『悪魔の集う家』

                           とっきーさっきー:作

第19話 曝け出される柔肌

 「おい、見たか? こんな可愛い子を、あの鬼夫婦はどこからかっさらって来たん
だ?」
「なんでも養子にとったと聞いているが、これほどの美少女とはな」
「弥生ちゃんや皐月ちゃんでも相当なレベルだが、遥香ちゃんて言うのか。この子を
並べると霞んで見えるぜ」
「それにしてもよぉ、弟の方は目でも見えねえのか。まぁ、これからのことを考える
と見えねぇ方が、幸せかもな。ははははっ……」

 お客さん達のざわめきを、ステージに上がって肌で感じた。
性的な欲求にまみれた視線が、こんなに刺々しいなんて。

 わたしはステージの真ん中で、孝太と並んで立たされていた。
そのわたしの隣には弥生さんが。孝太の隣には皐月さんが。
まだ肩を上下させて大粒の汗を滲ませたまま、メインディッシュにされる遥香達のパ
ートナーとして寄り添ってくれている。

 「さあ、お前達。初体験の晴れ舞台だ。お客様に向かって挨拶をしてみせな」
タキシードの今川から司会の座を奪い取ったお義母さんが、マイクを通して指示を与
える。

 ステージ横で言い含められた言葉を無理やり思い出させたわたしは、孝太の脇腹を
突いて知らせると、お姉ちゃんなんだから先に口を開いていた。
お客さん達を悦ばせるセリフを、金切り声で喚いていた。

 「え~っと……み、皆さぁ~ん、初めまして。市川遥香でぇ~す。17才、女子高
生していましたぁ。だから今夜は、セーラー服で登場でぇ~す。今から、お、オマ○
コ貫通の儀式をするけどぉ、わたし、寂しがり屋だからぁ、目の前で覗いて欲しいの
ぉ。バージン失くすところ。うふふ♪」

 「あ、あぁ……え~っと、ぼ、僕は……」
わたしがおバカな女の子になり切ると、孝太もおバカな男の子になりきっていた。
お互いに喉を嗄らして、唇の端の口角だけ気持ち悪いくらいに持ち上げて。

 そうしたら、こんなわたし達でも需要はあるの?
高級スーツを着込んだダンディーおじさんが、何人も手を上げてステージに駆け上が
ってくる。
息を切らせながら車座に囲むと、頬杖突いて覗き上げてきた。

 「それでは残りの皆様は、ステージの前までお越しください」
今川に誘導されて、出遅れたお客さん達も集まって来る。
すしずめのステージ下の隙間を縫うように身体を滑り込ませて、床の上にアゴを乗せ
た。
目線を全てわたしと孝太に集中させている。

 「失礼します」
お客さん達の移動が終了し、弥生さんと皐月さんがわたしと孝太の前に進み出てきた。
素裸のまま腰を落とすと、居並ぶ視線を引き付けるようにお尻を突き出していた。
楕円形に発達したヒップをグラインドさせる。
50人近い人達の目線を再び虜にしてみせながら、両腕を伸ばしてくる。

 わたしが履いていた紺色の襞スカートを弥生さんが……
孝太の学生ズボンを皐月さんが……
それぞれしなやかな指捌きで取り去られていた。

 だけど二人とも、足元から引き抜いてもしばらく離れようとはしない。
まるでガードしてくれるようにお尻を揺らせたまま、わたしと孝太を見上げてくれて
いる。

 「弥生、皐月。何をしてるんだい。さっさと離れるんだよ」
そのガードを、苛立ち混じりのお義母さんの一言が打ち破る。
潤んだ瞳でわたしと孝太に無言のエールを送って、弥生さんと皐月さんが脇に控えた。

 「……くぅっ!」
「……あ、ぁぁ、お姉ちゃん」
「おぉぅっ! パンティーを穿いてないぞ」
「くくくっ、まさかノーパンだったとはねぇ。沙希ちゃん、あんよを閉じたって割れ
目が覗いてるよ」
「おい、誰かガキのチンチンにも一言コメントを頼むぜ。ははははっ」

 わたしが短く喉を鳴らして、孝太が悲鳴交じりにわたしを呼んだ。
でもそんな細い声なんて、見境なく飛び交うダミ声に一瞬で掻き消されていた。

 わたしは上半身だけ懐かしい衣装に包まれたまま、弥生さんの姿を探った。
遥香の初体験のパートナーが床に寝転ぶのを、霞みそうな瞳で追った。
そして、皐月さんのアソコを気持ち良くした黒光りするオチ○チンが、真っ直ぐに天
井を向くのを目撃して下腹部に緊張を走らせる。
痛いほど注がれる視線なんて全然感じないほど、アソコのお肉に神経を集中させる。
わたしに無断で、遥香の女の子が。

 「弥生の腰を跨ぐんだよ。孝太はさっさと寝転びな」
しゃがみ込んだお客さんに愛想笑いをしながら、お義母さんが冷たい声で命じた。
その声を聞いた途端、お客さん達が一斉に瞬きを繰り返して、わたしと孝太のその後
の行為に目を凝らしている。

 「遥香お嬢様、こちらへ」
冷たい床の上で、仰向けになった弥生さんがわたしを呼んだ。
身体を伸ばしたって型崩れしない乳房を平然と見せつけたまま、両手で組んだ枕に頭
を乗せている。

 わたしはふらふらと、陶磁器のように白い身体に近寄っていく。
お姉さんのように優しい笑みをこぼした弥生さんを見つめて、下半身に生えている噛
みつかれそうなオチ○チンにも目をやって。

 「はあぁ……んくぅっ……!」
唇を閉じたまま喉を鳴らした。
今の想いを短い吐息に混ぜて、下半身に力を込めた。

 ヒザを軽く曲げてツマ先を持ち上げた。太股を大きく開いた。
弥生さんと目と目を合わせて、恥ずかしい処に冷たい風を感じて、突き刺さる視線も
意識して、わたしは……遥香は……