「コートの貴公子」

                             赤星直也:作

第8話 初めての対戦

 そして、土曜日の昼下がりに、2人は電車に乗って東京に向かうが、初めて東京に出
た真一は「雅美さん、あれがスカイツリーだよね?」と無邪気になっている。
電車を降りて、暫く歩くと閑静な住宅街となり、高級住宅が並んで建っている。

 その一角に2人が入っていくと「真一君、待っていたよ」進藤が出迎えた。
「お世話になります!」
「そんな事どうでもいいから、早く上がって!」雅美に催促されて中に入ると「今夜は
ここで休んでね」広々とした部屋に案内された。

 「雅美さんは、庄司さんと一緒ですか?」
「久しぶりに会ったしね」笑顔で答えるが(きっと、セックスもする気だな)そんな顔
で見ていると「夫婦だから当然なのよ。我慢して」雅美も辛そうに言い「お風呂沸いて
るんだって。先に入って!」言われるまま真一は浴室に入り体を洗うが「都会は違うん
だな…」自分の生活との違いを思い知らされた。

 その夜「あ、あ、あ~!」雅美の喘ぐ声で目が覚めた。
「まだ12時じゃないか…」時計を見て横になったが、また「あ、あ、あ~!」喘ぐ声
が聞こえてきた。

 「雅美さんの声だ。もしかして、セックスを…」気になるのか、起きあがり声のする
方に向かうと(あそこからだ!)電気が灯った部屋から声が聞こえてくる。
悪いとは思いながら、そっと覗くと全裸になった雅美が赤い紐で縛られていく。
「そうよ、そこも縛って!」乳房を絞るように縛られていくと満足そうな顔をしている。

 「この淫乱女め。こうしてやる!」両手も後ろ手に縛られて立たされると「行くぞ!」
背中から肉竿がピストンを始めた。
雅美は「あ、あ、あ~!」声をあげ首を振っているが、ピストンは停まらない。
(凄いや。これが大人のセックスなのか…)食い入るように見ていると、雅美と目があ
ったが、雅美は目を逸らしていく。

 (気付いてないんだな…)なおも見ていると、俯せにされ尻を持ち上げられ、後ろか
ら挿入され「あ、あ、あ~!」また声をあげて、真一の方を向いた。
それでも見ていると、馬乗りにされ腰を動かしていく。
(雅美さん、痛くないのかな?)変色している乳房が気になるが、肉竿で突き刺され、
雅美も快楽に酔っているから、淫汁をベットリ流していた。

 「いいか、最後の仕上げだぞ!」横に寝かされ後ろからの挿入に変わった。
俗に横臥位と言う結合で、雅美は片足を上げ、真一と向き合う格好だから結合部が丸見
えになっている。
(雅美さん、気持ちいいんだ!)虚ろな目で真一の方を見つめている。

 やがて、進藤は登り切って「う~!」唸り声を上げると肉竿のピストンをやめた。
それと同時に、淫裂から精液が流れ出した。
「久しぶりだから、気持ちよかったよ」息を弾ませ、立ち上がると紐を解いていく。
「私もよかった。もっとして欲しいのに…」

 「これが限度だよ。それより、真一君大丈夫かな。大きな声を出していたし…」
「大丈夫よ、疲れているからぐっすりよ」雅美は、また真一の方を向いた。
(やばい、戻らないと!)真一は爪先で部屋に戻り、布団の中に入ると進藤と雅美が全
裸のまま覗き込んだ。

 「ほら、ぐっすりよ」
「そのようだな、風呂に入るか」2人は戻り「ふ~。危なかった!」一安心する真一だ
が「雅美さん、縛られても痛くないんだ!」赤い紐で縛られた乳房が気になっていた。

 翌日、真一は昌美に起こされた。
「朝よ、起きなさい!」布団を剥がすと、真一の股間が膨らんでいた。
(勃起してる…。元気がいいんだ…)気づかない振りして「ご飯よ!」体を揺すると目
を覚ました。

 「そうだった。今日は大事な日だった!」急いで起きあがり替えを始めた。
着替えを済ませてダイニングに行くと、進藤はいない。
「庄司さん、仕事なの?」
「そうなの、忙しい人なんだから。それより食べないとダメよ」言われるまま食事を済
ますと昌美と一緒に電車に乗って出かけた。

 乗ってから30分程すると、降りて歩き出すと学校らしき物が見えてくる。
「昌美さん、あそこなの?」
「そうよ、庄司さんが教えている学校よ。急ぎましょう!」2人は早足で歩いて校内に
入った。

 雅美は通い慣れているせいか、迷うことなくテニスコートまで来た。
「ここよ、挨拶してくるから準備して!」雅美は人垣の中に入って話を始めたが、真一
は体を動かし準備を始めていく。
暫くすると「真一君、始めるわよ」手招きした。
「いよいよだな!」深呼吸して雅美の方へ向かった。

 「君が真一君か、まだ2年だってね。手始めは石井が相手だよ」対戦相手が告げられ
て試合が始まった。
初めての実戦だが、真一は物怖じせずに向かっていく。
雅美から教わったように左右、前後と相手を翻弄していく。
それに、ラリーも正確に拾っている。

 雅美と話していた監督も「本当に2年かよ。信じられない!」驚き顔をしている。
そして、3-0で真一が勝つと「石井、何やってんだ!」怒鳴り声をあげ「次は近藤だ
ぞ!」また対戦相手が告げられた。
こうして、真一は次々と勝ち「山田、お前が最後の砦になったぞ!」対戦相手を決めた。

 真一は山田という名を聞いて「あの、学生チャンピオンの山田さんですか?」聞いた
事あるので尋ねると「知っているのか、光栄だよ。でも、手は抜かないからな!」山田
のサーブで試合が始まった。

 「ポ~ン」「ポ~ン」ボールの跳ね返る音が響いて、長いラリーが始まった。
真一は左右に揺さぶると、山田は前後に揺さぶり、試合は一進一退で、周りにいた人も

釘付けになって見ている。

 そして「3-3のブレーク!」と告げられたが、まだ体力のない真一には負担が重く
「真一君、どうする?」雅美が聞いた。
「やらせて下さい。負けても悔いがありませんから!」
「わかった、頑張ってね」試合が再開されが、大学4年と高校2年では体力の差が出て
しまい、セットを取れずに負けた。

 「よく頑張ったわね、凄いわよ」雅美は褒めるが「でも、悔しいです。完全に体力負
けですから…」落胆していと「さすが、学生チャンピオンが育てた選手だね。素質があ
るよ」監督が話しかけた。
「そうですよ、僕だって、やっと勝ったんですからね」山田も話しかけて「内の学校へ
来いよ。もっと鍛えてやるから」誘っている。

 「僕、頭が弱いんです。受験で落ちると思います…」小さな声になっている。
「あら、それだったら大丈夫よ。私が勉強も指導するから」雅美も言い出し「それなら
安心です、ここを目指してがんばります」真一が承知すると歓声が上がった。
その後真一は大学の部員達と一緒に練習して、雅美の家に戻ったのは5時近かった。