『官能の国~Shy Land』惠の巻

                       Shyrock:作


第1話

 『Welcome!Shy Land』

 惠(24歳)と恋人の俊介(28歳)は入場門で『Shy Land』と大きく描か
れたネオンサインを見上げていた。
入場門はいたってシンプルなもので、外観は通常の遊園地と大差なかった。

 「どんなところなのかしら。ワクワクするわ~」
「めちゃくちゃエロいという評判だけど、表から見る限りは他の遊園地と大して変わ
らないようだね」

 「いえいえ、表向きはそうだけど、中はきっと強烈なのよ~。あまりエッチ過ぎる
と、私、耐えられないかも知れないわ」
「嘘つけ。エッチなほど萌えるくせに」
「もう!俊介ったら~!」
「お、大きな声出すなよ。受付のお姉さんがこっちを見て笑ってるじゃん」
「あはは、ほんとだ~(^^;)」

 惠たちはゲートを通って園内へと入っていった。
園内はさすがに大人向きの遊園地というだけあって、一般の遊園地でよく見掛けるキ
ャラクターや親子連れの姿はなく、いたって落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
またポップコーン等を販売しているワゴンサービスは、著名なテーマパークと同様に
その存在が確認できたが、売り子がすべてコスプレで統一しているところが『Shy
Land』の特徴といえた。
 
 「どこから行く?」
惠はマップを広げて俊介に尋ねた。
「カップル用のツイン館と、男女別々のシングル館があるみたいだわ」
「惠はどちらから行きたい?」
「そうね。最初はシングル館から行ってみる?」
「そうしようか」

 ふたりが初めに目指したのは『ラバーチューザー』だった。
入口には次のような説明看板が掲げられていた。

 【ようこそ、ラバーチューザーへ。この館では男女は交互に、“チャレンジャー”
“アシスト”になることができます。男性がチャレンジャーになる場合、女性が先に
特設ゲートから入場し係員に従って準備をしてください。約10分後に男性は会場に
入ってください。会場に入ってしばらくするとメッセージが流れますので、男性はそ
のメッセージに従って行動してください。女性がチャレンジャーになる場合は、前述
とまったく逆になります。男女とも見事当選すれば記念品を贈呈します。では、ご健
闘をお祈りしています・・・】

 「“チャレンジャー”“アシスト”?よく分からないけど、惠はどっちを先にやり
たい?」
「そうねえ、先ずはチャレンジャーから行こうかな?」
「よし、じゃあ決まった。オレはアシストだから先にこのゲートから入って準備する
ね?」
「は~い」

 しばらくの間とは言っても、俊介がそばから離れていったことで、惠はかすかな不
安をいだいた。
「う~ん、なんか置いてけぼりを食った感じかも・・・(--;)な~んてこと言って
ても始まらないから、さあ、先へ向かおう」

 通路は薄暗くなっている。
ホラーハウスなど恐い所が大の苦手の惠にとって、暗いところはどうしても足がすく
む。

 (俊介がいないから心細いよ・・・)
ようやく係員に促されて、しぶしぶ中に入っていった。
それでも腰が引けている。

 通路は足元を照らすフットライトだけが頼りだ。
まもなく通路を抜けると少し広い空間に出た。
惠は不安そうな顔で周囲を見回した。
正面に5つ赤い豆電球が灯っているだけで、相変らず空間中は暗い。

 しばらくするとアナウンスが流れた。
『ようこそ、ラバーチューザーへ。あなたは今からチャレンジャーとなって、5人の
男性の中から彼を見つけ出さなければなりません』
「な~んだ。そんなの簡単じゃん~」

 『ただし・・・』
「ん?」

 『5人の男性は正面のホールからシンボルを覗かせるだけで顔は見せません。あな
たが使えるのは口だけです。口だけを使って、大事な恋人をずばり当ててください。
左から順にA、B、C、D、Eとなっています。なお、指を使うとその場で失格とな
りますのでご注意ください。因みに、すべての男性は予めシンボルをきれいに消毒し
ていただいておりますので安心してお咥えください。持ち時間は10分です。では、
がんばって彼氏を発見してください!スタート!』

 「え~!?そ、そ、そんなあ・・・」

 
                

   この作品は「愛と官能の美学」Shyrock様から投稿していただきました