『性教育』 Shyrock:作 第3話 教室内に緊張感が漂った。 未来が見回すと約半数の生徒が挙手をしている。 微妙な状況だ。 「1、2,3・・・4、5・・・6・・・7・・・」 石崎は端から順に数えた。 未来のクラスは31名で構成されている。 賛成者が16名以上いれば過半数を超え可決してしまう。 未来自身も挙手した生徒数を無言で数えていた。 「13、14、15・・・16・・・17・・・ふむ、賛成は17名だな」 未来は愕然とした。 播磨と彼の仲間達が賛成に回ることはおおよそ予測されたが、まさか他にもこれほど の賛成者がいるとは。 日頃、未来に対して友人のように振る舞い接していた生徒達も、『未来=教材』に 賛成してしまったのだ。 非情の雨が激しく降り注ぎ、未来は呆然と立ち尽くしていた。 教室内は騒然としている。 結果は分かりきっていたが石崎は採決を続けた。 「反対の人、手を挙げて」 当然先程より挙手の数は少ない。 「1、2、3、4・・・12名か。」 「では引続いて態度保留と言う人、手を挙げて。・・・2名か」 石崎は結果をノートに記録しているのか、教壇でボールペンを走らせた。 「賛成17名、反対12名、保留2名。多数決の結果、愛川未来さんが教材モデル に決定した」 教室内でどよめきが起こった。 播磨に至ってはおどけて手まで叩いている。 「よ~っ!未来ちゃん~やったね~!がんばってね~!」 未来は顔を紅潮させて、口惜しそうに唇を噛みしめていた。 その時、すすり泣く声が未来の耳に入った。 それは理美であった。 「酷いわ・・・あんまりだわ・・・未来ちゃんが可哀想過ぎるわ・・・」 岸本リエが一瞥を投げかけ理美を非難した。 「多数決で決まったんだからさぁ、後からつべこべ言うのはやめてもらいたいわ!」 石崎はリエを制して授業の開始を告げた。 「どちらも言い合いはやめなさい。授業が遅れるから。では、愛川さん、教壇まで 来なさい」 未来は重い鎖で繋がれたような足取りで教壇へと歩いていった。 教壇までのわずかな距離も、未来にとっては13階段を登るようなものであった。 教師や生徒達の前で恥部を晒すことは、耐え難い屈辱であり、未来にとっては死ぬ ほど辛いことであった。 身体中の血液がすべて脳に集まったのではと錯覚するほど、顔がほてり、身体の震え が止まらなかった。 教壇までたどり着くと、石崎の残酷な言葉が待ち受けていた。 「では今から女性器について講義をする。愛川さん、下半身に着けている物は全部脱 ぎなさい」 未来がもじもじしていると追い討ちを掛けるかのように、石崎の催促が耳に飛び込 んできた。 「さあ、早く」 「はぃ・・・」 未来は消え入りそうな小さな声で辛うじて返事をした。 この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました |