『悪夢のナースコール』
 
                     Shyrock:作
おことわり

  この作品は実在の人名、団体とは一切関係がありません。また、この作品の
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  られますので、ご承知下さい。

第1話 嫉妬

すべては女の嫉妬から始まった。

 物語は都内の大手私立病院。主人公は早乙女衣葡(さおとめ いぶ)25歳。
院内には200人を超える看護師が勤務しているが、その中でも類まれな美貌と魅惑
的な肢体を備えた衣葡は医師や患者たちからも注目の的であった。

 容姿だけでなくいつも朗らかで性格もよく、そばにいるだけでその場の雰囲気が華
やぐほどの魅力を持ち合わせていた。
そんな衣葡を遠くから羨望のまなざしで見つめ快く思っていない一人の看護師がいた。

 彼女は衣葡と同期で名前を山本詩織(25歳)と言った。
彼女もまた衣葡に勝るとも劣らないほどの美貌を備えていたが、底意地が悪く人一倍
嫉妬深い性格であった。

 仕事っぷりも真面目な衣葡とは異なり、態度や行動面もだらしがなかった。
当然そんな詩織に対する医師たちの評判も良くなかった。
良いうわさも悪いうわさも狭い病院内だとすぐに拡がってしまう。

 近頃は衣葡を絶賛する言葉ばかりが詩織の耳に届いた。
「衣葡さんは美人だけど全然気取ってないしすごくいい子だね」
「まったくだね。仕事もよくできる上に気配りもあるしね」
「彼女にしたいくらいだよ」
「あれほどの子なら彼氏いるんじゃないか?」

 (ふん、容姿だったら私だって衣葡さんに負けてないわ。なのにどうしてあの子ば
かりが持てはやされるのよ)
詩織は噴煙のように吹き出る嫉妬心を抑えることができなかった。
やがてそれは次第に憎悪へと変わっていった。

 その頃、病棟の511号室に横田(43歳)と言う入院患者がいた。
横田は不動産ブローカーを生業とし羽振りのよい生活を送っていたが、日頃の不摂生
が祟って腎臓疾患を患い入院することとなった。

 病状がかなり回復した頃、持ち前の好色がむくむくと頭をもたげてくると担当看護
師の詩織と急速に親密さを増し、やがて肉体関係に至った。
病室が個室であったこともふたりの関係に拍車をかけ、詩織の夜勤時には院内とは思
えないような痴態絵巻が繰り広げられた。

 横田は暇を持て余すと休憩室におもむき、他の患者の男たちと世間話に興じていた。
その中でも内田(52歳)と山口(27歳)のふたりとは特に話が合うようであった。
個室の横田とは異なり、内田たちは相部屋で同じ階の515号室に入院していた。

 内田は現在は堅気だが元々某暴力団に所属し若頭まで務めた男であった。
背中の入れ墨がその名残といえる。
山口は外見は美男子だが就職しても一ヵ所に定着できなくて職を転々としていた。
根が飽き性なことと、社内の女性にすぐ手を出してしまう悪い癖がありそれが災いし
たようである。

 515号室は4人部屋で、内田と山口の他に川島と言う寝たきりの老人が入院して
いた。
川島は御年85歳で常に点滴を施されていた。
ちなみにもう1つのベッドは現在空き状態であった。

 その夜、深夜勤務の詩織は横田の部屋を訪れ悩みを打ち明けた。
衣葡は性格の悪い女で自分を苛めてばかりだと、だから仕返しをしてやりたいのだと、
ありもしないことを捏造して横田に吹き込んだ。
横田は詩織のパンティの中で指を動かしながら、優しい言葉で詩織を慰めるのだった。

 「俺に任せろ。必ず復讐をしてやるから」
嘘泣きをしていた詩織はにやりと微笑みながら小さくうなずいた。

◇◇◇

 6月15日の深夜勤務担当の看護師は早乙女衣葡、山本詩織、吉田幸子の3人だっ
た。
詩織は事前に衣葡の夜勤日を調べたうえ、師長に「15日に深夜勤務をしたい」と希
望を出しそれが受け入れられたのであった。

 夜も更け午前1時のことであった。
ナースステーションに突然患者からのナースコールが鳴り響いた。
その時ナースステーションは詩織が巡回中、幸子は仮眠中、そして衣葡が一人で待機
していた。

 当直医の吉岡もちょうど仮眠の時間帯だった。
実は詩織が淹れた茶に睡眠薬が微量入っていたため、吉岡と幸子は朝の5時まではま
ず起きることはなかった。

 ナースコ-ルは515号室の内田からだった。
衣葡に緊張が走った。

 (コールは内田さんからだわ。もしかして急変したのかしら!)
寝たりきの患者であれば便意の場合が多いが、回復しつつある患者からのコールは逆
に不安を煽るものだ。

 (急がなくては!)
衣葡はナースステーションを出て515号室へと急いだ。

 音をたてないように静かに515号室のドアを開く。
夜間の病室には非常灯が灯るだけで真っ暗と言ってよい。
左側の列の窓際に内田のベッドがある。
他の患者を起こしてはいけないので、電気も点けず暗闇の中を進む。

 5、6歩進んだ時……
「ううっ!」
突然、背後から何者かが衣葡の口をハンカチで塞いだ。

「ううぐっ、うううっ!」

 衣葡は必死にもがいたが、相手の力は圧倒的に強い。
ハンカチに医療用の睡眠薬を染み込ませてあったらしい。
「ううう……」

 衣葡の意識が次第に薄れていき、まもなく床に崩れるように倒れ込んでしまった。
「いつも世話になっているのにすまないね。悪く思わないでくれよ」
 内田は倒れ込んだ衣葡に小声でささやいた。

第2話 拘束

 しかし反応がない。
早くも眠りに落ちてしまったようだ。
さすがに医療用睡眠薬の効果は絶大だ。
衣葡が眠ったことを確認した内田と山口は次の行動に移った。

 内田と山口は衣葡を抱えあげ右奥の患者がいない空きベッドへと運んだ。
空きベッドにはあらかじめ天井からロープが吊るされている。
準備に手抜かりがないようだ。
内田たちは足音を忍ばせそっと衣葡をベッドに寝かせた。

 すぐさま口にタオルを咬ませる。
目を覚ました際大声を出されては困るのだ。
内田たちは衣葡の身体を抱き起こすと、両手首を別々に紐で縛り、天井から吊るされ
たロープにしっかりと結わえた。

 ロープを引っ張り、衣葡の上体を吊り上げる。
 膝立ちで両手をあげた姿で緊縛されているが、眠っているため頭がだらりと前に垂
れている。

 内田は眠っている衣葡の耳元でそっとささやいた。
「ふふふ、それにしてもあんたは超がつくほどの美人看護師だぜ。毎日あんたに世話
してもらっているけど、そのたびに俺のせがれが元気になって困ってたんだよ。もっ
ぱらあんたは知らないふりをしていたかも知れないが。禁欲生活で溜まりに溜まって
いるところへ、あんたのようないい女がやってくるのは男にとって罪なんだなあ」

 などと好き勝手な御託を並べながら内田はついに白衣に手を掛けた。
「さあてと、それじゃぼちぼち脱いでもらうとするか」
(ブチッ!)

 内田が乱暴に白衣を引っ張ったため、ボタンが千切れ床に転がった。
それを見ていた山口が横から口を出した。
「内田さん、せっかくのリアル白衣の女だし破いちゃうともったいないじゃないです
か。コスプレならともかく本物の白衣にありつくことなんて滅多に無いんだし。でき
れば白衣は残して下着は全部脱がすのはどうですかね?」
「うん、そうだな」

 山口の二倍ほど年齢を重ねた内田だが、日頃弟分のように可愛がっている山口の意
見はよく聞く。
白衣の下に現れた白いキャミソールを若い山口が無造作に引き裂くと、純白のブラジ
ャーとパンティが現れた。

 染みひとつない透き通った肌が否応でも男たちの劣情をくすぐる。
その劣情をさらに煽ったのは、衣葡が発する甘い牝の香りであった。
「うわっ……刺激的な匂いだ~」

 山口がそうつぶやくと内田はにやりと笑った。
「いい女は匂いもいいもんだ。こういう女を上玉っていうんだよ、覚えておきな、山
口。俺たちは入院のせいで久しく女を抱いていない。そこへ持ってこんな上玉が現れ
りゃそれだけで暴発しそうだぜ。お前だってもうビンビンじゃねえのか?」
「ははは、図星ですよ。鼻血が出そうっす」
「そうか、がはははは~」

 男たちの野卑な会話が弾む。
その目はまるで飢えた狼のようにぎらぎらと輝いていた。

◇◇◇

 ちょうどその頃、横田と詩織はナースステーションに戻り計画を実行していた。
睡眠薬入りの茶を飲んだ吉岡医師と看護師の幸子は確認したところ深い眠りに落ちて
おり起きる気配がない。

 二人が起きる推定時刻は午前5時である。
もしも他の患者からナースコールがあった場合は、詩織が対応することになっている。
間が悪く重篤な患者が現れた場合即座に計画は中止し、吉岡医師を揺り起こし対応さ
せる手筈となっている。

 午前1時から午前5時の4時間……これが彼らに与えられた自由時間であり、衣葡
にとっては悪夢の時間であった。

◇◇◇

 515号室内に照明が灯る。
明かりが廊下に漏れないように内側からカーテンが引かれた。
天井から伸びるロープに吊るされた衣葡は薬がよく効いているようで、まだよく眠っ
ている。

 身につけていたブラジャーは無情にも床に捨てられ、パンティはやっとのことで足
首にとどまっていた。
衣葡の真正面には内田が仁王立ちし、秘所に指をあてがい亀裂に沿って入念に往復さ
せている。

 「おおっ! おい、山口。こりゃあすげえ絶品だぜ!」
「絶品?」
「この看護師、そんじょそこらの美人じゃねえぞ。すごい名器の持ち主だ。知ってる
か? 『数の子天井』って。ほれ、てめえも指を入れて確かめてみろ。ザラザラとヒダ
ヒダだらけだから」

 早速山口は衣葡の狭い肉道に指を挿し込んでみた。
指先に襞が触れる。
確かに他の女性より襞が多いようには思うが、もうひとつその違いがよく分からない。

 「確かにヒダヒダは多いみたいだけど、こういうのが名器なんですか?」
「指だけじゃ無理かも知れねえな。数の子天井っつうのはせがれをピストンするたび
に、亀頭が数の子のようなたくさんの粒々のものにこすられるのさ。その挿入感は強
烈で、昇天するような射精ができるってわけさ」

 「つまりチンポを挿し込んでみないと分からないって訳ですね」
「まあそういうこった」
「早く入れたいよ~」
「今は我慢しろ。その前にやることがいっぱいあるだろう? がはははは~」

 その時、突然衣葡が目を覚ました。
男たちの会話が耳障りとなり予定より早く目覚めてしまったのだ。

 「おっ、看護師さんが早いお目覚めだぜ」
「うぐぐぐっ!」

 衣葡は今置かれている状況がすぐに呑み込めず、ただ狼狽するばかりであった。
まだぼんやりしていて、どういう訳か頭が痛い。
それでも尋常ではない現状に急速に意識が回復していく。

 何故ここに内田と山口がいるのだろうか。彼らに恨まれるようなことはしていない
はずだ。
衣葡は拘束されて不自由な身体で髪を振り乱し激しくもがいた。
助けを呼ぼうとしたが、口にタオルを咬まされて声が出せない。

 「ここがどこだか知りたいか? ここは俺たちの病室515号室だよ。今からたっぷ
り可愛がってやるから楽しみに待ってろよ~」

 さらに内田は続けた。
「おい、山口。俺たちはこの看護師さんにお礼をしなくちゃいけなかったな」
「そうそう、以前、手術の前に俺たちの陰毛を丁寧に剃ってくれたのが衣葡さんだっ
たからね」

 「せがれを摘み上げてタマタマ周辺を剃られたとき、俺はつい興奮しちまってせが
れが大きくなってしまってよ~。それでもこの看護師さんは顔を赤らめながらも一生
懸命剃ってくれたもんだ。あの時はすまなかったな~」

第3話 剃毛

 「お返しに今度は俺たちが衣葡さんをきれいにしてあげなくちゃいけませんね」
「女の陰毛は以前何度か剃ったことがあるから俺に任せろ」
「へ~、さすが人生経験豊富な内田さんだ。じゃあ剃るのは内田さんに任せます。カ
ミソリも用意してるので」
「段取りがいいじゃねえか」

 繊細な箇所と言うこともあり、山口が準備していたのは、女性用カミソリ、ジェル
フォーム、そして化粧水であった。
剃毛後化粧水も塗ると保湿効果が生まれ色素沈着が予防できる。

 「ほう、女性用か?俺は男もののカミソリとシェービングクリームしか使ったこと
がねえが、さすが山口、よく気が利くなあ」
「いいえ、そんなことないっす」
「じゃあ看護師さんよ、赤ちゃんのようにお股をツルツルにしてやっから楽しみにし
てな~」
「うぐ、うぐ、うぐぐ!」

 内田はジェルフォームを指でたっぷりとすくい、柔らかく少なめの陰毛辺りに塗り
たくった。
「ううっ、うぐ、うぐ!」

 ジェルフォームを塗布した内田が続いてカミソリを近づけると、剃毛から逃れよう
とする衣葡は懸命に腰を振ってカミソリを躱した。
「おいおい、あんまり暴れると大事なところを怪我するぜ。大人しくしてろ」
「うぐぐぐ!」

 衣葡は腰を左右に振って必死に抵抗する。
「しょうがねえな~。おい、山口、看護師さんの後ろに回って、暴れねえように押さ
えてろ」
「はい、了解っす」

 後方から押さえ込まれて動きの鈍った衣葡に、カミソリの冷ややかな刃先が触れる。
さすがに観念したのか衣葡は大人しくなった。
かすかに睫毛に涙が光っている。

 回診ワゴンの上には湯で満たされた洗面器が置かれ、その中には泡立ったジェルフ
ォームに混じって剃毛された黒い毛が浮かんでいる。
内田は手慣れた手さばきでカミソリを滑らせている。

 恥毛はほぼ剃りあげられ、縦に走った亀裂が丸見えになってしまった。
陰核に至ってはそれを覆う包皮の形状までがはっきりと露出してしまっている。
秘密のベールを剥ぐとはまさにこの光景を言うのだろう。

 剃り残しをきれいに剃るため、山口は衣葡の片足を持ち上げた。
衣葡はかすかな抵を示したが内田に凄まれ諦めてしまった。
今は大人しいが凄くむとさすがに迫力がある。
逆らうと本当にカミソリで切られるのではと恐怖感を抱いてしまう。

 ほどなく剃毛作業は完了した。
「ふう~、やっと終わったぞ。看護師さん、あんたの腕には及ばねえが案外上手いも
んだろう?それにしてもまるでガキみたいにツンツルになっちまったな~。可愛いマ
ンコが丸見えだぜ!がっはっはっは~!」
「うんぐっ!うぐぐぐっ!」

 衣葡は内田を睨みつけ何かを訴えようとしている。
猿轡を咬まされているので言葉にはならないが、内田を罵っていることはおおよその
想像がついた。

 山口が剃毛後の手入れに化粧水を塗っている。
衣葡は少し沁みるのか顔をしかめている。

◇◇◇

 剃毛が終わり覆うものを失った秘密の園は野卑な男たちの指と舌でなすがままに弄
ばれた。
さらには山口にアナル嗜好があったことから菊門までもが蹂躙の対象となった。
感じてはならないと堪えてはいても、いつしか肉体は快感に目覚めていく。

 衣葡はそんな自分を情けなかったが、止めることは適わなかった。
そんな衣葡にさらに追い打ちがかけられる。
山口がカメラを取り出しシャッターを切り始めたのだ。
(やめて!お願い、撮らないで!)

 猿轡の状態でいくら叫んでも山口たちに届くはずはなかった。
衣葡の痴態はあらゆる角度から収められた。
秘所の真下からアップで。そして苦悶する表情もアップで。

 撮影もほどほどに、猛り狂った野獣たちはついに衣葡に襲い掛かった。
膝立ち姿勢の衣葡は前後から挟み撃ちされた。
色白で細身の女を真ん中にして、浅黒く体格の良い男二人が前後からサンドウィッチ
する。

 何と卑猥な光景であろうか。
前方から挑むのは内田であった。
猛り狂った肉棒は衣葡の秘所にズブリと突き刺さっている。

 「うぐぐっ!うううぐっ!」
衣葡は魔の手から逃れようと髪を振り乱してもがくが、両手を天井から吊るされたう
え前後から挟まれては動くに動けない。

 前方内田の出張った腹に押されると思わず腰を引いてしまう。
腰を引くとつい出尻になってしまう。
出尻になると待ってましたとばかり待ち構えているのが後方の山口。

 見事にはち切った双臀の割れ目に反り返った肉棒を突き立てる。
しかしアナルセックス未経験の女性に挿入するのは容易ではない。

 そこで山口がクリーム状のものを指にすくって、衣葡の菊門に塗りこめ指で揉みほ
ぐす。
「うううっ!」

 そして山口は再び挑みかかる。
(ズズッ、ズニュッ!)
「うぐぐぐぐっ!!」

 身を裂かれそうな痛みが衣葡を襲った。
「すまないね。痛いのは初めだけだ。少し我慢してくれ」
 山口は肉棒をぐいぐいと菊門に押し込む。
「ふんぐっ!!うぐぐっ!!」

第4話 老淫

 「力を抜くと痛みが和らぐよ。さあ力を抜いて」
そんなことを言われても、力を抜くことなど簡単にはできない。
衣葡は全身を震わせながら、強引に侵入してくる苦痛と闘っている。
山口の怒張した肉棒が衣葡の可憐な菊門から出たり入ったりする光景は実に淫猥だ。

 そして衣葡が苦悶に顔を歪める度にピンク色の淫裂がヒクヒクと口を開く。
「おお、いい締りだ。これは堪らない!」
「ううぐっ!ううう~~~っ!!」

 腸内をかき回される異様な感覚、そして肛門を押し広げられる苦痛が衣葡に襲いか
かる。
汗みどろになった白い下腹部が激しく前後する。
本来なら前方に逃れたいところだが、前方には内田のつっかえ棒が邪魔をしていて逃
げられない。
前後から挟まれた形となった衣葡の額からは大粒の汗が噴き出している。

 二人がかりによる地獄のような責苦も意外と早い終焉を迎えた。
入院で禁欲生活を余儀なくされ精液もストレスも溜め込み、久しぶりの性交に堪え切
れなくて、あえなく撃沈してしまったのだった。
うなだれる衣葡の内股に白濁色の液体がツーッと伝い落ちる様は実に痛々しいもので
あった。

 「ふう~、すごく良かったぜ、美人看護師さん。シマリ具合も抜群だし予想どおり
の名器の持ち主だぜ。あとからまたゴチになるとして、実はあんたにもう一働きして
もらいたいんだよ」
「うぐぐ……」

 「実は俺たち以外にあんたを欲しがっている人間がもう一人いてね。ふふふ……」
「……!?」
もう一人とは一体誰のことだろう。
衣葡は全く思い浮かばなかった。

 この病室にいるのは内田と山口そして自分だけではないか。もしかして他の部屋か
ら患者を連れてくると言うのだろうか。
いや、少し待てよ、この病室にはもう一人入院患者がいる。

 85歳で長期入院中の老人が。
まさかそんな老人を狂気の性宴に駆り出すことはないだろう、と衣葡は自身の想像を
すぐさま否定した。

 しかし次に発した内田の言葉が衣葡を凍りつかせた。
「実は、あそこに寝ている川島爺さん、あんたもよく知っているだろうが余命いくば
くも無くてさ。その川島爺さんが夜ごと俺に言うには、『いつもわしにやさしくして
くれてるあの衣葡さんの一番大事な場所を一度だけでいいからしゃぶり倒してみたい
んだよ。もし願いが叶ったらわしはいつ成仏したって構わない』ってな。あんたもえ
らく惚れられたもんだな~。そこでだ。ぜひあんたに一肌脱いでもらってあの爺さん
の願いを叶えてやって欲しいんだ」

 衣葡の血相が変わった。
いくら余命いくばくもない老人の今生の願いだとしても、そんなことは絶対に嫌だ。
自分は男たちの玩具ではない。

 確かに先程野卑な男たちに弄ばれたが、もう誰にも肌に触れられたくはない。
衣葡は首を横に振った。

 「ふ~ん、そうかい、案外冷てぇんだな~。じゃあ仕方ねえな。頼みを断るんだっ
たら、あんたのそのきれいな顔にこのカミソリでちょっぴり傷つけることになるけど、
いいんだな?」とカミソリを振りかざし凄んでみせる内田に、衣葡は恐怖のあまり全身
から血の気が引くのを感じた。

 内田の元暴力団員という素性からして、脅かしではなく本当にやりかねない。
女性として顔を傷つけられるのは最も怖いこと。
衣葡は首を縦に振らざるを得なかった。

 「よしよし、それでいい。俺としても無理やりっていうのも寝覚めが悪いからな~。
じゃあ早速爺さんのお相手をしてもらうとするか」
内田はそうつぶやくと衣葡の両腕のロープを解き天井から降ろすと、山口とともに左
右から抱きかかえ川島老人が寝ている入口右側のベッドへと連れて行った。

 衣葡の姿を目にした川島老人は嬉しそうに満面に笑みを浮かべている。
「爺さんよ、あんたの大好きな看護師さんを連れて来てやったぜ。ほら見てみな、下
は素っ裸だぜ。いや、それだけじゃねえぜ。ここを見てみなよ、オケケをきれいに剃
りあげてかわらけになってるだろう?爺さんがしゃぶりやすくしてやったから、心行
くまでしゃぶるんだぜ~」

 櫓を担ぐように両横から男たちに抱えられ、仰向けの川島老人の上に膝立ちで跨ぐ
姿勢にされてしまった衣葡は困惑した。
何しろ眼下には川島老人の相好を崩した顔が窺え、目のやり場がないのだ。

 川島老人はまるで神々しい女神が降臨したかのように、目を爛々と輝かせて衣葡を
見つめている。
彼の視線に耐え切れなくなった衣葡は思わず顔を背けてしまった。

 ひるむ衣葡の背中を内田は小突き催促をする。
「おい、早く爺さんの口の上にまたがってしゃぶらせてやれよ」
「ううぐっ……!」

 背中を押された衣葡がやむなく前進すると、川島老人の顔が間近に迫る。
「ふんがふんが…こんにゃ若くてきれいにゃ看護婦しゃんと、ふんがぁ……こりゃ極
楽じゃ……」

 日頃総入れ歯をしている老人が入れ歯を外すと滑舌が悪く何を言っているのかよく
分からないが、喜びに満ち溢れていることだけは十分に理解できた。
川島老人が痩せた腕を女体に伸ばす。

 点滴をつけたままの腕が痛々しく見える。
川島老人の手が震えてる。
衣葡の肌は近いようで遠い。

第5話 舐豆

 指による愛撫すらままにならない川島老人の様子を窺っていた山口が、親切にも川
島老人の手をつかみ衣葡の股間へと導いてやった。
震えながらではあったが指は何とか秘所に到達し、川島老人は久しぶりの感触に喜び
を隠し切れない様子であった。

 その動きは見違えるように早い。
やはり若くて美しい女性は回春の特効薬なのだろうか。
「ふんがふんが、気持ちいいのお……ふぉっふぉっふぉ…この柔らかい感触、久しぶ
りじゃあ……」

 (うぐぐっ…)
 衣葡は腰をよじって逃れようとするが、山口たちに押さえられていて思うように動
けない。
川島老人の愛撫は若い男のそれとは違って、実に弱々しいものであった。

 ただし弱々しくはあるが昔取った杵柄か、指使いは堂に入っており的確にツボを攻
め立てた。
鳥の羽根でかすっただけでもすぐに反応してしまうのが女の身体。
処女ならともかく、人並みに性経験のある衣葡ならその効果は絶大といえる。
ましてや陰毛を全て剃り落とされ、敏感な個所が露出していればなおのこと。

 川島老人は震える指をクリトリスに宛がい擦り始めた。
両脇を男たちに固められのけ反ることのできない衣葡は、まともに川島老人の愛撫攻
撃を受けてしまった。

 性に浅い男性は愛撫時つい指に力が入り過ぎてしまい女性を痛がらせる傾向がある
が、老人の愛撫は力強さが皆無でありその弱さゆえに早々に衣葡を快楽道へと導く結
果となってしまった。

 (うぅぐっ……うぐぐぐ~~~っ……!)
「あれ?衣葡さん感じてねぇ?川島爺さんってエッチ上手いんだ~」
意外とも思える衣葡の反応に、山口は驚きの表情を隠し切れない。
「何年経っても指先はちゃんと憶えているのさ。おい、山口。それはそうとぼちぼち
爺さんのおしゃぶりタイムだぜ。のんびりしてたらすぐに時間がなくなっちまうぜ」

 衣葡は一旦川島老人の指から引き離されたが、息をつく暇もなく次の指示が下され
た。
「おい、看護師さんよ、爺さんの顔面に跨りな。そんでもってあんたのスペシャルジ
ュースをたっぷりご馳走してやるんだ」

 (うぐっうぐっ…!)
衣葡は顔を横に振って嫌がる素振りをみせると「俺たちの命令には逆らうなって言っ
たろう?逆らうとマジで怪我するぜ。いいのか?」と凄んで見せる内田。衣葡の瞳から
大粒の涙がこぼれ落ちても全く動じる気配がない。

 山口に背中を突かれてさらに膝立ちで前に進む衣葡。
眼下には舌舐めずりをする川島老人の唇がある。
割れ目を食い入るように見つめている。
内田がクレーンの荷を操るように煽り立てる。

 「もう少し前だ。もうちょっと右。そうそう、その位置でいい。そのまま腰を下ろ
してオマ○コをしっかりと爺さんに吸ってもらいな。だがあんたが興奮して爺さんの
首の上に乗らねえようにな。窒息して死んじまったらあんたの責任になるぞ。いいな」

 理不尽な言葉を平然と浴びせ続ける内田だが、衣葡としては従うより他になかった。
川島老人は犬が匂いを嗅ぐ時のように鼻をクンクンさせている。
牝が発散させる艶めかしい香りを懐かしむかのように。

 次の瞬間、衣葡が目を閉じて腰を沈めた。
ついに陰唇が川島老人の唇と密着した。
川島老人は無我夢中でしゃぶりつく。
衣葡は川島老人にまたがっているため、自然と秘所は拡がり、舌はその内部までも舐
めあげた。

 (ペチョペチョペチョ……ペチョペチョペチョ……)
「うぐぐっ!ううぐっ~~~!」
ピンク色の肉襞を舐められて、そのおぞましさに悲痛な叫び声をあげるのだが、口を
封じられていて声にならない。

 内田は陰核を包む皮を指で拡げ、川島老人がしゃぶりやすいようにしてやった。
剥き出しの陰核に舌が這いまわり唾液まみれになってしまう。
(ベチョベチョベチョ!ベチョベチョベチョ!)
「ぐぅ~~~~~!!」

 腰をよじって懸命に逃げようとする衣葡の腰を左右から押さえつける。
「うぐうぐうぐぐぐ~~~っ!」

 陵辱を拒みたいが、変に逆らうと内田が何をするか分かったものじゃない。
川島老人に舌でなぶられ、両横からは男たちの手が伸びてくる。
乳房を揉まれ、親指でコリコリと乳首をいじられ、逃れる術がない。

 衣葡は頭の中が真っ白になってしまい、 陵辱されているのに奇妙な快感を感じてい
る自分にまだ気づいていなかった。

 川島老人の舌は器用に柔肉を拡げ、亀裂の中央に潜り込んだ。
舌をすぼめ秘孔に挿し込もうとしている。
十分に挿し込めないと分かると、亀裂全体を舐めまわし、溢れ出る愛液を上手そうに
啜り始めた。

 (チュ~チュ~、ジュルジュル~……)
「ふんぐっ!ふぐぐぐっ!」
 川島老人に作為はないのだろうが、実に卑猥な音を立てている。

 その時、突然山口が奇声を発した。
「すげ~~~!な、なんと!爺さんの股間がすげえ盛り上がってるじゃん!」

第6話 凌辱

 「まさか!爺さんはすでに85歳だぜ!」
川島老人の下半身の元気さに内田と山口は唖然としている。

 男性が高齢を迎えるとその多くは男性ホルモンが減少し、その結果、性欲が減退し
たり勃起障害を引き起こすことがある。
川島老人もその例外ではないのだが、憧れの早乙女衣葡との性交が老人に再び春をも
たらしたのだった。

 寝巻の上からではあるが、川島老人のイチブツは天井に向かって隆々と怒張してい
るのが分かった。
その勢いは若い男性かと思うほど立派なものであった。

 「こりゃ驚いたなあ。爺さんにとってこんなチャンスはこれが最後かも知れねえな
あ。そこでだ、爺さんにもう一花咲かせてもらいたいと思うんだ。冥土への最高のみ
やげになると思うぜ」
「内田さんって意外と優しいんですね」
「意外っていうのは余計だぜ」
「あ、ごめん」
「じゃあ、爺さんが萎えないうちにやっちまうか」

 内田は川島老人の肉棒の真上に跨るよう衣葡に指示をした。
当然衣葡は首を横に振るが、内田たちはただ黙殺するだけであった。
川島老人の寝巻の裾が広げられ、ニョッキリとそそり立つ肉棒。

 衣葡は観念の臍を固めた表情でゆっくりと腰を沈めた。
(ズニュッ……)
「くぅ~~~っ!」

 顔を近づけ結合の一瞬を食い入るようにして覗きこむ内田と山口。
老人のイチブツは奥深くまで埋没した。
ところが衣葡は静止したまま一向に動こうとしない。
相手が老人であれば、上位の女性が能動的に腰を動かさないと事は運ばないだろう。

 若い男性相手とは訳が違うのだ。
これには業を煮やした内田が「待ってたって爺さんは動いてくれねえよ。あんたが積
極的に腰を使わないと。あんたのその色っぽい腰を使って、爺さんの喜ばせてやりな
よ」

 衣葡は仕方なくゆっくりと腰を前後に動かした。
すると川島老人がすぐに反応して「ごほっ、ごほっ、おおっ!おおっ!こりゃたまら
ん~、こしがぬけそうじゃ~、きもちいいぞ~」
「ううぐっ……!」

 日頃滑舌の悪い老人だが、はっきりと聞き取れるほどしっかりとした口調で自身の
快感を訴えた。
「おお、おお~、これはいいぞ、すごいぞ~、おお、おお!おお、おお!」
「くぅ!うぐぐぐ!」

 85歳の老人と若い女性の淫らな行為を、目を皿のようにして見つめる内田、そし
て開いた口が塞がらない山口。
おそらく目前でこのようなショーを見ることなど生涯無いだろう。
二人は自分自身が行為に及ぶ以上に胸がぞくぞくと躍るような興奮を覚えた。

 しかし川島老人の行為は長くは続かなかった。
腰をビクンと波打たせたかと思うと、次の瞬間「はぁ~」と大きなため息をついたの
だ。

 「ん?爺さんイッたのか?」
「そのようっすね」
「意外と早いじゃねえか」
「年寄りは遅漏気味って聞いてたけどそんなことないじゃん」
挿入時間はわずか5分ほどであった。

 「爺さん、よかったか?」
「よがっだぁ……さいこうじゃ……」
川島老人は疲れてぐったりとしていたが、衣葡はそれ以上に疲れた様子を見せていた。
サンドウィッチ攻撃の次に入院老人との強制性交と続けば、精神的に参って当然だろ
う。

 だがそんな衣葡に休息のいとまもなく、次なる仕打ちが待っていた。
「看護師さんよ、もう3時だ。あと2時間しかない。俺たちにもう一度相手してもら
おうか」
「うぐぐぐ!」
内田たちは拒絶する衣葡を、強引に奥の空きベッドへと運んでいった。

 ロープと猿轡が解かれ少しは楽になったが、依然男たちの拘束は続き、衣葡はあり
とあらゆる体位で責め続けられた。
彼らが真っ先に挑んだのが後背位であった。

 衣葡は四つん這いにされ、前方からは山口に口淫を求められ、後方からは内田の肉
棒が襲いかかった。
後背位が終わると今度は内田単独で砧(きぬた)という奇抜な臀部合接位で攻めた。

 仰向けになった衣葡の腰に枕をあてがい陰部が上向きになるよう身体を曲げさせ、
衣葡と逆向きになり覆いかぶさるような姿勢で挿し貫くと言う、女性にとても恥ずか
しい体位であった。

 攻めは淀みなく続く。
次に、衣葡が仰向けに寝かされ両足を大きく開かれ、真正面から山口が攻め立てた。
この時内田は乳房を横から揉み続けるという補佐的役回りに徹した。

 痴態は延々と続き、時計の針は午前5時を指している。
窓の外はすでに青みがかっていて朝の訪れを告げている。

 「ご苦労だったな。あんたのお陰でいい思いをさせてもらったぜ。ふふふ……だが
な、これで終りじゃないんだぜ。俺たちが入院中は月に2回付合ってもらいたいんだ。
もちろんあんたが夜勤の時だけでいいんだ」

 疲労の色を顔に滲ませながら衣葡は毅然と訴えた。
「もう、いやです。こんなこと二度としないでください。今日のことは言いませんか
ら」

 「へえ、強気だね~。だけどそうはいかねえんだよ。あんたのすごい格好は全部カ
メラに収めさせてもらったからな。下のお口がチ○ポ咥え込んでいるところも全部撮
ってるからな。ぐわっはっはっは~~~!」
「そんな、卑劣な……」

第7話 鬱蒼

 「何なら写真を院内にばら撒いてやってもいいぜ」
「そんなことしたらあなた達の顔も丸判りじゃないの」
「残念だが俺たちの顔はちゃんとカットしているから問題なしって訳さ。気を遣って
くれてありがとうよ」

 「くっ……」
「先生方が見たらさぞかし驚くことだろうな~。だってこの病院ナンバー1の美人看
護師さんが病院ですげえことやってるんだからな~」
「そんな卑怯なことやめて!」

 「ふふふ、そう心配すんなって。あんたさえこれからも俺たちの言うことを素直に
聞いてりゃ変なことしねえよ」
「私を脅かすのね」
「何か人聞きが悪いなあ。ははは~」

◇◇◇

 衣葡にとって地獄のような長い夜がようやく明けて、午前5時になった。
その表情には隠しきれない疲労の色が滲み、雪曇りの空のようなどんよりとした影が
心を覆っていた。

 衣葡は重い足取りで部屋を出た。
ボタンがちぎれ着衣も乱れたままでナースステーションに戻る訳には行かなかったの
で、一度更衣室に寄ることにした。

 途中悔しくて涙がこぼれ落ちた。
(口惜しい……何故こんな仕打ちを受けなければいけないのか……)
そんな衣葡を廊下の陰から冷ややかに見つめる一つの視線があった。
詩織である。

 (うふふ、いい気味だわ。あの細い腰がガタガタになるくらい責められたようね。
写真楽しみだわ。あられもない姿で悶え狂っている衣葡さん、とくと見てあげるわ。
でもこれで終わりじゃないの。もっといっぱい楽しませてあげるわね。うふふふ……)

 一方、当番医師の吉岡は午前5時に目を覚ました。
頭の芯にズキズキと鈍い痛みを感じた。

 「ううっ、頭が痛い……どうしたんだろう……風邪を引いたかな?あっ、しまった!
もうこんな時間だ!」
吉岡は時計を見て驚いた。

 午前2時に仮眠をとって午前5時まで眠ってしまったことになる。
こんなことは病院に勤務して初めてだ。
眠っている間に患者に異常はなかっただろうか?
吉岡は患者のことが気がかりだった。

 「すぐに様子を見に行かなくては。でもおかしいな…どうしてこんなに眠ってしま
ったのだろう……?」

 当直の日は予め自宅で睡眠をとってから勤務についているから、仮眠から起きられ
ないことはないはずなのだが。
目覚ましもセットしたのに、不思議なことに鳴らなかったのだ。
吉岡は首を傾げながらとにかくナースステーションに急ぐことにした。

 ナースステーションには詩織がいた。
「山本さん、すまない。うっかり寝過ごしてしまったよ。患者さんに特に変わりは無
かった?」

 「あら、吉岡先生。どうされたのかなと思っていました。特に異常はありませんで
したわ。先生はかなり疲れが溜まってらっしゃるみたいですね」
「自覚症状はそんなに無いんだけどもしかしたら疲労かも知れないね。ああ、ところ
で早乙女さんと吉田さんはどこに行ったの?」

 「はい、早乙女さんは今巡回中で、吉田さんは頭痛がするとかで今休憩室で横にな
っています」
「そうなんだ。大丈夫かなあ」

 その頃、幸子も吉岡と同様に目を覚ましていた。
「きゃっ、大変!仮眠時間を過ぎているわ。早く起きなくては。あぁ、でも頭痛が…
…どうしたのかしら……」
幸子は頭を押さえながらナースステーションに向かった。

◇◇◇

 同じ時刻、着衣の乱れを正し終えた衣葡も足早にナースステーションへと急いでい
た。
長時間ナースステーションを離れていたことで、詩織や幸子に迷惑をかけてしまった
……責任感の強い衣葡は緊急事態が発生していないだろうかと気が気ではなかった。

 戻ってみると不機嫌そうな表情の詩織が衣葡を睨みつけた。
「いったいどこに行ってたのよ。幸い緊急はなかったけど、あちこちの病室からコー
ル鳴りまくりで走り回ったのよ」
「ごめんなさい。515号室の患者さんから色々と頼まれて」

 「ふ~ん、そうだったの。やたら時間掛かったのね。まあいいけど」
「……」
「早乙女さんは戻ってこないしおまけに吉田さんも頭痛で仮眠室で休んでしまって、
ほんと大変だったわ」

 「本当にごめんなさい」
「次から気をつけてね」
「はい、すみません」

 515号室で繰り広げられた悪夢のような受難劇が、まさか目前で飄々と語ってい
る詩織の企てにより行なわれたとは露ほども知らない衣葡は、詩織にひたすら謝るの
だった。

 5日後に再び衣葡の当直日が訪れる。
鬱蒼とした虚無感が衣葡の心を支配し、冬の夕闇のように胸に沈み込むのであった。



   この作品は「愛と官能の美学
」Shyrock様から投稿していただきました