『エスカレーターの狭間で…』
    
                           とっきーさっきー:作
第5話 ランジェリーの秘密


 「……うぅ」
「ほら、なにしてるの。早く怜菜ちゃんの脱ぎ立ての下着を握らせてよ」

 再び前を向いた彼女の脇に、俺は腕を伸ばした。
その手が、右ポケットに半分突っ込まれた細い手首に触れた。

 もぞもぞとポケットをまさぐる怜菜ちゃん。
やがて、人目に晒す時間を最小にしたいのか、ボール状に丸めた布きれをふたつに分
けて俺に握らせた。

「は、早く。早くしまって下さい!」
切羽詰った声を怜菜ちゃんがあげる。
俺は、そんな恥辱に悶える彼女に悦を感じながら、黒いふたつのボールを手のひらで
弄んだ。

 「ふふっ、なんかズシッてくるね。汗が沁み込んでいるのかな。それとも小さいボ
ールは、他の液かな。いやらしいお汁とか」
「ち、違いますっ! 私、そんなハシタナイこと。それよりも、いつまで見ているん
ですか? 早くポケットの中へ。あ、あぁ、見られちゃう」

 水色の帽子が何度も左右に揺れた。
エスカレーターを上り下りする利用者へ、視線を走らせているのだろうか。
でも自分が差し出したモノを見るのは抵抗があるのか、後ろを振り返ろうとはしない。

 「大丈夫さ。バレやしないよ。それよりも、怜菜ちゃんは真っすぐ前を向いて、モ
ップを動かしておけばいいのさ」
俺は事もなげにそう言うと、大きなボールから解体を始めた。

 「へえ~、怜菜ちゃんって着痩せするタイプなんだね。バストはいくらあるの?」
「は、82……です」
これ以上逆らうのは得策ではないと判断したのか、素直に応える怜菜ちゃん。

 俺は乳房を包むパッドの手触りを愉しみながら、尚も質問を続けた。
「ついでだから教えてよ。あとのサイズも」
「え、えっと……ウエストは55。ひ、ヒップは83……です」

 「おっ、パーフェクトなプロポーションだね。そっかぁ、ヒップは83もあるのか。
このちっちゃなパンティが、怜菜ちゃんの大きなお尻を包んでいたんだね」
水色のズボンと共に震える上向きのお尻。

 俺はチラチラとそれを観察しながら、ブラジャーを上着のポケットに納めた。
続けて、小さなボールを拡げる。

 「いやぁ……見ないで……」
俺がなにをしているのか分かるのか、怜菜ちゃんがこっちを見ないまま懇願する。
肩をガクガクさせて、全身を身悶えさせて立ち尽くしている。

 いいねぇ、その声。その立ち姿。
でもおじさんには聞こえないし、見えないんだよね。
見えているのは唯一……!

 俺は美少女のパンティをいっぱいに引き延ばした。
視線が当然のようにクロッチの中心、恥ずかしい縦じわに集中する。
「ふふふっ、怜菜ちゃんのパンティ、汚れているよ」

 照明にかざさないとよく見えない。
でも確かに黒い生地の真ん中に、うっすらと沁みのようなモノが縦に並んでいる。
「ううぅっ、見ないで、許して、もうお願い……」

 怜菜ちゃんが半泣きの声で懇願する。
震えも止まらなくなっている。
肩だけじゃない。全身を小刻みに揺らせては、耐えるようにモップを握り締めている。
10本の指だってほら、血の気を失い真っ白に。

 俺は張り詰めた自分の下腹部を撫でていた。
卑怯にも、女の子を盾にして己の性欲を満たそうとしていた。

 「でも、どうして怜菜ちゃんは黒色のパンティなんか穿いてきたんだい? 君の雰
囲気だと、もっと淡い色がお似合いだとおじさんは思うけどな」

 下着が全てポケットに収まったことを確認すると、怜菜ちゃんは清掃を始めた。
踊り場から10段目、9段目と手際よくモップを動かし、残り8段まで片付けていた。

 「私だって普段はあまり穿きません。こういう色は……」
「じゃあ、今日に限ってどうして?」
さっきの下着観察のインパクトが大きかったのか、その後の怜菜ちゃんは、少々際ど
い質問にも気にせずに答えてくれた。

 「アドバイスされたんです。その子に」
「ああ、君にバイトを押し付けた同級生だね」
怜菜ちゃんは横に移動しながら、同意するように頷いた。

 「バイトと言ったってお仕事をするんだから、気を引き締めないといけないって。
そのためには、下着の色も……その勝負下着というか、黒色が一番だって、彼女が勧
めてくれて……」

 「それで身に着けていたってわけだ。はあ~」
あきれて声を失いかけた。
これは絶滅危惧種以上の新種かもしれない。
今どきここまでバカ正直で、人を疑わない人類に遭遇するとは……

 たぶんその同級生は、怜菜ちゃんをからかいたかったのだろう。
いや、こんな下着で作業をすれば、間違いなく彼女の透け透けのブラとパンティを大
衆に晒すことになる。

もしかしたら、可愛い怜菜ちゃんに対する嫉妬?
そうだな、仕打ちの悪質さからみてその線が濃厚だな。
ふふ、だとしたらちょっと面白いことを思い付いたぞ。

 俺は怜菜ちゃんに付きまといながら、視野いっぱいに黒眼を走らせた。
前方も後方も、当然左右にも。
そして、いた! 見つけた!

 階段の最上段に佇む小柄な人影。
そこから彼女は、俺たちの行為を覗いていたに違いない。
俺のようなスケベなオヤジに、怜菜ちゃんが弄ばれるのを……


                
       
 この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。