『陽だまりの座席から愛を込めて』 とっきーさっきー:作 第2話 心の葛藤だろうか。 失ってしまえば、それはそれで見えてくるものがあるかもしれない。 なのに、乙女なわたしは躊躇した。 にちゅ、にちゅ……ちゅにゅ、ちゅにゅ…… 「ふぁ、はあぁっ……くぅ、感じるぅぅっっ……」 細長いボディを持て余したまま、中指が動いた。 第一関節まで沈めて端境の膜に爪先を掠めさせると、クルクルと円を描かせる。 軟質なゴムのような触感の膣壁を弄ってあげて、引っ掻くように刺激もして、愛おし かった空気を振り向かせ、『こっちだよぉ』って呼び寄せようと。 中途半端なオナニーだね。 やるせなくて、切ない思いだけを募らせる、そんな独りエッチだよね。 待機させた人差し指も薬指も、割れ目の隙間を滑るようにスルスルと往復している。 遅れて到着した親指が手付かずだった肉芽を目に留め、ボタンでも押すように潰した。 クニクニと揺らせた。 小指だけが迷子のフリをして、溢れるエッチ汁に浸っては淫らな水音を響かせる。 「ひゃ、はあぁぁ……くぅ、ふうぅぅっっ」 ジンとした疼きが強い電気に変わる。 稲妻のように拡散して、わたしの神経を気持ち良くマヒさせてくれる。 背中がピクピクと震えて、オシッコでも催したように腰をクネクネさせて、椅子に腰 掛けたまま拡げていた太腿を、手首を挟んだまま絞め付けて、またガバッと開かせて …… たぶんこのままイッちゃうと思う。 オレンジ色に変化した陽だまりの特等席で、わたしは恥ずかしくてハシタナイ絶頂の 快感を経験を…… あれぇ? 膣奥に潜り込んでいた愛おしい空気はどこ? 意識して、神経を集中させて、それなのに感じるのは普通のオナニー。 大胆ぶって、ちょっと弱気で繊細ないつもの指使いと、いつもの赤面しそうな後ろめ たい刺激。 じゅにゅ、じゅにゅ……ぬちゅ、ぬちゃ…… 「はあ、だめぇ、でもぉ……もっと、もっとぉっ……んく、はあぁぁっっ」 机の上で真横にした顔で、わたしは堂々とエッチな声を吐いた。 眉根を真ん中に寄せて、眉間に縦シワをこしらえて、薄目に覗く白い雲を頭の中に取 り込んで…… 中指だけで充分な狭い空間なのに、人差し指と薬指を呼んだ。 3本にさせた指の束で、処女膜すれすれラインの膣穴を引っ張って、それに拡張させ る。 親指のお腹が、硬くなったお豆をグリグリとさせて、小指の先っちょが、触れてはい けないオシッコの漏れる入り口を突いた。 「あくぅっ! も、もう……ンン、くぅっっ……」 満ちていた潮が引くように、一瞬全ての刺激が後退した。 そして…… 「ひあぁぁっっ! イク、イク……いぃ、イッちゃうぅぅっっ! あはあぁぁっっ!!」 椅子が鳴った。 机も鳴った。 押し殺しても隠せない女の子の極みの声に、わたしは喉を鳴らした。 白い空間にキラキラとした星が飛んでいる。 手を伸ばせば掴めそうで、でもそんな余裕は全然なさそうで。 わたしは、復活した甘美な刺激の大波に呑み込まれていた。 『オナニー』という単語を今更になって意識して、気だるい電気を帯びた全身をギュ ッと縮ませていた。 やっちゃったって感じ。 どうしようって、机に載せた顔を心配そうに歪ませて…… 耳鳴りのする鼓膜を、取り合えず澄ませた。 「はあ、はぁ」という過呼吸になりそうな息遣いをさせながら、右手をショーツの中 から引き抜いて、股をピタッと閉じ合わせる。 シーンとしていた。 話し声ひとつ、物音ひとつも聞こえない。 「んふ……ふうぅぅ……」 勇気という感情を見付けだして、身体を起こしていた。 格好のつかない鼻息を吐きながら、首をゆっくりと回転させる。 「はあぁぁ……」 情けない溜息が洩れる。 たった1人だけ席に着いたわたしを残して、無人な教室の姿に勇気が安堵に置き換わ っていた。 「みんな、帰っちゃったんだ……」 わたしの視線は、それが当然のように廊下側の席に向けられる。 もちろん、その人はいない。 何も置かれていない机の面が寂しそうに輝いて、じっとこちらを見返している気がし て…… 「わたしも、帰らないと……」 濡れて冷たくなった股間をそのままに立ち上がる。 今頃になって楚々とした少女を気取ると、スカートの乱れを整えた。 ノートと転がったシャープペンを通学カバンに押し込んで、それを下腹に密着させる。 振り返ったり、よそ見は禁止と胸に刻んで、わたしは教室を飛び出した。 この作品は、「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。 |