、一平は沙智のそこにこぶしを埋め込もうとしていた。

「………」沙智は、声を出すことも出来ず、肩で息をしている。

一平の目が、沙智のそこをじっと見詰めている。

流れ出した血に、沙智の肉と一平自身の指が、赤く染まる。

一平は、頭の中が、芯から熱を帯び、周囲のことなどまったく意識から消し飛んで残虐な行為に

我を失っていた。

頭の中が、がんがん唸っている。

やっちまえ…やっちまえ、一平!のた打ち回る沙智のそこに、一平のこぶしが埋め込まれる。

沙智は、激痛のあまり、声が出せなかった。

「キモチ、いいだろ?」沙智は頭を左右に振って、いやいやをする。

「抜いてほしい?」

「……」

「抜いてほしいのかな?」沙智は、うなずくのがやっとだった。

「そうなんだ、沙智、これを抜いてほしいんだ」

「……」沙智は、額に脂汗を浮かべながら、一平を見上げている。

苦痛に顔をゆがめ、声を出すことも出来ずに、ただ、うんとうなずくばかり。

「沙智、何とか言えよ!」

「……」

「抜いてほしいなら、そう言うんだ!」

「……」

「抜いてやるもんか!」

「……」

「ちゃんと、お願いするんだ、沙智!」

「グググ…」激痛と屈辱に、沙智は文字通り身を引き裂かれる思いである。

それに、恐怖が芽生えていた。

ノブの付属物程度に思っていた一平が、こんなに凶暴な獣だったなんて。

これまで馬鹿にしてきた男に、壊される。

「沙智、ちゃんと言葉でお願いするんだ!」

「……」

「なんてヤツだ! なんで、お願いしますって言えないんだ!」

「……」

「こいつは、ひとにお願いしたことが一度もないんだよ、なあ、沙智」

郷田の言葉に、一平のほほがひきつる。

「ひとに頭を下げたことなんか、一度もないんだよな、沙智」一平は、こぶしをグイッとねじっ

た。

沙智が、悲鳴を上げた。

杏奈が、郷田の背中にしがみつく。

凄まじい悲鳴だった。

「お願い、抜いて…」沙智が、息も絶え絶えに言う。

「ふふ…」

「抜いてよっ!」

「命令するんじゃねえ!」一平の形相が変る。

「ノブ、やめさせて!」

「おいおい、オレのこと、呼び捨てにするんじゃないよ、沙智」

「……」

「人に頼みごとをするときは、それなりの口のききかたがあるだろ」

「お願い…やめさせて」

「ばかが…わかんねえやつだ」いつの間にか、ビデオカメラを構えたノブが、沙智と一平を見下

ろす位置に立ち、撮影を続けている。

無表情に。ペニスはだらりと垂れ下がったままだ。

「お願い…抜いて…」

「違うだろ! ちゃんとした口のきき方も知らないのか、このバカ女!」

「お、お願いします…抜いてください…」

「一平、お願いしますってさ」

「ノブ、おまえにお願いしてるんだ。オレにじゃない」

「そうだな」

「お願いする相手を、こいつ、勘違いしてる」

「ああ、勘違いしてる」

「あ、一平さん…お願い…抜いてください…」一平は、沙智に埋め込んだこぶしを、ぐっとねじ

った。

沙智は、悲鳴を上げる。

「うぐぐぐぐぐっ…痛いっ! 抜いて! 抜いて! 抜いて!」沙智のは、大粒の涙をこぼして

いる。

杏奈は、一平の恐ろしい行為におびえていたのだが、沙智が床をのたうちまわって許しを請う姿

に、あの傲慢な沙智の惨めな姿に、悦びを感じていた。ソファから立ち上がり、郷田のひざにま

たがるようにして腰を沈めていき、郷田の肉棒を淫水を滴らせる肉つぼにくわえ込むと、自分か

ら腰を使って子宮を突き上げさせ、ぶるぶるとからだを震わせながら、絶頂に達した。

大嫌いな沙智が、床にはいつくばっている哀れな姿に、杏奈は興奮し、性の快感はこれまでにな

い激しいものだった。

(25)

妙義山中で、崖下に転落した高級外車から、黒こげになった2つの遺体が発見された。

車の所有者、慶鳳大学医学部5年生、御厨孝信と、友人の堀之内一平であることが確認された。

ノブの父親は帝都大学医学部教授、一平の父親は都内有数の総合病院の理事長とあって、マスコ

ミが書きたてた。

蔭樹学園高等学校の数学教師、郷田軍治は、職員室で新聞を広げた。

社会面の片隅に見つけたノブと一平の事故死の記事に、震え上がった。

事故だとは思うが…きっと、事故だ…そう思って、安心したかった。

しかし…梶原沙智の報復の可能性の方が、はるかに高い。

あの日以来、沙智から接触はない。

夏休み中で、授業もなく、ラグビー部の練習はほったらかしにして、郷田は沈み込んでいる。

同僚の英語教師、内野久美子が近づくのにも気づかない。

「ねえ」耳元でささやかれて、郷田は椅子から飛び上がらんばかりに驚いた。

「ば、ばかっ! 脅かすなよっ!」

「なにが、ばかよぉ」久美子は、甘ったるい声でささやく。

「ねえ、このところご無沙汰よ。 久しぶりにいいでしょ?」

「あ、ああ…」久美子のブラウスの胸元から、胸の谷間がのぞく。わざと見せるように、ちょっ

と揺すってみせる。

(それどころじゃねえよ…)郷田は、生返事をする。

「じゃ、いつものところで、待ってるから」去っていく久美子の後ろ姿をぼんやり見つめる。

陰茎に血液が流れ込む気配もない。

郷田は、下校時には久美子の誘いをすっかり忘れて、自宅に車を走らせる。

住宅団地につながる道に入り込もうとした時、行く手を黒塗りの車に阻まれた。

男たちは、夏の夕暮れの暑さにもかかわらず、黒服を着ており、サングラスをしている。

男たちは、道路脇の草むらを抜けて、藪の中に郷田を引きづり込む。

一言も口をきかない。

郷田のズボンを下着ごと引き下ろし、むき出しになった尻に、鉄パイプをねじ込んだ。

肛門が割れ、直腸が引き裂かれる。

激痛に悲鳴を上げようにも、しっかりと猿ぐつわをかまされている。

鉄パイプを乱暴に引き抜くと、郷田を地面に放り出し、男たちは立ち去った。

*****

慶鳳大学付属病院の内科病棟。看護婦の小野由香は、入院患者たちの検温を終えてナースステー

ションに戻る。

同僚の花井りん子が、最近親密にしている製薬会社の営業マンとうれしそうに話している。

「先輩、何かいいことでもあったんですか?」由香がりん子に話しかける。

「あたしたち、結婚することにしたの」

「えええっ! あ、あの…榊原さん、新婚じゃかったんですか?」

「離婚するの」榊原義弘は、志帆と一緒にふたりの実家を訪ね、大反対する親たちを説得して、

東京に戻ってきたところだ。

お盆の休みを利用して、志帆は郷里の親元に引き上げることに決まった。

義弘とりん子の結婚は、来春。

「おめでとうございます」

「ありがとう、小野さん」由香は、さっき病室で入院患者から聞いたニュースを思い出している。

一平とノブが事故死したニュース。

気持ちが全く動かなかった。

同情の気持ちが、少しも湧いてこなかった。

*****

志帆の荷物を積んだ引っ越し業者のトラックが、マンションを離れていく。

「ぼくたちも、行こうか」

「うん」タツヒロは、志帆を東京駅まで見送ることにしたのだった。

志帆の旅行バッグをとりに、部屋に引き返す。

寝室にはいる。

「志帆」「ヒロくん」昨日、あんなに愛し合ったのに、ふたりの体は熱くたぎっていた。

裸になり、唇をすう。ベッドに横たわる。

志帆の瞳がうるんでいる。

無言のまま、体を求め合う。

タツヒロは、志帆の乳房に、くっきりとしたキスの痕を残す。

いくつも。挿しこんだ亀頭に、秘肉が絡みつく。

待ち焦がれていたものの進入を、まとわりつくように受け入れる。

志帆の秘肉はうごめき続け、タツヒロの肉棒をしごきあげる。

「もっと…もっと…」タツヒロの額に、背中に、しっとりと汗がにじむ。

志帆は、思わずタツヒロの背中に爪を立てていた。

恥骨と恥骨がぶつかり合う。

「ああ…いいよ、いいよ…志帆…」

「うん…うん…いい…」志帆の原に、タツヒロの汗が滴り落ちる。

乳房の谷間に、志帆の汗が浮き上がる。

「ね…後ろから…ね?」

「ああ…」位置を変え、四つんばいになった志帆の腰を抱きかかえるようにして、挿しいれる。

ぐしゅぐしゅになった蜜壷は、膨れ上がった男根をするりと受け入れる。

ぐぐぐぐぐっ「あああっ!」亀頭が子宮を突き上げる。

志帆の下腹部の中心から、全身に快感が走る。

「もっと…もっと…」そう、もっとしたい、いつまでも、していたい…タツヒロは、息を荒らげ

ながら、突いて突いて、突きまくる。

タツヒロが射精を迎える時、志帆も同時に絶頂をむかえ、ひきつけを起こしたかのように体をひ

くつかせながら、背後のタツヒロに向けて尻を激しく突き出していた。

                                             〜完〜

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