『自衛官の妻』

                          二次元世界の調教師:作

第1話 理想的な妻

 「タカ君、お帰りー」
ただいま、と玄関をくぐるなりエプロン姿の妻千恵利が急いでやって来て俺を迎えて
くれた。
そしていつものようにハグしてキス。

 「ママったら、もうー」
娘の奈々も帰宅して間もないらしく、制服姿のまま口を尖らせて言う。
幼い頃から慣れているとは言え、いい歳をして玄関先で抱き合う両親に呆れたような
口ぶりだが、俺だって恥ずかしいのだ。
だがもちろん千恵利はそんな事ではひるまない。

 「あら、奈々ちゃんったら妬かないのよ。何だったら、あなたもパパとキスしてみ
る? いいのよ、昔みたいに……」
千恵利がとんでもない事をけしかけると、奈々は色白でお人形さんみたいな顔を恥ず
かしそうに染め、無言でプイッと自分の部屋がある2階へ上がった。

 「ねえ、タカ君! どうして奈々ちゃんの事じっと見てるの?」
「いや、別にそんな事は」
「ダメだよお」

 ううむ、いかん。
最近千恵利に似てめっきり女っぽくなって来た奈々の制服の後ろ姿につい見とれてし
まっていた。
奈々は血管が浮き出るくらいの色白で、子供っぽい三つ編みお下げのヘアスタイルだ
が、美少女と言って良い顔立ちだ。

 こんなかわいい愛娘に目を細めてしまうのも当然だと思うが、千恵利は俺の事は何
でもお見通しだった。
そう、俺は正しく好みの容姿に成長して来た奈々に、男として舐めるがごとき好色な
視線を送ってしまっていたのだ。

 何しろ奈々は高校のバレー部でエースアタッカーをやってるくらいで、スラリとし
長身。
スカートの下に伸びるシミ一つない真っ白な美脚だけでも悩殺ものなのに、中学まで
は痩せぎすだった身体が成長して、いつの間にか女性的な曲線美に変貌して来たのだ。

 白状すれば彼女の試合の応援に行った時も、ブルマみたいなユニフォームにひどく
欲情してしまい、股間がカチカチになって戻らなかったけしからぬ父親である。
わが娘を性的対象として見てしまう俺にも呆れたものだが、ツルペタだった奈々は今
や胸もお尻も年相応に膨らんで来たようだ。

 だがそれは奈々が母親の千恵利ソックリに成長して来たと言う事実に他ならない。
正直言って、色黒胴長短足の俺に似ないで良かったと思う。
さて未だ俺に抱き着いたまま、奈々が2階へ上がった事を見届けた千恵利は、とんで
もない行為を仕掛けて来た。
俺の股間をズボンの上からまさぐったのだ。

 「やっぱり、タカ君ったらおっきしてるう」
「やめろよ」
「コラ! 相変わらずロリコンなんだから」
「いや、それは違うよ」
「白状しなさい! 奈々ちゃんのアシ見て変な気持ちになったんでしょ」
「本当だよ。奈々がかわいいなと思って見てたのは確かだけど、それでこんなになっ
ちゃったわけじゃない」

 ブルマならヤバかったわけだが、真面目っ娘の奈々はスカート丈も長いし、さすが
の俺も制服姿で欲情したりはしない。
「じゃあ、どうしてこんなにおっきしちゃったのかな」
「千恵利が素敵だからに決まってるじゃないか」
「またまた」
「やっぱり仕事を始めたのが良かったのかな。とても綺麗だよ」
「ホント? 嬉しいな」

 口下手な俺がお世辞を言ってもすぐバレる。
千恵利は再び俺の股間をギュッと掴むと、悪戯っぽく微笑んだ。
「ねえ、今晩エッチしない?」
「ああ……」

ーー千恵利、お前どうしてそんなに積極的なんだ?

 俺は全く本心のまま話していた。
わが妻千恵利は俺にはもったいない程魅力的な女性だ。
40台に入った今でも高校生の娘がいるとは思えない程若々しいし、こんな美女に抱
き着かれてキスされたら奮い立たないわけがない。

 おまけにカフェで働き始めてからバッチリ化粧しているせいもあるんだろうけど、
ますます若返って肌のツヤやら張りが蘇ったような気がする。
人妻のフェロモンとでも言うのだろうか、千恵利の身体から匂い立つような色香が溢
れており、自分の妻なのにクラクラして股間を逞しくしてしまったわけだ。

 だがいつになく積極的に夜のお誘いを掛けて来た千恵利に、俺は生返事を返してし
まう。
若い頃ならいざ知らず、俺の股間をまさぐって自分からセックスを求める千恵利なん
て、もう何年も記憶にない。
そもそも奈々が大きくなった頃から、俺達の夜の生活はあまりない。
せいぜい月に一度肌を合わせれば良いくらいだろうか。

 もちろん俺が千恵利に性的魅力を感じなくなったわけでは断じてない。
帰国子女でさらに学生時代留学して海外での生活経験が豊富な彼女は、毎日俺が帰宅
すると玄関先でハグしてキスをしてくれる。
奈々の帰りが遅い時など、このまま押し倒してしまおうか、という衝動に駆られるも
しばしばだ。

 奈々にからかわれる、中年の日本人夫婦としてはやや大胆過ぎる愛情表現は、その
まま俺と千恵利の夫婦仲を示していると思う。
だから彼女の求愛にためらう理由などこれっぽっちもない筈なのに、俺の気分は晴れ
なかった。
それもこれも、全てはあの男のせいだ。