『エスカレーターの狭間で…』
    
                           とっきーさっきー:作

第3話 ノーパン・ノーブラでもがんばります!


 「お待たせしました……」
10分後、怜菜ちゃんが姿を現した。
病人のように掠れた声で頭を下げると、俺の前にすっと移動した。

 「あ、あぁ。脱いで……きました。透けていませんか?」
「えっ、う、うん。どうかな?」
水色の作業着が揺れている。

 女の子らしい華奢な肩が震えて、女らしい張り出しを見せた腰も一緒になって震え
て……
それをほくそ笑む俺の下半身は、ズボンの中で急速に硬化していく。

 「う~ん。ちょっと見には分からないと思うけど……念のため屈んでもらえる? 
そこの空き缶入れを片付ける振りをしてたら、人目に付かないと思うし」

 俺はエスカレーターの裏側に設置された自動販売機を指差した。
清掃をする作業員とドリンクを選んでいる客。
これなら、誰の目にも違和感なんて持たれないだろう。

 「あ、えっ……? は、はい……わかりました」
彼女も納得したようだった。
小走りに自動販売機の元へ近寄ると、隣に置いてあるダストボックスの蓋を開ける。

 「お願いします、おじさん。早く確認して」
つーんとした酸っぱい匂いが鼻をつく。
そんな空き缶が詰まった合成樹脂の箱を、水色の帽子が覗き込んでいた。いや、その
フリをしていた。

 サイドの縁を両手で掴んで、背中を丸めながら腰を折り曲げた彼女。
その背後に立つ俺は、首を上から下へとゆっくりと移動させる。

 肩甲骨の下あたりを横に走る黒い線は消滅していた。水色の生地には何も映ってい
ない。
ブラジャーは、言われたとおりに外したみたいだった。

 女性特有の頬ずりしたくなるヒップにも、逆三角形の黒いシルエットは浮かんでい
ない。
パンティもちゃんと脱いでいる。

 要するに怜菜ちゃんは、ノーブラ、ノーパンってわけだ。
この薄手の作業着の下には、今は何も身に着けていない。

 「あ、あぁぁ……大丈夫ですか? ……いやぁ、恥ずかしい」
身体の震えに連動するように、声も震えて泣いている。
それでも彼女は俺の答えを聞くまではと、腰を突き出したままじっと耐えている。

 「うん、大丈夫だよ。背中にはなにも映っていない。でも……」
「で、でも……?」
「下の方はちょっとね。なんというかそのぉ~、怜菜ちゃんのお尻が割れ目のスジま
で。ま、まあ、薄っすらとだけどね。よ~く観察しないと気が付かないレベルだから
……たぶん……」

 俺はわざと自信なさそうに答えた。
ついでに怜菜ちゃんには悪いが嘘もついた。

 「た、たぶんって……? お尻が割れ目って……? ひっ、イヤァァァッ! 見な
いでぇっ、おじさん、お願いだから見ないでっ」
案の定、彼女はバネのように身体を伸ばすと、背中を壁に貼り付けている。

 右脇のポケットが大きく膨らんているのは、そこに脱ぎ立てのブラとパンティを収
めているからに違いない。

 「怜菜ちゃん、落ち着いて。見えるといったって、中心のラインがぼやけている程
度だから。そう、お尻のお肉がほんのちょっと覗いているだけなんだよ。それに、い
つまでもウォールフラワーごっこなんてしていられないだろう? ほら、あと20分
で見回りの人が来ちゃうよ」

 俺は腕時計に目を落としてみせる。
落としながら、首筋まで真っ赤にして羞恥に耐えている怜菜ちゃんを、さり気なく観
察していた。

 本当は尻なんか透けていない。もちろん割れ目もだ。
そう、全部おじさんの作り話さ。
でもこれで、もう少しの間愉しませてもらえそうだね。ふふふっ、怜菜ちゃん。

 「ああ、いったいどうしたら? ううん、ダメ。やっぱり恥ずかしいよぉ」
恥を忍んで作業を続ける。
彼女にとって答えはそれしかないのはずなのに、さすがに最後の踏ん切りが付かない
のだろう。

 さっきから、ひとり首を振っては小さな溜息を連続的に吐き続けている。
それを不審そうに見下ろす、エスカレーターの利用者たち。
仕方ないなぁ、そろそろ恥辱のステージに上がってもらおうかな。

 「おっ! いいことを思い付いた」
「おじさん……?」
俺はポンと握りこぶしで手のひらを叩いた。
我ながら白々しいと思ったが、やはり彼女は喰い付いてきた。
涙で真っ赤に腫れた瞳で、すがるように俺を見つめている。

 「俺が、いや、おじさんが怜菜ちゃんの後ろに立っていてあげるよ。さっきみたい
にガードしてね。その間に君は、残りの階段を掃除する。どうだい、これならお尻を
覗かれることはないだろう? 安心して作業できると思うよ」

 「あぁ、はい。ありがとうございます。それだったら……あの、我慢できます」
我慢? ああ、俺には尻を見られるってことか?
でもねぇ、怜菜ちゃん。それだけじゃないんだけどな。

 「うん、そうかい。だったら早速始めようか?」
俺は怜菜ちゃんを先導するように踊り場に戻っていた。
モップで拭き掃除を始めた彼女の背後に、意味もなく立ちながら左右に移動していく。

 「助かります、おじさん。これなら覗かれないで済みます」
「そう。それはよかったね。でもそれだったら、もう少し感謝して欲しいな。他の方
法で……ね、怜菜ちゃん」

 「他の方法……ですか?」
モップを片手に、怜菜ちゃんが上体だけをひねって振り返る。
その彼女に向かって、いやらしくほっぺたの右端を持ち上げて言ってあげた。
「うん、男であるおじさんが悦ぶ方法でね」


                
       
 この作品は「羞恥の風」とっきーさっきー様から投稿していただきました。