「女優・樋山香奈子」

                             赤星直也:作

第9話 居候

 BBN放送の決定は美和子にも告げられた。
「悔しいわ、時間をずらすなんて…」愚痴ると「でも主役ですから」マネージャーが
美和子の機嫌を取っている。
「そうね、まだ主役だしね」
「そうです。収録揉もう直ぐですから行きましょうか?」
「わかったわ、行こうか」2人は収録の行われるスタジオに入った。

 「いいですか、今日はレイプされるシーンですからね」
「わかっているわよ」
「衣装は和服でお願いします」
「和服…。着た事ないの、誰か知ってる?」
「衣装係がいますから、着替えに衣装室へ入ってください」
「わかったわ。着替えるわよ」渋々ながら美和子は衣装室に入っていく。

 「美和子さんですね。和服の衣装ですよね?」
「ええ、そうよ、着た事ないの、和服なんてね!」
「お任せ下さい、とりあえず、フルヌードになってください」
「素っ裸なの?」
「はい、監督から下着なしで和服を着るようにお聞きしてますが…」

 「そうだったわね、素っ裸だったわ」
(和服は下着を着ないんだ!)勝手に思いこみ、衣服を脱いで「これも要らないのよ
ね?」「パンティは要りません」美和子はパンティのゴムを掴み、引き下げていく。

 (ヘアが薄いわ、性器が見えている!)衣装係は美和子の恥丘が気になり見つめて
いる。
(性器を見ているわ。まだヘアが戻っていないのに!)恥ずかしそうに、今度はブラ
ジャーを脱いで全裸になった。
「これでいいのね?」両手を後ろで組み、乳房と股間を衣装係に晒している。

 「はい、それで結構です。まずは腰巻きからです」衣装係は真っ赤な腰巻きを、美
和子の下半身に巻き付けていく。
(へえ、パンティは履かないんだ!)その後は、まっ白な襦袢を着込み乳房と腰巻き
を覆い、その上に訪問着を着込んでいく。
「締めますから、きつかったら言ってください」衣装係は帯を巻いていく。
「いいわよ、それくらいで!」(どうせ、裸になるんだから、どうでもいいわよ)捨
て鉢の美和子だ。

 「はい、終わりました」
「ありがとう」和服を着込んだ美和子はスタジオに戻ってきた。
「お待たせしました」
「綺麗だね、見直したよ美和子君!」監督は美和子の肩を叩き(フン、お世辞は要ら
ないわよ!)作り笑いをしている。

 「監督、準備が終わりました!」
「よし、収録を始めよう」
「よーい、キュー!」収録が始まった。

 カメラが和服を着た美和子を捕らえていると、その前を通り過ぎていくと男達が行
く手を塞いだ。
「退けてください」
「そうはいかないよ、これを見てくれ!」
「そ、そんな!」台本通りに演技をしていくと「わかったな、おとなしくしろよ!」
美和子は男達に引きずられるようにカメラから遠ざかっていく。

 「OKです。次は美和子さんの緊縛シーンです」セットが変わっていく。
「いいね、ここでは和服を脱がされ素っ裸になるシーンだからね。レイプをいやがる
心境になってくれよ」
「やってみます」監督の言葉に緊張して(いよいよ、素っ裸にされるのね。ヌードは
いやなんだけど、仕事がないし…)変わり行くセットを見つめている。

 「いいですか、収録を始めます!」
「よーい、キュー!」再び収録が始まった。

 「やめて、お願いですから!」
「そうはいかないよ。こっちだってやりたいんだよ!」俳優の言葉で、数人が美和子
を抑え、帯を解いていく。
「いや、いやー!」台本通りに声を上げていくが、帯が解かれると、前が開いてまっ
白な襦袢と真っ赤な腰巻きが覗いている。

 「やめて、お願いやめて!」訪問着も脱がされ、襦袢と腰巻きだけの姿になってい
く。
「ほら、オッパイの丸出しだぞ!」
「いやー!」まっ白な襦袢が剥ぎ取られて乳房がが飛び出していく。
(いやだわ。両手を縛られるなんて!)「やめて、いやー!」美和子の両手首が縛ら
れて、吊り下げられて、美和子は真っ赤な腰巻き一枚でやっと立っている。

 「いよいよだな。覚悟しろ!」
「やめて下さい、やめてー!」叫ぶが腰巻きの紐が解かれて、美和子の生えかけた絨
毛が、スタッフの前に晒されてしまった。

 「カット、カットだ!」監督が叫ぐと「ここが邪魔だ。剃ってからやり直しだ!」
股間を撫でている。
「いや、ヘアは残して。丸見えはいやです…」
だが、助手は短い絨毛にスプレーを吹き付けて、カミソリを当てていく。
(やっと生えたばかりなのに。また性器が丸見えになってしまう!)体が小刻みに震
えている。

 (オ○ンコが丸見えだ。俺もやっていいのかな?)見つめている俳優達の股間が膨
らんでいる。
(また本番をやらされる…。もうセックスはしたくないのに…)
美和子は手首を縛られ、吊されたまま、股間の絨毛が剃られてしまった。

 「終わりました!」
「いいか、ギリギリまで撮せよ。こんな綺麗なオ○ンコだからなもったいないしな!」
監督は美和子の絨毛の消えた淫裂を撫でて言う。

 「始めます、準備してください!」その言葉で、美和子のレイプされるシーンが始
まった。
「いや、いやー!」乳房を揉まれ淫裂を触られていく。
「行くぞ、それ!」「いや。やめてー!」淫裂に肉竿が入り込んでいく。
(いや、オチンチンは入れないで、演技だけにしてよ!)俳優は腰を振っていく。

 「あん、あん、あん!」乳房を揉まれながら悶え声を上げていく。
監督は(そうだ、もっとやれ。全員でやるんだ!)ジッと、見つめており「俺にもや
らせてくれ!」俳優が入れ替わって肉竿を挿入していく。
それには「あ、あ、あー!」目を閉じ、声を上げていく美和子だ。

 美和子が収録をしている頃、葵プロでは社長が債権者に取り囲まれていた。
「もう少し待ってください、必ずお返ししますから」
「そうはいかないよ。これで2度目じゃないか、もう待てないよ。5時までに振り込
まなかったら破産だ!」その言葉に項垂れていく社長だ。

 「わかりました、5時ですね」力無く答えて(無理だ。もう借りられる所はないし
…)ソファに座り、天井を見ている。
社長には、もう金策するには余力など残ってなく、不渡りを出し、倒産を待つしかな
かった。
「終わったな。これで俺の夢が終わった!」その社長の言った通りに、葵プロは約束
手形を落とせず倒産した。

 それは、マネージャーの康子にも直ぐに知らされた。
「香奈子、倒産だって、プロダクションが!」
「えっ。これからどうすればいいの?」
「わからないわ。でも給料が貰えないのは確かよ、何とかしないと」康子は電話を掛
けまくっていくが、ため息ばかりだ。

 「悪い事ばかりだわ。香奈子、これからしばらくただ働きよ」
「どうしてなの?」
「社長が前払いで、出演料を受け取ったんだって。だから払えないって!」
「もし、『貰ってないから出演しない』と言ったら、どうなるの。そんな事したくな
いけど…」

 「たぶん、追放ね。テレビや映画の出演は無理になるわね」
「だったら、決まっているわよ。女優はやめたくないし!」
「いいのね、しばらくはただ働きよ」
「それは、覚悟の上よ」香奈子の決意に康子も従い、スケジュールを組んでいく。

 葵プロの倒産は、マスコミを通じてリサや久美の耳に入った。
「倒産したんだってね。行く当てあるの?」心配そうに2人が声を掛けてきた。
「ううん、ないの。貯金もあまりないし…」
「そう、だったら新しい仕事が来るまでここにいたら?」

 「いいんですか、ここにいても?」
「勿論よ。康子さんも一緒よ」
「ありがとうございます、なんてお礼を言っていいのかわかりません!」
「礼には及ばないわよ。その代わり、今夜からは一緒にベッドに寝るのよ」リサは香
奈子の服を脱がしていく。

 「見られています、メイドさんに!」
「気にしないで。口が堅いから平気よ」香奈子のシャツとスカートが脱がされて、も
う下着姿になっている。
「もっと色気のあるのにしましょうよ。これは要らないしね」パンティが先に脱がさ
れた。

 「康子も脱ごう。それから楽しみましょう」康子もブラジャー、パンティと脱がさ
れて生まれたままの姿にされた。
「香奈子、綺麗よ!」リサは香奈子に唇を合わせ、乳房を撫でていく。
「恥ずかしいです、そんな事をされると!」
「気にしなくていいの。久美もしているから楽しませて」リサは自分から服を脱いで
全裸になり、康子も久美と同じ全裸になっていた。

 (康子さんもオッパイを触られている…)康子もソファーに座ったまま、乳房を久
美に触られている。
「ベッドでしましょう、ここじゃなく!」リサの提案で4人は生まれたままの姿で寝
室に入った。
「オッパイを吸って、香奈子!」部屋に入るなり、リサは香奈子を押し倒し、乳房を
押しつけて(ここを吸うんだ!)乳首を口に含んで吸っていく。

 「そうよ、もっと吸って!」リサは気持ちよさそうに虚ろな顔になっている。
「いいわ、いいわよ!」久美も康子に乳房を吸われ悶え声を上げていく。
4人は夜遅くまでベッドの上で抱き合った。

 翌日、香奈子と康子はリサの家に越してきた。
「貧乏だから、荷物も少なくていいわね」
「そうよね、こんな簡単だなんて」衣服など身の回りの品しかなく、香奈子と康子は
リサの寝室の隣があてがわれた。

 「これからは一緒に暮らすのよ」リサから言われ「はい、よろしくお願いします」
挨拶する。
「で、香奈子の仕事はどうなってるの、康子さん?」
「ドラマの収録が明日からです。地方ロケですが…」
「ああ、『命ある限り』ね、私と久美も出ているやつね?」
「はい。リサさんや久美さんも出ています」

 「どう、だったら一緒に行かない?」
「喜んで、ご一緒させて頂きます」
「よかった、だったら行きましょう、これから!」
「撮影は明日からですから、今日行っても仕方がないです…」

 「康子さん、ホテル代が心配なんでしょう。安心して、私が持つから。ほら、準備
して!」
「申し訳ありません、借りは、必ずお返しします!」
「何言っているのよ、水くさいわよ。それより、急がないと」康子と香奈子は急いで
着替えをバックに詰め込んだ。

 ロケ地は東北地方の温泉地で、新幹線に乗り夕方にはホテルに入った。
「いらっしゃいませ」大女優の2人に、ホテル側は歓迎し特別室が用意されている。
「お連れ様はこちらをご使用下さい」香奈子と康子は付き人と勘違いされた。
「この人も女優なのよ。私と一緒でもいいわよ」
「失礼しました。隣をご利用ください」

 香奈子と康子も特別室が用意されたが「顔が売れないとこうなのよ。芸能界は特に
こうなの」リサが慰めて言う。
「心得ております」
「だったら、早く有名にならないと…」リサと久美が言う。
(そうよ、早く有名にならないと惨めな思いをするだけだわ)改めて自分の立場を思
い知った。

 そこに「もうお着きで、大女優は心意気がさすがに違いますね」監督が打ち合わせ
に訪れた。
「負けるわけにはいきませんから。脇役でも!」
「さすがです。香奈子君も見習った方がいいよ。早速だが…」監督は3人と打ち合わ
せを行った。

 翌日から、早速収録が始まり、香奈子はカメラの前に立っている。
「3.2.1.キュー!」香奈子は台本通りにリサや久美と話していく。
「OKです。次のシーンを収録しますから移動をお願いします」温泉街を3人は歩い
ていく。

 「見て、宮田リサよ、それに早川久美よ。でも、あれは誰?」
「知らないわ、誰かしら?」香奈子の名前はまだ知れてないので無理もない。
「気にしないで。悔しかったら早く有名になる事ね」気遣うリサだ。
(ありがとうございます。必ず有名になって見せます!)香奈子は心に言い聞かせる。

 収録はドンドン行われ、もう夕方になっていた。
「よし、今度はホテルでの収録だ!」今度は香奈子が泊まっているホテルでの収録が
行われている。
「はい、始めます。3.2.1.キュー!」ホテルの従業員が見守るなかで、俳優の
石川を相手に演技をしていく香奈子だ。

 「知らなかったわ。美智子の手術がミスだったなんて!」石川を相手に泣き崩れて
「しっかりして下さい!」石川は香奈子の体を支えソファーに座らせていく。
「う、う、う!」嗚咽を上げ涙を流していく。

 「はい、OKです!」
「いい演技だよ。新人とは思えないな」石川が監督と話している。
「僕もそう思ってる。さすが遠藤さんが推薦しただけの事はあるな」
「将来が楽しみだな。それにいい子みたいだし!」石川は香奈子を見つめていた。