「女優・樋山香奈子」

                             赤星直也:作

第15話 告白

 4人は明け方まで抱き合っていた。
夜明けと共に康子は起きあがり、台所に立って「トントン」包丁とまな板がぶつかり
合っている。

 「あら、遠藤さん起きたの?」
「当然さ、仕事に行く時間だからね」
「こんな、早くから行くの?」
「そうさ、その代わり早く帰ってくるよ」服を着ていく遠藤は「確か、収録は3時か
らだったよね?」康子に聞いた。

 「ええ、そうだけど?」
「だったら、寄ってくれないかな?」
「いいわよ、遠藤さんのところね」
「待っているよ」出ようとすると「待って、せっかく作ったから食べてよ」康子が止
めた。

 「うれしいね。手作りの朝食なんて何年ぶりかな」
「今までは、どうなさっていたの?」
「局の食堂か、立ち食いだよ」
「惨めだったなのね…」
「ああ、惨めだったよ」遠藤は康子の作った料理を、残さず食べてからマンションか
ら出た。
残された香奈子と石川も起きて、康子の手作りを食べ、マンションから出た。

 香奈子と康子はリサの屋敷に戻ったが「楽しかったみたいね。朝帰りだなんて!」
リサから怒られる。
「すみませんでした…」
「気をつけてよ、スキャンダルは命取りになるから。マネージャーも一緒じゃ、話に
ならないね!」
「申し訳ありません」平謝りの香奈子と康子だ。

 「わかればいいわ。今日からは局が送り迎えをするからね」
「わかりました」香奈子と康子はリサの部屋から出て「怒られてしまったわね」「仕
方ないかもよ、これからは事前に言うようにしないとね」局での収録に備えて着替え
ていく。
その間に、局からの迎えの車が来て「ありがとうございます」香奈子と康子はそれに
乗り込み、BBNへと向かう。

 局入りすると、美和子のことが話題になっていた。
「ヘア丸出しで、本番をしたんだってよ!」
「そうらしいな、お終いだな」行き交うスタッフ達が話し合っている。

 「もう話題になっているのね。あの事が…」
「そのようよ。石川さんに助けられなかったら、私が噂になっていたのね」2人は遠
藤のところに向かった。
「待っていたよ、康子さん」
「何かご用でも」

 「ああ。香奈子さんの出演依頼をしたくてね」
「仕事ですか、助かります」
「これはお礼だよ。局の不備が公にならないようにしてくれた、お礼だよ!」
「で、どんな仕事ですか?」

 「司会をやってくれないかな。レコード大賞の司会を!」
「ありがとうございます。やらせて頂きます!」
「よかった、安心したよ。それから康子さん、これからも付き合ってくれないかな?」
「私はかまいませんが」顔が赤らんでいる。

 「ありがとう、よろしく頼むよ」遠藤と話が済むと、控え室に入り収録の準備をし
ていく。
「康子さん、好きなんでしょう、遠藤さんが!」
「ば、馬鹿言わないの」慌てる康子に(間違いないわ、2人は好きあっている)確信
して着替えていく香奈子だ。

 収録は順調に進んで、そして、いよいよ放送が開始された。
「雪化粧」は初回から好評で視聴率を上げている。
それに連れ、香奈子の出演依頼も多くなってきたが、康子はそんな香奈子が気がかり
だ。

 「リサさん。香奈子の仕事が多すぎます。これでは体が持ちません…」
「康子さんがそう思うのね。ここは考え時だわ」
「暫く休養させた方がいいと思います。ドラマ以外は断るべきです」
「わかった、康子さんに任せる」リサの許可を貰った康子は早速行動を起こした。

 「申し訳ありませんが、スケジュールが目一杯でして…」新たな依頼を断っていく。
しかし、芸能界ではそれは受け入れられず「のぼせやがって!」BBN以外の出演を
断っていく香奈子は、よく思われなかった。
それに、長期休暇を取りって海外に出かけてしまったからなおさらだ。
だが、リサのプロ所属なので、誰も表だっては言えなかった。

 香奈子と康子が海外に出かけている間に、週刊誌は美和子のことを乗せていた。
それはαとリサの共同作戦で、香奈子がいないから、美和子にマスコミが押し掛けて
いる。
「美和子さん、本番もしたそうですね?」
「首になったそうですが…」しかし、美和子が答えるわけには行かない。

 首になった美和子は、マンションも引き払って安アパートに越して行くが、マスコ
ミも追いかけている。
「その通りよ。ヘアも剃られたし、本番もやったわよ。それが何故悪いのよ!」開き
直っている。
「女優は、やめるんですか?」
「やりたいわよ。でも戻れない、芸能界には…」その言葉がテレビや雑誌に載ってい
る。

 その通りで、美和子にはテレビ局や映画からの出演依頼はなく、あったのはヌード
写真やエロビデオ、ストリップの出演だ。
生活が追いつめられた美和子は、生えかけた絨毛のままでストリップをやっている。
フルヌードになって舞台で踊ると「オ○ンコだ、美和子のオ○ンコだ!」観客も話題
の人だけに、喜んで淫裂を見ている。

 そのころ香奈子と康子はくつろいでいた。
「香奈子、石川さんが好きなんでしょう?」
「そ、そんなことないわよ。康子さんこそ、遠藤さんが好きなんでしょう?」
「ち、違うわよ、誤解よ」お互いに、否定し合っている。
しかし、いつまでもそうしているわけには行かない。

 「康子さん、私、ホントは好きなの。でも、康子さんをレイプしたから迷っている
の…」
「やっぱりね。私のことは気にしないで、好きだったら、香奈子の思った通りにしな
さい!」
「それより、遠藤さんに言わなくていいの?」
「言うわよ。いずれ言わないといけないし…」(レイプされたと言ったら。嫌われて
しまうかも…)そんな思いがあって、切り出せないでいる。

 (何とかしてあげないといけないわ、石川さんとで!)香奈子は考えを巡らしてい
く。
香奈子と康子が考え巡らせている内に、休暇も終わって帰国すると。待っていたかの
ようにマスコミ各社が取材に訪れた。
「休暇を取った感想は?」
「『雪化粧』の評判がいいようですが?」質問が相次いだ。

 「後で会見をしますから」取材陣を振りきって、リサの屋敷に戻ってきた。
「帰りました」2人はリサと久美に挨拶すると「楽しかったかしら?」
「はい、思い切り楽しみました」
「良かったわね。今度は私も楽しみたいわ、久しぶりだしね」リサは香奈子の服のボ
タンを外していく。

 久美も同様に、康子の服を脱がせて「お風呂に入りましょうよ、4人一緒に」「い
いわね、久しぶりだし」香奈子達は服を脱ぐと、浴室で体を洗いあった。
「香奈子。美和子が追放されたのよ」リサは香奈子の乳房を洗いながら言う。

 「追放されたら、生きていけないでしょう?」
「そうよ。だから、ストリッパーをやっているんだって」
「ストリッパーを!」康子と香奈子は思わず声を上げてしまった。
「嘘でしょう、リサさん!」
「本当よ。後で週刊誌を見せてあげる」リサは香奈子の体を丁寧に洗っていく。

 体を洗い終わると、浴室でから寝室に場所を変えた。
「香奈子して。香奈子にして欲しいの」
「私でいいのね?」香奈子はリサの股間に顔を埋めて、淫裂を指で触っていく。
「いいわ。そこがいい!」自分で乳房を揉みながら、悶え声を上げ行くリサだ。
「いいわよ、康子!」久美も康子の指で悶え、2人の淫裂からは淫汁が流れている。

 4人は楽しんだ後、話をしている。
「リサさん、先ほどの話ですが…」
「ああ、美和子の話ね」リサはベッドから起きあがり、週刊誌を取り香奈子に見せた。
「こんな事までするんだ!」
「私にも見せて。あら、いやだー!」週刊誌には、乳房丸出しでオナニーをしている
写真が載っており、性器には黒丸が付いている。

 「私は絶対にイヤよ。オッパイだけなら我慢するけど、ヘアまで写真に撮られるの
は…」泣き声に変わった。
「泣かないの。ほら、泣かないのよ!」リサが香奈子を抱きしめベッドに寝かせた。
「香奈子には、あんな事させないわ。私が守ってあげる」今度は、リサが香奈子の股
間に頭を埋めて、淫裂を触っていき、康子も久美に淫裂を触られている。
「あん、あん、あん!」悶え声を上げた後、4人は眠りに就いた。

 翌朝、香奈子と康子はリサと久美の前で話を始めた。
「聞いて欲しいことがあります…」
「あら、かしこまってどうしたの。二人して!」
「怒らないでください。実は好きな人ができたんです。私と香奈子にです…」

 「あら、2人に好きな人ができたんだ。相手はだれなの?」リサと久美は興味深く
質問してきた。
「遠藤さんです。BBNの遠藤さんです…」「私は石川さんです。競演している石川
さんです」香奈と康子は俯いたまま答えた。
「やっぱりね。あの事件から、石川さんの香奈子を見る目が違っていたし…」
「それに、遠藤さんも康子がいると、生き生きしているしね」冷やかすリサと久美に、
黙ったままの2人だ。

 「で、香奈子はどうするの?」
「どうするって言われても、プロポーズされたわけでないし…」
「康子はどうなの?」
「結婚したいです。でも、でも…」泣き出してしまった。

 「あのレイプが気になっているのね。ここが出番だわ。久美も手伝ってよ」
「勿論よ、可愛い康子のためだからね」リサと久美は、香奈子と康子が迎えに来た車
に乗って出かけると、電話を掛けて何かを企んでいる。

 そんな事など知らない康子と香奈子は、BBNの控え室で準備をしている。
「香奈子さん、もうすぐ出番です」スタッフが声を掛け「わかりました」スタジオに
入ると「香奈子、久しぶりだったね」石川がいる。
「石川さん、収録が終わったら渡したいのがあるの。帰らないで待っててね」
「わかった。帰らないよ」

 そこに「香奈子さん、出番です!」話を壊すかのように、スタッフが入ってきた。
「はい、わかりました!」セットの中でカメラの前に立ち演技をしていく。
「OKです。次は石川さんとの会話です」石川が現れ「3,2,1,キュー!」再び
収録が始まった。

 収録は順調に進んで9時頃には終え、収録が済むと同時に、リサと久美もスタジオ
に入ってきた。
「これはリサさん、お久しぶりで!」監督も低姿勢だ。
「終わったのかしら?」
「はい、終わりました」

 「だったら、いいわよね。香奈子を借りても?」
「終わりましたから今日はいいですよ。でも、明日は詰めのラブシーンですから、あ
まり刺激しないでくださいよ」
「あら、ラブシーンなんだ。ベッドもあるの?」
「はい。ですから、ヌードになってもらいます」

 「マネージャーは知っているの?」
「はい、言ってありますよ」
「香奈子も知っているんだ…」
「先ほど、石川とスタジオの隅で練習していましたよ」
「そんな事までしていたんだ。香奈子は!」
「リサさん、あれは大物になりますよ。いい子を見つけましたね」
「まあね」リサは監督と話を済ますと香奈子に話しかけた。

 「香奈子。明日は大変らしいね」
「はい。ヌードもあるんです」顔を赤らめて言う。
「だったら練習しないとね。石川さん、付き合って貰えるわよね?」
「勿論です。リサさんに言われたら断れませんよ」
「よかった。康子さんもよ一緒よ」
「はい、わかりました」

 収録を終え、香奈子や康子がリサの屋敷に戻ってくると「遠藤さん、お待たせしま
した」そこには遠藤がいる。
「遠藤さん、お元気ですか?」康子も挨拶すると「元気にやっていますよ」遠藤も康
子の手を握ってきた。

 「見られてます、恥ずかしいです…」
「そうですね、見られていますよね」慌てて手を引く。
「2人とも、中に入って。手を握るのは中でしてよ」
「わかりました」皆が屋敷の中に入った。

 「遠藤さん、明日の収録は大詰めなんですってね?」
「愛を告白するシーンや、ベッドーシーンがありますが…」
「練習させましょうよ。2人に!」リサの言葉に「ここでですか、見られて恥ずかし
いです」驚く香奈子だ。

 「スタジオはスタッフがもっと大勢いるのよ。その前でヌードになるんだから、こ
れくらい平気でしょう?」リサは手厳しい。
「大丈夫よ。康子さんと遠藤さんも演技をするから」笑顔で言う久美に「え、私もす
るんですか。ラブシーンの練習を!」康子は驚き顔だ。
「そうよ。ベッドシーンもよ」

 それには驚く遠藤で「僕は俳優ではないから、演技は無理ですよ」
「プロデューサーでしょう。それくらいやりなさいよ、模範演技を示さないと!」
「でも、できるかな?」
「できるわよ。康子さんとなら本心で、できるでしょう?」
(リサさんは気を使ったわ。遠藤さんと康子さんが結ばれるように!)香奈子は恥ず
かしそうに俯いた康子を見ている。

 「決まったわね、最初は康子と遠藤さんよ。好きな人と思えば台詞は要らないわよ
ね?」
「やってみます。恥ずかしいけど…」遠藤は覚悟を決めて康子の前に立った。
「康子さん、僕は君が好きだ。僕の妻になってくれ!」
「私でいいんですか。私は傷を持っています。資格はありません…」俯く康子に「そ
んな、過去のことなんかどうでもいいよ。今が大事なんだ。一緒になってくれ!」遠
藤は康子の手を握った。

 「私でいいんですね、私で!」康子は涙を流しながら言う。
「そうだ、康子さんでいいんだよ」遠藤と康子は抱き合い、唇を合わせていく。
「好きだ、康子!」
「私も愛してます、遠藤さん!」抱き合って余韻に使っている。

 遠藤は康子の着ているスーツのボタンを外し「欲しい、康子が欲しい!」ボタンを
外し終えると上着を脱がした。
「私も欲しい、遠藤さんが欲しい!」康子も遠藤の背広を脱がしていく。
(本気だわ、2人は本気で愛し合っている!)香奈子達は見ている。