『悪夢の標的』
 
                    Shyrock:作
第22話(最終話)

 「どうしても言わないつもりか?ふうむ、仕方ない。野々垣さん、山芋でもっと
しっかり擦ってやってください」
「いや、いや!もうそれで擦るのはやめて~!言う、言う、言うから許してぇ~~
~~~!!」
「やっと言う気になったか。じゃあ言ってごらん」

 「はずかしい・・・お、お○んこが・・・か・・痒いので・・・お○んちんで・
・・擦ってください・・・」
やっとの思いで恥辱の言葉を搾り出すように発したイヴは、恥ずかしさのあまり顔
を背けてしまった。

 「よしよし、よく言えた。それで良い。では皆さん、ただいまからマナ板ショー
の始りです。僭越ながら最初に私がお手本をお見せしますので、野々垣さんが2番
手で、その後希望される方はその後お試しください。ではお先に」

 (パチパチパチパチ!)
「会長!老体に鞭を打ってがんばってくれ!」
「おお!いいぞ!」
「私も後から頂戴しますから」
「ファイト!」

 周囲の歓声の中、阿久夢は早くもズボンを降ろし、年齢には不釣合いな立派な持
ち物を皆の前に晒した。
だがまだそれほど勃起していない。

 その間、イヴは痒みに悩まされ続けていた。
「ああ、痒い・・・」
「ふふふ、もう直ぐ楽にしてあげるから、早乙女君、これをしっかりとしゃぶりな
さい」
「そんなことできません」
「拒むともう一度山芋責めを続けるがいいのか?もっと痒くなるぞ」

 阿久夢は威嚇する。
阿久夢の言葉には相手に有無を言わせぬ威圧感がある。
すでに観念したのかイヴは悲しげな顔で阿久夢の邪悪な肉塊を咥える。
「さあ、元気にしてくれ」
「・・・」

 (ジュポジュポジュポ・・・ジュポジュポジュポ・・・)
小ぶりな唇に含まれた肉塊はたちまち巨大化した。
それはまるでまだ壮年かと思わせるほど逞しい。
「よし、もう十分だろう」

 阿久夢はイヴの唇から怒張したものを抜き取りベッドに這い上がった。
そしてスキンを装着する。膣内に山芋を塗りこめたため、自身にも付着する惧れが
ありあくまで自衛のためだ。

 イヴの両足は大きく開かれたうえ固定されているから挿入は至って簡単だ。
例え抵抗に遭っても怒張したものから逃れることはできないだろう。
阿久夢はイヴの腰の両側をつかみ、いちぶつを秘所にあてがった。

 ググッと押し込む。
「ああっ・・・」
「どうだ?気持ちいいか」
「あああっ・・・そんなこと・・・」
「ふふふ、どうじゃ、痒いところに手が届いた気分じゃろう?もっと擦ってと言え。
ほれ、言わぬか」

 「あぁ・・・も、もっとぉ・・・擦って・・・もっともっと擦ってぇ・・・」
「ふふふ、やっと素直になりよったか。よしよし・・・」

 次の瞬間、信じられないことが起こった。
阿久夢が突然イヴの真上で崩れるように倒れ込んでしまったのだ。
すぐに救急車が呼ばれた。

 救急隊員が駆けつけたとき、すでに阿久夢の息は途絶えていた。
変死の疑いがあることからまもなく警察と検視官も駆けつけた。
検死の結果、死亡原因は『心不全』であったが、世間では『腹上死』あるいは『性
交死』と呼ばれている。

 さらに警察は状況的に事件性が高いと判断し捜査を開始した。
イヴは進んで警察に出頭し経緯を隠すことなく語った。
すでに死亡した阿久夢と上野の二人が主犯格であると警察は睨んだ。

 その後、上野と現場に居合わせた観客にそれぞれ事情聴取が行なわれた。
その結果、上野は緊急逮捕され、死亡した阿久夢は容疑者死亡による書類送検の措
置がなされた。

 上野は「強制わいせつ」「傷害」「脅迫」「強要」等の罪状で起訴されることと
なった。
今回最も警察内で議論紛糾したのが、彼の行為が刑法177条「強姦」に該当するか
どうかであった。

 結局上野は“男性器を女性器に挿入する”性行為を一度も行なわなかったことが
立証され、この罪は不問とされた。
また、観客の男たちも予めイベントの内容を予め承知した上で出席したとして全員
逮捕されることとなった。

 その中でも野々垣においては「強制わいせつ罪」が付加され、その他の観客は阿
久夢らを幇助したと判断され「準強制わいせつ罪」が適用された。



 「取り返しのつかないことになってしまったわ。本当にごめんなさい・・・。も
う貴方に合わせる顔がないわ」
イヴは恋人である車井原の前で大粒の涙を流した。
車井原はハンカチでイヴの目頭を拭いてやった。

 「もっと早く僕に話してくれたらよかったのに。でも今さらそんなことを言って
も仕方ないし、嫌なことは早く忘れようよ。狼に少し噛まれただけだと思えばいい
んだよ」

 「え?こんな汚れきった私なのにあなたは許してくれるの?」
「許すも許さないもないよ。僕の気持ちは少しも変わってないよ、イヴ・・・君が
大好きだ・・・」
「まあ・・・嬉しい・・・」

 車井原はイヴを抱きしめて唇を重ねた。
息もできないほどの強い抱擁だったが、イヴにとって今はむしろ心地よいものであ
った。

 車井原はブラジャーの背中のホックに指を掛けた。
「え?・・・私を愛してくれるの・・・?」
「君が欲しい・・・」

 音を立てずに背中のホックが外させた。
ブラジャーは静かに床に落ちた。
車井原は再び唇を求めた。

 「あっ・・・」
「好き・・・」
ふたつのシルエットが揺らめいて重なってゆく。
窓の隙間から入る赤い夕陽がふたりを優しく照らした。