『放課後の憂鬱』

                               ジャック:作
第2章「写真」(2)


 「さすが女優さん! 着替えは早いねー。さぁ、お次は下ね。」
吉田たちは囃しながら、着替えている藍を見守った。
藍はジャージに手をかけたが、そのままジッとしてしまった。手がかすかに震えてい
る・・・。

 「早くしろよぉ。」
柴田がせかしたが、すぐに吉田が立てた人差し指を口に持ってゆき「しー」というポー
ズを取った。
「こういうのはさぁ、あっさり脱がれちゃおもしろくねーんだよ。わかってねーなぁ」と
柴田をあしらった。
「そっか、そうっすね。さすが、吉田先輩!」柴田も納得し、静かに藍を見つめた。

 藍は今にも泣き出しそうな顔で、「・・いや。できない・・」と懇願した。
「でもさぁ、ブルマーになるだけじゃん。いいっしょ、別に。いつも体育の時なってる
んだしさ。」吉田は追い討ちをかけるように言った。
「脱がなきゃ写真をさぁ・・・」安っぽい脅し文句を伊藤が言った。

 体育の時と同じ・・・確かにそうなのだが、三人のサカリのついた男に見られながら
ジャージを下ろすということは、まるで裸になるのと同じ感覚だった。
このままグズグズしていても・・・藍は覚悟を決めると、一気にジャージを引き下ろし
た。その拍子に勢い余って、下に穿いていたブルマーもずり落ちていた。
藍はすぐには気づかなかった。

 「おぉぉぉぉ!」
吉田たちは、お決まりの感嘆の声をあげた。
「藍ちゃん!」
吉田が藍に呼びかけると藍は「今度はなにっ?!」と強がった返事をした。

 吉田は続けた。
「怖いなぁ、せっかくブルマーずれてるの、教えてあげようとしてるのにさぁ。ははは
は。」
藍は驚いて下を向くと、かなりずれているブルマーに初めて気が付いた。
「えっ? あっ、きゃあ!」藍は慌ててブルマーを引っ張りあげた。
すると今度は引っ張りすぎて、ブルマーの下に穿いている白いパンティーが、足の付け
根から出てしまった。
その上ブルマーは股間に激しく食い込み、藍の股間の形をはっきりと映し出した。

 「ははは、藍ちゃん、引っ張り過ぎだって。それじゃ、あそこの形も丸見えだ」吉田
は嬉しそうに笑った。
伊藤と柴田は黙って見入っている。この光景を彼らは一生忘れないだろう。

 藍は少し足を開くと、股の付け根の部分から指を入れパンティをブルマーの中にしま
いこんだ。この姿も、妙になまめかしかった。
やっと直し終わると、藍は胸を手で隠すようにして立っていた。

 吉田が言った。
「藍ちゃん、手をどかしてよ。せっかくのビーチクが見えないじゃん。あ、そういえば
オヤジにも、そう怒られたんだってね?!」

 藍は顔をますます赤らめて下を向いた。
(一体、どんな親子なのよ!)そう思ったが、ためらいながらゆっくりと手を下ろした。
「そうそう、いいよ、藍ちゃん。男心をわかってるねー。」柴田が喜んでそう言った。

 「どうだ、ちゃんと撮れてるか?」
吉田が伊藤に、ビデオをチェックしろと合図した。
伊藤はビデオのファインダーを覗き込むと、「OK、ばっちりです!」と返事した。

 (えっ? 撮ってるの?)
藍はビデオが回っていたなんて思ってもいなかったので「や、やめて!撮らないで!」
と吉田の腕を掴んだ。
「だめだってば。ちゃんと撮れるか、チェックしなきゃ。」吉田は笑いながら藍の手を
振り払った。

 「さぁて、次はどうしてもらおうかな?」
吉田が他の二人を見て言うと、「水、かけませんか?」と伊藤が提案した。
「や、いやよぉ。・・・そんなの、いやぁっ」藍は泣きそうな声で言った。

 ますます吉田が面白がって「おっ、いいね、それ! 柴田、バケツに水汲んで来い!
いっぱいな!」と柴田に言う。
「わっかりましたぁ!」とバケツを持って、柴田が走り出て行った。

 藍は震えながらうずくまっていた。両手でしっかりと胸を覆っている。
「藍ちゃんさぁ、どうしたんだよ! 座ってちゃだめじゃん。」
吉田はやさしげだが、棘のある声で藍に言った。

 藍はゆっくりと立ち上がると、無理を承知で懇願した。
「お願い! なんでもするから、やめて、ね、やめてよ。」
吉田は笑いながら「何でもするんでしょ? だからやめないよ~。」とからかった。

 柴田がバケツを重そうに持って帰ってきた。
「おせえよ! 早くこっちもってこい!」吉田が怒った口調で柴田に言ったが、「へい
へーい。」とおどけた調子で答えて、笑いながらバケツを吉田の前に置いた。
「藍ちゃん、また手を下ろしてくれないかなぁ。でないと・・・」
さっきより陰険味を増した口調で、吉田が藍の耳元で囁く。
 
 藍がおずおずと手を下ろすと「では、伊藤君。提案者の君が、藍チャンをずぶ濡れに
してください!」と吉田が伊藤にバケツを手渡した。
「ありがたきしあわせです!」と軍隊口調で言うとバケツを受け取り、一気に藍に水を
かけた。
「きゃあぁぁぁっっ!」ざばっという鈍い音とともに水がかけられ、藍はずぶ濡れになっ
た。

 藍の白い薄いTシャツは水を得て肌の色と同化し、胸は裸以上になまめかしかった。
赤いブルマーもパンティはおろか、陰毛までくっきりと浮かび上がらせていた。
「あぁぁぁ! み、見ないで・・・」
藍は耐えきれず、すぐにうずくまってしまった。

 吉田が藍に言った。
「あらあら、またしゃがんだぞ! 立てよ、立つんだよ! 約束だろっ!」
そこで振り返ると「おいっ、二人とも、藍ちゃんを立たせろ!」
「Ok!」

 伊藤と柴田が藍の両腕を持ち上げると、背の低い藍の足は宙に浮かんでしまった。
「やめて! やめてぇぇぇ! おろしてよぉ!」
藍は足をばたばたさせて抵抗したが、男二人の力にはどうすることも出来なかった。

 「さぁて、濡れた体操服は冷たいね。脱がしてあげよう。」と吉田が抱えられ宙に浮
いている藍のブルマーに手をかけ、ゆっくりと下ろし始めた。
「やだ! やだ! やめて! 脱がさないでぇぇぇ!」
藍は泣きながら足をばたつかせたが、無駄だった。

 吉田の手が藍のブルマーを膝ぐらいまでおろし、パンティがあらわになったその時、
ドアがドンドンと音をたてた。
「おい、なにしてるんだ!?」

 「やべっ、先輩だ!」
吉田たちは慌てたが、すぐにドアは開けられ、高科が現れた。
藍は二人の手から逃れ、ずぶ濡れでブルマーを下ろされた状態のまま高科に抱きついた。

 「ぶ、部長!」
「吉田、なにしてるんだ!」
高科は強い口調で吉田を問いただした。
「いや、そのぉ、カメラチェックを・・・」
「よしだぁぁぁっっ!」
高科は吉田を張り倒した。吉田たちはふてくされ、そのまま部屋から出て行った。

 高科は自分のシャツをすぐに脱いで藍に着せ、抱き寄せた。
「だいじょうぶ? ひどいことしやがって・・」高科は藍にやさしく声をかけた。
「・・・は・・い・・」藍は震えていたが、高科の声で少し落ち着いた。

 「でも、あいつら、本当は悪いやつらじゃないんだけど・・藍ちゃんがあんまりかわ
いかったから、からかいたかったんだよ。許してやってよ。」
「・・」

 「もう二度とこんなことさせないから! 約束するから、部を辞めるなんて言わない
でくれ! 藍ちゃんは俺がなんとしても守るから!」
藍は高科の言葉に少し安心した。
そしてこの人を信じてみようと思った。
でないと藍のいる場所はどこにもなくなってしまう。ここが私の場所なんだ、そう思っ
た。

 それは藍の初恋だったのかもしれない。
しかし藍の初恋は、ほんの一瞬の幻のような恋だった。


              

    この作品は「ひとみの内緒話」管理人様から投稿していただきました。