『若妻の指使い』

                           とっきーさっきー:作    

最終話

 「ぐぅ、はあぁ……真希、気持ちいいのか?」
「うぅ、んんっ……感じてる……わたしってぇ、ハシタナイ女だから……お風呂でぇ、
はふぅんっ」
「そ、そうか……実は俺も、その……んぐっ」

 そう、亮哉はわたしのオナニーに気付いている。
お風呂とリビングを繋ぐ『通話』用のボタンを仲立ちにして、わたしの指が感じる処
を弄る気配に、耳を傾けている。

 そして亮哉だって、腰に巻いたバスタオルを落とすと素裸のまま、男の人のモノを
……硬くそそり立たせた……肉の棒、オチ○チンを、亮哉の指を使って扱いて……
「あぁ、ひあぁ……今夜のぉ、夕食……おぉ、おいしかったぁ? サンマ、ちょっと
……ふぅ、焦がしちゃったけど」

 「サンマはな、焦げてるくらいが……はぁ、一番うまいんだよ……んく、おいしか
った……真希の作った晩飯は……最高にうまかったよ」
「うぅ、うれしい……亮哉にほめてもらえてぇ、はあぁ……すごいぃっ、どんどん昇
っちゃうぅっ!」

 ケンカしてたんだよね?
結婚して3年して、初めての夫婦喧嘩中なんだよね?
わたしはもう、浴槽の縁になんか座っていられない。
びしょ濡れになった恥ずかしいお肉に右手の指を挿し込んだまま、身体の向きを反転
させる。

 タイルの敷かれた床の上で膝立ちになって、上半身をお風呂リモコンへと寄せてい
く。
「ちゅぶ、むちゅっ……好き、大好きなの……」
唇がプラスチックの板にキスしていた。
目を閉じて、首から上を突き出させて、湯気に濡らされた通話のボタンに亮哉を感じ
て。

 「じゅばっ、じゅぶっ……真希、僕もだよ……愛してる」
そうしたら、分厚い唇の感触をプレゼントされる。
唾液をまぶした舌をペロリと舐められて、ちゅぅって吸われて、胸のハートを鷲掴み
にされたようにキュンキュンさせて。

 ケンカって何?
夫婦喧嘩って誰がしているの?
わたしと亮哉はとっても仲良し夫婦だから。
言いたいことをはっきりと言い合って、だけどこうして……

 じゅにゅ、ぬちゅぅ、にちゅっ……
「やはぁ、んふっ……亮哉の硬いのが、真希の割れ目にぃ……こすられてぇ、いいぃ
っ、気持ちいいっ!」

 クリトリスを弄らせていた右手の指が、二本、三本と寄り集められている。
恥ずかしいくらいに溢れた愛液をスリットの壁から掻き出して、捩り合わされた爪先
は更に奥底へと潜り込んでいく。

 亮哉のオチ○チンが、わたしの大切な孔の中に!
脈打ちながらヤケドしそうな熱い肌が、トロトロな膣の中に埋まろうとして?!

 「待ってくれ、真希! 俺と……くそぉっ!」
指でこしらえたオチ○チンが、膣の入り口まで来て止められた。
膝立ちしていた身体が絶対に崩れ落ちるから、左手が浴槽の壁をぎゅっと掴んで待ち
構えていたのに?

 「り、亮哉……?」
わたしは急いで呼び掛けていた。
「ねぇ、亮哉ったら……どうしたの? 返事してよ!」

 トロトロに濡れた指を、わたしは引き抜いていた。
もう少しで指のオチンチンが、真希の秘密の孔を貫いていたのに。
亮哉とのセックスを夢見ながら、ハシタナイ指入れオナニーを披露していたのに。

 聞こえてくるのは、虚しいノイズの音。
寂しすぎる隙間風のような雑音。
空気なんてさらさら読む気のない、付けっ放しのテレビから流れてくるナイター中継
の騒音。

 「やっぱり、ケンカしてたんだね。それなのに、わたしって……馬鹿だね」
わたしは右腕を掲げていた。
白い湯気に包まれた空間で、真っ直ぐに、少し反らし気味にさせた指の束を眺めてい
た。
恥じらいも失くしてテカテカと輝いている指の先っぽを、涙の潤んだ目でぼおっと…
…そして……バタンッ……!

 磨りガラスがはめ込まれた中折れドアのもう一つ先で、扉が鳴った。
「こんなに汚して。きれいに洗ってあげないと」
つぶやいてから薄く笑った。
前歯の隙間から舌を伸ばして、淫らな指先を下唇に当てる。

 バタンッ……!
もう一回扉が鳴った。
体重を乗せて、壊れても仕方がないような力で、お風呂場と繋がる中折れドアも開け
られていた。

 「真希、俺と……」
湿っぽい空気が攪拌されて渦を巻いている。
足元からすぅーって、爽やかで乾いた空気が忍び込んでくる。

 わたしはまた指を止めた。
お風呂の中だから素裸なままで、猫背みたいに丸めた背中をブルブルって揺らせた。
「ごめんなさい……あぁ、あのね……」

 「やめろよ、真希。俺はそんな言葉を聞きたくて、ここに……俺は、お前と……」
「ひゃぁっ、あぁ……亮哉……」
背中を覆う、頼もしい肌の感触。
わたしのハートが壊れそうなほど弾んで、ぴたりと重ねられた力強いハートに優しく
抱かれた。

 「すまない、真希。ごめんな、真希」
これってずるいよね。
わたしだってきちんと謝りたかったのに、とってもおいしいところを亮哉にだけ持っ
ていかれちゃった。

 「だったら抱いてよ。ここでわたしとエッチしてよ」
でもね、それならそれで構わないの。
真希は亮哉のお嫁さんだから。
そして旦那様はね、奥さんの身体を愛して可愛がってくれるのがお仕事だから。

 「さっきから当たってるわよ。とって硬いのが……亮哉のオチ○チン……」
「あぁ、真希……真希ぃっ! セックスしてやる! 真希のオマ○コに俺のチンポを
突っ込んでやるからな」

 亮哉のフルパワーボイスが、浴室の壁に反響した。
放送禁止用語丸出しの絶叫を奏でて、わたしを抱っこしていた。
「ち、ちょっと……亮哉?」

 身体が浮いて、わたしは戸惑うフリをした。
二人とも生まれたままの姿でなんとなく気恥ずかしいのに、お姫様だっこなんて。
「湯冷めするといけないだろ。だからさ、二人で……」
「えぇっ! そんなことしたら、大切な処にお湯が入っちゃう」

 湯船の中に二人分の身体が沈んだ。
お湯のかさがどっと増して、温泉に浸かったように豪快に溢れて。
「やっぱりいいかも。亮哉、このままセックスしよ」
わたしからも誘っていた。
太腿を大きく拡げて、亮哉の逞しい骨盤の上に柔らかいお肉を被せて……

 「んはぁ、ふあぁ……オチ○チン、入ってきちゃう。真希のオマ○コの奥まで……
ふぅ、嬉しい……」
もう用済みだね。
この道具はもう必要ないよね。

 わたしは切ない声をガマンせずに吐いた。
片腕で強く亮哉にしがみついて、もう片方の腕を伸ばすとお風呂リモコンに触れた。
通話ボタンの電源をOFFにする。
そうよ真希は、夫婦喧嘩そのものを忘れちゃったの。


                     

  この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。