『恭子さん』

                          二次元世界の調教師:作

第10話 年上妻に嵌められた貞操帯の秘密


 この後すぐに貯金をはたいて指定されたお金を用意した恭子さんは羽黒に渡して、し
ばらくはボクにとって何もない平穏な毎日が続いた。
ボクの不始末を知っている筈の成本さんは何も言わず、細川病院での事務仕事にも慣れ
て、それなりの充実感を味わっていた。

 しかし、これが落とし穴だったのだが、勤務の不規則な恭子さんとボクは、当然なが
ら家で一緒に過ごす時間が減り、肌を合わせる機会も少なくなって、ある時期から完全
にご無沙汰になってしまった。

 ヒマさえあればボクを求めていたエッチな恭子さんが、全く誘って来なくなった最初
の理由は生理だった。
当たり前かも知れないが、実はこれまでに血だらけになりながら生理中の変態セックス
に挑戦させられた事もあったのに。

 そして生理期間をとうに過ぎてもエッチしたがらない恭子さんを不思議に思ったボク
は、初めて誘ってみた。
すると次の言い訳は、疲れてるから、だった。

 あの性欲の塊で、夜勤明けで疲れがたまっているとますます欲情してボクを欲しがる
筈の恭子さんにしては、不用意な言い訳だったと思う。
人を観察する力のまるでないボクに他の変化はまるで見えなかったのだけど、エッチし
たがらない恭子さん、と言う大きな変化には戸惑いを覚えないではいられなかった。

 そして以前は考えられなかったボクの方からの誘い掛けにも、恭子さんは手や口で精
子を抜いてくれるものの、何だかんだと理由を付けて体は許してくれず、ボクの疑心暗
鬼は否応なく高まった。

 そんな不自然なセックスレスが二月近く続いたある夜の事だった。
ボクは先に入浴を済ませて風呂上がりにビールを飲みながら、やけに長く入浴している
恭子さんが気になり、ムラムラと性衝動がわき起こって来るのを抑え切れなくなった。

 以前はエッチ大好きな恭子さんに一緒に入浴させられて体を洗いっこして遊び、その
まま性行為に突入する事もよくあったのに、風呂に誘うそぶりすら見せなくなった恭子
さん。
何しろボクからお誘いを掛けた事はなかったのだから、こんな行動を起こしたのも初め
てだ。ボクは全裸になると、驚かせてやろうと気配を殺しながら浴室へと向かう。

 湯上がりの恭子さんに一戦を挑むつもりだ。
裸同士ならさすがに断られる事もないだろうと思ったし、万一拒否されたら襲ってやる
決意だった。
そのくらい不自然なセックスレスは、ボクをケモノに変えていたようだ。

 そして恭子さんが風呂から上がった瞬間に、隠れていた脱衣所から飛び出したボク。
「キャーッッ!!」
「へへへ、襲っちゃうぞ~。えっ!?」

 ご近所中に聞こえそうな強烈な悲鳴にも驚かされたが、風呂上がりの恭子さんを見て
ある異変に気付いたボクは、自分の目が信じられないほど衝撃を受けた。
自宅の風呂に入っていたくせに、彼女は全裸ではなかったのだ。

 恭子さんもすぐにマズイ、と思ったのだろう、それを隠すため慌てて浴室に戻ったが
もう遅い。
彼女の股間に喰い込むように嵌まっていた真っ黒い革製のような分厚いTフロントのパ
ンツは、はっきり残像となってボクの目に焼き付いていた。

 学生時代SM雑誌を愛読していたボクには、恭子さんがエッチを求めなくなった理由
としてすぐにピンと来てしまう。
それはセックスを管理する「貞操帯」ではないか。

 ーー一体、誰に嵌められたんだ?

 たまらなくなったボクは、ドアをこじ開けて浴室の中に踏み込んだ。そして湯船に浸
かってガタガタ慄えていた恭子さんに向かい、単刀直入に切り出す。
「恭子さん、それ、貞操帯でしょ? どうしたの?」
「な、何でもないの……気にしないで、タックン」

 何でもないわけはない。
ボクに対して常に優位に立っていた姉さん女房らしさは吹っ飛び、半ベソをかいてガタ
ガタ慄えながら大きな体を縮こまらせようと無駄な努力をしている恭子さんの姿が雄弁
に物語っていた。

 でもボクは彼女の涙を見ていると、誰にやられたんだ、とはとても言えず言葉を選ん
だ。
「そんなのしてるなんて、おかしいよね」
「あ、あのね、キョンタン、ヘンタイだから自分で着けてるの」

 「どうして?」
「いや、だから……いっぱい我慢してからタックンとエッチしたら、すっごく気持ちい
いんじゃないかな、と思って」

 ーーあり得ないよ、恭子さん

 そんな苦し過ぎる言い訳を泣きながら必死になって言葉に紡ぐ恭子さんに、凄まじい
サディスティックな欲情を覚えたボクは、強引に湯船に入り込んだ。
そして口にチンポを突っ込んでイラマチオさせながら、重々しく垂れ下がる両胸の膨ら
みをムンズと乱暴に掴み締める。

 すると異常に乳首が固まり乳房がパンパンに張り上がっており、ボクとのエッチを拒
絶していた年上妻が本当はひどく欲情し体を疼かせていた事がわかってしまう。
恭子さんはいつになくたどたどしく口を使いながら、ボクの力任せの乳房嬲りにさえ敏
感過ぎる反応を示し、ビクビクと痙攣してアクメに達してしまうのが隠せないのだ。

 同時に発射してやったザーメンを飲ませてから口を解放すると、ボクは自分でも慄え
てしまうのがわかる口調でゆっくりと言った。
「本当だ。まるで胸におまんこが出来ちゃったくらいに、感じてるじゃない」

 実際その時、何者かに嵌められた貞操帯で禁欲させられていた恭子さんは、マンコも
尻穴も欲しくて欲しくてウズウズとさせていたのである。
だから乳房の欲情ぶりも尋常ではなかったわけだ。

 ボクは恭子さんの言い訳が嘘であって欲しくないと願いながら、心の中では彼女が他
の男に貞操帯を嵌められてボクとのセックスを禁じられ、その男に抱かれているのだ、
と言う信じられない現実を確信してしまい、冷酷に彼女を問い詰めた。

「じゃあ、エッチしようよ、恭子さん。貞操帯なんか外して」
「で、出来ないわ」
「どうして?」
「あ、あの……ズル出来ないように、鍵は病院に置いてるの」
「嘘だっ!」

 その貞操帯はどうやらサイドにワイヤーまで入った本格的な物で、鍵穴がどこにある
のかわからなかったが、簡単に外す事が出来るようなチャチな代物ではない。
そしてボクが声を荒げた瞬間、恭子さんは狂ったようにボクを突き飛ばし、無言で浴室
を飛び出して行った。
「ごめんなさい、恭子さん。怒ったりしないから、何があったのか聞かせてくれません
か……」

 恭子さんはわんわん号泣しながら、ボクが何を言っても取り合ってくれず、服を着る
と取るものも取り合えず家を出て行った。
そして車に乗り込むと、あまりの事に呆然として強く引き留めてやる事も出来ないボク
には、一言もくれず、一瞥する事もなく夜の街をいずこへか去ってしまったのだった。


               

    この作品は「新・SM小説書庫2」管理人様から投稿していただきました。