「虎と呼ばれた男」

                                赤星直也:作

おことわり
 
  この作品は全て空想で書かれています。実在の人名、団体とは一切関係があ
  りません。また、この作品の著作権は赤星直也が所有してます。作品の無断
  転用もかたくお断りします。違反した場合「
著作権法」によって「刑事罰
  と「
民事罰(損害賠償)」が与えられますので、ご承知下さい。
  これは自衛隊を美化したり、
特定政党を中傷した作品ではありません
  それに
政治思想もありません

登場人物 
      虎: ??             松平方正:新任刑事
                        二村伸也:警視庁警視
   橋本一郎:民生党党首、現首相       後藤亮太: 同 警部
   不破哲也:国産党党首、代議士       白鳥洋子: 同 刑事
   朝倉章治:宗教法人「オメガ」宗主     小田安男: 同 課長
   村田富市:社明党党首、元首相       小野清美: 同 刑事
                        水島智子: 同 刑事
 
プロローグ 
  
 「いやー。やめて下さい!」天井から下がったロープに万歳する格好で両手を縛
られた24、5歳の女性が悲鳴を上げた。
「白状しろ。お前はいったい何者だ!」
「ですから、水沢愛子と言ってるでしょう」男の持ったムチが女性を叩いた。

 「ギャ~!」悲鳴をあげ体を反らせる女性を10数人の男が取り囲んでいる。
「仕方ないな、体に聞かせて貰うか」男の1人が女性の胸ぐらを掴んだ。
それを合図に別な男がスカートのはホックを外し、ファスナーも下げられた。
「いやー!悲鳴と共にスカートが女性の足元に落て腰を隠している真っ白なスリッ
プが現れた。

 「いくら水商売の格好をしても、騙されないからな!」
「やめて下さい。本当に水沢愛子です。ホステスです」男達は水沢と名乗った女性
の言葉を聞き入れず、着ていたブラウスをナイフで袖口から切り裂いた。
無惨にも女性のブラウスがボロ切れとなって足元に落ちて女性はスリップ姿にされ
た。

 「最後のチャンスをお前にやる。お前は何者だ?」
「ですから、水沢愛子です」リーダーらしき男がまたムチを振った。
「ヒー!」女性は悲鳴を再びあると「もういい。やれ!」リーダーの合図で女性が
着ていたスリップの両肩紐が切られた。
悲鳴をあげていた女性は下着姿にされて「お願いです、やめて下さい!」女性は必
死に叫んでいる。

 その願いを無視して乳房を納めている白いカップの繋ぎ目を切った。
繋ぎ目を失ったカップから乳房が飛び出し白い乳房が揺れ動いている。
乳房の先端にはピンクの乳首が膨らんでいた。
「ほう、いいオッパイだな。下はどうかな?」女性の最後の砦となったパンティの
右側の腰のゴムが切られた。
「いやー。見ないで~!」真っ白な布地が反対側の足に絡まりついている。
 
 変わって、一瞬にして真っ黒な陰毛に覆われた恥丘が現れた。
「結構、毛深いんだな」「いやー。見ないで~」両手の自由を奪われた女性は女性
は左足を上げて股間を隠そうとしたが隠しきれない。
「オ○ンコが見えるよ」「ケツの穴も見えるぞ」女性が動けば動くほど男達はあざ
笑っている。

 そして、女性を吊り下げてあったロープが解かれ「俺が一番だ!」野獣と化した
男は勃起した肉竿を揺らせ、女性の淫裂を目掛けて肉竿を突き刺していく。
「いやー。やめてー!」悲鳴が部屋にむなしく響いている。
しかし、野獣と化した男は水沢と名乗る正体不明の女性を犯し、女性の淫裂からは
処女喪失の鮮血が流れ出ている。

 それでも男は犯し続け、女性の子宮深く精液を噴射していった。
1人が終わると次の男が水沢愛子と名乗った女性を犯していく。
飢えた野獣のように、膣はおろか女性の肛門にも肉竿を挿入していく。
哀れにも、女性は両手を縛られできず、男達のするがままに身を任せるしかなかっ
た。
射精を終えた男達は次々と交代し、幾度も女性を辱め続けた。
  
 それから半年後、その女性の死体が発見された。
暮れも押し迫った92年12月、川崎市の多摩川河川敷に全裸の女性の死体がある
と警察に通報が入った。
死後2日はたってなく、まだ殺されたばかりだ。
「また事件か!」初めはのんびりと構えていた川崎署は、指輪のイニシャルを頼り
に身元を調査し、とてつもない事件であると気づいた。

 その指輪は国家公安委員会から、極秘で調査依頼があった指輪だった。
川崎署は慌てて神奈川県警本部に連絡をし、神奈川県警から知らせを受けた国家公
安委員会は警視庁に確認を命じた。
命を受けた二村警視は後藤、白鳥の両名を伴って川崎署に乗り込んだ。
 
 「こちらです」出迎えた署長は遺体の置かれた安置室に案内していく。
そこには全裸で全身傷だらけでお腹が膨らんだ女性の死体があり「!」3人は声が
なかった。

 半年前、ある事件を調査中に失踪した同僚の果ての姿である。
「実は妊娠してます…」署長が二村に言う。
それは女性が犯人に、レイプされ続けたことを意味している。
「見ればわかる…」二村にはそれしか言えなかった。

 「目星はついたか?」二村の問いに「いえ、我々では無理です…」署長は俯いて
言う。
「そうだよな。署長、この件は報道管制を敷いてくれ。これは内閣情報局の命令だ」
「それは安心して下さい。身元が分かった時点で極秘に動いてます」
「ありがう。ところで身内には連絡したかね?」
「ハ、ハイ。もうすぐに来られると思います」
「すまないが身内にはこの件を極秘にできるか?」
「無理です。でも、鑑識結果を入れ替えればなんとかなるかもしれませんが…」

 「署長。これは警視庁、いや、国家公安委員会からのお願いだ。極秘にしてくれ。
特にレイプされて妊娠したことだけは極秘だ!」
「わかりました。極秘で動きます」警視の二村一行は、後を署長に任せて川崎署か
ら自治省にある国家公安委員会を訪ねた。

 二村が出て行ったとほぼ同時に、親族と名乗る男性が川崎署に現れた。
「何か用かね?」受付にいた警官が尋ねると、訪れた男は警官に目を向けていく。
「!」警官は心から身震いする怖さを感じた。
(と、虎だ。この眼は野獣の虎だ!)警官の体が震えている。

 現れた男は「多摩川の死人の件で署長に呼ばれたのですが?」
「君が身内かね」警官は全身に底知れぬ恐ろしさを感じながら答えている。
「ええ、そうです」男が答えた。
「だったら、そこをまっすぐ行ってくれ!」男は言われた通りに歩いていく。
男が去った後、警官は「何だ、この恐怖は?」冷や汗をびっしりと掻いていた。
 
 身内と名乗る男は、署長の案内で遺体と対面した。
勿論、遺体には衣服が着せられてある。
あり合わせなので、不自然差がかえって目立っていて「!」男は驚きの声を上げた。
「み、美由紀姉さん!」そして死体の髪の毛を撫でていく。

 「辛かったろうね。必ず仇は取るよ」そして、その男は「あっ!」大きな声をあ
げた。
女性の両手を見ると一見、拳を握ったようだが(右手があさ、左手がくら。まさか
朝倉では?)

 「どうかしたかね?」何も知らない署長は何事かと尋ねた。
「いえ、何でもありません!」男は拳を握って署長を見つめた。
「!」(野獣だ、とてつもない野獣の眼だ。獲物を狙う野獣だ!)署長も心底から
恐ろしさを感じて震えている。

 女性の両手はその昔、忍者が自分の死後、見方に敵の情報を伝えるために、今で
言う手話と同じ事で何かを伝えていた。
(あ、さ、く、ら。許さない。必ず抹殺してやる!)男は唇を噛み、署長をにらみ
つけた。

 (す、凄い殺気だ。こ、こんな恐ろしい男はを見たのは初めてだ…)体がガクカ
ク震えている。
その男は暫くして現れた葬儀屋と一緒に遺体を引き取って川崎署からでて行ったが
「あの眼は凄い眼だ。野獣、いや、もっと言い様のない眼だ!」男を見送った署長
の背中は汗でビッショリ濡れていた。
 
第1話 洋子の愛
 
 あの事件から4年後の4月に、警視庁本庁に新人が配属された。
「このたび配属された松平方正です。柔道5段、剣道は新影流師範です」挨拶して
いる。

 「それから古武道の研究家でもあります。武道ならおまかせください」自信たっ
ぷりの様子だ。
松平は警視に連れられ、早速配属された捜査一課長に紹介されていた。
「松平方正です」
(松平?まさか、そんな馬鹿な!)信じられないといった顔で課長は「君の出身地
はどこかね?」
「福島の会津です」新人が答える。

 (殉職した松平君は水戸だ、思い違いか。そんなこと、あるはずないか…)「こ
らからはガンバってくれよ!」課長が松平の肩を叩いた。
新人は小田に連れられ捜査一課に入り、課長の小田が課員を前に訓辞を始めた。
しかし、新人の松平は退屈そうにそれを聞いている。
 
 訓辞が終わると「新人を紹介するよ、松平方正君だ」小田の言葉に課員がどよめ
いている。
(松平…。まさか。そんなはずないわ)その中の一人の女性の顔が、一瞬に引き吊
っている。
紹介された後、松平は自分の席に座ったが、そこは出入り口の直ぐ脇になっている。

 新人だから仕方がないが、その代わりに隣の席には美人の刑事が座っていた。
「あのー。私は松平と言います。もし、よろしかったらお名前をお教え願いません
でしょうか?」
「私は、白鳥洋子よ。知らないことがあったら何でも聞いてね」
「ハイ、先輩」

 「やめてよ、先輩は。歳はあなたよりも下なんだから」
「えっ。僕は昭和47年生まれですが?」
「バカ、私は48年生まれなの。だから年下なの。女性に歳のことを言うと嫌われ
るよ。それから女性を馬鹿にしないこと!」
「失礼しました。今後は気をつけます」松平は白鳥に頭を下げた。

 「分かればよろしい!」(似てる、オメガに殺された兄さんの感じがする!)白
鳥は松平を見つめた。
「奇麗だ。白鳥さん、奇麗だ!」そのとたんに、松平は平手を食らった。
「言ったでしょう。女性をバカにするなと!」課内に緊張が走った。
 
 「すみません。失礼しました」松平は白鳥に頭を下げた。
「わかればいいわ。ところで痛くなかった?」
「痛いですよ。まともに入りましたから」
「あ、ははは…」白鳥とむかい合っている小野清美が笑っていた。

 そして「先輩、久しぶりに決まりましたよね」「清美さん、新人の前で言わない
の」照れるように洋子は注意していく。
清美は「ねえ、松平君、今夜は暇でしょう。付き合わない?」
「いいんですか?」
「ええ、洋子さんのおごりだから」清美は笑いながら言う。

 「先輩ありがとうございます」
「だから、先輩はやめてよ。白鳥とか洋子とかで呼んでよ」
「じゃあ、洋子さん。ご馳走になります」
「言って置くわ。これは好きとかじゃなくて顔を打ったお詫びよ。勘違いしないで
ね」洋子は釘をさした。
 
 松平は洋子と清美に連れられて、2人のなじみのスナックに入った。
「あ、イヤな奴がいる!」清美はお客の中に、同じ刑事を見つけた。
「知らないふりよ。いい、松平君!」
「わかりました。洋子さん!」3人は世間話をしながら水割りを飲んでいく。
「あれ、洋子さんじゃないの?」気付いたのか、洋子達が嫌うベテラン刑事が近寄
ってきた。

 「今夜は一緒に飲もうよ」
「向こうで飲んでてよ。今日は新人の歓迎会なんだから」しかし、その刑事は執拗
に絡んで「いい加減にしろよ!」松平は清美の制止を振り切って、ベテラン刑事の
胸ぐらを掴み睨んだ。

 松平の顔を見た刑事は、顔が一瞬にして蒼白になっていく。
(こ、この目は何だ。や、野獣の目だ。は、初めてだ、こんな恐ろしい目は!)
「わ、わかってるよ。挨拶にきただけだよ…」震えながらベテランの刑事が言う。
松平が手を退けると、体を震わせながら刑事は自分の席に戻っていく。
 
 「松平君、かっこいい!」小野は松平に抱きつく。
「清美。よしなさいよ。はしたないわ」
「いいじゃん。洋子さん、松平君を恋人にしていい?」
「ば、ばか言わないの!」そして、3人は笑いながら遅くまで飲んだ。

 店を出たのは10時近くで、松平は洋子を伴って清美をアパートまで送り届けた。
「松平君、一緒にエッチしない?」
「清美、酔ってるの?」
「冗談よ。洋子さんの恋人を奪う事はしないわよ!」清美は洋子をからかうように
言う。
洋子は「いい加減にしないと打つわよ」「おおこわ。お休みなさい」清美は部屋に
入ってドアを閉めた。
 
 「全く、清美ったら」苦笑いをしながら2人は洋子の借りているマンションに向
かっていく。
洋子は一人でワンルームマンションを借りていた。
「松平君、お茶でも飲んでって」
「いいんですか。狼になりますよ」
「あ、ははは。松平君はそんな人じゃないわ」洋子は松平を自分の部屋に案内する。

 「失礼します」松平は洋子の部屋に入って(あっ、あれは!)松平は男生と女性
の腕を組み合う写真を見て驚いた。
しかし、自分の部屋に安心したのか、洋子は何も知らずに、お茶を松平に差し出し
ていく。

 2人は世間話をしていたが「それじゃあ、失礼します」「帰らないで!」洋子は
叫び立ち上がった松平に抱きついた。
「洋子さんどうしたんですか?」
「怖いの、私、怖いの」
「何が怖いのですか?」洋子は松平に打ち明けた。

 「4年前に先輩の婦警が殺されたの。半年もレイプされ、妊娠までさせられて。
今度は自分の番と思うと怖いの。お願い、帰らないで!」松平は洋子の話をだまっ
て聞いている。
「そればかりじゃないの。私の兄さんも殺された。先輩と一緒を誓っていたのに…」
沈黙が続いている。

 「お願い、抱いて。私の全てを奪って」洋子は松平に抱きついたままだ。
松平は洋子の唇に唇を重ねた。
「いいんですね?」
「ええ、奪って欲しい」洋子は自分から服を脱ぎだし。上着、スカートと脱いでい
き、そして純白のスリップ姿になった。

 「松平君、これが私の全てなの」スリップの肩紐をずらしていくとスリップはゆ
っくり落ちて、レースのブラジャーとレースのパンティを露にさせてしまった。
腰のくびれ、乳房の膨らみが「奇麗だ。洋子さん」と松平に言わせた。
洋子はパンティから脱いだ。

 股間は絨毛に覆われ、松平は黙ってみている。
その目の前で洋子は両手を背中にやり、ブラジャーを脱いだ。
洋子を隠す物は何もなく、洋子の豊満な乳房が揺れている。
「これが洋子のヌードなの。松平君見て」両手を後ろにして全てを晒し、顔を赤ら
めて言った。
 
 松平は洋子のヌードを見ながら服を脱いでいく。
松平は次々と服を脱いで洋子と同じ全裸になった。
「洋子さん!」松平は洋子に口づけして乳房を軽く撫でていく。
「松平君、来て!」「ええ、行きます!」松平は全裸の洋子を抱き上げてベッドに
寝かせた。

 そして、乳房を揉みながら乳首を吸う。
「いいわ、松平君」乳房を揉まれた洋子は気持ちよさそうに虚ろな目になっている。
松平は口を乳首から淫裂に移した。
「だめ、そこは汚いわ。ダメよ」
「洋子さんのは汚くないです。奇麗です」舌でクリトリスを撫でていく。
「あんー」甘い声を出して洋子は背中を反らしていく。

 「いいわ、来て」「ええ、行きます」松平は淫裂の潤いを確かめて唇を重ね、勃
起した肉竿を淫裂に挿入していく。
洋子の淫裂は、初めての肉竿を迎え入れた。
「松平君、初めてなの」「知ってますよ」松平はゆっくり腰を動かしながら肉竿を
挿入していく。

 洋子は松平に両手で抱きつき、しがみついている。
「行きます!」松平の肉竿が洋子の処女膜を突き破った。
「ひー!」悲鳴をあげる洋子の淫裂から、処女喪失の印が流れている。
松平は腰の動きをやめることなく続け、洋子の子宮深く侵入していく。
(松平君、好きよ!)洋子は涙を流しているが、痛さにのためか、松平との愛の涙
か、それは分からなかった。

「でそうです。洋子さん、いいですか?」
「ええ、して。中にして!」松平は頂点に達して「でる、でる!」叫び声と共に肉
竿から精液を噴射させてた。
膣の中に暖かいものを感じた洋子は(これが射精なのね。好きよ松平君)その夜、
二人は遅くまで抱き合ったが、松平は洋子の部屋に泊まらず自分のアパートに戻っ
た。
  
第2話 特別任務
 
 次の日、何事も無かったように松平は仕事をしていた。
洋子は時折、松平を見つめ、そして松平の仕事を確認してから、再び仕事を始めて

いく。
(松平君、愛してるわ)心の中ではそう思っている。
たが、書類の不備を見つけた洋子は「こら、新入り。間違うんじゃないぞ!」
「すみません!」松平は洋子の顔を見つめ謝っている。

 二人は他人に知られる事を恐れて、わざと洋子は辛く松平にあたった。
それは松平も分かっているが、松平の前の席の清美は気づいている。
(変だわ、洋子さん)
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 その日、警視庁のある部屋に1人の男が呼ばれた。
「すまないが、付き合ってくれ!」中にいた男は地下の駐車場に向かった。
そして、用意されていた高級車に乗り、2人が乗ると車は厳重な警戒する警官の検
問を受けながら進んでいく。

 10分程走って車が止まったが、そこは首相官邸だ。
車を降りると秘書らしき者が官邸を案内していく。
2人は何もなくガランとした広い応接室に連れて行かれ、そこに、待ちかねたよう
に首相の橋本一郎が現れた。

 首相は竹刀を2本持っている。
「これで、掛かってこい。こないならこっちから行くぞ!」と竹刀を男に投げた。
若い男は落ちている竹刀を拾って下段に構えた。
「!」橋本の動きがピタリと止まり(す、凄い殺気だ。隙がない。飛び込めば下か
ら突き上げられる。下段に構えれば上から叩かれる。こんな奴初めてだ。何て恐ろ
しい奴だ!)橋本は冷や汗を流している。

 そして、その男の目を見た。
「と、虎だ。獲物を狙う虎だ!」剣道5段の腕前の橋本は初めて恐怖を味わった。
「もう、いい。そこまで!」連れの男が間に入って止めた。
 
 「この男がそうか。いい顔をしている。これなら大丈夫だろう」橋本首相は男の
顔を見て安堵の色を示した。
「はい、虎は武芸万能です。この前のようにはいきません。いや、行かせません!」
連れは橋本首相に告げた。

 「虎か、いい名だ。任務は君から説明してくれ」
「はい、総理閣下」連れの男は話を始めた。
「君の指命は、宗教会のオメガを潰すことだ。勿論、朝倉を抹殺することだ。その
取り巻き連中も抹殺だ!」

 さらに「もし、君の判断で朝倉の家族も抹殺する必要があると感じたら、抹殺し
てくれ。この件は我々政府は関知しない。君が勝手にしたことだ。いいね」
連れて来られた男は(いよいよオメガとの戦いか、姉さん、必ず仇をとってやるか
らね)緊張している。

 「君には申し訳ないとけど、これは僕たちの失敗なんだ」橋本が言い出した。
「村田総理の時に破防法を提出したが、連立政権を維持するため無能な村田の言う
こと聞いてしまった。それは村田を国産党の不破があおったからだ。そのおかげで
君が知ってるように警察でさえ取り締まれない状況になった。証拠が掴めないんだ。
いや、証人が逃げるんだ。怖くてね」
一気に話した橋本首相は悔しそうにさらに言う。

 「あの村田が総理でなく、女の土田たか子が総理になったらこんな事にはならな
かったのに。村田がアソコまで無能とは思わなかった。誤算だった」
さらに「これは政府の決定だ。これからのことは口蓋無用。つまり、極秘にしても
らう。それに君は今まで通りに働いて貰わなければならない。辛いことだがこの日
本を救えるのは君だけだ。頼む!」橋本は虎と呼ばれる男の手を握って泣いた。
橋本が見せた初めての涙である。

 「閣下。必ずオメガを潰して見せます。殺された姉さんのためにも!」
「ありがとう、ありがとう!」橋本は男の手を握って幾度も礼を言った。
橋本の流した涙が手を濡らしている。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 松平は5時に警視庁を出ると、洋子の現れるのを待っている。
「白鳥さん!」
「何か用なの、新米君」
「今夜、付き合ってもらえませんか?」
「何言ってるのよ。図にのらないで。私は淫乱じゃないんだからね。松平君が寂し
そうたからしてあげたのよ。勘違いしないで。あんたが好きじゃないんだからね!」
心にもないことを言う洋子だ。

 「でも僕は洋子さんが大好きです。必ず妻になってもらいます」
「ばか。誰があんたの妻になんかなるもんですか!」言葉では拒んでいたが洋子は
嬉しくて笑顔になっている。
(ありがとう。私もあなたの妻になりたいのよ)しかし、今の二人にそれが許され
る状況ではないのを、充分知っている。
 
 翌日、捜査一課に小田課長に連れられて新人の婦警が赴任した。
「水島智子と申します。なにぶん新人ですのでよろしくお願いします」その婦警は
容姿が整っていたので男性は喜んでいた。
「ふん、直ぐに男は顔に騙されるんだから」
「ほんと、スケベよ」
「洋子さん、僕は洋子さんが本命ですから」松平は洋子にしか聞こえないような小
さな声で言ったが(ありがとう。松平君)わざと洋子は知らんぷりをしている。

 水島の席は松平の隣で、そのために洋子に落ち着きがなかい。
洋子の容姿は決して悪くはない。むしろ美人に入る。しかし、智子はそれ以上に美
人だったから洋子は松平を取られまいと必死になっていた。
 
 智子は事あるごとに、松平に相談していくから洋子は仕事どころではなかった。
(智子、あんたを殺してやる!)顔には出さないが心の中ではそう思っていた。
しかし「新米は新米に任せた方が良いみたいだし…」と冷静を装っている。
いくら装っても、前の席の清美は洋子の心を見抜いていた。

 (洋子さん、松平君に惚れてるな)清美は「ねえ、洋子さん。飲みにいかない。
松平君も一緒にどう?」
「勿論、小野さんと白鳥さんの誘いだったら、勿論OKです」
「先輩、私も誘ってくださいよ」智子は洋子にねだった。
(誰があんたなんか誘うもんか!)と思っていたが「まあ、新人歓迎会といきます
か」智子が参加する事を許したが、松平を取られるのではと動揺している。
 
 4人は洋子と清美の行きつけの店に入ったが、智子は松平の腕にすがったまま、
洋子をいたずらに刺激し、清美は洋子を気遣って機嫌を取っている。
いつもは酔わない洋子だがは今夜ばかりは酔った。
酒もかなり飲んだが、智子のことでやけ酒を飲み続けた。

 「先輩。もう帰りましょう。明日は日曜だからぐっすり休んでください」4人は
一緒に店をでた。
酔った洋子を清美と松平が肩で抱きかかえながら洋子のマンションまで送った。
「後は私がするから、新米君は新米を送ってあげて!」ベッドに洋子を寝せて清美
が言う。

 「じゃ、先輩をお願いします!」松平と智子は洋子のマンションからでていった。
 
第3話 レズ体験 
 
 「先輩、服を脱ぎましょうね」清美は二人が出ていくと鍵をしっかり確認して洋
子の上着を脱がせてた。
ブラウス姿になった洋子を見て(奇麗なプロポーションだわ、羨ましい)そしてボ
タンを外していく。

 仰向けに寝かされた洋子はブラウスが開かれてスリッップ姿にされた。
「それじゃ、スカートも脱ぎましょうね」洋子の意識が無いことを幸いに、スカー
トを脱がせると、純白のスリップ越しに、ピンクのパンティが透けて見える。
清美はさらにスリップの紐を肩から外して脱がせて、純白のブラジャーと淡いピン
クのパンティの下着姿にさせ、股間部分は黒い陰毛が透けて見える。

 清美は洋子の背中に手をやり、ホックをはずした。
洋子の乳房が押さえを失い、カップから飛び出していく。
(先輩のオッパイだ!)清美は「ゴクン!」生唾を飲み、ブラジャーを上に持ち上
げ洋子の乳房を掴んだ。
(柔らかい…)感触を味わうように揉み出す。

 時折、乳首を摘むと無意識の洋子だが、乳首は堅く勃起していく。
(先輩、興奮しているわ)乳房を揉んでいた清美は両手を洋子のパンティに移した。
そしてゴムの部分を掴んで下げていくと絨毛を露にしていく。
絨毛は股間にびっしりと生えており、手入れをしてないので数センチまで伸びてい
る。

 (先輩は毛深いんだ)足から最後の布を剥ぎ取って、洋子を一糸まとわぬ全裸に
してしまった。
洋子を全裸にすると、清美も服を脱いでいく。
清美は婦警とは思えない大胆な下着を着けていて、大胆なVカットのパンティ、乳
首が透けてみるレースのブラジャーと、婦警とは信じられない下着だ。

 それを脱ぐと、股間は手入れされた絨毛が、淫裂をどうにか隠す程度で、淫裂の
上部には生えてない。
清美は自分で絨毛を手入れしており、洋子の両足を広げてMの字にする。

 その後で、洋子のクリトリスの包皮を捲り舌でなめはじめた。
「あんー!」無意識の洋子は喘ぎ声を上げ「先輩、入れさせてね」清美は舌でクリ
トリスをなめながら指を淫裂に入れると、無意識の洋子の腰が動きだす。
それに、自然に淫裂からは淫汁が流れ出ている。
 
 初めの頃は意識がなかった洋子だが、酔いが覚めてくると、少しずつ意識が戻っ
てきた。
「清美!」洋子が叫ぶと「先輩!」清美は唇を淫裂から洋子の唇に重ねた。
「!」洋子は訳が分からず声が出せないが、自分が全裸になってる事と、清美も全
裸になってることに気づいた。

 「清美、だめよ。いけない事よ」しかし、唇を塞がれて声にならない。
清美は唇を乳房に移し、両手で洋子の乳房を揉みながら、乳首をも吸っていく。
時折、軽く乳首を噛んで「あん、あん!」悶え声をあげている。
「だめよ、だめ!」洋子は清美の頭に両手で掴み、首を左右に振ったが、言葉と気
持ちは反対だ。

 (清美、気持ちいい。もっとして!)洋子も両手を伸ばして、頭から背中へと伸
びていく。
(先輩!)清美も気づいて、洋子がしやすいように態勢を変えて身体を起こし、洋
子に馬乗りになると、洋子も清美の乳房を揉んでいく。
(柔らかい。これが清美のオッパイなんだ…)感触を味わうように乳首を摘んだ。

 「先輩、好きよ」
「いけないわ。女同士はだめよ。いけないことよ」首を左右に振る。
「でも先輩が好き。松平君好きなのは知ってます。でも私は先輩が好き。松平君と
エッチしてもいいですから私ともエッチして下さい」清美は泣きながら言う。

 「わかったわ、今夜エッチしてあげる。でも秘密よ」暫く考えて言う洋子だ。
「先輩!」清美は両手を洋子の頬にやり、唇を重ねると、清美に変わって洋子が上
になり、向きを変え清美の淫裂を舌でなめていく。
「あん、あん!」全身を弓のように反らせた清美は悶え声をあげた。

 そして、目の前にある洋子の淫裂を指で撫で「あ、あー!」洋子も悶え声をあげ、
2人はその夜、遅くまで慰め合い、清美は洋子に抱かれて眠ってしまった。
「清美、ごめんね。松平君と愛し合ったの。私は松平君の妻になりたいのよ」洋子
は清美の乳房を揉んでいる。
そして、2人は全裸で抱き合ったまま寝込んでしまった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 頃を同じくして、一組の男女が話し合っていた。
「いい、オメガは2つの派閥があるの。過激な上野と穏健な村山に別れるわ。それ
が、付け目なのよ」

 「仲間割れを起こさせるのか?」
「さすが虎ね。村山を抹殺するの。しかも上野がやったように見せて。うまく行け
ば村山の配下が保身のため自首するわ。悪くても内ゲバよ。全学連の核マルと中核
の時のようにね」

 「でも、今度はむずかしいよ。疲れるな」
「あら、そんなら、元気ださせてあげるわ」女は虎のズボンのファスナーを下げて
肉竿を取りだし、口に入れた。
「あ、そんな。あ、ああ!」虎の肉竿が一気に膨張して破裂寸前になっている。

 「ねえ、してよ。今夜こそして欲しいの。ねえ、公平にしてよ」女は肉竿を口に
入れながらスカートを下げるとTフロントの紐パンティから絨毛が飛び出ている。
片手で紐を引っ張ると右の紐が解けて淫裂が露になった。
「わかったよ。してあげるよ」虎は女のキャミソールを下から上に捲り上げた。
 
 女はブラジャーをしておらず、豊満な乳房が揺れる。
虎は全裸の女を、抱きかかえるようにソファーに座らせ、ズボンを脱いだ。
さらに上着、シャツと脱いで全裸になると「行くよ」女と向かい合うように抱きか
かえ肉竿を挿入した。
「あ、あん、あん!」女は喘ぎ声をあげながら腰を前後に動かしていく。

 「クシュ、クシュ!」女の淫裂から音がでていき「虎、オッパイを揉んで!」
「それじゃあ、君がするんだよ」
「ええ、自分でするわ」虎は女を抱えながら絨毯の上に仰向けになって女を馬乗り
にさせた。

 女は腰を激しく上下に振っていき、虎は揺れる乳房を掴んで揉んでいく。
「いいわ、いいわ!」虎の肉竿で淫裂から淫汁が流れ出ている。
やがて虎は登りつめてしまった。
 
 「限界だ。出そうだ…」
「して。膣の中に出して…」
「大丈夫かい?」
「ピルを飲んでるの」
「それなら出すよ」女はさらに腰を激しく動かしていく。

 「でる、でる!」女はそれに合わせて腰を沈めて肉竿から放出を待っている。
肉竿は数回痙攣して膣深く噴射すると「暖かいわ。でたのね」
「ああ、いっぱいだしたよ」女は虎に乳房を差し出し、乳房を掴み乳首を軽く噛ん
だ。
「あっ、いいわ。もっとよ!」女は身体を反らせて、その夜、幾度も繰り返された。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 翌日、洋子と清美は同じベッドで朝を迎えた。
二人は全裸で抱き合ったままで「清美、朝よ。起きなさい!」洋子は清美を揺する。
「おはよう、先輩!」目を擦る清美だ。

 二人は全裸のままシャワーを浴びて「先輩、洗ってあげる」「ありがとう」清美
はスポンジに石鹸を付けて洋子の身体を洗っていく。
「先輩、智子に負けないでね。応援しているから」
「何のことなの?」洋子はわざと、とぼけた。

 「松平君が好きなのは分かってますよ。でも、私も好きになってくださいね」ス
ポンジで乳房を洗っていくが、洋子は声が出せなかった。
(ありがとう。私も清美が好きよ。でも。松平君の次だけど…)
「今度は私が洗ってあげるね」洋子はスポンジを清美から受け取り洗い出していく。
その後、二人は再びベッドで横になり、愛し合った。
 
第4話 事件発生
 
 テレビは日曜日なので、朝からニュース番組を流していた。
どの局も政府が後手、後手に回っているオメガ対策に非難を浴びせている。
「これは、政府がもっと真剣に取り組まないからだ!」今まで連立政権を維持して
きた村田前首相がである。

 それを聞いていた橋本首相は唇を噛んだ。
(あんたが、破壊防止法を成立させたら、オメガを封じる事ができたのに!)掌を
返すような社明党にうんざりといった顔だ。
また国産党の不破も政府の手ぬるさを指摘した。

 しかし、現在の法律では、証拠を固めてからでないと逮捕もできない。
橋本は宗教法人の抹消を国会に提出したのだが、無能な村田は不破と組んで、廃案
にしてしまった。

 国民は決して、バカではなかった。
(九州には一村一品運動の平田もいれば、阪神大震災で5千人を見殺しにしたバカ
な村田もいる)と冷えた目で、テレビに映る村田を見ている。

 その時、ニュースが司会の田藁にメモが渡された。
「こ、これは!」絶句し、村田と不破は司会者の慌てふためく田藁を見つめた。
「たった今、オメガの村山が殺害されました。犯人は同じオメガで過激な行動をす
る上野派と見られる男です。犯人の男は現在逃走中で警視庁が必死に追跡してます。
繰り返します。オメガの村山が殺害されました。……」

無能の村田と不破もさすがに驚き「これじゃあ、内ゲバじゃないか!」そう叫んだ。

 この事件は一瞬にして全国に知れ渡り、国民はあの学生同士のゲバを思い出した。
しかし、今回はそれどころではない。
サリンといった毒ガスや、銃を隠し持った殺人宗教集団だからだ。
お互いに毒ガスをまき合えば、必ず一般市民も犠牲になると考えている。
 
 司会の田藁は「どうです、ここは宗教法人の取り消しを提案しては?」
「だめだ。政治が宗教に介入してはならない!」
「じゃあ、どうするんですか?」元お笑いタレントの島川が聞いた。
「それは政府の仕事だ!」テレビにも、この愚かさが映し出されている。

 (虎君、よくやってくれた。次は朝倉を頼むよ)テレビを見ていた橋本は目に涙
を浮かべている。
 
 テレビは続報を伝えた。
「犯人と警察官が撃ち合いになっています。犯人は手投げ弾を使用して警官多数が
負傷した模様です。もう、警察では手に負えない状況です」田藁はそう告げた。

 そして「自衛隊に、出動をして貰うしかありませんね」
「自衛隊は緊急事態以外許されない。それに、まだ国会の承認も受けてない!」
「でも、このままだと死者がでますよ」いらだって田藁が怒鳴った。
「ダメな物はダメだ。気長に待つしかない!」田藁は怒りを隠せなかった。

 そこにまた続報が入った。
「村山を殺害した犯人は死亡した模様です。繰り返します。……」
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 虎はテレビが村山殺害犯が死亡報道する前に、上野派幹部を殺害した。
しかも警官が包囲する前にだ。
この包囲網は、影の警察と政府によって、一つだけ逃げ道が前もって作られていた。
虎は警官に向かって手流弾を投げた。しかも死んだ上野派幹部を真似て。
手流弾はわざと人のいない方に投げたかったが、そうも行かず、何発かが警官に当
たって負傷させた。
幸いにも重傷にならず、2、3ヶ月も入院すれば直る怪我だった。
「虎、引き時だ!」包囲している警官の中にいる、同士が声を掛ける。
虎は手流弾を犯人に仕立てた幹部の所で爆発させて、自爆に見せて現場から去った。
そのあとで警察官と同士が包囲して誰にも気づかれず殺害犯自爆となった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 この事件はテレビでも生放送された。
自爆現場からの生放送は国民に衝撃を与え、それ以上にリーダーが死亡した村山派
は動揺している。

 リーダーを失った穏健派は、二つに割れようとしている。
上野派との対決と、警察への自首派に別れてしまった。
「説得もダメだったか。このままでは奴らが警察にたれ込むのは時間の問題だな」
「はい、尊主様。このさいポアした方が良いと思います」
「仕方ないか、オメガを守るためにポアするか…」朝倉は穏健派の粛正を、上野に
指示がした。
 
 指示を受けた上野派の動きは素早かった。
全国にあるオメガ会の研修道場を一気に抑え、穏健派の村山派を次々と捕らえてい
く。
警察は内部闘争を恐れて、警察を配置していたが手を出せない。
宗教法人のオメガ会には証拠がないと踏み込めないから、全国各地のオメガ会の周
囲を取り囲むだけだ。

 その警官の見守る施設の中で、穏健派が拷問を受けている。
「誰だ、上野を殺させようとしているのは?」
「知らない!」「だったら死ね!」全身を丸太で殴っていく。しかも数人で。
「ギャー!」悲鳴が上がっているが、警察は手を出せないから、唇を噛んで悔しが
る警官達だ。
「破防法が成立していたら…」そう思いながら見守るしかなかった。
 
第5話 虎の襲撃
 
 首相官邸で橋本はテレビを見ていた。
「虎を出動させて朝倉を抹殺させろ。信者を殺してもかまわん。村山派を生きたま
ま捕まえるんだ!」橋本の命令は内閣情報局を通じて虎にも伝えられた。
「わかりました」虎は動いた。

 「ヘリを貸して下さい!」
「直ぐに用意させる」虎が戦闘服に着替えると、戦闘服には金バッチが付いている。
それは、日本最強の第一空挺団のエリートであることを意味している。
食料、武器も持たず指定された場所に、指定された日まで行く、過酷な任務を遂行
できた者のみに、与えられる金バッチだ。

 それに、虎が米軍の特殊部隊グリーンベレーや、海兵隊よりも上である事を証明
していた。
アメリカ大統領から授かった襟章だ。
事実、虎は食料なく湾岸戦争時にイラクの大統領府まで潜入した実績を持っている。
 
 虎はパトカーで市ヶ谷の駐屯地まで送られた。
市ヶ谷では自衛隊員が敬礼し、並んで出迎えている。
「待ってたわ、虎!」あの女性も戦闘服を着込んでいた。
「虎、頼むぞ。言われた武器はヘリに積んだ。それに2人は暫く休暇としておく」
「配慮ありがとうございます」虎と女性がヘリに乗り込む。

 「敬礼!」自衛隊の全員が虎に敬礼した。
(お願いします。日本を救って下さい、虎殿!)
(わかった。必ず朝倉を抹殺します。日本の為にも、殺された姉さんの為にも!)
ヘリはエンジンの出力をあげ浮き上がった。
「頼みます。虎殿!」自衛隊隊員が叫んでいる。
 
 虎の乗ったヘリは全速力で長野に向かっていく。
「後10分で着きます。着陸はどこにしますか?」
「オメガの真ん中だ」

 「無理です。夜なので着陸できません!」
「ロープで降りる」
「危険です」
「それしか方法がない」

 操縦士は「わかりました」真っ暗な中、ヘリはオメガ教団の施設の上でホバーリ
ングに入った。
「虎、着いたわよ!」
「いくぞ!」ロープを伝わって虎は着地した。

 それは長野県警の中に潜んでいた情報局員にも見えた。
「いよいよ始まるぞ!」緊張が走っていく。
 
 虎は野獣のごとく走っていく。
施設の中を走りまくり(ここだな!)虎は大きな施設に入ると、武装したオメガの
信者がいた。
「何者だ!」叫んだ瞬間に、虎の手に持つナイフが首を切り、信者が倒れた。
「間違いない。ここだ!」虎は奥へと向かっていく。

 「誰だ!」虎のナイフが空を切り、また倒れ、虎はドアを開けて中に入った。
「こ、これは!」縛り上げられた全裸の女性が数人いた。
皆が拷問を受けて、全身血で汚れている。
「生きているな」虎は別なドアを開けた。

 「何者だ!」武器を持った信者が部屋をしっかり守っている。
虎はナイフを背中の機関銃に持ち替えた。
「ダ、ダダダダ!」銃声と共に信者が倒れ、その銃声で一斉に虎を目掛けて銃が向
けられた。

 虎は回転しながら機関銃を撃ち、武装した信者が次々と倒れていく。
虎は部屋の中のドアを開けた。
「こ、これは!」穏健派の信者が拷問されたままだ。
「朝倉はどこだ?」

 「ここにはいません。いるのは妻だけです…」虎は部屋にある階段を登って2階
に向かった。
「ダダダ!」信者も機関銃を持っていたから、赤く銃弾が光り、虎も撃ち返した。
「ダダダ!」銃弾が赤く光って銃を持った信者目掛けて飛んでいく。
「ギャー!」武装した信者が次々と倒れて「ここか!」虎は階段を登りつめドアを
見つけた。

 「あそこだな!」武装信者が銃口を虎に向けて撃ってきた。
「ダダダダダ!」「ダダダダ!」虎も撃ち返した。
銃撃戦となり「ウー!」「ギャー!」武装信者が断末魔をあげながら次々と倒れて
いく。

 虎はドアを蹴った。
「う、撃たないで!」中から声がする。
(間違いない、朝倉の妻だな)「お前1人か?」
「信者がいます」全裸の女性が答え、側には全裸の若い男性信者がいた。

 朝倉の妻は震えながら「金ならいくらでもさしあげます。撃たないで!」
「そいつは誰だ!」
「し、信者です」決まり悪そうに言う。
「何をしていた。素っ裸で?」

 「性教育です…」
「ここでやって見ろ!」銃を2人に向けた。
「やるわ、撃たないで!」朝倉の妻は若い信者の上にまたがって、淫裂深く肉竿を
吸い込んでいく。

 「それはオ○ンコと言うんだ!」虎は引き金を引いた。
「ダダダダダ!」「死ね、日本のために。それに姉さんのために!」虎は機関銃を
撃ちまくった。
「ギャー!」悲鳴と共に朝倉の妻の体から血が吹き出し「罪もないのに、お前達の
ために何人も死んだんだ!」虎は息絶えた朝倉の妻に撃ちまくった。

 「子供もいるはずだ。どこだ?」虎は必死に捜したが、この施設にはいないのを
虎は知らなかった。
 
 銃声は取り囲んでいた警察隊に聞こえている。
「突入しましょう!」
「待て、本部から待てとの指令だ。オメガは銃を持ってるから、武装してからでな
いと危険だと」
「わかりました。装備させます」それは、内閣から待てとの命令を受けたからだ。

 「虎、ここには朝倉と子供はいないそうよ。朝倉と子供は別な施設と今連絡が入
ったわ」無線で虎に知らせが入った。
「仕方ない。引き上げるか!」虎は館屋から外に出て、合図を送った。
真っ暗な中からヘリが現れ、虎はヘリから垂れロープを掴んだ昇っていく。
 「虎、行くわよ!」ヘリが浮き上がって、全速力で市ヶ谷に向かい飛んでいった。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 翌朝、武装した警察隊が突入した。
この様子はテレビでも生放送されて、洋子と清美も仕事をなおざりにしてテレビを
見ていた。

 「洋子さん、大変なことになるかもしれないわね」
「そうね。こんな大事な時に松平君が休暇なんて。しかも水島までも休むなんて」
「先輩、もしかして2人は一緒だったりして!」
「松平君は、そんな人じゃないわよ」

 「あら、松平君をかばうの。おかしいわ」
「か、関係ないわよ!」
「先輩の顔が赤くなってる」
「ふざけると、打つわよ!」洋子は拳を握ったが、いつもの元気がない。
 
 その時「朝倉の妻が死亡してます、全身に銃弾を浴びてます」リポーターの声が
流れた。
それは、オメガの暴走を意味している。
「課長。朝倉の妻が銃殺されたようです」捜査課に緊張が走った。

 「ほ、本当か!」刑事達が一斉にテレビの前に集まった。
リポーターはさらに詳しく報告していく。
「課長。速く上野派を押さえないと…」
「わかっているが、手をだせん。証拠がないんだ。村山派から供述が取れたら踏み
込めるがな」その言葉に力を落とす刑事達だ。

 「いいか、これからは我々がオメガから狙われることになる。自分の体は自分で
守るんだ!」課長の小田が檄を飛ばし、洋子と清美達は頷いている。
 
 「生存者が多数います。みな体に傷を負ってます。拷問を受けていた模様です。
みな村山派です。繰り返します。穏健派が生存してます。これでオメガを取りつぶ
せそうです」

 「課長、穏健派が生きていたそうです」
「そうか、守るんだ穏健派を。そして、裁判で裁くんだ!」檄が飛んだ。 
 
第6話 最後の戦い
 
 これを契機に橋本首相が動いた。
「凶器準備集合罪でオメガ調べるんだ。責任は俺が取る!」国家公安員会に指示し、
それが各都道府県の警察本部に伝わり、一斉にオメガの家宅捜査が行われた。
万が一に備え、自衛隊も武装して施設の側で威嚇待機している。

 戦車、迫撃砲も用意され、その様子がテレビでも全国に放送され、全国の国民が
かたずを飲んで見守っていた。
しかし「だめだ、自衛隊を引かせろ!」村田と不破はインタビューの度に繰り返し
ていた。
(バカだな。警察官が対応できるわけないだろう。相手はオメガだ!)覚めた目で
国民が2人を見ている。
 
 そんな中、静岡の施設では武装した上野派が警察官に銃を向けて撃ってきた。
「ダダダダ!」機関銃と共に手流弾も投げられ「ボーン!」「ズジーン!」破裂音
が心底から響いていく。
装備を持たない警官が勝つわけがなかく「引け、引くんだ!」県警から指令がでた。

 傷を負った警官が仲間に助けられながら退却し、その様子も全国に生放送されて
いる。
「このままでは無理だ。自衛隊の出動しかない!」国民の誰もが思っている。

 テレビを見ていた橋本首相が決断した。
「静岡の施設に自衛隊を突入させろ!」それは瞬時に全国に伝わった。
テレビにも、自衛隊の戦車が施設に突入する様子が写し出された。
突入した自衛隊は重装備で、歩兵は迫撃砲を手に持って突入していく。
「ボーン!」爆発音が響き、戦車も砲弾を放って、それは内戦と同じ状況だ。
 
 そして、戦闘は1時間後決着した。
質に勝る自衛隊にオメガが勝つわけがなく、次々と上野派の信者が捕らえられてい
く。
「撤収!」自衛隊の司令官が指示を出し、一斉に自衛隊が引き上げていく。

 変わって警察部隊が突入して穏健派の信者を救出していくが、信者はまともな者
は誰1人いない。
皆が全身が血で染まり、歩くこともできない。
皆が拷問で骨折しているからだ。
 
 「まずいな。ここにも突入してくるかもしれんぞ」
「尊主様、ご安心下さい。我々がお守りします」テレビを見ながら朝倉と上野が話
し合っていた。

 警察隊は全国の施設をくまなく調べたが、肝心の朝倉と子供が見つからない。
テレビでも「オメガの朝倉がいません。神隠しにあったように消えてしまいました」
繰り返し放送し、警察隊にも焦りが出てきた。

 「閣下、ここは一旦、引いて村山派から事情を聞いた方がよいのではないでしょ
うか?」
「そうだな。引くか。しかし、見張りは置いておけ!」
「こころえてます」橋本の指令は瞬時に伝わり、警察隊が施設から撤収していく。

 「何でだ。朝倉を捕まえるまで、何でやらないんだ!」テレビを見ていた国民が
怒りを露にして叫んでいる。
 
 それから数日後、国会が開かれた。
村田と不破は内閣不信任案を提出したが「バカだ。どこまでバカなんだ!」国民が
両党首の主張にあきれかえっている。

 一方、全国の警察本部では、穏健な村山派の生き残りから事情聴取を始めていた。
「あいつらは尊主でも教祖でもない。悪魔だ。この世の悪魔だ!」素直に事情聴取
に応じている。
そして、幹部しか知らないアジトが、栃木の鬼怒川にあることを知らされた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 「閣下、あいつらを捕まえても裁判が長引くだけです。もう一度、虎を出動させ
て下さい」
「君もそう思うかね。僕もそう思うんだ。裁判は100年掛かるな」
「あいつらは生かして置くべきではありません!」
「よし、虎を出動させろ!」「はい、伝えます」内閣情報局から瞬時に虎に命令が
下った。

 「いよいよだ。これが最後の決戦だな」
「虎、お願い。必ず生きて帰ってね。死んだらあの子が可哀想だから、必ず生きて
帰るのよ」
「わかってる。俺は死なないさ。なんていったって、不死身だから」
 
 虎は再び戦闘服に着替えた。あの金バッチの着いた戦闘服に。
「行くぞ!」虎は再び市ヶ谷に向かった。
虎の乗った車は全速力で数台のパトカーに先導されている。

 一方、駐屯地では自衛隊員がヘリコプターの整備に余念がない。
(虎の乗ってもらえるなら光栄だ!)皆が必死で整備している。
そこにパトカーに先導された虎が到着し、虎は車を降りてヘリを選んでいく。

 「これが最適だ。これは対戦車用のアパッチじゃないか。低空飛行にはもってこ
いだ!」その言葉に駐屯地の司令官が「このアパッチはたった今盗まれた。犯人は
不明だが盗まれたのは事実だ。しかも、対戦車砲や機関銃もだ。燃料も満タンで4
00キロは樂に飛べる!」

 それを聞いていた虎が「申しわけありません!」司令官に敬礼する。
「虎殿、私の整備したアパッチを盗んでもらえて光栄です」整備士も敬礼で答えた。
 
 「それから、操縦士も一緒に盗まれた。我が駐屯地で一番腕がいい操縦士の及川
一尉と後藤曹長までもが!」司令官の言葉に、虎に向かい走ってくる2人の兵士が
いた。

 「及川一尉です。一緒に盗んでもらえて光栄です」「後藤曹長です。光栄です」
2人は虎に敬礼してヘリに乗り込みエンジンを吹かせていく。
「ありがとう。必ず生きてお返しします」虎は司令官に敬礼した。

 「アパッチを盗んだ犯人は我々の願うことを必ず実現してくれる!」司令官が部
下に言い放った。
「虎殿に敬礼!」大きな声と同時に自衛隊員の皆が敬礼していく。

 (ありがとう、必ず朝倉を抹殺するよ、日本の為にも)虎が乗り込むと同時にヘ
リが全速で回転して浮かび上がった。
「虎、頼んだぞ、朝倉を必ず抹殺してくれ!」それを見送る内閣情報局や自衛隊員
だった。
 
 虎の乗ったヘリは全速で北上していく。
「虎殿、ナビをご覧下さい。見方からの発信です」後藤は画面に写る映像を虎に見
せた。
「もうすぐだ。でも、山が迫ってるぞ」
「鬼怒川は山と山に囲まれた地形です。かなり入り組んでますから」及川は操縦桿
を握りながら言う。

 その時、機内の無線に連絡が入った。
「虎殿、アパッチを確認しました。そこから左に向かい着陸して下さい」無線の言
葉に「なぜだ。それに君は?」
「申し遅れました。宇都宮駐屯地第5小隊です。我々も盗まれました」

 「ありがとう、感謝する」虎は知っていた。
宇都宮駐屯地は天皇陛下が那須別荘に赴くさいに、警護をしているのを。
表では栃木県警や宮内庁警察が引き立っていたが、実際は裏で宇都宮駐屯地の自衛
隊が要所を警護していた。訓練という名目で。

 そのために、宇都宮駐屯地には陸上自衛隊にも関わらず、万が一に備え天皇家を
緊急警護するためのヘリや皇族の護衛用ヘリなど、航空自衛隊同様の輸送機も常備
されているのも知っていた。
 
 アパッチが着陸すると同時に、人が駆け寄ってきた。
「虎殿。朝倉はここから直ぐの所です」
「そうか、行くぞ」虎がヘリから降りると同時に走っていく。
正面に建物が見えて「要塞だ、これは!」走りながら見て虎は感じた。

 「虎殿、これで突破口を開きます」
「頼んだ、やってくれ!」迫撃砲が行く手を拒んだコンクリートの壁に打たれた。
「ドスン!」鈍い音とともにコンクリートが吹き飛んでぽっかりと穴が空いている。
「行くぞ!」
「危険です一人では。相手も気付いてます」
「それは承知だ。機関銃を貸してくれ」

 「お願いです、お供をさせて下さい」
「君たちには家族がいる。死ぬのは一人でいい」
「ここに残ったら家族も笑い物です。一緒に死なせて下さい」
「私もお供をさせて下さい」皆が言い出した。

 「わかった。皆で行こう。だが、決して死ぬなよ、必ず生きて帰るんだ!」
「はい!」その言葉を聞いた虎は突入し、その後を宇都宮駐屯地の自衛隊員も続い
て突入した。
 
第7話 夢 
 
 虎が突入すると同時に「ダダダダ!」銃声が鳴った。
その瞬間に「ボーン!」後ろにいた自衛隊が迫撃弾を放ち、一瞬にして銃声が止ま
った。

 それと同時に真っ白な煙幕ができ、その煙幕の中に全員が突入していく。
(死んでる!)銃を持ったまま信者が死んでいる。
「朝倉に気付かれたな」「はい、虎殿!」一気に建物の中枢部に突入した。

 「ここが怪しい!」ドアを蹴って飛び込んだ。
「キャー!」中には生まれたままの姿の女性達だ。
「手をあげろ、あげないと撃つぞ!」
「死にたくない、撃たないで!」恥ずかしさなどなく、ただ生きたいがために両手
をあげていく。

 「手をあげたわ。お願いだから見ないで!」女性の皆が淫裂から白い液体を流し
ている。
その中に、テレビでに覚えのある顔があった。

 「名前は何という?」
「島岡です」震えながら言う島岡だ。
「素っ裸で何をしていた?」
「修行です。男からパワーを戴く修行です」

 その言葉に「ふざけるな、それはセックスだ!」
「違うわ。修行よ。セックスじゃないわよ」あくまで認めない。
「それで、毎日やってるのか、その修行を」
「は、はい。毎日3人からパワーを戴いてます」

 「だったら俺にもさせるか、修行を?」
「いや。信者と以外はいやよ。不潔よ、あんたなんか!」
「そうか、だったら死ね!」銃が放され「ダダダダダ!」一瞬にして風穴が飽き、
血が吹き出していく。

 「こいつらはもう人間じゃない、雌犬だ!」また銃が放され、グッタリしている
女性達にさらに風穴が空いた。
 
 「尊主様、敵が近づいてます。ここも危険です」
「そのようだな、退散するか。全員待避だ。東京の隠れ家に向かう」朝倉の言葉で
幹部達は外に出て車で走りだした。

 それはアパッチを操縦する及川と後藤にも見えた。
「車が出ていく、確かめよう」行き先を確認するため空から追跡していく。
「東京だ、東京に向かっている!」及川は無線で市ヶ谷の駐屯地に連絡した。
「栃木県警に出動命令を出せ。絶対に逃がすな。埼玉県警にも待機命令をだせ!」
内閣情報局から指示が出た。
 
 一方「ここにはいないのか、いったいどこだ」「調べましょう」自衛隊員達も建
物の中をくまなく捜していく。
「バーン!」銃声がし「死ね!」一斉に機関銃が火を噴いていく。
「ダダダダダ!」悲鳴が上がった。

 「あそこだ、突っ込むぞ!」虎がドアを押し開け入った。
「た、助けて。撃たないで!」見覚えのある顔だった。
「井原だな。幹部の井原だろう?」
「そ、そうです…」

 「お前もオ○ンコしてたのか?」
「ち違うわ。無理矢理、朝倉にレイプされたのよ」泣きながら言う井原だ。
「ふざけるな。笑顔で国民を騙していたくせに!」殴りかかろうとする自衛隊員を
虎が押さえた。
 
 「まて、話を聞こう。最後まで!」
「すみません、取り乱しました」その言葉に安心したのか井原がが話し始めた。
「私は朝倉に犯され愛人にされたんです。好きでセックスしたのではないの。それ
に無理矢理子供を産まされたわ。幹部が見守る中で妊娠させられたの。たった今も
射精されたばかりです」後は声にならず泣いている。

 「朝倉には妻がいたはずだが…」
「それは形ばかりの夫婦です。お互いに勝手なことをしてます。朝倉は女性信者を
犯し捲り、妻は男性信者と浮気ばかりしてました」
「で、朝倉と子供はどこだ」

 「ここにはいません。たった今、出て行きました…」
「子供も一緒か?」
「殺す気ね。朝倉を殺してもいいから、私の子だけは助けて、殺さないで!」
「そうはいかない。根絶やししないとまたオメガが復活する」
「子供を殺すなら、あなたを殺すしかない!」井原は隠しておいた銃を向けた瞬間
「ダダダダ!」「ギャー!」悲鳴と共に血が吹き出していく。
 
 「虎殿、朝倉は逃げたみたいですね」
「そのようだな」虎達は念のために建物の中を調べていくと「ダダダダダダ!」武
装信者が銃を放ってきた。
しかも、的確に。
「プロだ。こいつはプロだ。迫撃弾を撃て!」その瞬間、味方の自衛隊員が倒れた。
「大丈夫か?」
「かすり傷です」しかし太股からかなり出血している。
「貸せ、俺がやる」虎は負傷した隊員から手流弾を受け取った。
口で安全ピンを抜き「1、2、3!」手流弾を投げ「伏せろ!」「ボカーン!」爆
発が起こった。

 その爆発で銃声がやんだ。
このほかにも銃撃戦もあったが、簡単に打ち負かしている。
「もう誰もいませんよ。ここには」
「よし、アパッチを呼ぶぞ」虎の指示でアパッチが建物の隣で地上すれすれで浮い
ていた。

 「行くぞ」「私もお供します」自衛隊の2人も乗り込んできた。
「逃げられた、車でな」
「それなら東京に向かっています、追いかけましょう」アパッチは全速力で飛んで
いく。

 そして、狭い山道を3台の車が走り、その後をパトカーが追跡している。
「あれだ。正面に回ってくれ」
「迫撃弾ですね」
「そうだ。奴を生かして置いてなるものか!」皆が頷いた。

 アパッチは先回りして道路すれすれで浮き、先頭の車と鉢合わせになった。
「どけ、退くんだ!」窓が開けられ護衛が銃を撃ってきた。
「パーン!」「パーン!」銃声が響いていくが「くらえ!」虎がボタンを押した。

 「シュー!」アパッチから放されたロケット砲が炸裂し、文字通りの火の車だ。
「ダダダダダ!」アパッチの機関砲も火を噴いて炎がさらに大きくなった。
ガソリンタンクが破裂したようだ。
 
 「虎殿、後ろの車が逃げます」
「追え、追うんだ」バックをして向きを変え逃げようとしている。
しかし、アパッチは逃がさず「シュー!」数発の迫撃弾が放たれた。
「ボーン!」爆発音と共に車が炎に包まれていく。

 パトカーも追いつき警官も信じられないと言った顔だ。
「本部、本部。朝倉の車がヘリから攻撃されてます。我々では対応取れません」
「夢だ、それは夢だ。朝倉を抹殺したいという夢を見ているんだ。最後まで夢をみ
て確認しろ」

 「は、はい!」(これは政府の決定だったのか!)パトカーの中から2人が見守
っている。
「ダダダダダダダ!」機関砲が炸裂して、炎に包まれた最後尾の車が爆発を繰り返
していく。

 アパッチは真ん中の車の上で旋回している。
「尊主様、もはやこれまでです。ここは潔く自爆しましょう」
「いやだ、死ぬのはいやだ。最後まで戦え。それがお前達の役目じゃないか」
「わかりました、最後まで戦います」うんざりした顔になる上野だ。

 朝倉達は車から降りて逃げようとしている。
「逃がしてなるものか」アパッチの機関砲と自衛隊員の機関銃が一斉に朝倉に放た
れた。
「ダダダダダ!」「ボーン!」朝倉が倒れた。

 「尊主様!」上野が車から出て朝倉に駆け寄った。
そして、また車に戻ると「自爆だ、爆発させろ」「はい」「ボカーン!」上野の乗
った車が爆発した。
「自爆か、いさぎいいな。せめてものはなむけだ!」ボタンが押された。

 「シュー!」迫撃弾が燃え上がる車に放たれ「ボーン!」炎が再び上がっていく。
「終わったな、これで」
「は、はい。これで終わりました」アパッチは急旋回して浮き上がり自衛隊員を仲
間の待つ地点で降ろし市ヶ谷に全速力で向かっていく。
 
 パトカーに乗った警官が次第を報告すると「夢だ、それは夢だ。朝倉は事故を起
こして乗せた爆弾で死んだ。いいか、これは内閣の命令だ。極秘命令だぞ」無線の
声も興奮している。
「は、はい!」警官も緊張している。

 「火が消えたら確認しろ。もし朝倉が生きていたら殺せ。責任は内閣が取る。そ
れに応援もすぐ着くはずだ!」その通りに、数台のパトカーが赤色灯を灯しサイレ
ンを鳴らしながら近づいてくる。

 警官はパトカーを降り、歩いていくが手には朝倉を抹殺するための拳銃が握られ
ていた。
「死んでる。体がバラバラだ!」
「子供もいる。朝倉の子だ」
「おい、見ろ。朝倉の首だ!」「ほ、ホントだ。朝倉だ!」機銃と機関砲の一斉射
撃で朝倉の首が吹き飛んだ。
 
第8話 任務終了
 
 朝倉の死が国家公安委員会から緊急会見でマスコミ流された。
「たった今ニュースが入りました。朝倉が死亡しました。繰り返します、朝倉が死
亡しました」テレビ局が争って放送している。

 どの局も放送を中断して朝倉の死と現場を写していた。
洋子達も警視庁に置かれたテレビを食い入るように見ている。
「遂に死んだか。捕まえて裁判に掛けたかったのに…」
「俺はこれでいいと思う、裁判なら100年もかかり、獄中死で死刑にならないか
らな」刑事達は話し合っている。

 「洋子さん、松平君がいない時に限って必ず大きな事件が起こるのね。智子もい
ない時に」清美が言うと「休暇だと言っていたわよ、課長が」
「どこかで、2人でラブラブしてたりして」
「松平君はそんな事しないわよ」清美に張り手を食らわそうとした。
「冗談よ、冗談に決まってるわよ」急いで洋子の手を押さえる清美だ。
 
 洋子は勤務中も落ち着かない。
(方正がそんなことするはずないわ。でも、もしかして?)清美の言った言葉が気
になっていた。
長い勤務が終わり、マンションに戻ると松平がドアの所に立っている。

 「洋子さん、待っていたよ」
「松平君、合いたかった」2人は人目をはばからず抱き合い唇を重ねていく。
「欲しい、洋子さんが」「私も欲しいの、松平君が」2人は抱き合ったままドアを
開けて中に入り、生まれたままの姿になってベッドに倒れた。
 
 「洋子さん、僕の妻になって」松平は洋子の乳房を揉みながら言う。
「私でもいいの?」
「僕は洋子さんしか目に入らないよ」乳首も吸う。
「ありがとう、こんな私でよかったら喜んで妻になります」

 「ありがとう、洋子さん!」肉竿が淫裂の中に入り込んでいく。
「松平君!」洋子は足を開き迎え入れて抱きしめている。
「行くよ」肉竿の根本まで入るとピストンを始め「あ、あ、あー!」乳房を吸われ
ながら喘ぎ声をあげていく洋子だ。

 「出すよ、洋子さん」「ええ。頂戴、松平君のエキスを!」洋子の淫裂深く肉竿
が噴射していく。
「あ、暖かい、これが松平君の精液なのね」
「ええ、そうです。洋子さん」2人はその後も抱き合い、数回洋子の淫裂に噴射し
ていく。
この夜、洋子の胎内に松平の子が宿った。
 
 翌日、2人は何事もなかったように勤務していたが、松平が課長に呼ばれた。
「何だろう?」心配げに見つめる洋子だが、松平は小田と一緒に二村警視の所へ向
かっていく。
「待っていたよ、松平君。小田君、夕方まで松平君を借りるよ」
「はい、二村警視!」
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 厳重な警備体制が敷かれた中を1台の高級車が走っていく。
そこは首相官邸で、車が停まり中から2人の男が降りた。
「こちらへ!」官邸の秘書が2人を導いていくと「ここで皆様がお待ちです」ドア
を開けて中に入るよう促している。

 2人が中に入ると「!」中に居並ぶ男達が、虎を見て驚いた。
(こ、これが虎か。なるほど凄い目をしている!)(凄い殺気だ、隙がない!)中
にいたのは皆が大臣だ。

 「よくやってくれた。虎!」居並ぶ中から、小柄な橋本首相が進み出て、虎の手
を握っていく。
「閣下、お約束通り任務を果たしました。それに姉さんの仇も取りました」
「そうだったな。君の姉さんは殉死したんだったな」それだけ言うと沈黙していく。
「これで日本も救われます。閣下」
「うん、その通りだよ。虎、ありがとう。日本国民を代表して礼を言う」橋本の目
からは涙が流れ出て、虎の手を濡らしている。

 「閣下、涙を見せるなんて閣下らしくありませんよ」
「そう言うな、虎。そうだ、君から説明してくれ」
「虎、本日を持って任務を解除する。ご苦労だった」
「はっ!」敬礼をする虎だ。

 「それから君へのプレゼントだ。日本国民からと我々のポケットマネーで君達夫
婦が暮らせるように喫茶店をプレゼントするよ」
「知っていたんですか?」虎は驚きの声をあげた。
「ああ、蛇の道はヘビというからね」橋本の顔が笑顔になっている。
「参りました」頭を掻く虎だ。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
 松平は洋子の待つマンションへと向かった。
「あら、松平君!」マンションの中には清美と智子がいた。
「結婚するんだって、松平さん」
「洋子さん、話したのか?」
「ええ、嬉しくてつい」照れる洋子だ。

 「でも松平君、洋子さんなんて変よ、洋子って呼ばないと」智子が注意する。
「洋子!」「はい、松平君!」
「ダメよ、洋子さん、松平君なんて、あなたかとか、方正さんでないと」
「恥ずかしくて言えないわ、そんな急になんて」顔を赤める洋子だ。
 
 「それじゃあ、また来るね。これから練習しといて」
「そうよね、これからエッチの邪魔しきゃいけないし」清美と智子は出ていく。
「しないわよ、エッチなんて!」また顔を赤める洋子だ。

 2人が出ていき、部屋には松平と洋子だけが残された。
「あなた、欲しいの、今日も」
「洋子、僕も欲しい!」2人は抱き合って唇を重ねている。
その後、着ている服を脱いで全裸になって「いいだろう、これでも」「いいわ、あ
なたが望むなら…」洋子は四つん這いになっている。

 「あ、あ、あー!」松平は両手で洋子の腰を押さえて肉竿を突き刺していく。
「洋子、気持いいよ。出すからね」
「いいわよ、あなた、一杯だして!」子供が宿った胎内に松平は放出を繰り返して
いった。
 
第9話 エピローグ
  
 翌日、松平と洋子は一緒に警視庁に入った。
「よ、結婚するんだってな」「は、はい!」2人の事は一瞬にして広まった。
「松平君、困ったことになったな。同じ課での夫婦は例がないんだ。むしろ禁止さ
れているんだ」

 「ああ、その事なら心配なく。僕達、退職しますから」
「やめるって、君!」唖然とする課長の小田だ。
「そうだ。やめた方がいい」二村警視が現れた。
「警視、そんなこと言ったって、生活がかかってますよ、これから夫婦になるんで
すから…」

 「松平は金持ちなんだよ。ほら、あそこの喫茶店、オーナーが松平なんだ」二村
は警視庁の向かいにある、喫茶店を指さした。
「あそこのオーナー…。結構高いですよ。良くそんな金があったな、羨ましい」
「君も羨ましいか、実は僕も何だよ」二村と小田は話し合っていく。

 それから2ヶ月後、洋子と方正の結婚式が行われ、かつての同僚達も、参列して
いる。
「おめでとう、洋子さん」2人に言葉を掛けて、それに、礼を言っていく2人だ。
 
 2人は一緒に暮らしていて、洋子のお腹も膨らみはじめている。
「掃除でもするか!」洋子は開けたことのない、押入を掃除をしていく。
「汚いわ、方正さんたら!」汚れた小さな菓子缶を見つけた。
「何が入っているのかしら?」興味本位で開けると「そ、そんなー!」叫ぶ洋子だ。

 「見たのか洋子、それを!」
「見たわ。あなたが殉職した先輩の兄弟なんて、信じられない!」洋子は手が震え
ている。
その写真には、オメガに殺された洋子の兄と、先輩の婦警が一緒に映っており、し
かも、方正と洋子の兄も一緒の写真が入っていた。

 「僕の姉さんなんだ。オメガに殺された姉さんなんだ!」
「そうだったの…」長い沈黙が続いている。
 
 「あなた、墓参りに行こうよ、兄さんと姉さんの為にも」
「そうだな。結婚の報告もしないとな」
「それに、赤ちゃんができたことも…」
「できたのか、俺の子が」
「ええ、できたの。医師が言うのには4ヶ月だって!」
「そうか、俺もこれで父親だ」喜ぶ方正だ。

 2人は電車を乗り継ぎ、洋子の姉が眠る墓にお参りをし「兄さん、私達結婚した
わ、兄さんと美由紀さんの分も幸せになるからね」心に誓う2人だ。
正面の墓石には「妻美由紀」と方正の姉の名が刻まれている。
 
 幸せそうな2人だが、日本国民を再び恐怖に陥れようとする輩がいた。
あのオメガが生き残っていた。
生き残った信者の中に、朝倉の子を宿していた者がいた。
生まれた子は生き残った信者で極秘に育てられている。

 「この子は関係ないわ、巻き込まないで!」
「そうはいくか、教祖様の血を引くお方だ。オメガの教祖になってもらう」女性か
ら子供が離され、信者の手で育てられている。
オメガが復活しようとしているのを虎は知らず、内閣情報局も知らなかった。
 
 そして、20数年後にまた事件が起きた。
「天然痘が発生しました。絶滅したはずの天然痘が発生しました。しかも、各地同
時にです。これは異常です。何者かが、細菌を蒔いたようです…」どのテレビ局も
特番で伝えている。

 天然痘はワクチンの予防接種で防げるが、昭和60年頃から接種が廃止されてし
まった。
その為に昭和60年後に生まれた者は免疫がない。
感染力と症状の凄い細菌に感染すればひとたまりもなく、全国で死者が相次ぎ5万
人を越えた。
しかも、これからの日本をになう大事な若者ばかりが。

 内閣情報局も必死に捜査し、オメガの仕業と突き止めた。
「これはオメガだ。虎を出動させろ!」時の総理大臣は虎の出動を命じた。
しかし、首相官邸に呼ばれた虎はまだ20歳代と、若く精悍な顔つきだ。

 「閣下、虎の子です。虎は体力的に無理ですと申し出があり、自分の子を差し出
しました」
「そうか。2代目の虎か。いいな、オメガを叩き潰すんだ。頼んだぞ!」
「はい、閣下!」敬礼で返事する2代目虎の戦闘服にもあった。
日本最強を証明する、あの金バッチと、アメリカ大統領府からの襟章が。  
                            
ー完ー